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韓国での核議論

韓国での核議論

1、 7月27日、ラルフ・コサがパシフィック・フォーラムのサイトに「韓国への米核兵器?」という記事を掲載、そこで韓国内での核兵器論議を紹介している。その概要、次の通り。
 有力な政治家を含む多くの韓国人が韓国への米戦術核兵器の再導入を主張し、更に多くの人が韓国は北の核兵器能力に対抗するために独自の核兵器を持つべきであると信じている。
 最近、韓国の5都市で大学、シンクタンク、メディア、一般公衆800名に講演をした。その際、非公式な世論調査をしたが、軍将校を主体とする講演会は例外であったが、他の会場では同じような結果が出た。
半数以上が米の核兵器を韓国に再導入するか、少なくとも再導入すると脅すべしと考えており、3分の2以上の人が韓国は独自の核兵器を必要とすると信じていた。
米韓同盟への信頼度は高いが、北の挑発を阻止し得ないことへの不満、中国の北支持への不満が背景にある。中国と北に注意を喚起するために必要であるとしている。
この考え方の一つの変型は特定の期日までに北が非核化に真摯に対応しない場合、その期日には戦術核を再導入するとし、北と中国の対応を促すという案である。
戦術核再導入、再導入の脅し、独自核の3つの選択肢の問題は逆効果になる可能性があることである。(この後、何故そうなのかについてのコサの議論)

2、 ラルフ・コサは米の戦略・国際問題研究所(CSIS)のハワイ支部長である。私は以前ハワイの東西センターのセミナーで3日間一緒であったし、ワシントンでの安全保障に関する会議にも一緒にでたことがある。常識的な人で、かつ正直な人であると考えている。
 彼が韓国の有識者に非公式な調査とは言え、こういう調査をしたこと、それを報告したことを評価したい。
 コサがここに書いている韓国人の考え方は私の韓国人との話し合いに照らしても突飛なものではない。北の核開発を受けて、北東アジアに核による平和を築くしか、ないのではないかとの考え方をする人は韓国には結構多い。

3、 日本においては、核問題はタブー扱いで、戦略的にそれを議論することはきわめて少ないが、韓国ではこういう議論が行われていることを我々は承知しておく必要がある。
なお私は核については広島、長崎の悲劇を繰り返させない、日本に再び核が撃ち込まれるのを防ぐというのが日本の核政策の根本であるべしと考えている。非核3原則はそれに資するか否かの観点から 評価されるべきであると考えている。
(文責:茂田 宏)

シリヤ情勢

シリヤ情勢

1、 シリヤ政府は7月31日から、ハマなどに戦車を派遣し、市民が築いたバリケードを砲撃で破壊するほか、移動する自動車にほぼ無差別に銃撃を加えるなど、極端な弾圧策に出ている。死者の数は150名を越えるといわれるが、はっきりしない。ハマだけで50人を越えるとされている。

2、7月31日、オバマ大統領はシリヤ情勢に関し、次の声明を発表した。
 私はシリヤ政府の自国民に対する暴力と残酷さにぞっとさせられている。ハマからの報道は恐ろしいものであり、シリヤの政権の本当の性格を示している。アサッド大統領は再度シリヤ国民の正統な不満に応える能力も意思も全く持っていないことを示した。彼の拷問、汚職、テロは彼を歴史とその国民の間違った側に置いた。自分自身の行為により,バシャール・アサッドは彼とその政権が過去に属し、街頭でデモを行った勇敢なシリヤ国民がその将来を決めることを確実にしつつある。シリヤは民主主義に移行したときに、よりよい場所になる。
今後、米国はシリヤの政権への圧力を引き続き増加させ、世界の他の国と共にアサッド政府を孤立させるために協力し、シリヤの国民とともにいる。

2、 8月1日、クリントン国務長官もラマダンにもかかわらず、弾圧を続けるアサッド政権を非難し、安保理でシリヤのアサッド政権の弾圧を止めるための安保理決議に反対している国(注:中露が念頭にあると思われる)に再考を促した。
 またEU、トルコ、国連事務総長もシリヤの今回の行動を非難している。
 
3、 8月1日、安保理はこの件について非公開で緊急会合を開いている。

4、 シリヤについては、イスラエルが「良く知っている悪魔の方が未知の悪魔より良い」と言う観点でアサッド体制の崩壊を必ずしも支持しない姿勢を示してきた。しかし今回の戦車などを投入しての弾圧には、国際社会の嫌悪感が強まっており、シリヤ情勢を巡る状況は一つの転還点をむかえたように思われる。
 中露は安保理決議の採択に応じることはないであろうが、米・NATOにも軍事介入の用意はないであろう。しかし自国民に対してこういう攻撃を行う政権には政権を担う資格はなく、アサッド政権は国際的にも国内的にも孤立化していくであろう。
 シリヤの友邦はイランしかない。
欧米が厳しい態度に出るほか、アラブ諸国はシリヤ・イラン関係の緊密さを好んではおらず、アサッドには反感を持っている。アサッドの国内基盤は少数派のアラワイト派である。多数派のスンニ派が政権に復帰することを周辺アラブ諸国やトルコは好むと思われる。
国際的にも国内的にもアサッド政権はこれまで微妙な均衡の上に成り立ってきたが、それが崩れつつあると判断される。
私はシリヤが民主化の道に踏み出すことはレバノン、イラクを含む地域の安定につながるし、「アラブの春」の進展に良い影響を与え、イラン、ヒズボラに打撃を与えると考えている。イスラエルにとっても悪いことではないと考えている。
〔文責:茂田 宏〕

