国際情報センター

的確な国際情勢判断をする国民、それが国の進路を誤らない最大の担保です。

全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

日本の武器禁輸政策について

1、 日本は現在原則として武器の輸出をしていない。その経緯は次の通りである。
1967年、佐藤総理は衆議院決算委員会で(1)共産圏、(2)国連決議により武器輸出が禁止されている国、(3)国際紛争の当事国またはそのおそれがある国に武器を売らないといういわゆる武器禁輸3原則を打ち出した。
(1)、(2)はよいが、(3)については、紛争の当事者について、どちらに理があるかの判断はせず、中立をよしとする考え方であり、問題がある。
しかしそれでも、佐藤総理の武器輸出3原則は対象国以外には武器を輸出するということであり、発想としては許容出来るものであった。
しかるに1976年、三木総理は衆議院予算委員会で3原則対象地域以外の地域についても武器の輸出を慎むとの方針を表明し、武器輸出は全面禁止になった。
その後、中曽根総理の頃、日米同盟の観点から米国向け武器技術供与を例外とすることになった。その後、それ以外の例外も作られてきた。

2、 この政策は最近見直されつつある。私は「平和国家として外国に武器を売るべきではない」という政策は理念もない上、偽善的であり、国益を損なっていると考えている。
第1:武器輸出をしないことが理念として正しいのであれば、日本は世界の各国に説いて、武器輸出を止めている日本の例に倣うように勧めるのが筋である。ところが日本はそういうことをしていないし、するべき立場にもない。何故ならば日本は世界の主要な武器輸入国であるからである。
米国から大量の武器を買っている。米国が武器を売ってくれないと日本の防衛は成り立たない。F-22を買いたいと思ったがうまく行かなかった。それでF-35を買うことになるようであるが、米武器の輸入は日本の安全のためにどんどんしている。イージス艦にしてもそうである。そういうことをしながら、日本は武器輸出していません、平和国家です、などというのは偽善的な話である。
他人に勧められず、他人が自分と同じことをしたら困ることは、立派な理念に基づく政策とは言えない。
昨年12月7日、福島社民党党首は武器禁輸政策に関する国会内会合で、「日本製の武器が世界の子供たちを殺すのを望むのか。日本が死の商人になるのは平和国家にそぐわない」と述べた。福島発言は少し極端な形で武器禁輸政策の理念を述べているが、この発言は看過しがたい問題を含んでいる。
(1)世界のほとんどの国は武器を輸出している。これらの国を「死の商人」として断罪したに等しい。福島党首は、中国や北朝鮮、米や仏、英、スエーデン、ロシア、スイスなどに行って、あなたの国は死の商人であると弾劾する用意はあるのか。ないのであれば、こういう発言をすべきではない。マフィアやアルカイダに武器を売ろうというのではない。
(2)日本でも他の国でも、警察は武器を有しているが、それは通常は治安を守るため、ひいては子供たちの命を守るために使われている。各国の軍が保有する武器も、通常防衛のためである。武器の機能はいろいろあることを忘れ、暴論を弄している。
(3)福島党首は護憲主義者である。日本の憲法は、「諸国民の公正と信義」を信じよう、世界の国々はよい国で侵略など悪いことはしないと言う考えに立っている。そういう良い国は子供を殺すこともないだろう。福島党首のこの護憲の立場と、世界の子供たちを殺しかねないからと武器禁輸を主張する立場は、整合性がなく支離滅裂な考え方である。
これは武器禁輸の理念なるものが如何にいい加減なものかを明確にしている。
武器禁輸政策の見直しに際しては、理念は正しいが、実際上の必要があるので修正すると言う発想で、官房長官談話で例外を作るのではなく、社民党の主張のようなものを根本から拒否したうえで、日本の武器輸出問題を考えるべきであると思われる。

