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欧州の財政・金融危機(雑感)

1、 ギリシャ政府が債務不履行に陥りそうな状態になり、それへの支援策をドイツとフランスが中心となって打ち出してきた。欧州金融安定化基金(EFSF)の支援規模の拡大、銀行保有対ギリシャ債権の50%の実質的な放棄、銀行の自己資金拡大、ギリシャの財政再建のための歳出削減など、包括的対策が10月27日発表された。
しかし、ギリシャのパパドレウ首相がEUと合意した対策案を国民投票にかけると発表し、混乱を招き、結局ギリシャでは国民投票の中止、パパンドレウ首相の辞任、大連立の形成、新首相の選出ということになった。11月11日、新首相にパパニデモス氏が就任した。
 ギリシャの危機が収束に程遠いなかで、今度はイタリアの国債が急落と言ってよいほど値下がりし、11月8日には、ベルルスコニー首相が辞意を表明し、財政再建策の議会通過を受け、11月12日には辞任した。ベルルスコニー首相の後継は、モンティ元欧州委員が有力になっている。
この欧州の財政・金融危機はまだまだ続くだろう。結果として、欧州経済は減速すること必定である。世界経済にも悪影響を与えるだろう。
欧州中央銀行が大決断をしてイタリア国債を大量に買い支えないとどうしようもないが、ドイツの反対などがあり、そういう決断をなしうるか疑問もある。

2、 財政連合なしに通貨連合を作った基本構造に問題があったとされている。もしそうだとすると、ユーロ圏の統合深化か、ユーロ圏の部分解体か、のような過激な対処案が必要になる。
そこまで行くか、その前に収拾されるかについては、多分後者であろう。
しかしギリシャ、さらにイタリーの緊縮財政だけでも経済の縮小にはなる。
ギリシャ、イタリーなどの国では、ポピュリズムに陥り、収入に見合わないバラマキをし過ぎたことなど、民主主義の弱点が出たように思われる。
 ギリシャでは党派性を排除したテクノクラート内閣の成立ということになった。イタリーでもそうなる蓋然性がある。
そもそも政党というのは英語でpolitical partyというが、partyという語はpartより派生した語で全体ではなく部分を代表するという意味である。したがって政党政治は党派性を前提とする政治である。しかし国全体に関することをこの党派的議論のなかで処理することはうまくいかないこともある。外交・安保政策の基本は、超党派的基盤に基づくべしというような良識が過去のアメリカにはあったし、いまもその残滓があるが、超党派で取り組むべき場合には、そうすべきであろう。
官僚制は党派性を越えた制度であり、時の政権に仕えるものであるが、大筋では国全体のことを考えることを職業的任務としている。ポピュリズムとは程遠い専門家集団である。
ギリシャ、イタリーでのテクノクラート内閣の成立は政党政治の失敗への反省であるとも言える。与野党が党派政治の観点から足の引っ張り合いをし、危機を深化させる状況は日本にも無縁ではない。
最近日本では、政治主導がよいこととされ、官僚を抑えつけることが民主主義の正義のように言われているが、必ずしも正しい議論ではない。
選挙で正統性を持つ政治家が、国全体のことを考える官僚を尊重して、ともに協力して国を運営するのが適切であろう。その役割分担をどうするのがいいのか、それは課題や局面により異なるであろうが、単純な政治主導スローガンの是非はよく考えるべきであろう。
明治憲法下では、政党から超然とした内閣がよいとされた時もある。官僚が天皇の官僚とされたこともある。そういう発想がよいとは言わないが、いわゆる政局にうつつを抜かす政治家は、もっと国家のためには不都合である。

3、 中国は独裁制と官僚制と市場経済の組み合わせで、高成長を成し遂げている。他にも同じようなことを試みている権威主義的政権がある。そういうモデルと民主主義のモデルが競争しているような様相が今の世界にはある。
この競争において、民主主義が失敗するようなことになると、人々は人権が尊重されない世界に生きることになろう。そうならないように欧州も日本も何とか今の危機を乗り越える必要がある。
 アリストテレスは民主性―衆愚制―君主制―僭主制―貴族制―寡頭制の政体の循環論を説いたが、民主主義が衆愚政治に陥らないようにする必要がある。

