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ブッシュ大統領の中東訪問:中東和平問題
1、 ブッシュ大統領は1月9日から1月16日までイスラエル、パレスチナ、クゥエート、バハレーン、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプトを訪問した。
訪問の目的のひとつは、中東和平交渉の進展を促すことにあったが、1月10日、オルメルト首相、アッバス議長との会談後、ブッシュ大統領が記者に行った声明が米の政策を明確に表現しているので、その全文を資料として掲載する。
最初に、私の聖地への旅行の間のもてなしについて、オルメルト首相とアッバス議長に
感謝したい。我々は大変良い会合を持った。そして今が困難な選択を行う時期である。
私は4つの平行したトラックで進展が必要だとオルメルト首相、アッバス議長に強調した。第1:双方はロードマップの誓約を実施する必要がある。第2:パレスチナ人は経済と政治・治安組織を構築する必要がある。そしてそのためには彼らはイスラエル、(周辺)地域、国際社会の支援を必要とする。第3:私はアラブ連盟の和平イニシアティブへの評価を繰り返す。そしてアラブ諸国に対してイスラエルに手を差し伸べるように呼びかける。これは延期されすぎてきた。
この3トラックに加え、双方は交渉に取り掛かっている。私は両指導者が確実に彼らのチームが今すぐに、真剣に交渉することを確実にするように呼びかけた。私は定期的な首脳会談をするとの両指導者の決定を強く支持した。何故ならば、彼らこそ指導できるし、しなければならないし、自分は確信しているが、指導するだろうからである。
私は両指導者とともに、二つの民主的な国家、イスラエルとパレスチナが平和と安全のなかで隣り合って生きると言うビジョンを共有する。両指導者はそのような結果が彼らの人民の利益であると信じているし、それを達成するために交渉された解決に到達するとの決意をもっている。
このビジョンを現実化するための恒久的地位交渉の出発点は明確なように思える。1967年に始まった占領は終わるべきである。合意は、イスラエルがユダヤ人にとっての郷土であるように、パレスチナ人の郷土としてのパレスチナを樹立しなければならない。これらの交渉はイスラエルが安全で、承認された、そして防衛可能な国境を持つことを確実にしなければならない。そしてパレスチナ国家が生存可能で、連続性があり、主権、独立のものであることを確実にしなければならない。
どちらの側も他の側の基本的な目標を満足させることが合意の成功への鍵であることを理解することが重要である。
合意の達成は双方による苦痛に満ちた政治的な譲歩を必要とするだろう。領土は両当事者の決定する問題であるが、私は彼らの間のどんな和平合意も、現在の現実を反映し、パレスチナ国家が生存可能で連続性があることを確保するために、1949年の休戦ラインへの双方が合意する調整を必要とすると信じている。私はまた難民問題の解決のために、パレスチナ国家の樹立と補償を含む国際的メカニズムに目を向ける必要があると信じている。
私は各指導者にあらゆる合意の実施はロードマップの実施に従属することを再確認した。どちらの側もロードマップの義務に反したり、最終的地位交渉を害するような活動を行うべきではない。イスラエル側では、これは入植地の拡大を終わらせ、許可されていない入植ポストを撤去することを含む。パレスチナ側では、テロリストに対決し、テロのインフラを撤去することを含む。
エルサレムが難しい問題であることを自分は知っている。双方は深く感じられている政治的、宗教的な関心を有している。私はこの問題への解決が和平への道でもっとも困難な挑戦の一つであることを完全に理解している。しかしこの道は我々が歩むことを選択した道である。
安全は基本的なものである。いかなる合意もいかなるパレスチナ国家もテロからは生まれない。イスラエルの安全への米のゆるぎないコミットメントを再確認する。
パレスチナ国家の樹立は長く延期されすぎた。パレスチナ人は国家を持つに値する。それは地域の安定を強化する。それはイスラエルの人々の安全に貢献する。和平合意は本年の終わりまでに締結されるべきだし、締結できる。私はそれぞれの指導者がこの重要な目標を共有していることを知っている。私はそれを達成するために自分にできることをすべて行うことにコミットしている。
2、 このブッシュ声明について、アラブ諸国の政府は米が中東和平の仲介の乗り出したことは評価しているが、それ以上の評価はしていない。
エジプトのムバラク大統領は記者会見で、ブッシュに成功を祈るとしただけである。
サウジのファイサル外相はライス国務長官との記者会見で、米の和平プロセスへのコミットメントの主張を歓迎するが、イスラエルの入植地拡大は交渉の真剣さに疑問を抱かせると述べた。また、ライスが、アラブがイスラエルにoutreach(手を差し伸べること)をすべきだと述べたのに対して、地域での平和計画、・・・すべての人への公平と正義に基づく平和をオファーする以外にイスラエルに対してどんなoutreachがあるのか、自分は判らない、このオファーは善意でなされ、正常化を与えるものである、・・・だから私はイスラエル人にそれ以上のどんなoutreachを与えることができるのか、わからない、と述べた。(こういう発言を解釈する場合、アラブ人は他人の面子を潰すことを避けようとすることを踏まえる必要がある。)
アラブのメディアはブッシュが訪問中、イスラエルによるガザ攻撃を是認したと非難し、かつ声明に対しても、冷ややかである。
3、 ブッシュの声明は和平交渉への米の熱意を示した意味があるが、中東和平の具体的な問題点については、アラブ側がイスラエル寄りの従来の立場の繰り返しと受け取るだろう内容である。ブッシュ大統領自身が望んでいたアラブ、イスラエル双方に公正な仲介者としての立場の確立には成功しなかったといってよい。
たとえば難民問題について、難民の帰還先はパレスチナ国家に限られることを示唆し、国際的な補償メカニズムを作るべしとしたが、これはパレスチナ側が重視している難民の帰還権は否定し、イスラエルと同じ姿勢を表明したものである。また国境について「現在の現実を考慮して」1949年ラインの調整をすべしというのは、パレスチナ側が違法としてきた入植地をある程度現実として認めるべしといったに等しい。
パレスチナ人のためのパレスチナ、ユダヤ人のためのイスラエルとのブッシュ大統領の考えはイスラエル人口の2割がパレスチナ人であることを考えると、イスラエルの極右の主張(イスラエルからパレスチナ人を外に移送すべしとの民族浄化思想)に賛同したかのように受け取られる危険もある。
4、ブッシュ大統領は就任後中東和平には真剣に取り組んでこなかった。今、熱意を示しているが、残り任期も少ない。オルメルトもアッバスも内政上の基盤が弱く、思い切った譲歩など出来ない。本年内の合意達成の見通しは暗い。
(文責:茂田宏)
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