3、日本が武器輸出をしていないことが国際的に評価されていると言う人がいる。猪口邦子参議院議員がそう言っていた。私は自分の経験から本当にそうかと疑問を持っている。武器輸出でもうけようと思っている国が、日本が競争相手にならないことを希望して、日本の政策を評価する可能性はあるが、世界の各国は武器輸出をしており、日本の武器禁輸の理念を評価し、それを採用している国などない。40年近く外交官をしていて、日本の武器禁輸を評価する声に接したことは私にはない。
例外はソ連勤務の頃に、日本国憲法は素晴らしいとか、武器を日本が売らないのは素晴らしいと言われたことがある。私はそこまで褒めるのであれば、ソ連も日本を見習ったらどうかと言っていたが、これは日本の防衛力、その基盤を弱くしておきたいという発想から、ソ連側がそういう発言をしていることは明らかであった。
日本に友好的な国で、日本から武器を買いたいと考える国がある。そういう国が武器を売ってもらえないことを評価するようなことがある筈がない。日本自身、米がF-22を売ってくれないことを遺憾に思うのであって、それを評価することなどないことを考えてみれば、すぐ武器を売らないことが評価されているなどという言説が根拠のないことが分かる。
この武器禁輸政策は実際上の不都合ももたらす。
私はイスラエルで大使をしていたが、イスラエルではイラクやシリアからの化学兵器の攻撃の危険が現実にある。国民は皆、家にガスマスクを持っている。日本大使館員もガスマスクを装備しておいた方がよいわけであるが、これを日本から輸入するのは禁輸政策で無理と言うことであった。イスラエル政府に頼んで、館員用のガスマスクを入手していた。
対人地雷がカンボディアでたくさん放置されている。子供たちが手足を吹き飛ばされるという被害にあっている。日本には地雷撤去のいい機械が開発されたが、これも武器であるということで輸出できなかった。後でこれは官房長官談話で例外扱いになり、今はNGOが地雷撤去をカンボディアでしている。現地でも評価されている。こういう良いことをするのを武器禁輸政策は阻害してきた。例外扱いまでにかなりの労力と時間を要した。
 私がテロ担当大使の頃、インドネシアからマラッカ海峡での海賊・テロ対策強化のために中古でもよいからと巡視船の供与を求められた。マラッカ海峡は日本のために重要なシーレーンであり、その安全は日本の国益にも資する。しかし巡視船は武器なので、この要望に応じられなかった。その後、例外扱いになり、今では出せるようになっている。

3、 国際社会で武器禁輸というのはどう取り扱われているか。
ある国に武器を禁輸するというのは制裁として行われる。北朝鮮、イランなどがいま武器禁輸の対象になっている。アパルトヘイトの南アもそうだった。武器禁輸対象にするということはその国を「ならず者国家扱い」にするということである。
天安門事件後、米とEUは中国に武器禁輸をしている。中国はEUにその解除を求めている。ここでの中国側の言い分は、中国として別にEUから武器を買いたいと思っているわけではないし、買わなくともよい、中国として我慢が出来ないのは中国をならず者国家扱いにして、制裁対象にしていることであるというにある。武器禁輸が制裁として扱われていることをこの事例はよく表している。
日本の武器禁輸政策はこういう国際社会の常識からみると、日本は世界のすべての国に対して制裁措置を発動しているような立場にある。みんなにやっているというので、世界の国々は仕方ないかと思っているフシもあるが、こういう政策が国際社会で評価されることはない。貴方のところの軍や警察は信用が置けないとすべての国家に言っているに等しい。