4、 日本の財政赤字はGDP比では200%にも達し、ギリシャやイタリーの債務のGDP比を上回っている。日本の国債はその95%程度が国民により保有されていること、日本が世界第1の債権国であることなど、日本とギリシャやイタリーは事情が異なるが、今のまま債務を積み上げて行くと、近い将来非常な困難に直面しかねない。その時に慌てないように、先を見た政策展開は避けて通れないことであろう。
 私の外国人の友人は、日本政府が国民の信頼を獲得する能力には感嘆する、生産額の2倍の借金を抱える企業の社債を売ることはまず不可能であるのに、日本政府はそれを成し遂げている、と述べていたが、こういう無理は早晩破たんするので、早めに是正する必要があろう。

5、 EFSFの拡充については、欧州は25%までは保障するということで、レバレッジを効かせたつもりでいる。それでBRICSの資金を引き寄せようとしたり、IMFから資金を得ようとしている。IMFはともかく、BRICSが欧州を救うために資金を出すであろうと期待するのは甘い。ECBによるイタリー国債の購入を増やすなど、欧州はもっと自己努力をしないといけないように思われる。
(文責:茂田 宏)

エアー・シー(Air・Sea)戦闘概念

1、 11月9日、ペンタゴンは記者ブリーフィングを行い、グローバル・コモンでの接近阻止・地域拒否能力に対抗するために空・海共同作戦概念を開発することになったこと、海兵隊、陸軍もこの概念の開発に今後含まれること、米軍は接近阻止・地域拒否能力で活動範囲を狭められないように対抗し、その場所に居残り戦うことなどを明らかにした。
 ブリーフィングによると、8月12日にそのためのオフィスが立ちあげられ、作業をしてきたが、今回、パネッタ長官よりこれまでの作業は信頼性があるので、その実施に移ることに青信号が出たと言うことである。

2、 中国は接近阻止・地域拒否能力を強化するために努力している。これに直接的に対抗しようと言う概念である。
ただ対中考慮からと思われるが、中国が対象であると言うことはブリーフィングでは避けられ、どこにおいても接近阻止・地域拒否能力のあるところで適用可能な概念であるとの説明がなされた。
しかし説明の中でこれまで米軍は二つの反乱抑圧作戦(Counter Insurgency::Coinという)を行ってきたが、今後は接近阻止・地域拒否への対抗が重要になるとしており、中国が主たる対象であることは明らかである。

3、 11月10日付ワシントン・タイムズ紙は「戦闘概念、中国に対する冷戦的姿勢を示す」という見出しで、このブリーフィング内容と国防省筋の発言を報じている。
 この記事はまた、国務省中国専門家の次の発言を引用している。
「この空・海戦闘概念はワシントンが遂にアジアにおいて中国が敵対的な軍、海軍、核強国として現実の脅威になったということに直面していること、中国とのバランスをとる唯一の方法は、アジア・太平洋の同盟国の地上軍に米の空軍・海軍力の重みをつけることであると考えている証左である。」
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4、 Air・Sea Battle戦闘概念は長らく議論されてきたものであり、その有効性が承認されたということである。
 これが今後どう発展するかはまだ今後の進展によるところが大きい。
(文責:茂田 宏)

