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東欧へのミサイル防衛配備の問題
1、 米がイランのミサイルへの防衛として、チェコとポーランドにそれぞれレーダーと迎撃ミサイルを配備する計画は、米ロ間の論争を呼び起こしてきた。ブッシュ政権とは違い、オバマ政権はこの計画の技術的有効性などを再検討する姿勢を示してきた。
2、 5月19日付ワシントン・ポスト紙は、「米・ロのチーム、欧州におけるミサイルの盾は効果がないとみなす」との見出しで、概要次のとおり報じている。
米とロシアの科学者による共同分析によると、イランからの攻撃から欧州を守る米のミサイルの盾は、イランが配備すると見られるようなミサイルの種類に対し、効果がないだろうとされている。
この米・ロチームはまた、イランが核弾頭と、長距離を運搬するミサイルを作る能力を得るまでに、5年以上かかると判断している。そして、イランがもしそういう攻撃を試みれば、それは自身の破壊を確実にすると専門家は述べている。「欧州に対するイランからのミサイルの脅威は切迫していない」というのがモスクワ、ニューヨーク、ベルギーにある東西研究所が出した結論である。このレポートは今日発表される。
1年かかった研究には、米ロ双方から各6名の専門家が参加し、その結論をペリー元国防長官を含む人々が、国家安全保障担当補佐官ジェイムス・ジョーンズとロシア外相ラブロフに提出される前に見直した。
報告書はイランが劇的な技術取得をしたことを認め、査察官の追放とウラン濃縮を兵器用濃縮に切り替えを行えば、簡単な核装置を1年から3年内に作りうると予測するとともに、それをイランのミサイルに搭載するまでには後5年かかるだろうとしている。
米ロ専門家は、イランは弾道ミサイル開発で制約を受けているとしている。イランの現在のミサイルは北朝鮮のミサイルに準拠しており、この北のミサイルは、50年代のロシアの潜水艦発射ミサイルの改良型である、そしてこの技術は1980年代か1990年代初期に、混乱するロシアから違法に北朝鮮に移転されたと専門家はしている。こういう古い技術であるので、このミサイルには弱点があり、それを大幅に改良するのはイランの科学・工業基盤を考えれば、むつかしいとしている。
結論として、南欧に到達する射程のミサイルをイランが生産するまでに、少なくとも後6−8年かかる、米に届く核ミサイルは、外国からの違法な支援や、これからの10年間のよく見える努力の結果、初めてできるだろう、としている。
その上報告書は、イランが欧州に打撃を加える核ミサイルを作るならば、米が提案している防衛の盾はそれを打ち落とせない、迎撃ミサイルはおとり(DECOY)や対抗措置で簡単に騙されると指摘し、もっと重要なのは米と露が協力してイランの核危機の解決を探すことである、と報告書は述べている。
3、 この報告書がオバマ政権の政策にどういう影響を与えるかが問題であるが、オバマが大統領選挙の際に述べていたことを補強する専門家の議論であり、ペリー元国防長官もエンドースしているということを考えると、かなり政権内で真剣に受け取られる報告書ということになろう。
東欧へのミサイル防衛配備は対露関係への考慮もあり、計画自体、取り止めになる可能性が出てきたと判断される。
4、 この報告書の論旨は北朝鮮のミサイルにも適用がある。要するに北のミサイルに対しても、ミサイル防衛はあまり効果がないだろうことを示している。
(文責:茂田 宏)
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