4、逆に武器の供与を行うと言うことは、供与国が供与を受ける国を信用が置ける国として取り扱っていることを意味する。国家にとり一番大切なのは生存、安全保障である。それに協力してくれる国を最もありがたいと思う。日本が米をもっとも有難く思っているのはそれゆえである。従って武器輸出というのは強力な外交の道具になる。武器を供与することによって、供与国と供与を受ける国の関係は大変強いものになる。日本はODA供与で諸外国との関係強化を図ってきたが、武器の供与はODAよりもずっと効果があるし、感謝される。世界の主要国は武器輸出により輸入国との関係を切っても切れない友好関係にしようとしている。米のサウジへの600億ドルの武器供与、米のエジプトやイスラエルへの武器供与、中国のパキスタンへの武器供与、ロシアのインドへの武器供与など、各国はその影響力をもつために武器供与を外交の道具として活用している。
最近、日本の国際的地位は経済の不調もあって、つるべ落としのように落ちている。武器輸出による関係を全く築いていないから、関係は脆弱である。武器輸出を成長戦略の一つとしている韓国よりも国際的地位が低い国になりつつある。
武器の供与がいかに感謝されるかは、歴史を知る日本の多くの人が、いまだにアルゼンチンに感謝の念を有していることに見られる。日露戦争の前、1903年、アルゼンチンはイタリアのゼノアで2隻の軍艦モレノとリバダビヤを建造中であった。ロシアが購入交渉をしていたが、日本が即金で払うと言うことで、アルゼンチンが日本に売却した。これが黄海開戦や日本海海戦で活躍した日進、春日の両艦である。ロシアに購入されていたら、日本の勝利はなかったかもしれない。

5、武器や軍事に転用可能な技術の輸出については、かなり厳格な規制が必要である。誰にでも売ると言うようなことは、日本の平和や国際的な平和の維持に役立たない。全部許可制にする必要があるし、その許可の手続きも厳格にする必要がある。
次のようなことにすればよいのではないか。
第1:日本が締結した条約、日本が加盟国になっている国際取り決めで、武器や技術の輸出を規制するものはこれを遵守する。(国連安保理決議での禁輸、MTCR、NSG、AG、ワッセナーがこれでカバーされる)
第2:同盟の強化を含め、日本の安全と平和と、国際的な安全と平和の強化に資すると政府が判断する武器輸出はこれを行う。政府内の判断は総理大臣が外相、防衛相、経産相の意見を聞いてこれを行う。
第3:武器輸出には厳格な規制を適用し、その許可に際しては、政府部内で慎重な検討を行う。国会の関与のあり方も検討する。(米ではサウジへの武器売却などは議会に通知する必要があり、議会は反対することが出来る。)ただし武器・武器技術を提供するに際して優遇すべき国は明示する。ビジネスとしてそういう国との武器の共同開発・生産は原則許可されるとの安定性を与える。
第4:武器移転国に対しては、供与目的外使用や第3国移転について、日本の拒否権、同意権を確保する。
 世界のすべての国にいい顔はできないことになるが、外交では選択を避けて通ることはできない。皆と仲の良い国はどの国とも仲が良くない国であると言うのが現実であろう。

6、なお武器の共同開発・生産は時代の流れであること、日本は防衛産業の基盤を維持する必要があること、輸出に伴う経済的利益など、ここに言及した以外にも重要な問題があるが、それらの論点への言及はここでは行わなかった。
(文責:茂田 宏)

開く トラックバック(1)

戦争と平和の問題

戦争と平和の問題

1、 日本外交が誤らないためには国民や当局者が国際情勢判断を誤らないことが重要であるが、国際情勢判断と同じように重要なのが、日本が情勢にどう対応するかである。
特に重要なのは戦争と平和の問題、言いかえると、安全保障政策である。
戦後の日本の安全保障への取り組み方には相当大きな問題がある。