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イランの核問題

イランの核問題

1、 11月7日付ワシントン・ポスト紙は「国際原子力機関(IAEA)はイランは核能力に近い
と述べる。外国の専門家が決定的な支援を行ったことが判明」との見出しで、IAEAがイランが核兵器のための技術を取得してきているとの報告書を近く発表する予定であると報じている。
 この報告書では、ソ連の核兵器専門家ヴィアチェスラフ・ダニレンコが1990年代にイランとの契約に基づき5年間支援を行ったこと、北朝鮮とパキスタンのカーン博士のネットワークが兵器の設計や中性子発生機などで協力したことを指摘している由。
また、11月7日付ニューヨーク・タイムズ紙は「査察官がイランの核計画について報告書を準備する中、米は正面に出ないようにしている」との見だしで、IAEA報告書がイランがパルチン軍事基地で内向高性能爆薬(核分裂を惹き起こすために核物質を爆縮する技術)について作業しているとの事実を明らかにする予定であると報じている。
この報告書について、中露は天野IAEA事務局長に対しイランを追い詰めないようにこの報告書の公表を控えるようにとの申し入れを行ったこともこの記事は明らかにしている。

2、 イランは自国の核開発は発電のためであり、核兵器の取得を目指すものではないとしてき
た。しかしこの報告書はイランが核兵器を作るための関連技術の取得をしようとしていることを明らかにしているとされる。
 この報告書が発表されるとしていつか、そこにどれくらいの証拠が記載されるかはまだよく判らない。天野事務局長も難しい判断を迫られるだろう。
IAEAは技術的な機関であり、あまり政治的考慮をせずに、事実を明らかにする姿勢をとることがIAEAの権威保持のためにも重要であると思われる。それがIAEAの責務でもある。
イランは平和目的の核開発しかしていないと述べてきたが、もしそうであれば、そのこと
をIAEAに納得の行く形で示す必要がある。イラン側はこの問題は政治的に取り扱われているとしているが、米やイスラエルの意見はともかく、IAEAの意見を政治的として退けることは国際的にはあまり上手く行かないであろう。
この報告書の発表はイランの核問題のついての論議を今一度強めることになるだろう。
私は、イランは核兵器取得をまだ最終的には決定していない一方、いざと言う場合に短時日で核兵器保有が出来るように準備をしているということではないかと考えている。

3、 なおイランの国内政治については、最高指導者ハメネイとアハマドネジャッド大統領の間
で対立の兆候がある。
イランではペルシャ帝国の歴史を国のアイデンティティとしてどう位置づけるか、それを栄光の歴史とするか、イスラム以前の無知の時代と位置づけるかの問題が常にある。
イラン革命前のシャーはペルシャ帝国の歴史を強調した。ホメイニはそれを否定した。最近、アハマドネジャッドはイランの地域での重要性を強調する中で、ペルシャ帝国の伝統を肯定的に描写している。これにハメネイが怒っているとの情報がある。
イランの新聞には、ペルシャ暦、イスラム暦、西暦がこの順序で掲載している。これがイランのディレンマを象徴している。ホメイニはペルシャ暦を革命直後に禁止したが、国民の祝日がペルシャ暦に沿っていることもあり、いまでは復活している。
(文責:茂田 宏)

ヨルダンとハマスの関係改善

1、 ガザを実質的に支配しているハマスは元々エジプトのムスリム同胞団のパレスチナ支部であるが、その指導者ハリッド・メシャールはダマスカスに居住している。元々ヨルダンにいたが、1999年にヨルダンから国外追放された。
しかし10月31日、ヨルダンのハサウネー首相はこの決定が誤りであったと述べた。
ハリッド・メシャールは近いうちにアンマンを公式訪問し、アブドゥラ国王と会談する予定である。

