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プーチンへの大ブーイング

1、 11月20日、モスクワで行われた格闘技大会でロシアのヒョードルが米のジェフ・モンソンに勝利した。その際、プーチン首相が祝辞を述べるためにリングに上がったが、話し始めるや否や、2万人の観衆から、ブーイングと「帰れ」、「引っ込め」という罵声が浴びせられた。モスクワ・タイムズ紙はプーチンの声は震えていたと報じた。
 珍しいことである。

2、 この模様は一部ロシアのテレビで報じられたほか、ユーチューブで配信され、50万人以上が見たとされている。
私が見たのはユーチューブに配信された二つの画像である。最初の画像では,歓声なのか、ブーイングなのか、判然としなかったが、二本目の画像では、ロシア語で「引っ込め」などと叫ぶ声が明瞭であり、ブーイングである。ちなみにこの2本目の画像はいまは削除されている。

3、 プーチンはロシア人のなかでの自分の人気に自信を持ってきたので、それなりにショックを受けたものと思われる。
 ロシアはプーチンの下で安定はしたが、停滞の様相を示している。エリツィン時代の活気はなく、民主主義が機能しない腐敗した社会への不満は強い。そういうものがこのような場面で突然噴出したということかと思われる。
 これがロシアの政治の方向を変えることなど無いが、ロシア社会の1面は示している。
 プーチンは強い指導者イメージのためか、上半身裸の乗馬姿、虎退治姿、大きなバイクに乗っての登場など、マッチョなことを示す演出をしてきた。そういうことの一環として格闘技会場に姿を現したものであろう。
なおファシズムは肉体美賛美と身体障害者など弱者の排斥の傾向をもつ。肉体美賛美はナチス芸術、ロシアの社会主義リアリズムに共通する傾向である。

4、 この事件について多くの人が掲示板などに書き込みをしているが、そのなかに、日本人の次のような書き込みがあった。
「ロシア人は贅沢だなあ。俺らはルーピーにも、すっから菅にも耐えているのに。」
〔文責:茂田 宏〕