2、 古川現国家戦略担当大臣が大蔵省に入った時の思い出として、当時大蔵大臣であった宮沢喜一さんが「戦争だけはしてはいけない」と訓示したと書き、そのことを肝に銘じておきたいと書いていた。
私は宮沢喜一さんのこういう発言は前提が誤っていると考えている。なぜかと言うと、日本が戦争になるかどうかは日本の選択だけにかかる問題ではないからである。そのことを心から納得して、認識することが重要である。
戦争をしないという決心をすれば、戦争にならないのであれば、そう決心すればいい。しかし戦争と平和の問題はそんなに簡単な問題ではない。
1917年のロシア革命後、ボリシェビキ政権は平和の布告を出し、第1次大戦から離脱しようとしたが、ドイツが攻撃をやめず、戦争は継続した。ブレストリトブスク条約でドイツの要求に全面的に屈服し、領土などで大幅な譲歩をしてようやく戦争は終わった。この交渉を行ったのがトロツキーであるが、その際トロツキーは同志たちに、「諸君は戦争に関心がない。しかし戦争が諸君に関心があるのだ」という演説をしている。
日本が戦争を仕掛けない限り戦争にならないというのは誤っている。戦争をしないと決心すれば、平和に過ごせるというのは根拠のない考え方である。平和を願えば、平和になるというのは人類の経験に反する空想的平和主義である。平和への祈りで平和をというのは、雨乞いで雨を降らせようとする古代の祈りのようなものである。
戦争と平和の問題は国家の外交にとり最重要な問題であり、真剣に検討すべきであって、空想や祈りで片づけられるものではない。

3、 本当に平和を望むのであれば、平和とはどういうものかよりもむしろ、戦争とはどういうものか、歴史上、戦争はどうして起こったのかを研究する必要がある。そして戦争にならないためにどうすればよいのかを考える必要がある。そのためには抑止など、軍事戦略の研究も要る。
ツキジデスは戦争の原因として、利益、恐怖、名誉を挙げている。永続した平和の類型として、レイモンド・アーロンは、覇権による平和、均衡による平和、核の破壊力への恐怖による平和を挙げている。そういうことについて思索を深めることが重要である。
戦争を知らない子供たちに戦争体験を語り継ぐなどの努力はしてもよいが、戦争の悲惨さを知ることと戦争がどうして起こるのかを知ることは別のことであり、後者の問題の方がずっと重要である。
安全保障問題に関して、ハト派やタカ派があると言われるが、私の見立てでは、日本にはダチョウ派が多い。ダチョウと言うのは危険が迫ると砂の中に頭を突っ込んで危険を見ないようにして危険をやり過ごそうとする習癖があるが、日本にはそういう人が多い。そういうダチョウがなぜ生き残ったのか。豪州と言う無害な環境にいたからであろうが、今の東アジアは北朝鮮や中国のことを考えただけでそういう無害な環境からは程遠い。

4、なぜこういう空想的平和主義の議論が日本で強いのか。
いくつかの要因があるが、大きく言うと三つである。
第1:日本人の歴史的経験がある。日本は島国であり、歴史上、他国からの侵略をうけたことは元寇しかない。第2次大戦で敗戦、占領を経験したが、これは自分がはじめた戦争の結果であった。それで自分から仕掛けないと、戦争にはならないという考え方をする。ロシア、中国、欧州諸国など大陸諸国は攻め込まれたことが多いが、そういう国民と経験の差がある。しかし技術が進歩した今、海が守りになる時代はずっと前に過ぎている。
第2:第2次大戦での敗戦体験の影響がある。「欲しがりません、勝つまでは」で、頑張った国民はその労苦を敗戦と言う結果で報いられ、もう戦争は嫌だという気持ちになった。戦争は悲惨なものであり、そういう気持ちになることはよく理解できるが、戦争と平和の問題はそういう感情論で処理できない。
第3:第2次大戦後、国際社会は強い対日不信を持ち、軍事的に弱い日本がアジアの平和、世界の平和のために好都合であるという観点から、政治的にも思想的にもそういう日本を作ろうとしてきた。これは米、ソ連、中国、韓国その他のアジア諸国のコンセンサスであった。
そのための努力は戦争罪悪感育成プログラム、GHQによる検閲、東京裁判など広範囲に行われたが、連合国、特に米国はその企てにかなりの程度成功した。
その中で、米国は主権国家が当然持つべき軍隊を持てないような憲法を日本側に押し付けた。このGHQが2週間足らずで起草し、押し付けた憲法は、今なお改正されることなく存続している。
この憲法前文には、「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書いている。しかし日本人を拉致して返さない北朝鮮、尖閣問題で藤田建設の中国滞在者を人質にとるような行為をする中国、日本の領土を占領し続けているロシアのことを考えただけでも、「諸国民に公正と信義」があるとはとても思えない。この前文はないものをあると言っている虚構である。そもそも国家は国益を基準に動いているのであって、「公正と信義」で基本的には動いてはいない。これは常識と言ってよいだろう。
しかしこの常識外れの前文が第1、第2の要因と共鳴し合い、日本では少なくとも今日まで受け入れられてきた。
自由主義者であった石橋湛山は、世界は憲法のいう理想からまだほど遠いので、憲法の理想はそのままにしておくが、一時執行停止にすべしと論じたことがある。