米・アフガン関係

米・アフガン関係

1、 米、NATO諸国などのアフガンでの戦争は終わりつつある。2014年の撤退に向けて物事は動いている。米・NATOのアフガン戦争と異なり、カルザイ政権とタリバンとの戦争は2014年に終わることにはならないだろう。
イラク戦争に関して、戦争の終わり方が重要であることを先に指摘したが、アフガンについても同様である。しかるにこの点について米・アフガン関係はうまくいっていない。

2、 7月29日付ワシントン・ポスト紙は「高官たちは米・アフガン取引について悲観的」との見だしで、概要次の記事を掲載している。
米とアフガンの高官によると、2014年以降の米のアフガンとのパートナー関係のあり方を決める交渉は、双方の要求のギャップをどう埋めるかで上手く行っていない。
何ヶ月も交渉は行われているが、アフガンへの安全保障とその治安部隊への支援と引き換えに長期的な米軍プレゼンスを認める「戦略的パートナー関係」宣言はなかなかできそうにない。
アフガンの国家安全保障補佐官代理は「現状が続けば、否定的な結果が出る。米がアフガンでのプレゼンスに関心があるのなら、アフガン政府、国民に実際面でそれを示すべきである。そして我々が必要なものに応えるべきである」と述べた。
双方は1989年のソ連撤退後に生じたアフガン放棄のようなことを避けたいと考えている。クロッカー米大使は7月27日、記者団に「両国間に強く安定的な長期的な関係」の基礎を作るのが交渉の目的である、不関与の結果を我々は体験した」としつつも、これが簡単でないと述べた。
アフガン側は米軍撤退に伴い、米のアフガン治安部隊への巨額の支援〔2014年に80億ドルになると推計されている〕の継続を求めるほか、米に夜間攻撃とアフガン内での拘禁施設使用を止める期日を書き込みたいと主張している。米はそれは状況によるし、パートナー関係宣言ではそういうことを扱うべきではないとしている。
アフガン側は更にF−16とエイブラハム戦車の供与を求めているが、米は拒否している。米は対テロ対策とアフガン軍訓練のために長期的にアフガン国内の軍事基地へのアクセスを求めている。アフガン側はヘラート、マザル・エ・シャリフ、カンダハル、ジャララバードでの基地を考えられるとしている。
米は又、汚職と戦い、民主的な諸制度を強化する約束も求めている。
アフガン側は将来、引き続き米軍駐留を認めることは国の内外での反対に鑑み、アフガンとしては大きな代償を払っているのであり、米も相応の対応をすべしと述べている。
アフガンの国家安全保障補佐官は今週、議会で米との合意〔声明ではなく契約であるべし〕が出来るかは確実ではないと述べた。米側も合意の見通しに悲観的になっている。

3、 ソ連がアフガン撤退したのは、1989年である。その後、ソ連が樹立した現地のナジブラ政権は1993年まで4年間もった。米・NATO軍撤退後、カルザイ政権が4年を越えずに崩壊することは十分にありうる。
 カルザイはアフガン戦争開始後、10年間、汚職の取り締まり、民主的な選挙の適切な運営、国民に信頼される政府や地方当局の樹立を行う機会をもっていたが、それを十分に行ったとはとても言えない。また米はいまやカルザイに付き合う気を失ってきている。
 カルザイは米の対アフガン政策を取り巻く雰囲気がカルザイ就任の頃とは様変わりしていることを良く認識して、米とのパートナー関係宣言については、柔軟対応をするのが適切と思われる。
ただ宣言が出来たとしても、アフガンの情勢は不安定化していく公算が強いと思われる。
〔文責:茂田 宏〕

サウジ、インドに原油提供と地域諸国の動き

1、 7月26日付のブログで、米金融制裁の余波として、中国とインドがイランに石油代金を支払っていない状況が出ていることを取り上げた。
イランは対インド原油輸出を停止すると警告したが、この状況を受け、このほど、サウジアラビヤが本年8月にインドに3百万バレルの原油を供給すると発表した。
イランとサウジはペルシャ湾での勢力争いをしている。特にバーレーンでのシーア派主体の反政府運動をサウジはイランの扇動によるものとして非難し、サウジ軍を主体とした湾岸協力機構諸国軍を投入し、バーレーン政府の反政府デモの鎮圧を支援している。今回のサウジの発表はインドにイラン以外に原油の供給元があることを示し、石油に頼るイランの経済とインド・イラン関係に打撃を与えることを目指している。サウジとイランの抗争が南西アジアに波及してきている。

