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パキスタン軍のスワト作戦の状況
1、5月はじめから、パキスタン軍はスワト渓谷でタリバン勢力を排除する軍事行動を行っている。火力に勝るパキスタン軍がタリバンの拠点を次々に攻略している。パキスタン軍報道官アッバス少将は、これまでの戦闘で1095名のタリバンの武装戦闘員が殺害され、29名が捕らえられた、としている。
2、5月23日、パキスタン軍はスワトの最大の町、ミンゴラに進攻し、同市をタリバンから取り返そうとしている。
5月24日付ニューヨーク・タイムズ紙は「パキスタンとタリバン、重要な市のため戦闘中」との記事を、同日付ワシントン・ポスト紙は「スワトの主要都市の戦い、始まる。パキスタンの攻撃は決定的な段階に」との記事を、同日付ロスアンジェルス・タイムズ紙は「パキスタン軍、スワト渓谷での重要都市のために戦う。ミンゴラで部隊は都市環境でよく武装されたタリバン戦闘員に直面」との記事を掲載している。
これらの記事で注目される点、次のとおり。
・ミンゴラの住民は、大部分は、戦闘を避け、避難済みであるが、まだ民間人約2万人が残っている。
・アッバス報道官は、「ミンゴラの掃討が開始された。作戦のペースは苦痛であるほど遅くなるので、忍耐を持って欲しい。しかし作戦は始まり、我々はそれを論理的結末まで持っていく」と述べた。
・スワト渓谷では、住民が反タリバン・自衛組織を作る動きが出てきている。
・作戦に関与しているパキスタン軍の兵力は約1万5千である。
3、スワト渓谷でのパキスタン軍とタリバンの戦闘を避け、約200万人の難民が発生している。
5月22日、国連は「この居住地離脱の規模は大きさと速さで特別なものであり、信じられないような苦難を引き起こしている」として、人道支援として5億4300万ドルの拠出を求める緊急アピールを発出した。
4、パキスタンのザルダリ大統領は、スワト渓谷での作戦に引き続き、北西辺境州から連邦直轄部族地帯、ワジリスタンまで戦線を広げることを示唆している。しかしギラニ首相は「これをどこでもやるほど我々は馬鹿ではない」と発言している。
5、今回のパキスタン軍の作戦は、これまでとは違う真剣さで行われている。しかしタリバンが、部族地帯に聖域をもったままだと、スワト渓谷を押さえたとしても、パキスタンに対するタリバンの脅威は残ることになろう。タリバンがパキスタンの他の地域で報復を行う危険もある。同時にパキスタン軍に部族地帯を制圧する能力があるかといえば、疑問である。
ただ政府が本気を出しているということで、住民が反タリバン自衛団を作るなどの動きも見られる。タリバンの支配地域を縮小させることには意味があろう。
しかし今回の作戦の成果の評価を行うのはまだ時期尚早である。
(文責:茂田 宏)
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