4、 戦後日本のこういう誤った考え方が、戦後の日本外交に深く広い影響を与えてきた。
日本の外交を立て直していくうえで、この戦後日本をどう評価し、どうそれから脱却していくのかが最大の問題である。
戦後、日本に押し付けられてきた束縛がどういうものであるかというと、これは端的に言うと、象徴天皇制、1946年憲法、日米安保条約の3本柱から成っている。この3本柱は相互に依存し合っている。
1946年2月13日、ホイットニーが吉田茂外相、松本国務相などに日本国憲法を押し付けた際に、これを受け入れない限り、天皇が戦犯として訴追されることもありうると述べ、日本側がこれを受け入れざるを得ないと決断した。
サンフランシスコ講和条約で日本は占領を脱することになったが、それと同時に米軍駐留の継続を認める日米安保条約が締結された。憲法上、軍を持てない日本の安全保障をどうするのか、米軍の駐留を継続するしかないではないか、ということである。憲法と日米安保条約はそういう意味でセットになっており、いまでもそうである。
今後の日本を考える上で、私は日本が他国に脅威を与える存在にならないこと、軍事的に弱い日本がアジアの平和に役立つとの考え方から脱却する必要があると考えている。
日本がアジアで唯一の先進工業国家で産業基盤や科学技術力で他を圧倒していた時代は去った。いまや日本が脅威を与えるよりも、中国や北朝鮮からの脅威に日本は直面している。状況が変化した中で、日本もそれなりの対応をする必要がある。

5、 戦争と平和の問題を人任せにはせず、自分で真剣に考えることがこれからの我々の第1の課題であろう。
(文責:茂田 宏)

ロシア下院選挙

ロシア下院選挙

1、 12月4日、ロシア下院選挙が行われた。
即日開票されたが、開票率96%の予備的結果として、選管が発表した結果、次の通り。
下院450議席のうち、プーチン与党統一ロシアが238議席(2007年の前回は315議席)、共産党が92議席(前回57議席)、公正ロシア党が64議席(前回38議席)、自民党が56議席(前回40議席)を獲得した。
 投票率は60、2%。
 各党の得票率――統一ロシア 49、54%、共産党 19、16%、公正ロシア 13、22%、自民党 11、66%、ヤブロコ 3、3%、ロシア愛国者 0、97%、正義党 0、59%。
2、 この結果を評価する際に、次の諸点を考慮する必要がある。
第1:統一ロシアは国営テレビなどマス・メディアで有利な取り扱いを受け、選挙戦が公平な基盤で戦われたわけではないこと。
第2:統一ロシアは行政組織をも動員した選挙戦を行ったこと。
第3:地方においては、票の集計が与党に有利に操作されたと思われること。たとえばチェチェンでは、統一ロシアは99%以上の得票をした。
第4:投票箱への統一ロシア票の詰め込みなど、違反があったとの申し立てがなされていること。
プーチン政権はそういうことをしたにかかわらず、50%以下の票しか得られなかった。プーチンは統一ロシアの会合で選挙を「成功」であったとしているが、統一ロシアへの支持、プーチンへの支持が弱いことが明らかになったと評価してよい。

