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米・トルコ関係の緊張(アルメニア人とその虐殺など)(その2)
1、先般、米下院でのアルメニア・ジェノサイド決議を紹介した。
2、トルコのエルドアン首相は10月19日付けのウオール・ストリート・ジャーナル紙に「議会とアメリカ」と題する論説を寄稿している。
エルドアン首相の論旨は次のとおり。
議会が1915年の出来事についての歴史を立法府の命令で書き直し、トルコ人を中傷しようとするのは新しいことではない。
しかし、真実はジェノサイドについてのアルメニア側の告発は歴史的にも法的にも確証されていないということである。もしアルメニア・ロビーが言うように、「ジェノサイド、最も深刻な犯罪」の主張が精査に耐えられるものであり、事実が論争の余地のないものならば、なぜ、この問題が「ジェノサイドの防止と処罰に関する国連条約」に決められているように、国際的な司法の場に持ち出されていないのか。なぜアルメニア共和国が、トルコを中傷する努力を公に支持しつつ、その問題を調査するためにトルコ側が提案している「共同歴史委員会」の設立を、頑固に拒否し続けているのか。
トルコは第1次大戦中のアルメニア人の悲劇について、両面性のある態度をとったことはない。相互殺掠のなかで、多くのトルコ人も命を落とした。トルコ人は長年、アルメニア人のテロで多くの生命を失ってきた。しかしトルコは常にこの苦痛に満ちた問題と取り組み、アルメニアとの関係の発展の道を探してきた。対話と和解への我々の真摯な提案はまだ有効である。アルメニアが次の一歩をとるべきである。
米とトルコは数十年間、友人、パートナー、同盟国であった。我々はこのパートナーシップに価値をおいているが、今の状況はその重要性を弁護するのをより困難にしている。我々はイラク北部よりのPKKのテロ攻撃にさらされているが、世論は米との協力の具体的な成果を求めている。
諸国間の関係は蜘蛛の巣のようなものである。多くの圧力に耐えられるが、決定的な時に強い圧力が加えられると、崩壊する。我々は、米・トルコ間の相互利益の網の目を守るために、できることをすべてしなければならない。
我々の関係は決定的な時期にある。私は常識が勝つことを希望し、下院議員たちが米・トルコ関係を救うために、ステートマンシップとビジョンを示すように呼びかける。
3、アルメニア人虐殺事件について、日本ではあまり知られていない。
1970年代初頭、福永健司団長のソ連訪問国会議員団の随行員としてアルメニアの首都エレバンを訪問した際、アルメニア人虐殺を悼む記念碑に花輪をささげた。この時に、私は初めてこの問題を知った。
この虐殺がジェノサイドであったか否かについては、私は大量虐殺であったが、アルメニア人を人種として絶滅しようとしたものではないと考えている。トルコ東部では、民族浄化が行われ虐殺があったが、イスタンブールなど西部の都市では、普通のアルメニア人は殺害対象になっていないからである。
オスマン・トルコは数世紀にわたり広大な帝国を作ったが、第1次大戦で崩壊した。帝国が崩壊する際に、それに乗じて勢力の拡大や独立を試みる大国、民族集団が出てくる。アラビアのローレンスは、オスマン・トルコの南部地域でアラブの反乱をイギリスのために唆した。北では帝政ロシアがアルメニア人に反乱を働きかけ、アルメニア人はアルメニア人で、大アルメニアの建設を目指し、反乱を起こした。オスマン・トルコは内乱ということで、これを過酷に弾圧し、シリアやレバノンに強制移住させた。これが死の行軍につながった。
歴史というのは、科学と言うより物語である。トルコにとっても、アルメニアにとっても自己のアイデンティティにかかわる物語で、これについての争いは今後も続くだろう。帝国は崩壊後、歴史問題で責められる場合が多い。
4、アルメニア人というのはユダヤ人に似ている。
世界のアルメニア系人口は1000万、そのうちアルメニア共和国にいるのが300万、ロシアにいるのが約200万、米に約150万いる。中東の各地、シリア、レバノン、イスラエルなどにもいる。エルサレムにはそれなりの規模のアルメニア人地区がある。ディアスポラ人口が多い。
商才に長けた民族である。アルメニア共和国の輸出品目の重要なものはイスラエル同様、加工ダイアモンドである。商才以外に、数学、音楽、文学などでも人口比を超える業績を上げている。アルメニア人の名前はヤンとかアンで終わるのが多い。カラヤン、ハチャトリアン、ミコヤン、エリア・カザンなどはアルメニア人である。額の広い人が多い。
アルメニアは、301年、国として最初にキリスト教を国教として採用した国である。キリスト教徒には、そういう点でアルメニアを大切に思う人がいる。オスマン・トルコのアルメニア人弾圧は、イスラムによる世界最古のキリスト教徒の迫害ということで、第1次大戦中、欧州諸国国民の感情を刺激した面がある。
(文責:茂田宏)
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アルメニアに対する米欧社会の不可解な行動は、それだけで学問的に知らなければならないんですね。ありがとうございます。
2012/1/22(日) 午後 10:27 [ zxt**iro ]