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アルカイダのイデオロギー面での衰退(雑感)

1、 9月11日、米国では9・11テロ事件10周年を記念する行事が行われた。
 この事件を起こしたオサマ・ビンラーデンを指導者とするアルカイダは今なおパキスタン・アフガニスタン国境地帯に存在し、活動している。
本年5月、オサマはパキスタン潜伏中、米軍特殊部隊により殺害されたが、アルカイダはザワヒリの指導のもと、活動し続けている。
 更にアルカイダのイデオロギーに触発された組織や個人がテロを行う事例も増えてきた。
 組織としては、イエーメンを本拠とする「アラビヤ半島におけるアルカイダ」(AQAP)、「イラクにおけるアルカイダ」(AQI)、「イスラム・マグレブの土地におけるアルカイダ」(AQIM)が生まれてきた。
 アルカイダと密接な関係を持つ組織としては、ソマリヤにおけるシャバーブ、アフガンにおけるタリバン、パキスタンにおけるラシュカール・タイバ(LT)もいる。
個人としては、アルカイダに共感し、テロを行う人もいる。
 従ってアルカイダとその連携者は今なお大きな脅威である。

2、 しかしアルカイダのアラブ諸国での訴求力は最近急速に落ちてきていると考えられる。
オサマとザワヒリの考え方は、主として次のような要素よりなっている。
(1) イスラム共同体がユダヤ・十字軍の侵略を受けている。それへの反撃は防衛ジハードであり、イスラム教徒は個人的義務としてそれを実施しなければならない。これがアッラーの求めることである。
(2) アラブ諸国の諸政権はイスラムの教えに反しているが、これを転覆させるためには、武力闘争が必要である。ただこれらの政権を支えているのは、ユダヤ・十字軍連合体であり、この連合体を攻撃し、この支えを出来なくすれば、これらの政権は倒れる。最も重要なのは対米攻撃を中心とする国際的ジハードである。
(3) イスラム共同体は精神的には強いが、物的・技術的には弱体であり、戦術としては、ゲリラ戦によらざるを得ない。その戦いにおいて、税金を納めるなどで、ユダヤ・十字軍を支援している米国市民などを攻撃目標とすることは構わない。
 この考え方はイスラエルのパレスチナ攻撃、米によるアフガン戦争やイラク戦争、エジプト、チュニジア、サウジなどの政権と米との緊密な関係などの現実に照らして、アラブ人にそれなりの訴求力を持ってきた。
 このアルカイダのイデオロギーに「アラブの春」は打撃を与えたと思われる。
 第1に、総じて平和的なデモにより、エジプトのムバラク政権は倒れ、チュニジアの政権も倒れた。そのなかで、米は事態の進展に伴い、反政府派を支持し、ムバラクやベンアリを見捨てることになった。リビヤにおいては、NATOは武力を行使して、反政府派を支援した。
 オサマが生きていれば、この事態をどう説明したのか、わからないが、説明に窮したのではないかと思われる。
 第2に、米・NATO軍はイラクからも、アフガンからも、引き上げようとしている。アルカイダはそれが自らのジハードの成果と誇りうるかというと、かなり疑問である。もし仮に誇ったとした場合、防衛ジハードはその役割を果たしたことになり、用済みになる。
 パレスチナ和平問題は残るが、これは古くからある問題であり、アルカイダが特にオリジナリティを持って語れることではない。
 その結果、オサマの説いたイデオロギーは今ではその意味を失ってきている。

3、 オサマが死んでも、そのイデオロギーが生き残ると厄介である。しかしあまり心配することもない。今後、暫くテロは起ころうし、警戒は必要であるが、イデオロギーの魅力がなくなった運動は徐々に弱まっていくのが通例である。
 米をはじめとする西洋とアルカイダの戦いは「文明の衝突」の様相をも帯びたものであり、長く続くおそれがあった。しかしアルカイダのイデオロギーの訴求力は「アラブの春」で弱まり、歴史の上では、アルカイダ運動は一つのエピソードのような位置しか占めないのではないかと思われる。
(文責:茂田 宏)


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