メドヴェージェフの欧州ミサイル防衛に関するテレビ演説

1、 11月23日、メドヴェージェフ演説、次の通り。
 ロシア市民達。本日私は欧州におけるNATO諸国のミサイル防衛(以下MD)システム」に関する状況についてあなた方に話す。
MD分野での米、NATOとロシアの関係は長く複雑な歴史を持つ。オバマ大統領が2009年9月欧州のMDシステム建設の前任者の計画を変更した時、我々はこれを肯定的な一歩と歓迎したことを思い出す。この決定が我々が新START(戦略兵器削減条約)を締結することを可能にする道を開いた。この条約はそう遠くない過去に署名され、戦略攻撃兵器とMDの間の本質的なリンクを明確に言明している。これは大きな成果であったと私は言う。
しかしその後、米はMDシステムを段階的に作りだすことを念頭におく新しいMD計画を実施し始めた。これは具体的にロシアでの懸念を呼び起こす。これはロシアに近接した地域と隣接する海域に米のミサイルと軍事能力の配備を最終的には行うことになろう。
1年前、リスボンでのNATO/ロシア首脳会議で、私は各国が特定のセクターに責任を持つ欧州における共同の、セクター的MDシステムの開発を提案した。さらにNATOのパートナーの見解を考慮し、そのシステムに追加的修正を討議する用意を示した。我々の唯一の目標は欧州は新しい分割線を必要としない、ロシアの平等で法的に確立された参加で共通の安全保障の輪郭を作る
このアプローチがロシアとNATOが真の戦略的パートナー関係を築く特別の機会を作り出すだろうというのが私の信念である。我々は我々に関係にある摩擦と対決を平等、不可分の安全保障、相互信頼、予見可能性で置き換えることになる。
残念なことに、米とNATO のパートナーはこの方向に進む十分な意欲を示さなかった。この段階における欧州MDシステムに関する我々の懸念を聞き、理解する意欲を見せるよりも、彼らは単にこれらの計画はロシアに向けられておらず、我々が懸念を示す意味はないと繰り返した。これは行政当局の立場であり、いくつかの国の立法府の議員は公然と全システムはロシアに向けられていると述べている。
明確な法的義務として文書にこのことを書くべしと言う我々の要請は固く拒否された。我々は合理的な立場を持っている。我々はこれらの義務の地位と内容を討議する意思がある。しかしわが同僚はこれらの義務が実質を持たねばならず、空虚な言葉であってはならないことを理解すべきである。これらは約束や再保証のような文言ではなく、具体的な軍事・技術基準の文言でなければならない。ロシアがMD分野での米とNATOの行動が彼らの宣言と措置にどの程度適合しているか、我々の利益が侵害されているか否か、どの程度まで戦略核バランスがそのままなのかを判断することが出来るような文言でなければならない。このバランスが今日の安全保障の基礎である。
我々は短期間、6-8年の時期で我々の核抑止力を弱体化しうる計画に参加することに同意しない。欧州MD計画はすでに進行中で、残念ながら、ポーランド、トルコ、ルーマニヤ、スペインで作業は急速に進められている。我々は既成事実に直面させられている。
もちろん、我々はこの問題について米とNATOとの対話を続ける。私は最近オバマ大統領と会談した際、そう合意した。そのときに私は我々の懸念を再度明確に表明した。未だ「了解に達する時間はある。ロシアは米・NATOと我々の関係に新しい章を開くであろうこの分野での合意に達する政治的意思を持っている。もしわがパートナーがロシアの正統な安全保障利益を考慮に入れる正直で、責任ある態度を示せば、私は合意を達しうると確信する。しかし我々が「協力」し、事実上、我々自身の利益に反して行動するように要請されるのであれば、共通の基盤を樹立することは困難だろう。そういう場合には、我々は異なる対応をすることを強制されるだろう。我々はMD計画実施の各段階での事象における現実の発展に応じて我々の行動を決定するだろう。
この関連で、私は次の決定を行った。
第1:私は国防省に直ちにカリーニングラードにある早期警戒レーダーを戦闘警戒に置くように指示している。
第2:ロシアの戦略核兵器の保護掩蔽は航空・宇宙防衛の開発プログラムの下で優先的措置として強化される。
第3:戦略ミサイル軍と海軍によって注文された新しい戦略弾道ミサイルは先進的MD突破システムと新しい高度に効果的な弾頭で装備される。
第4:私は軍に必要な場合MDシステムのデータと誘導システムを無力化する措置を作成するように指示した。
第5:これらの措置が不十分と判明すれば、ロシア連邦は欧州における米MDシステムの如何なる部分も取り去る我々の能力を確実にするために国の西部と南部に近代的な攻撃兵器システムを配備する。この過程での一歩はカリーニングラード地方にイスカンダール・ミサイルを配備することになろう。
欧州MDシステムに対抗する他の措置も必要に応じて作成・実施される。
更にもしロシアに不利なように引き続き発展するならば、我々は更なる軍縮、軍備管理措置を取りやめる権利を留保する。
戦略攻撃と戦略防衛兵器間の本質的リンクに鑑み、新START条約からの我々の脱退の条件もまた出てきうる。この選択肢は条約に書かれている。
我々はMDとその分野での実際的協力に関する米・NATOとの継続的な対話の扉を閉ざしてはいないとの点を私は強調する。我々にはその用意がある。
しかしこれは我々の正統な利益と懸念を考慮に入れることを保障する協力のための明確で法的な基礎の樹立を通じてのみ、達成されうる。我々は対話にオープンであり、我々の西側のパートナーからの合理的で建設的なアプローチを希望している。

2、 米・NATOとロシアの欧州ミサイル防衛についての、話し合いは上手く行っていない。
ロシアが欧州MDシステムがロシアの戦略兵器に向けられないことを法的義務として受け入れることを米・NATOに求めているが、そういう義務を書いた条約が米国上院で承認される可能性はゼロである。米は大統領レベルでの保証書簡の発出などを提案しているが、ロシアはそれでは足りないとしている。米軍最高司令官の約束では不十分と言うのは、大統領は変わりうるということであろう。
今回のメドヴェージェフ演説は従来のロシアの立場を変えずに、米・NATOとの合意が出来ない場合のロシアの対抗策を示し、西側に譲歩を求めたものである。しかし米が条約でロシアのミサイルを対象にしないと約束する可能性は無い。
欧州MDはStandard ミサイル−3、SM-3を使うものであるが、これではロシアの戦略ミサイルを撃墜できない。しかしロシアはSM-3も将来、能力が向上しうると心配している。
欧州MDの能力制限を米としては法的義務として約束することもまた上院の態度に鑑み、不可能である。
ロシアが法的義務としてロシアの戦略兵器を阻害しないとの合意を取り付けることに固執する限り、米・NATOとの交渉は進展しないであろう。そうなると、ロシアの対抗措置は発動され、欧州は新たな緊張を経験する可能性がある。
ただロシアの経済・技術力に鑑み、米・NATOはロシアに軍拡競争をする能力なしとみていると思われる。
(文責:茂田 宏)

