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アフガン情勢は改善しているのか
1、 12月16日、オバマ大統領は現在のアフガン・パキスタン戦略を継続する継続することを発表し、「我々は目標を達成する軌道上にある」と述べた。その前に、12月3日、オバマ大統領はアフガン訪問の際バグラム基地で、「今日、我々はタリバン支配の下にある地域が減っていることを誇りに思う」と述べた。両方とも、現戦略が成果を挙げているとの認識に基づく。
2、 12月27日付ウオール・ストリート・ジャーナル紙は「国連、アフガン治安情勢を地図で示す」との記事を掲載している。その概要、次の通り。
国連作成地図はオバマ政権の楽観的な評価と違い、情勢の悪化を示している。本紙は、国連作成による二つの機密の地図(2010年3月と10月作成)を見る機会を得たが、これは今年、アフガンの安全状況がかなり悪くなったことを示している。この地図は国連職員が旅行やプロジェクト実施の危険度を計るために使われているものであるが、各地域を非常に危険、危険、危険度中程度、低危険度に色分けしている。
10月の地図では、南部アフガンのすべての地域は3月の地図同様、赤、すなわち非常に危険とされている。緑の北部、中部、西部の低危険度地域は相当減っている。バドギス、バルフなど16の地域の危険度は引き上げられており、危険度が減少したのは2地域である。
アフガンの国連広報官は機密地図にはコメントできないとしつつ、「2010年にアフガンの多くの地域でより不安定になった。国連機関やその他の組織にとり、人道支援の配達はより難しくなっている」と述べた。
非政府組織の多くも状況は悪化しているとしている。アフガンNGO安全事務局局長は、「国全体として状況は、反乱者の地理的広がりと攻撃頻度(2010年は前年比66%増)でここ1年で劇的に悪化した。国の多くの部分が非武装の文民にとり安全ではなくなり、より多くの地域が立ち入れないものとなった」と述べた。
3、 12月28日付マックラッチー・ニュース紙は、「アフガンでの援助グループはタリバンが後退しているとの米の主張を疑問視」との見出しの記事を掲載している。
この記事は、援助機関関係者が米の評価に疑問を呈していることを報じると共に、国連がアフガンでの文民の死亡者数が2010年には対前年比20%増であるとしていること、現地米軍広報担当者がタリバンは弱体化されつつも活動範囲を広げることがありうるので、米の主張も援助関係者の主張も正しい可能性があると述べたことを指摘している。
4、 アフガン情勢の評価に関して、米の情報当局が悲観的な評価をしているのに対して軍当局がより楽観的な評価をしていることを、12月17日付のこのブログの記事で指摘した。ベトナム戦争当時も情報当局が悲観的な見通しを述べ、軍当局が楽観的な見通しを述べ、結局前者が正しいことが後に判明したことがあった。軍は自ら戦っている戦争の戦果を強調し、戦争がうまく行っていないと認めることを嫌う。日本の大本営発表が極端な例であるが、すべての軍に共通する傾向である。アフガン情勢の評価にあたっては、そのことを考慮するべきであろう。戦況については、軍の評価が政策の基礎になることが多いが、援助関係者や国連、情報機関のほうが客観的な評価をしている可能性が強い。
5、なお最近、トルコのエルドアン首相、アフガンのカルザイ大統領、パキスタンのザルダリ大統領が会談したが、その席上、エルドアン首相の提案と思われるが、タリバンに対してトルコに代表部を設置させる構想が打ち出されたようである。カルザイ、ザルダリもそれに賛意を表明したとされている。タリバンを正統な政治運動と認め、交渉しようとする動きであろう。
米がタリバンとの交渉につけている条件(アルカイダとの関係断絶、アフガン憲法受諾、暴力放棄)をどう扱うのかの問題があるほか、タリバンが指導部のもとで一体性をもっている組織か否か、他の武装組織との関係をどうするのかなどの問題がある。この構想がどうなるか、未だなんともいえないが、アフガン問題の交渉による解決に向けた動きがこういう形でも出てきている。
(文責:茂田 宏)
(このブログは明日より1月4日まで休みます。皆さん、良いお年を。)
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