2、 ヨルダンの王室は由緒正しい王家であるが、アラビヤ半島から今のヨルダン統治のために移ってきた王家であり、ヨルダンの人口の多くはパレスチナ人である。ヨルダン王家はこのパレスチナ人との関係をどう扱うかで悩んできた。
1970年9月にはヨルダンで、治安当局とパレスチナ解放機構(PLO)の間で衝突が起き、結局、PLOはレバノンに移ったことがある。(いわゆるブラック・セプテンバー)
ヨルダンは自国内の治安維持のためには、パレスチナ人の行動を統制する必要がある。そういう観点から、イスラエルともある程度協力してきた。1994年にはアラブの国としては、エジプトに続いてイスラエルと平和条約を締結した。
1997年には、イスラエルのモサッド工作員が、ハリッド・メシャールをアンマンで暗殺しようとして、ヨルダン当局に逮捕された。メシャールの耳に毒を入れて殺そうとした。ヨルダンはこれら工作員の釈放と引き換えにイスラエルに解毒剤の提供などを要求し、結果としてメシャールは一命をとりとめた経緯がある。
ヨルダンは、パレスチナ人のグループとイスラエルの両者をバランスする政策、更にシーア派のイランの影響力の伸長を抑える政策など、綱渡りともいうべき外交を展開してきた。
今回のハマスとの関係改善は、ハマスを通じてパレスチナへの影響力保持のほかに、アラブの春で地域情勢が変化していること(ムバラク後のエジプトでムスリム同胞団の影響力が強くなっていること、シリヤ情勢が不安定化していること、イランがシリヤでの影響力を強めているほか、ハマスへの影響力も強めていることなど)に対応しようとしたものであろう。
イスラエルはハマスをテロ組織としており、このヨルダンの動きは、ヨルダンとイスラエルおよびパレスチナ内でハマスのライバルであるアッバスのファタハとの関係に影響を与えることになる。
他方、ハマスのメシャールは、シリヤ情勢が混迷している中で、ヨルダンとの関係改善を希望したものと思われる。いざと言うときには、再びアンマンに戻ることを一つの可能性として考慮しているのではないかと思われる。
ヨルダン、エジプト、シリヤ、パレスチナ諸派、イスラエルの関係は、今後極めて複雑な展開を示すと思われる。
〔文責:茂田 宏〕

パレスチナ:UNESCOに加盟

1、 10月31日、UNESCOの一般総会はパレスチナを加盟国として承認するか否かの投票を行い、賛成107票、反対14票、棄権52票で加盟を承認した。
 国連加盟国ではない国家の加盟については、UNESCOの執行理事会の勧告および一般総会で出席し投票する国の3分の2の賛同が必要である。棄権国は投票国にならないので、この要件は軽く満たされた。

2、 10月31日、米国務省ヌーランド報道官は次の声明を発表した。

 パレスチナを加盟国として認めるUNESCO加盟国の本日の投票は、遺憾であり、時期尚早であり、中東における包括的で公正かつ永続する平和という我々が共有する目標を掘り崩すものである。米国は独立・主権パレスチナ国家の樹立を支持するとの点で不動である。しかしそういう国家はイスラエルとパレスチナの直接交渉を通じてのみ、現実化される。
米は国連システム全体を通じ、しっかりとした多数国間の関与に強くコミットしている。しかしながら、UNESCOへのパレスチナ加盟は長年にわたる法的な制限の引き金を引き、米がUNESCOに資金拠出することができなくなる。UNESCOへの米の関与は教育,科学、文化、コミュニケーション問題についてわが国益に資するものである。米はUNESCOにおける加盟国の地位およびUNESCOへのコミットメントを維持する。我々は議会と米の利益と影響力が保たれることを確保するために協議を行う。

3、 日本は英などとともに棄権した。私は賛成してもよかったのではないかと考える。
直接交渉でパレスチナ国家が樹立されるのが最も望ましいが、その直接交渉を国際法違反であるとされている入植地建設で駄目にしているのはイスラエルである。
 民族自決権の行使に直接交渉が妥結しないからと言って拒否権を長年にわたって行使し続けるのは無理があると言わざるを得ない。
 米がこういうことでアラブ諸国の不信を買うのは米にとっても得策ではなく、米の投票態度こそ遺憾である。

4、 UNESCOはよい仕事をしている。米は6千万ドルのUNESCO分担金の支払いを止めることになる。イリナ・ボコヴァ事務局長はUNESCOの活動資金が少なくなり、有益な仕事に制約が出てくることに警鐘を鳴らした。
(文責:茂田 宏)


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