シリヤ情勢の緊迫化

シリヤ情勢の緊迫化

1、 シリヤのアサッド政権は隣国トルコおよびアラブ連盟の要請にかかわらず反政府派の弾圧を継続している。
 シリヤとアラブ連盟は11月2日計画と呼ばれるものに合意し、都市部よりの軍の撤退をはじめとするすべての者による暴力の停止をすることになっていた。しかしシリヤ政権が武力の行使をやめないので、11月12日には、この計画にシリヤが違反したとして、アラブ連盟はシリヤの加盟資格を停止した。更にアラブ連盟は11月16日、暴力の停止、都市部よりの軍の撤退、その実行状況をみるための監視団の受け入れを求め、それが11月19日までに満たされない場合、シリヤに制裁を課すると警告した。
シリヤ側は監視団の規模に制限を加える(元の案である500名を40名にする、アラブ人以外は認めない)などの要求をして、アラブ連盟とシリヤ間の合意の成立を引きのばす一方、11月19日以降も軍も使う弾圧を継続している。
シリヤとアラブ連盟の関係は今後ますます悪化していくであろう。
 11月21日、トルコのエルドアン首相はイスタンブルでの演説でアサッドについて「もし自分を指導者であると信じるなら、もし自信があるのなら、あなたは投票箱を開き、皆が投票にいくだろう。戦車と大砲では、あなたはある程度のところまでしか行けない。あなたが立ち去る日は来るだろう」と述べた。トルコのメディアは政府高官がシリヤ国内に軍事的緩衝地帯または飛行禁止区域設定の有事計画を考え始めたと報じている。
 なお11月21日、メッカへの巡礼にいくためにシリヤ領内をバスで移動していたトルコ人巡礼団がシリヤ軍と思われる者に発砲され、2名が負傷するとの事件があった。トルコで大きく報じられている。

2、 シリヤ国内においては、11月20日、首都ダマスカスにあるバース党本部がRPG(ロケット推進手榴弾)で攻撃された。トルコに拠点を置く「自由シリヤ軍」(シリヤ軍よりの脱走者からなる。指導者リアッド・アサッド大佐)がこの攻撃を行ったと発表した。 これ以外に反政府武装勢力による攻撃が増えてきている。
 シリヤの反政府運動は平和的なデモを中心として展開されてきたが、ここにきてシリヤ軍と反政府武装勢力の武装闘争の様相を呈し始めている。
アサッド大統領は反政府勢力をテロリスト集団と呼び、法と秩序の回復のために必要な措置をとっているのであるとの主張をしてきた。反政府勢力の一部が武力闘争路線を取り始めているが、反政府勢力の中には、武力闘争はアサッドの主張に根拠を与えるので控えるべしと主張する勢力もいる。反政府勢力内で路線の違いが出てきている。
又シリヤ国民は内戦が始まれば、とんでもないことになると恐れる人も多いとされる。反政府勢力の武装はせいぜい軽火器とRPGとされ、また軍と治安部隊、諜報機関などから大規模な離脱は見られず、反政府勢力が武力で政権側を圧倒する見込みは小さい。

3、 11月20日付ロンドン・サンデー・タイムズ紙は「シリヤを攻撃すると、世界が揺れる。単独インタビューでバシャール・アサッドはアラブの指導者をシリヤへの西側の介入への口実を作りだしていると非難」との記事を掲載し、アサッドがまだ国内で相当の支持を得ていると考えていること、武装集団による流血を止めようとしているのであると、現在の政策を正当化したこと、かつシリヤ攻撃をすれば、中東が大変なことになると警告したことを報じている。
 このインタビューのなかでアサッドは治安部隊と反政府武装勢力の撃ち合いに巻き込まれたりなどして、民間人が殺されたことはあるが、シリヤの役人によるとその数は活動家が言う3500名ではなく、169名であると述べるとともに、治安部隊隊員800名が殺されたと発言している。
重武装した治安部隊の隊員が800名死んで、デモなどを行っていた民間人の死者は169名であると言うようなことは常識的に考えられない。反政府武装勢力側の死者は勘定していないと言うことかと思われるが、こういう言い方をするアサッドはゲッべルス並みのうそつきではないかとの印象を私は抱いた。
(文責:茂田 宏)

ミヤンマー、2014年ASEAN議長国就任へ

1、 11月17日、ASEAN首脳会議はミヤンマーを2014年のASEAN議長国とすることを決定した。
 ミヤンマーはASEAN議長国就任を強く望んできた。
 3月のテイン・セイン大統領の就任後、アウンサン・スー・チーとの対話の開始、政治犯を含む収監者の釈放、メディアの自由の拡大、議会の審議状況の公開など、注目する動きが見られる。ASEAN首脳がそれを評価し、今回の決定になったものと思われる。

