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北方領土問題について

北方領土問題について

1、 9月8日、ロシア外務省報道官の発言、次の通り。
質問:ロシアは南クリルを所有する「法的根拠」を持たないとの玄葉日本新外相の最近の言葉とこの領土でのロシア連邦との共同経済活動についての彼の提案に対し、ロシア外務省はどうコメントできるか。
答:モスクワは露日関係における国境問題についての日本の外務省の新しい長の声明についてのメディア報道に留意した。もし報道が大臣の言葉に関し正確であるならば、我々は玄葉氏の外相としての任命後、安定的で長期的視野に立った両国間の協力の発展のために表明された建設的な考え方の背景にかかわらず、再度、両国関係の雰囲気に何ら肯定的なものを追加しない「伝統的な」語調に満たされた発言が響いたことを遺憾に思わざるを得ない。
私は南クリル諸島は第2次大戦の結果として法的根拠に基づきわが国の一部となったことをあなた方に想起させたい。これらの領土に対するロシアの主権は疑問の余地はなく、国際法的には、それは1945年2月11日の極東に関する3大国のクリミヤ協定、1945年7月26日のポツダム宣言、1951年9月8日のサンフランシスコ平和条約および国連憲章第107条の規定に基づいている。
協力については、我々は外相のそういう声明を歓迎する。これは大筋で経済の方向に日本外交をシフトするとの前任者前原誠司の立場と一致する。これはロシアとの貿易、経済その他の接触の拡大に関する。この関連で、我々はそういう協力の発展について日本側のより具体的な考慮を歓迎するだろう。
日本の新指導部との2国間協力の一般的な背景は、9月6日のメドヴェージェフ大統領と野田佳彦首相の電話会談で作られた。我々は日本の隣人との相互行動の形態と方法を広く新たに見てみることができるように希望している。

2、 このロシア外務省声明はロシアの日露領土問題に関する立場がブレジネフ時代の「解決済み」の立場に戻ったことを明らかに示している。ゴルバチョフ時代、エリツィン時代、プーチン政権初期の、領土問題の存在を認めそれを交渉によって解決しようとの姿勢はない。日本はこのことをよく認識して、今後の対応を考えていくべきであろう。

3、 日ソ戦争はソ連が中立条約に違反して戦争末期の1945年8月9日、日本を攻撃したことで始まった。戦争後の領土の処理は平和条約で行われるのであり、その日ソ・日ロ平和条約がまさに領土問題が未解決なために結ばれていないのは厳然たる事実である。それを否定してかかるロシアの理不尽な態度は強く反駁されるべき暴言である。第2次大戦の結果は平和条約で決まるのであって、平和条約がないのに決まっているというのは国際法の常識に反する論である。
ヤルタ協定は、こそこそと日本の領土を処分しようとした不法なものであり、その上、最終的に米がソ連を裏切り実施されなかった。
ポツダム宣言8項は「我らの決定する諸小島」としているが、その決定がないために日露領土問題があるのである。
サンフランシスコ条約については、ソ連は署名国ではなく、援用する立場にないのみならず、グロムイコはサンフランシスコ条約がヤルタ・ポツダム違反であり、日本に南樺太、千島を放棄させるだけで、日本にソ連のこれら領土への主権を認める義務を課していないということも一つの理由として署名をしなかった。未解決に残されたことを論難した。それをいま解決済みのようなことを言うのはエストッペル(禁反言)に反することである。
国連憲章107条も、元々違法なことを合法化する効果などもちえないのは、条文からしても明らかである。
(文責:茂田 宏)