3、 選挙を戦った7党のうち、自由民主主義政党と言えるのはヤブリンスキーが率いるヤブロコだけである。ヤブリンスキーは選挙結果に異議申し立てをするとしている。
なおヤブロコは在外ロシア人の選挙区では善戦し、英では得票率41%、仏では31、5%、米では26、6%で、第1党の地位を占めた。

4、 今回の選挙はプーチンが党首を務める統一ロシア主導のロシアを変えることにはならない。公正ロシアは統一ロシアの友党である。自民党、共産党もプーチンに反対している党ではない。ヤブロコのみが思想的、政治的に野党であるが、7%に達せず、議席は得ていない。他の民主勢力は選挙参加自体を阻まれた。
しかし今回の結果は、ロシアの政治にそれなりのインパクトをもたらすものと思われる。
 すでに政治評論家の中には、来年3月の大統領選挙ではプーチンは統一ロシアの候補としてではなく、戦うほうがよいと書いている人もいる。
メドヴェージェフは統一ロシアの大会で9月24日、プーチンを統一ロシアの大統領候補として推薦した際に、「選挙後、政府が構成されるが、我々が成功した場合、私はその政府を率いる用意がある」と発言している。この選挙が成功であったとプーチンがしている以上、メドヴェージェフが大統領選挙後に首相になる路線はとりあえず変わらないと思われるが、選挙の総括を行う中で、そうでなくなる可能性も少しではあるが、ある。
統一ロシアの下院議長グリズロフは辞任するとされている。
(文責:茂田 宏)
(他のことに時間を使う必要が生じたために、このブログは本年末で終わりにする予定です。約4年続けてきましたが、ご愛読に感謝します。年末までには、主として私の日本外交に関しての考え方の一端を書こうかと考えています。)

イランの国際的孤立と制裁

1、 11月29日、在イラン英国大使館にデモ隊が乱入し、器物損壊などを行った。外国大使館の安全を保証するのは外交関係に関するウイーン条約上、接受国の責務である。イランはこれに違反した。
 11月30日、英国はこれへの報復として在英イラン大使館の即時閉鎖と外交官全員の48時間以内の国外退去を命じ、イラン外交官は全員英国を離れた。英のとった行動は当然のことである。特に大使館襲撃は民兵組織「バシジ」が中心になっており、この民兵組織はイラン政府の手先のような役割をしてきた。イラン政府は襲撃への関与を否定しているが、説得力に欠ける。
12月1日、EUは外相理事会を開催し、制裁を強化することで合意した。とりあえずこれまでの制裁対象を拡大し、今後さらなる追加制裁を検討するとしている。
仏、独、蘭、伊も在イラン大使を召還した。
米国もイランへの追加制裁を検討し、12月1日には、米上院はイラン中央銀行と取引のある金融機関が米国内で金融活動を行うことを禁じる法案を可決した。
 ただし欧州諸国は核問題その他での交渉の必要があるということで、外交関係の断絶にまでは踏み切っていない。

2、 イランはこれらの制裁措置を不当として報復を示唆しているが、政権に関係がある組織が国際法上保護されるべき大使館を襲撃したと言う事件であり、イランは報復ではなく、謝罪を検討すべきである。