2、 欧米諸国では、対ミヤンマー強硬派はミヤンマー亡命者団体の評価にも影響されてこの「民主化」は全く形だけで評価に値しないとしている。ASEAN内でも議長国就任の目的を達すれば、また元に戻るとの懸念を表明するひとがいる。
 他方でミヤンマーの動きを評価して議長国就任を認めることが「民主化措置」をさらに促進するとの意見もある。
 私は後者の意見に賛成である。
 政治プロセスは一定の方向に動き始めるとそれ自体の力学が働いてその方向に進むことがある。もちろんそうでない場合もある。しかし強硬派の人たちはプロセスが一定の方向に進む可能性を過小評価し過ぎる嫌いがある。
 私はゴルバチョフがグラスノスチやペレストロイカを言い出した時に、体制内改革としてそれを過小評価するとの過ちを初期に冒したと反省している。
 その上、ミヤンマー制裁や孤立化はミヤンマーを中国しか頼れない状況に置き、中国の対ミヤンマー影響力の増大をもたらした。国際政治の観点からも、ミヤンマーが国際社会と相互作用する状況にすることが適切で、またそれがミヤンマーの変化にもつながるであろう。
 ASEAN議長国としてミヤンマーは他のASEAN諸国の意見に耳を傾けざるを得なくなるし、域外諸国ともASEANを代表して話し合いをしなければならなくなる。

3、 ミヤンマーが短期間に民主主義国になるとは期待しない方がよい。しかし「最善は善の敵」という言葉があるが、最善を要求し過ぎて、悪い状況を継続させる結果となることは避けるべきである。

4、 なお私はミヤンマーには一度短時日の訪問をした経験しかないが、他国でのミヤンマーの外交官との接触などから、ミヤンマー人は韓国人やモンゴル人に似た系統の人々で、きちんとしているとの印象を持つ。タイ人やフィリッピン人が持ついい加減さ(これにはよい面も悪い面もある)を持っていない。
それ以上に、ミヤンマーはインドと中国の間にあり、ミヤンマーは地政学的に見て、重要である。
(文責:茂田 宏)

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米豪防衛協力の強化

米豪防衛協力の強化

1、 11月15日付ワシントン・ポスト紙は「豪州訪問で、オバマは軍事プレゼンスについての協定を明らかにするだろう。米はアジアにおける兵力態勢の見直しの一部として基地へのアクセスを得るだろう」との記事を掲載している。その概要、次の通り。
 オバマは11月16日から2日間豪州を訪問する。その際、ダ―ウインの軍施設でギラード首相とともに米海兵隊が訓練と上陸演習のためにそこの基地を使うことを可能にする計画を発表する予定である。
 専門家は在日米軍が一部グアムに再配置される中で、「兵力態勢」を再検討する最初の小さな一歩であるとしている。
 中国の軍事力などが成長するなかで、アジアでの米の同盟国は南シナ海などでの潜在的脅威をバランスさせるために支援を求めており、豪州は東南アジアに近い位置にある。
 更に専門家は豪州の基地は中国の弾道ミサイルの射程外になるとしている。
 ウイラード太平洋軍司令官はこれは南アジアをも含むアジアでの米軍にとっても有益であると述べた。
 豪州のロウイ研究所の2010年の世論調査では、豪州人の55%が米軍基地を豪州に置くことに賛成している。豪州人の44%が中国は次の20年で軍事的脅威になり、77%が豪州は自分では紛争時に防衛しきれないと考えている。

2、 最近、米豪軍事協力は強化されてきている。
 背景は中国の軍事力増強にある。豪州の米軍基地は南シナ海やインド洋に近く、かつ中国の接近阻止・地域拒否のためのミサイル、DF-21の射程外になるとのメリットがある。
 更に豪州には、沖縄におけるような反基地感情はほぼ皆無である。
 米国内ではアジアでの兵力配置について中国の接近阻止・地域拒否兵器を懸念し、オフショア戦略と称して、中国のミサイルの射程外に主要な兵力配置を移すべしという議論がある。さらに北東アジアに集中している米軍を分散させるべしとの議論もある。
 日米が普天間移転でもめる中で、こういう動きがあることに日本としても注意する必要がある。在日米軍基地は日米双方の利益に合致するが、米には、他の選択肢もあるということは頭の片隅に置いておく必要があろう。
(文責:茂田 宏)

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