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米・パキスタン関係悪化の可能性

1、9月30日、NATO軍のヘリがパキスタン領内を越境攻撃したが、NATOのヘリが武装勢力と考えたのはパキスタンの国境警備隊であり、隊員2名が死亡、数名が負傷した。
パキスタン軍はこれに激昂し、カイバル峠のアフガンへの国境検問所(トルカム)を閉鎖した。在アフガン米・NATO軍への補給の多くはこの国境検問所を通過していたが、この閉鎖により、米軍補給物資を積んだトラック約200台が足止めされた。
他方、もう一つの国境検問所、バルチスタンのクエッタ近くの国境検問所は閉鎖されなかったが、混雑し、渋滞が発生した。タリバンと自称する武装勢力がそこで燃料を積載したトラックを3回も襲い、何十台ものタンク・ローリーが炎上させられ、死者も出た。
米側は駐パキスタン大使、マレン統合参謀会議議長、在アフガン・ぺトレイアス米軍司令官が発端となった事件について謝罪や遺憾の意の表明を行った。
その結果、10月9日、パキスタン外務省はトルカムにおけるパキスタン・アフガン国境を通じるNATO・ISAF供給を再開すると決定したとの声明を発表した。

2、この検問所閉鎖事件はこれで一応収拾されたが、この事件の背後にはより大きい問題がある。
第1:米軍はパキスタン領内での過激派攻撃を強化している。これまで米国は主としてCIAが運用する無人偵察機を使ってパキスタン領内の武装勢力を攻撃してきた。そういう攻撃も強化しているが、最近では航空機やヘリを使った攻撃を行っている。10月9日付の米ナショナル・ジャーナル紙によると、先月にはCIAの無人機による攻撃は21回で、通常の2倍になっているほか、ここ2週間で米軍機によるパキスタン領内の攻撃は4回で、100名の武装勢力メンバーが殺害された、としている。
パキスタン側は無人偵察機による攻撃は黙認していたが、航空機やヘリによる攻撃は主権の侵害であるとしている。
第2:米側がこういう攻撃を行っている背景には、パキスタンの武装勢力や過激派に対する対策が不十分であるとの不満がある。
10月6日付ウオール・ストリート・ジャーナル紙は「米、武装勢力に対するパキスタンの努力を酷評」という記事を掲載している。そのなかで、「新しいホワイト・ハウスの評価は武装勢力に対するパキスタンの作戦への批判を強めて、パキスタン政府・軍はアルカイダやテロリストに対し行動する意思が欠けていると言明している。ワジリスタンで過激派と十分に戦っていないとしている。洪水への対応でザルダリ大統領も批判したこの報告書の攻撃的な文言は、パキスタンとの関係を更に緊張させ、数十億ドルのパキスタン援助についての議会の支持を掘り崩すだろう。」としている。
この記事は先週、国家安全保障会議が議会に出した報告書を解説したものである。
パキスタン軍は出来るだけの事はしているが、洪水対応などもあり、米の要請に応じる余裕
がないとして、米の批判には反発してきたし、この報告書にも反発するだろう。
第3:米側は、パキスタンの情報機関(ISI)が今なおタリバンとの関係を保持しているとの疑惑を持っている。10月7日付ロイター・コムは、ペンタゴン報道官が「パキスタンの諜報機関の一部がタリバンやその他の反乱グループと不適切な関係を持っている可能性がある」と発言したと報じている。

3、アフガニスタンでの米戦略が成功するためには、米・パキスタン間に協力関係があることがきわめて重要である。しかしその両国の関係がかなり悪くなってきている。
パキスタン領内への攻撃は、米・パキスタン共同作戦の形をとるなど、工夫をしないと、米とパキスタンの関係は今回の事件に起因する対立以上の対立に陥りかねない。
米はワジリスタンでちゃんとやっていないとパキスタン軍を批判し、ザルダリ大統領を批判し、また情報機関(ISI)を批判している。
もし議会がそういう批判を根拠にパキスタン援助を削減するようなことがあると、米とパキスタン関係は悪化への悪循環になる可能性がある。

4、パキスタンは核兵器を保有しているが、その政府は弱く、その治安は悪く、下手をすると破綻国家になりかねないし、イスラム過激派に乗っ取られかねない。アフガンよりパキスタンが重要であり、アフガンのためにパキスタンを不安定化するのは間違いであるように思われる。
〔文責:茂田 宏〕

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