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集団的自衛権と同盟政策について

1、 日本の外交安保政策において集団的自衛権の問題は論争の的になってきた。内閣法制局が、国際法上日本は集団的自衛権を持つが、日本国の憲法上それを行使できないと言う憲法解釈を行ってきたからである。
 内閣法制局は集団的自衛権を、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力を持って阻止する権利」であると定義している。しかしこの定義は、集団的自衛権の定義としては、不十分である。この定義は集団的「自衛権」を他国を守る権利、すなわち「他衛権」として定義している。集団的自衛権は自衛権であって、いくつかの国が共同して防衛する権利である。集団的自衛権の共同防衛の権利である側面を、定義に取り込むことに失敗している。
集団的自衛権は、1945年のサンフランシスコ会議で、国連憲章の原案であるダンバートン・オークス提案には含まれていなかった。米州諸国がこの会議の前にチャペルテペック規約に署名し、大戦後に相互援助条約を締結することを約束していた。しかし、地域的取り決めや地域機関の強制的行動には、憲章53条で安保理の許可(これには常任理事国の拒否権が適用される)が必要と言う規定があり、その許可なしには相互援助条約を結んでも、その当事国は強制的行動をとれないことになる。それで集団的自衛権を国連憲章に盛り込み、安保理の許可なしに強制行動をとれるようにしたのが、この集団的自衛権観念が採用された背景である。共同して防衛すること、他国への攻撃を自国への攻撃と見なすことへの根拠が与えられたわけである。その経緯を内閣法制局の定義は十分に反映していないと言わざるを得ない。
国会答弁でなんどもこの定義を繰り返してきたので、その修正が難しくなっている。
しかし、集団的自衛権は保有するが行使できないという解釈には無理があり、憲法が自衛権を認めているのであれば、個別的なものであれ、集団的なものであれ、自衛権は認められているとの解釈が最も妥当な解釈である。1928年の不戦条約が憲法9条の規定ぶりの元になっているが、憲法9条をいくら読んでも、自衛権を個別と集団に分けて論じる必要は何ら出てこない。
この奇妙な解釈は出来るだけ早く改めるべきである。安倍総理時代の、4つのケースでの集団的自衛権の行使の是非を検討するというようなアプローチではなく、根本的に、憲法は集団的自衛権の行使を許容しているとすべきである。

2、 集団的自衛権は強者のための権利であるような誤解があるが、そうではない。弱者のための権利である。弱者が強国に守ってもらう、または弱者が資源をプールして共同防衛しようという権利である。今の日本のような国には必要な権利である。

3、 集団的自衛権は同盟の法的根拠である。全米相互援助条約、NATO条約、1955年のワルシャワ条約など、すべて集団的自衛権にもとづく。日米安保条約も前文で、日米が個別的、集団的自衛の固有の権利を有することを確認している。
安全保障政策において、同盟政策、合従連衡は重要な役割を果たす。
しかし、日本が集団的自衛権を行使できないということであれば、どこの国とも同盟を締結することはできない。何故ならば、同盟は相互防衛を約束するのが基本であり、一方的に日本だけは守ってもらえるが、日本は同盟の相手国を守らないと言うような同盟は考え難く、そういうことをしてくれる国はないからである。米韓条約も相互防衛を規定している。
日米同盟は特殊な歴史的経緯で成立した。米が日本を守る義務はあるが、日本は米を守る義務がないという片務的なものである。世界に類を見ないものである。それに甘えて、日本は集団的自衛権の行使は認めないというようなことを言っている。
中国の台頭に対処するために、豪州、韓国、インド、ASEAN諸国との協力を云々する人がいるが、集団的自衛権の行使はしないと言う政策を変えない限り、真面目な話にはならない。
1955−56年の日ソ交渉の際に、ソ連は、「日本国は日本との戦争に参加したいずれかの国に対して向けられたいかなる連合または軍事同盟にも参加しないことを約束する」との条文を、平和条約に盛り込むことを提案した。日本の同盟締結権能を制約しようとした。日本側は主権制限であるとこれを拒否した。
集団的自衛権を行使出来ないとの主張は、このソ連の提案を受け入れたと同じ効果を持つ。ソ連の代弁者ではないかと思われるような行動をした社会党が、集団的自衛権不行使を力説したが、これは日本の外交から同盟締結の可能性を奪うことが目的であったかのように思える。ソ連は日本国内の議論を、ほくそ笑んで見守っていたと思われる。

4、 集団的自衛権が行使できないということは日米同盟を揺るがせかねない。たとえば自衛艦と米艦が並走しているときに、敵から米艦が攻撃された場合、自衛艦側が集団的自衛権を行使できないという理由で、米艦を守るために何らの行動をとらず米艦を見殺しにし、多くの水兵が死亡したとする。米は世論の国であり、こういうことが起これば米世論は激昂し、日本を強く非難し、こんな同盟国は守るに値しないと結論するだろう。その時には、日本の命綱である日米同盟は崩壊することになるだろう。

5、 安倍総理、麻生総理はこの集団的自衛権を何とかしたいと考えたが、政治状況もあって、何も出来なかった。福田、鳩山、菅総理には問題意識すらなかったように思える。
これは重大問題であり、皆でよく考える必要があろう。
(文責:茂田 宏)

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