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アウラキ殺害と無人機による攻撃の問題点

1、 9月30日、オバマ大統領は統合参謀議長交代式で要旨次の通り述べた。
 アウラキ(注:アラビヤ半島のアルカイダの指導者)死亡はアルカイダとその連携組織を敗北させる努力における今一つの意義深い一里塚である。この成功はインテリジェンス・コミュニティ、イエーメンとその治安部隊の努力による。
アラビヤ半島のアルカイダ(AQAP)は危険なテロ組織である。我々は警戒を緩めない。アルカイダとその連携組織には世界中どこにも安全な隠れ場所はない。

2、 AQAPは現在最も危険なテロ組織といってよい。アウラキはAQAPの対外作戦部門の責任者であるが、いくつかの作戦に責任を有する。
 2009年のデトロイト行き航空機爆破未遂事件(ウマール・ファルーク・アブドウルムタラブ事件:下着の中に爆薬を隠していた)、2010年の米行き貨物便爆破未遂事件(プリンターのカートリッジに爆薬を仕込んでいた)がある。
アウラキの教唆で行われた事件としては、2010年のタイムズ・スクエア爆弾事件(ファイサル・シャーザッド事件;犯人がアウラキにinspireされたと供述)、フォート・フッド基地乱射事件(ニダール・ハッサン事件;アウラキとE−メールでやり取りをしていた )がある。
アウラキはニューメキシコ生まれの米国人であり、英語での説教がうまく、米英に住むイスラム教徒にアルカイダのイデオロギーを宣伝するのに大きな役割を果たしていた。
アウラキと共に殺害されたと見られるパキスタン系米人サミール・カーンは「Inspire」というアルカイダ系オンライン雑誌の編集長である。アウラキはプロパガンダに長けていたと言える。AQAPの爆弾製造専門家、ハッサン・アル・アシリも死亡したとの報道もあるが、確認されていない。
オバマ大統領が言うように、無人攻撃機でアウラキが殺害されたことがAQAPに大きな打撃を与えたのには間違いがない。テロ対策が成功した一例である。オサマ・ビンラーデンの殺害に次ぐ意義を有する。

3、 ただ米国内では、米国人を裁判で死刑判決が下ったわけでもないのに、テロ容疑者として殺害標的リストに入れて、無人攻撃機で殺害するのは憲法違反ではないかとの議論が昔からある。
 オバマ政権は憲法違反ではないとの見解であるが、これは今後、多くの人により問題にされるだろう。欠席・秘密裁判でもよいが、それを通じて、殺害標的リストを承認すると言うような手続きが必要ではないかと思われる。
 オバマ政権はまたブッシュ政権以上にテロ対策としてこの無人機による攻撃に頼っている。今回のケースはイエーメンとの共同作戦であり、イエーメン側の同意があったものと思われるが、パキスタン領内での無人航空機によるテロリスト殺害にパキスタンは明示的な同意を与えていない。ソマリヤでの無人航空機による同種の活動にソマリヤの同意を得たとも聞かない。
 これは国際法上、主権侵害にならないのかという問題がある。米攻撃を狙っている人に対する自衛行動というのが正当化のための議論であろうが、自衛権の解釈として妥当なのか、安保理への通告はないが、それをどう考えるのか、など国際法上、もっと無人機による攻撃が許容される基準を明確にしないといけない。ある国が自己判断で他国の領域内で無人機による攻撃をなしうるというのでは国際秩序が守られないことになる。
 米国憲法の問題は米国内問題であるが、この国際法上の問題は破綻国家の問題をどう扱うかを含め、国際社会が今後取り組む必要がある。
(文責:茂田 宏)


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