トルコ・イスラエル関係の悪化

1、 9月6日、エルドアン首相は記者団に、トルコはイスラエルとの防衛関係を中断する、防衛関連貿易、軍間の関係、防衛産業間の関係の凍結がこれに含まれる、さらにこれとは別の制裁措置も今後行われると述べるとともに、記者の質問に答え、東地中海でのトルコ艦艇のプレゼンスは大きくなると述べた。
 このトルコ・イスラエルの関係悪化は昨年5月に発生したマヴィ・マルマラ号事件(封鎖下のガザに人道支援物資を届けようとした船をイスラエル軍が急襲し、トルコ人8名とトルコ系米国人1名が死亡した事件)に関し、イスラエルが自己の行動の正統性を主張し、謝罪を拒否していること、それにトルコ側が怒っていることを直接の背景としている。
この事件について国連は調査を行い、ガザ封鎖は正当な理由があるが、イスラル軍は過剰な武力行使を行ったとしている。
米国は中東での重要な同盟国であるトルコとイスラエルの間の危機を緩和するために種々の仲介を行っているようであるが、成果が出ていない。9月6日、国務省ヌーランド報道官は、「我々は関係の状況を懸念している。両国関係を強化・改善するために我々は同盟国トルコと同盟国イスラエルと何カ月間も一緒に働いて来た。我々はいまでも両国間のよいパートナー関係がそれぞれの国の利益であると信じており、その目標のために両国と引き続き仕事をしていく」と述べている。

2、 トルコは最近中東イスラム諸国での影響力を強めて行くことを政策目標としている。
その目標を達成する上で、対イスラエル強硬姿勢は有効である。サウジをはじめとするアラブ諸国はトルコの対イスラエル強硬姿勢を歓迎しているところがある。トルコのアラブ諸国での信頼の向上にこれは役立っている。そのことを考えると、このトルコの姿勢は簡単に変わりそうもないと見られる。
 イスラエルは今回のエルドアン声明にもコメントを控え、トルコとの論争を避けようとしている。

3、 「アラブの春」の動乱の中で、トルコはアサッド後のシリヤでのありうべき影響力などアラブ諸国での影響力を増加させている。トルコは、またイラクやイランとの関係での影響力も増加させている。米としても、そういうトルコを重視せざるを得ない状況がある。米はイスラエルのためにトルコに強い圧力を加えることに躊躇している。
更に9月4日には、米の対イラン・ミサイル防衛のためのレーダーのトルコ領内設置をトルコは正式に認めたと発表されている。米のトルコ関係はイスラエルとの関係のよってのみ左右出来るようなものではなくなっている。

4、 私は中東情勢をみる際に、トルコ、アラブ、ペルシャ、ユダヤの4民族の確執として見る視点が必要であると考えてきたが、そういう視点は今後更に重要になる。
(文責:茂田 宏)

アフガン情勢

アフガン情勢

1、 9月4日付ワシントン・ポスト紙は「アフガン軍の脱退率、上がる。2011年前半、7名中、1名が辞職。高官は貧弱な指導が理由としている。また、政策として脱退兵士への処罰は禁止されている」との見出しで、概要次の通り報じている。
 NATOの統計によると、本年前半、7名の兵士のうち、少なくとも一人が辞職した。2万4千名以上が職務を離れたが、これは昨年の倍以上である。6月だけで、5千名以上が辞職した。
アフガン政府は兵士の募集を容易にするために辞職しても処罰はしないとの政策をとっている。アフガン軍参謀長カリミはこの制度を変える必要があるとしている。アフガン軍とNATO軍は約20万の兵士よりなる軍を作るとの目標は達成可能としているが、そのためには辞職率の低下が必要である。
米軍もアフガン軍も辞職率の高さは指揮官によるとしている。腐敗し、給与、食事、休暇をきちんとしない指揮官の部隊での辞職率が高く、戦闘任務の多さと辞職率には相関関係はないとしている。
NATOの訓練司令部は月当たり1,4%の辞職率は受け入れ可能であるが、7月には2,2%にもなっており、そういうことが続くと問題であるとしている。

