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キルギスでの政変とロシア

1、 4月7日、キルギスの首都ビシュケクで暴動が起き、政府庁舎が焼き討ちにあい、治安部隊とデモ隊の衝突で80名余が死亡した。バキエフ大統領が首都を離れて南部の地元に逃亡し、オトゥンバエバ元外相が暫定政府の首班になった。
 2005年春のチューリップ革命で生まれたバキエフ政権は実にあっけなく倒れた。その直後、プーチンはバキエフの辞任を求め、新政権と関係をもつことを明らかにした。

2、 この政変はロシアが意図的に惹き起こした政変ではないかとの疑惑がささやかれていた。政変劇の速度はこの政変が事前に準備されたものであることを示しており、私もロシアの関与を疑っていたが、疑惑は深まりつつある。
4月12日付ワシントン・ポスト紙は、「ロシア、キルギスでの暴動を煽ったと言われる。メディア・キャンペーン、経済措置が触媒とされている」と概要次の通り報じている。
政変まで1カ月もないころ、ロシアのテレビは、バキエフ大統領をその家族が数億ドルを国から盗んでいる嫌悪すべき独裁者と描き出す放送をした。(注:キルギスでも視聴可能)
キルギスを罰するようなロシアによる経済措置がこのメディア・キャンペーンと一緒になりバキエフへの怒りを呼び、デモにつながった。
野党指導者で、今政府のNo.2であるテケバエフは、「ロシアなしでもこれは遅かれ早かれ起こっただろうが、ロシアの要因が決定的であった」と述べた。プーチンは暴動でロシアが果たした役割を否定しているが、ロシアがバキエフに不満で、ここ2−3月野党指導者とコンタクトしていたのは事実である。この政変はロシアの対外政策の成功であり、モスクワは中央アジアの指導者に一つのメッセージを送ると共に、キルギスの米空軍基地の将来により大きな発言権を与える。
1年前、ロシアは訪ロしたバキエフに20億ドルの支援を約束、その際バキエフは米空軍基地の閉鎖計画を発表した。4ヶ月後、ロシアが4億1500万ドルを支払った後、バキエフは米が地代を3倍に上げたのを受け、突然、米基地の存続を認めた。ロシアは当時キルギスの決定を認めたが、騙されたとカンカンになったことが後で明らかになった。テケバエフは、ロシア人は基地でのみならずバキエフの態度に怒っていたと述べた。昨年11月、プーチンはキルギス首相になぜ米軍基地は閉鎖されていないのか、ロシアの援助金がバキエフの家族に盗まれたと難詰したと報道された。2月にはロシアは17億ドルの支払いを最初のお金が誤って使用されたことを理由に延期した。3月にはバキエフの腐敗についての報道が何度も流された。特にバキエフの息子、マクシムに焦点が当てられた。ロシアはバキエフがロシア軍の基地の地代を要求したこと、ロシアから特別価格でガソリンを買い、それを米軍基地に供給し1年当たり8000万ドルの利益を上げていることにも怒っていたと報じられた。
野党がデモの企画を発表した後、3月29日、プーチンはキルギスタンへのガソリン輸出補助金の撤廃令を出した。4月1日、ロシアからキルギスへの燃料輸出が停止され、キルギスでのガソリン価格が上がり、公共料金の値上げで怒っている民衆の不満を掻き立てた。デモの前日、キルギスの当時の首相はサリエフ(現政権暫定蔵相)がプーチンと会い、バキエフ転覆努力にプーチンの支持を得たと告発した。サリエフは否定している。
政権N0.2のテケバエフはロシアの行動はバキエフが政権にとどまりえないとのメッセージを政府高官にあたえ、バキエフ支持を掘り崩す効果があったと述べた。

3、 米国はクリントン長官が4月10日、オトゥンバエバ暫定首相と電話で会談し、在キルギス米大使を帰任させ、かつ国務省高官をキルギスに派遣した。米はマナス空軍基地を維持するためにバキエフに親密な姿勢を取り過ぎたとの批判に対し、米側は野党側とも親しい関係を築いてきたとしている。
4月14日付USAトゥデイ紙は、「4月13日オトゥンバエバが米軍基地の閉鎖はしない」と述べたと報じている。ただ混乱で、マナス基地は機能していないとされている。

4、 今回のキルギスの政変は、ロシアがバルトは別にして、旧ソ連諸国での影響力を強める
結果をもたらすだろう。ロシアはキルギスのロシア軍基地に、既にロシア人保護の目的で空挺部隊を派遣している。
 2003年のグルジアでのバラ革命、2004年のウクライナでのオレンジ革命、2005年のキルギスでのチューリップ革命はロシアの旧ソ連諸国での影響力の減退を示したが、グルジアでは南オセチアとアブハジアの「独立」、ウクライナではヤヌコビッチ大統領の誕生でのオレンジ革命の終焉、キルギスではチューリップ革命の終焉が起こったことになる。
 中央アジア諸国の指導者もロシアの意向に逆らうことの危険を今後考えることになるだろう。
 そういう意味があるので、今回のキルギス政変は一つの転換点になる可能性がある。
ロシアには、各国の主権の尊重を求めていく必要があるのではないかと思われるが、そういう言葉が現実政治の中でどれくらいの重みをもつか、疑問である。
(文責:茂田 宏)

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なるほどグルジア・ウクライナと比べてみるとよく分かりますね。傑作

2010/4/15(木) 午後 8:33 迷えるオッサン 返信する

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