2、 サウジはこれまで同じイスラム国であるパキスタンとの関係を重視してきた。サウジアラビヤには、多くのパキスタン人が出稼ぎに来ており、その正確な数は判らないが、百万を下らないとされる。単純労働者も多いが、サウジ軍の兵器の維持をしている技術者もその多くがパキスタン人である。パキスタンの首都イスラマバードには巨大なモスクがあり、私も昔訪問したことがあるが、サウジの資金で建設されたとの説明を聞いた。
サウジ・パキスタン関係の緊密度をよく知る人によると、たとえばサウジが核兵器開発を目指し、パキスタンに核技術の提供を求めた場合、パキスタンがその提供を断ることは考え難いとのことである。
インド・パキスタン関係はカシュミール問題などで厳しい対立関係にある。そのインドに今回サウジが原油の供給を発表したことはイランに対抗するサウジの意思がそれだけ強固であり、サウジにとっての優先順位が高いことを示している。

3、 他方、パキスタンは米・NATO軍のアフガニスタン撤退が確実になる状況の中でアフガン政府が親パキスタンになることに強い関心を有している。アフガンと最も長い国境線を共有しているのがパキスタンであるが、その次に長い国境を共有しているのがイランである。パキスタンはアフガンの安定とそこでの親パキスタン政権を成立を確実にするためにイランの協力を欲している。最近、パキスタンの要人がイランを訪問し、サウジ・イラン関係の仲介を申し出ているが、パキスタンにとり、イラン・サウジ関係の悪化は自国の利益にならないとの考え方があるものと思われる。

4、 イランは地域の大国として、かつシーア派の国として、米軍が撤退しつつあるイラクでの影響力をサドル派支援などを通じて強化するとともに、アフガニスタンにも隣国として影響力を行使しようとしている。

5、 ペルシャ湾地域は我が国にとり原油の輸入先として重要である。米がイラクから撤退し、アフガンからも撤退することを受けて、この地域の諸国が独自の動きをみせている。この地域の分析では、これまで米がどうするかが最大の問題であった。しかし今や米ではなく、南西アジア諸国を含む地域諸国が自己の利益をどう計算するか、どう動くかをよく見てみる必要が出てきていると言える。いわば現地回帰をして、諸問題を判断する必要が出てきている。
(文責:茂田 宏)

イランに対する米の金融制裁の効果

1、 7月25日付ファイナンシャル・タイムズ紙は「中国とイラン、石油のバーターを計画」との見出しで、概要次の通り報じている。
 イランと中国はイランの石油と中国の商品と役務を交換する物々交換システムを使うことで交渉している。米の金融制裁が中国の少なくとも200億ドルの石油輸入代金支払いを阻止しているからである。事情通は、中国はイランに300億ドルの石油代金を支払っていないとしている。
イランの関係者は石油の最大の購入者が現金で払わないことに立腹している。これはイランの外貨不足につながり、イラン中央銀行が先月急激に安くなったリアルを防衛することを困難にしている。昨年、中国の対イラン石油輸入は49%増えた。
イランは先週インドを石油輸出を止めると脅かした。インドも50億ドルの代金をエスクロウ口座からイランに移せないでいる。
インドの対イラン輸出はないに等しいが、中国とイランの貿易額は昨年293億ドルであった。今年も中国とイランはインフラ建設や貿易協力協定を締結し、イランはクロム鉱を中国に輸出するとされている。
イランの元高官は「中国とインドは喜んで自分の銀行にイランのお金をとどめており、代わりにイランにガラクタを売るか、またはハード・カレンシーではない元やルピーを受け取らせようとしている。イランはこういう代替案を受け入れていない」と述べた。
イラン側によると、米の金融制裁でイランの銀行は世界の銀行と取引できなくなり、相当な打撃を受けている由。

2、 イランに対する米の金融制裁については、たとえばベネゼラのチャべスがベネゼラの銀行に便宜供与をさせ、中国の銀行からイランの石油代金を受け取り、イランの銀行に回すことにすれば、制裁を回避できるので、穴だらけであるとされてきた。しかしこの報道を見ると、中国の銀行がそういう迂回を嫌うためなのか、制裁回避はそう簡単ではないようである。
イラン側が元の受け取りを拒否しているということであるが、元の国際化はまだまだである。ユーロや円のようなハード・カレンシーではないと見なされている。
イラン・中国間の貿易は昨年40%も伸びているが、今後、この支払い問題が貿易増大への足かせになるだろう。
〔文責:茂田 宏〕


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