2、 9月1日付ワシントン・ポスト紙は「アフガン警察、死傷の矛先を受ける」との見出しで、概要次の通り報じている。
 アフガン国家警察はアフガン兵士、NATO兵士よりはるかに高い死傷者数を出している。昨年、1555名の警官が殺されたが、これはアフガン兵士の死者数の倍以上である。警官の数が兵士の数より3万5千名少ないにもかかわらずである。ちなみに米軍死者は昨年474名である。
警官は兵士より少ない訓練しか受けず、装備も劣り、賃金も低い。タリバンとの戦いでいまのところ、最も弱い部分である。
NATO訓練司令部は警察に装甲車両(ハンビー)3400台を供与すること、訓練期間を6週間から8週間にすることを決めた。
アフガンの警察は防衛の第1線で脆弱な場所にいる。彼らは暗殺を狙われているアフガン高官を警護している。危険な道路でチェック・ポイントを運用している。それでタリバンによく狙われる。警察官の一人は「自分たちは法と秩序を守るのが仕事なのに、前線に出されている。これは警察の仕事ではない」と述べた。
しかし警察官の辞職率は兵士よりずっと低い。6月、5027名の兵士が辞職したが、警官の辞職者は2043名であった。
ただし警察はお金を巻き上げる、地方ボスの指令に従っているなど、評判はよくない。

3、 米・NATO軍は2014年までに治安維持権限をアフガン側に移譲し、撤退することを目標としている。しかしアフガン軍とアフガン警察の状況は上記記事に見られるように、治安維持権限を任せられるまで育成できるか否か疑問がある。
 撤退は既定路線であるが、アフガンは撤退後、内戦状態になる蓋然性がある。
ただタリバン側にも兵士が指導者に不満を持ってきており、士気が落ちてきている兆候もある。9月1日付USA トゥデイ紙は「米、タリバンをひっくり返す“時”を掴む。武装勢力の士気低下を利用する希望」との記事を掲載している。タリバンの通信を傍受した結果、タリバン兵士が指導者が見捨てたとの不満を述べていることが判明したとの記事である。しかし米軍などの撤退が見えている中で、これまで持ちこたえてきたタリバンの士気が急に下がることは想像しがたい。
米国内ではCIAが、アフガン情勢は膠着状態であるとの悲観的な報告書を提出した由。軍はもっと状況はよいとCIAとは異なる意見を述べている。アフガンでの司令官であったぺトレイアスが近くCIA長官に就任するが、ぺトレイアスはCIAの分析は悲観的に過ぎるとの意見を表明している。ぺトレイアス長官のもとで、CIAがどういう意見を出すか、今後注目されることになるだろう。
ベトナム戦争の際にも、CIAの悲観論と軍の楽観論が対立したことがあったが、結果的にはCIAが正しかったと言うことには大筋ではなっている。
(文責;茂田 宏)

アッラー・アクバルについて(雑感)

1、 1979年のイラン革命の際、テヘランではアッラー・アクバル、神は偉大なりの叫び声が町中にあふれた。ホメイニが帰国し、イランでのイスラム革命が起こった。それでこのアッラー・アクバルのスローガンとイスラム原理主義の台頭を結びつける人が多い。
 しかし今回の「アラブの春」でも各地でアッラー・アクバルは叫ばれている。リビヤでもシリヤでもエジプトでもそうである。他方、イスラム原理主義が「アラブの春」を主導している勢力であるとはとても言えない。なぜ、「アラブの春」でもこのスローガンが叫ばれているのか。
私の考え方をいうと、このスローガンは独裁者に対してあなた方は絶対的な権力者である資格を何らもたない、絶対的なのは神しかいない、独裁者も単なる人間にすぎないということを言っているのであって、それゆえにこのスローガンは革命のスローガンになるのだということである。
このスローガンはイスラム原理主義にもつながるが、人間の平等や人間の運営する政府は制約された権限しか持ちえないとの考え方にもつながる。
 後者の考え方は民主主義に親和的なものであると考えてよい。
 欧米のキリスト教徒はこのスローガンの中にイスラム原理主義の危険をみがちであるが、これはキリスト教がイスラムに対して持つ偏見の現れではないかと考えられる。

