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インテリジェンス強化問題

1、 私はモスクワで外交官として働き始めたが、KGBが大使館を盗聴する、館員を情報提供者にしようと試みるなどの中で、インテリジェンス機関はけしからんことをするという気持ちを持った。
しかしその後、色々な経験を経て、外交は的確な情報、それも独自な情報、それに基づく情勢判断を踏まえて行う必要があり、独自情報なしに独自外交もないと考えるに至り、かつ国家安全保障のためには、他の大国と同様、対外インテリジェンス機関を日本も保有すべきであると考えるに至った。
戦後、連合国は日本を弱体化することがよいとの観点から、諸政策を展開したが、その一つが、日本からインテリジェンス機能を奪うということであった。結果として、戦後の日本には国家機能の重要な機能である対外インテリジェンス機能が欠落してきた。
もちろん、外務省、防衛省、警察庁、法務省、内閣調査室などが、その業務の必要上インテリジェンス機能をある程度果たしているが、不十分である。

2、 インテリジェンスをめぐっては、多くの課題があるが、重要なのは次の通り。
第1:対外インテリジェンス機能の欠落を是正するために、対外情報庁を作ること。「ウサギは長い耳を持つ」ように、今の日本には、情勢への敏感さが要る。
第2:この対外情報庁は政策当局からは独立し、客観的な情報や情勢判断を政治指導部に提供する仕組みとすること。
政策機能と情報機能は分離しておかないと、時の政府の政策的嗜好を支持する情報が優先される危険がある。情報は政策立案・遂行に誤りなきを期するためのものであるが、「政治化された情報」は排除する必要がある。
戦前の日本は今よりはましであったが、それでも情報軽視の体質があり、それゆえに失敗もした。
「必勝の信念」が強調され、客観的に戦争に負けているとの判断を言うことなど、出来ない雰囲気であり、冷静な情勢判断に基づく政策展開が困難であった。
真珠湾攻撃を行ったのは1941年12月8日であったが、そのたった1週間後にルーズベルト大統領はスターリンに、モスクワ攻防戦でのソ連の勝利に連合国を代表して祝電を送っている。欧州戦線でのドイツの勝利を前提とした日本の戦略は、欧州情勢を緻密に見ておれば、成り立つのかどうかを疑ってみる余地があった。ドイツの春季攻勢に期待するという当時の判断は、希望的観測であったことが事後的に明らかである。
松岡外相が日ソ中立条約を結んだ時に、その延長として4カ国協商(日独伊ソ)を構想していたが、その2カ月後独ソ戦が始まった。ドイツの出方の見通しを誤った。
そういう情勢判断の誤りは、戦前の日本の失敗の多くに見られる。
歴史をみると、国家も国民も集団ヒステリーに陥ることがある。その解毒剤として、冷徹な情勢判断を行う機関を、政策当局とは別に保有しておくことが重要である。
ベトナム戦争の際に、米国では、ベトコンの勢力の評価で情報機関と軍は対立した。軍が戦果を強調したのに対し、情報機関はそうでもないとした。現在のアフガン戦争についても、軍と情報機関との間でタリバンの勢力の評価について同じような対立がある。軍は自らの戦果を強調しがちである。最後は政治指導部が決めることではあるが、こういう議論があることが国を誤らせないことにつながる。
なお平時においても情報が重要な局面は多々ある。
第3:対外情報機能と国内情報機能は峻別されるべきこと。
各国での情報機関のあり方は色々な試行錯誤を経て出来てきたものであるが、明確なパターンがある。
旧ソ連のKGB、朴大統領時代の韓国のKCIA、中国の国家安全部、アラブ諸国のジェネラル・インテリジェンスはすべて、対外情報と国内情報を一緒に扱っている。公安警察的機能を持っている。
これに対し、民主主義国では、対外情報と国内情報は峻別されている。
米国ではCIAが対外情報を、FBIが国内情報を、英国ではMI6が対外情報を、他の機関が国内情報を、イスラエルではモサッドが対外情報を、シンベトが国内情報を受け持っている。ソ連崩壊後、最初になされた改革の一つは、KGBを対外情報機能と国内情報機能に分割することであった。
対外情報の手法を国内で使うことは人権の侵害につながる怖れがあり、人権を尊重する立場からこういう峻別がなされている。日本も当然そうすべきであろう。
国内情報については、法執行機関が法に基づき行うべきである。国家安全保障のための対外情報はその目的を踏まえ、別に組織されるべきである。手法も独自のものであるべきである。
現在の内閣調査室は国内情報と対外情報を一緒に扱うと言う民主主義国にふさわしくない形になっている。是正されるべきであろう。

3、 インテリジェンスの問題は幅の広い問題である。機密保護なしにインテリジェンスは成り立たないから、機密保護法制も強化する必要がある。これにも漏洩を防ぐことのほかに、いわゆる日本の機密の探知罪をどうするのか、機密の定義をどうするのか、罰則はどうするのかなど、諸課題がある。
インテリジェンスの監視の問題もある。国会が民主主義的な監視をするのが最善であるが、国会議員は院内での発言について責任を問われないと言う憲法の規定があり、国会議員が国会で機密の暴露をした場合、処罰が出来ないという問題もある。
徐々に体制を整えていくしかないだろう。

4、インテリジェンスは秘密の手段で相手の秘密を探知する活動を行い、情報を収集すること、それを公開情報などと照らし合わせつつ分析し、その時点で最良の情勢判断・見通しを提供すること、場合によっては、非公然活動を行うこと(私は、取りあえず日本はこれには手を染めないようにしたらよいと考えている)などである。
スパイ活動のようなものもインテリジェンスの重要な一部であるが、インテリジェンス活動はそういうものに限られるわけではない。情報の収集に加え、分析することも重要である。要するに的確な情勢にもとづき、対外政策を展開すると言うことである。
インテリジェンス機能の強化の問題を各省庁の縄張り争いの問題で停滞させず、真剣に検討すべき時期が来ている。ままごとのようなことをするのではなく、本格的な対外情報機関を作り、試行錯誤をしながら進んでいくことが、日本の将来にとり重要である。インテリジェンス機能をしっかりさせるためには相当な時間がかかり、促成栽培はできない。
(文責:茂田 宏)

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リクエストにお答えいただきありがとうございます。 削除

2011/12/31(土) 午前 0:38 [ ttt ] 返信する

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