3、 12月1日、コーエン米財務次官は議会で日、伊、中、韓、印の国名を挙げ、イランからの原油輸入を減らすように求める意向を表明した。
 経済制裁は、経済関係は基本的には互恵の関係であるので、被制裁国にとっても、制裁実施国にとっても経済的には損失を与える。
 原油購入をやめるとの制裁は、制裁のコストを主として上記の国に与えることになる。
ホメイニ革命後、米大使館がデモ隊に占拠され、大使館員が人質になった際にも、対イラン制裁が行われた。この時も、イランへの輸出を止めるのではなく、イランからの原油輸入を止めるべしということを安保理決議の内容とするようにEUが決議したことがあった。当時、日本の石油の10%以上がイランからの輸入であり、こういう制裁になると、日本が他国に比べ制裁に伴う損失のかなりの部分を被ることになる。私は経済局でこの問題を担当していたが、石油輸入停止ではなく、対イラン輸出に重点を置いた制裁にすべしということで、大来外務大臣が急きょ欧州に行き、各国を説得したことがあった。結果として日本の主張を入れてもらったことがある。今回の件についても、制裁に伴う制裁国の損失の平準化は日本として求めるべきであろう。
現在の日本の対イラン石油依存度はまだ10%もある。
なお対イラン輸出をやめる制裁に持ち込み、各国の負担の平準化を図ったが、日本では中部地方でホメイニの顔を焼き付けたお皿が大量にイラン向け輸出商品として生産されており、業者はこれを廃棄せざるを得ない羽目になった。ホメイニの顔入りの皿はイラン以外には売れなかったからである。
経済制裁実施に際してはこういう問題もあり、各国はどういう制裁にするかを国益を踏まえて争うことがあるということである。日本の国際社会での地位は最近つるべ落としに落ちているが、これは単なるイメージの問題ではなく、そういう状況は国益を守る日本の能力を阻害し、実害のある問題である。
(文責:茂田 宏)

開く トラックバック(1)

イスラエルへのカチューシャ・ロケット攻撃

1、 11月28日、レバノン南部より、イスラエルに向け、カチューシャ・ロケットが2発、発射された。アブドラ・アザム部隊と称する組織がこの攻撃を行ったと発表した。ヒズボラは沈黙している。
 イスラエル軍は報復としてレバノン領を砲撃した。しかしヒズボラの陣地があるところではなく、何もない野原に砲撃を行ったとされている。

2、 この事件は大きな衝突に発展する可能性は低いと思われるが、南レバノンには、色々な武装組織が存在し、かつシリヤの諜報機関も入り込んでいる。シリヤ側の同意なしにかかる攻撃がなされることは考え難い。
アラブ連盟は11月12日、シリヤの加盟資格を停止、11月16日には暴力の停止、都市部よりの軍の撤退、それを監視する監視団の受け入れを求め、11月19日までにシリヤ側が受け入れない限り、制裁を検討するとした。その後、11月24日には、3日以内にアラブ連盟の要求への回答がない場合、制裁すると通告したが、シリヤがそれを無視したため、11月27日、緊急外相級会合を開催、シリヤ政府幹部によるアラブ連盟加盟国への入国禁止、シリヤ中央銀行、政府との金融取引禁止、シリヤ政府対外資産の凍結、シリヤ民間航空機の乗り入れ停止などの措置を発表した。これはかなりきつい制裁措置である。シリヤの隣国、レバノンとイラクはこの決定の投票で棄権した。
アサッド政権として、この状況を打開する道はいくつかあるが、一つはアラブ連盟の要求を受け入れることである。今一つはイスラエルと事を構えて、イスラエルによるレバノン攻撃、さらにシリヤ攻撃を挑発し、イスラエルの攻撃にさらされているシリヤ、レバノンへの支援をアラブ諸国に強要する、あるいはアラブ諸国の世論にイスラエルと戦っているシリヤ、レバノンへの支援の声を上げさせることである。
国内的にもイスラエルとの紛争は国内での弾圧から国民の注意をそらせる効果がある。後者の選択をとる場合、イスラエルとレバノン・シリヤ間での武力衝突になる。
今回の事件は多分、シリヤが後者の選択の可能性があることを地域諸国に知らしめる狙いで惹き起こしたか、同意を与えたかであるとも思われる。
イラン、ヒズボラがどう判断するかの問題もある。
イランは国際原子力機関が核開発をしている疑いがあるとの報告書を発表した後、欧米諸国は新しい制裁を課している。イランにもイスラエル問題をその核の問題を含め、プレイ・アップする動機がありうる。
今回の事件はイスラエルと南レバノンの武装勢力間の1回だけの応酬で終わりそうであるが、上記のことを念頭に、イスラエル・レバノン国境の情勢は今後注意深く見て行く必要がある。
(文責:茂田 宏)


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事