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米ロ戦略核削減条約の署名

I,4月8日、オバマ米大統領とメドヴェージェフ・ロシア大統領はプラハで「戦略的攻撃兵器の更なる削減と制限のための措置についての米合衆国とロシア連邦間の条約」に署名した。
それに伴い、条約文と付属議定書が発表された。条約の主要条項、次の通り。なお全文は米ホワイト・ハウスのホーム・ページ、ロシア外務省ホーム・ページ(ただし露語)にある。

前文:(省略)
第1条:(この条約による義務履行規定)
第2条:1、各当事者は、この条約の発効の7年後とその後、そのICBMとICBM発射機、SLBMとSLBM発射機、重爆撃機、ICBM弾頭、SLBM弾頭、重爆撃機核兵器を、この条約の第3条に従って勘定される次の総計の数を越えないように、減らし、制限する。
(a)配備されたICBM、配備されたSLBM、配備された重爆撃機:700
(b)配備されたICBM弾頭、配備されたSLBM弾頭、配備された重爆撃機のために勘定された核弾頭:1550
(c)配備されたものと配備されていないICBM発射機、配備されたものと配備されていないSLBM発射機、配備されたものと配備されていない重爆撃機:800
2、(戦略兵器の構成を決める当事者の権利)
第3条:1、この条約の第2条1(a)に規定されている総数制限への勘定のために、
(a) 配備された各ICBMは1と勘定される。
(b) 配備された各SLBMは1と勘定される。
(c) 配備された重爆撃機は1と勘定される。
2、 この条約の第2条(b)に規定されている総数制限への勘定のために、
(a) ICBMとSLBMについては、弾頭の数は配備されたICBMとSLBMに装備されている再突入体の数である。
(b) 配備された各重爆撃機は一つの核弾頭と勘定される。
3、 この条約の第2条(c)に規定されている総数制限への勘定のために、
(a) 配備された各ICBM発射機は1と勘定される。
(b) 配備されていない各ICBM発射機は1と勘定される。
(以下SLBM、重爆撃機について同じ趣旨の規定がc,d,e,fとおかれている)
4−8、(この条約の対象たるICBM,SLBM、重爆撃機の範囲の規定)
第4条:(ICBM、SLBM、重爆撃機の配備位置に関する規定)
第5条:(近代化の許容と新しい戦略攻撃兵器についての協議規定など)
第6条:(兵器の転換と廃止に関する規定)
第7条:(データ交換に関する規定)
第8条:(当事者の行動が疑惑を招く可能性がある場合の情報提供規定)
第9条:(ICBM、SLBM発射に関するテレメトリーの交換に関する規定)
第10条:1、この条約の規定の遵守の検証を確保するため、各当事者は次を行う。
(a) 一般的に承認された国際法の原則に合致する方法で、その有する検証の国家技術手段
(注:衛星偵察情報を主として意味する)を使うこと
(b) この条に従って活動している他の当事者の検証のための国家技術手段に干渉しないこと
(c) この条約の規定の遵守の検証の国家技術手段による検証を阻害する隠匿措置をとらないこと
2、 (実験場での隠匿禁止などの規定)
第11条:1、この条約の対象である戦略攻撃兵器についての申告データの正確さを確認し、この条約の規定の遵守の検証を確保するために、各当事者はこの条とこの条約の議定書第5部に従い、査察活動を行う権利を有する。
2、各当事者はICBM基地、潜水艦基地、空軍基地で査察を行う権利を有する。この査察の目的はこの条約の対象である配備された、又は配備されない戦略攻撃兵器の数とタイプ、配備されたICBMと配備されたSLBMに搭載されている弾頭の数、配備されている重爆撃機に搭載されている核兵器の数についての申告されたデータの正確さを確認することである。この査察はタイプ1の査察と以下言及される。
3、各当事者はこの条約の議定書第5部の第7章にリストがある施設で査察を行う権利を有する。この査察の目的は、この条約の対象である配備されていない戦略攻撃兵器の数、タイプ、技術的特性についての申告されたデータの正確さを確認し、戦略攻撃兵器が転換し、廃止されたことを確認することである。
加えて、各当事者はこの条約の議定書の第2部に規定されている以前に申告された施設において、これらの施設がこの条約と合致しない目的のために使われていないことを確認するために査察を行う権利を有する。この項で規定される査察は以下タイプ2の査察と言及される。
4、〔展示についての規定〕
第12条:この条約の目的と履行を推進するために、当事者はここに2国間協議委員会を設置する。その権限と作業の手続きはこの条約の議定書第6部に規定されている。
第13条:(この条約の規定に反する国際的義務を負わないとの禁止規定)
第14条:1、(批准、発効条項)
2、(10年間有効で合意によりさらに5年延長可能などの規定)
3、各当事者はその国家主権の行使としてこの条約の主題に関連した非常事態がその至高の利益を危うくすると決定した時にはこの条約から脱退する権利を有する。この決定は他の当事者に通知される。この通知には通知する当事者がその至高の利益を危うくしたと考える非常事態についての声明が含まれなければならない。この条約は上記通知が他の当事者により受け取られた日から、通知にそれより後の日が特定されていない場合には、3ヶ月後に終了する。
第15条:〔条約改正規定〕
第16条:(条約の国連登録に関する規定)

II,ロシアは署名に際して、ミサイル防衛に関し次の声明を発出した。
2010年4月8日プラハで署名されたロシアと米国の条約(正式名称に言及しているが、省略)は米国の対ミサイル防衛システムの可能性の質的、量的な発展がない状況においてのみ実施されうるもので、その状況で生命力をもつ。従って、条約の14条で言及されている非常事態は、ロシア連邦の戦略核兵器の能力に脅威が生じる米国の対ミサイル防衛システムの可能性のかかる発展をも含む。

III,この条約は戦略攻撃兵器の削減を進めるもので、そういうものとして評価される。ただ、核廃絶にこれで近づいたというような評価は過大に過ぎる評価である。
 削減については、重爆撃機には10発以上の核弾頭を搭載する事が可能であり、かつ通常そうしているのに、それを一発と勘定することになっている。
 核弾頭を在庫として保有することについても、申告を見てみないと明確な判断が出来ない。
 ロシアは交渉の最後の段階まで米国のミサイル防衛に歯止めをかけようとした。オバマ大統領がメドヴェージェフに電話し、そういうことに固執するのなら、米として、この条約を止めてもよいと述べた。ロシアも核軍拡競争をする余裕がないので、前文で攻撃兵器と防御兵器の関連に言及すること、脱退条項とミサイル防衛の結びつけを一方的に声明することで交渉の妥結を図ったということである。

IV,ロシアでの批准はあまり問題なく進むだろう。米上院での審議では、運搬手段の削減が大きすぎないか、検証はどうかなどの諸問題が提起されるだろう。検証については、査察規定もあり、オバマ政権としては、上院を説得できると考えている。多分、その判断は正しいと思われる。
 核兵器については、数の削減が素人目に評価されがちであるが、本当の問題は核兵器が使われない状況の確保である。そのためには戦略的安定性が重要であり、数を減らして安定性を低めてはどうしようもない。
〔文責:茂田 宏〕


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