2、 人間はすべて平等であるとの思想は、ユダヤ教にはじめてあらわれたのではないか。要するに神の前で人間は平等であるとの思想がユダヤ教にはある。
 儒教では、いわゆる5倫が説かれる。君臣、父子、夫婦、長幼、朋友の5関係である。このうち、平等なのは朋友関係だけである。人間平等の思想はここにはない。
 ヒンズー教やその変種ともいうべき仏教にも、徹底した人間平等思想はない。ヒンズー教のカースト制度を見れば、明らかである。
 さらにこれもユダヤ教から来るが、ダビッドであれ、ソロモンであれ、神の教えに背く場合には、その統治の正統性はなくなるのみならず、神に対する冒涜はユダヤ民族全体に災禍をもたらす可能性があることになっている。
 神との関係で救済を得るべき民衆はその救済を得るがために、施政者の神の教えに背く行動を止めさせなければならないし、そうする権限があるとの思想がある。これは人間による政府の権限を厳しく制約する思想である。
 イスラムはこのユダヤ教の考え方を受け継いでいる。従って個人崇拝に近いような独裁がイスラム圏で成立してきたこと自体、イスラムの教えからの逸脱であったとも考えられる。
 アッラー・アクバルの叫びが個人崇拝や独裁の否定につながる革命のスローガンになるのは、そういう意味で自然なのではないかと思われる。

3、 私の上記の考え方は最近考えていることである。神学とその政治への影響についての私の知識は極めて限定的であるが、一つの問題提起として受け取っていただければと考えている。
(文責:茂田 宏)

シリヤの大量破壊兵器

シリヤの大量破壊兵器

1、 8月29日付ワシントン・ポスト紙は「アサッドの化学兵器庫が恐怖を呼び起こす。
政治的混乱が致死的在庫についての新たな懸念に火をつける」との見出しで、概要次の通り報じている。
2008年、国務省の秘密の公電はテロを支援するある中東の国の化学兵器について警告をしたが、この国はリビヤではなく、シリヤであった。
シリヤ政府の突然の崩壊はこの兵器についての統制が壊れることを意味しかねないと米高官は述べた。リビヤの化学兵器庫は第1次大戦で使われたマスタード・ガスが取り扱いにくい缶に入ったものであるが、シリヤは致死的化学剤を保有しており、それが数千の大砲の砲弾や弾頭の形になっている。シリヤはマスタード・ガスではなく、サリンを持っている。東京地下鉄でのテロで使われたもので、水や食料を汚染するためにも使いうる。分析者はアサッドがテロリストに意図的に化学爆弾を渡すか、疑問であるとしている。しかしシリヤの治安機関が反乱の混乱の中で壊れる際に、治安機関が確保しているこれらの兵器が行方不明になる怖れがあるとされている。
シリヤは1970年代にイスラエルへの戦略的抑止力として化学兵器をロシアの技術を使って開発してきた。化学兵器禁止条約への署名を拒否してきた。CIAはシリヤがサリン弾頭を持っており、VX弾も開発していたと評価している。
2000年代初め、専門家はシリヤの化学兵器庫が多分世界で最大であり、数十トンに上るほか、スカッドミサイルやより小さいミサイル、ロケット砲、小爆弾などの運搬手段を保有していると見ていた。
中東諸国の中には、多くの通常兵器を持つ国がある。また研究用原子炉をもつ国もある。この原子炉の燃料はいわゆる「汚ない爆弾」の材料になる。
リビヤについては、その化学剤は安全に確保されたようで、8月26日、米国務省はその旨の声明を出した。リビヤでは、肩に担いで発射し得る対空ミサイル(MANPAD)を含む通常兵器がより大きな問題である。いままで米が破壊しえたMANPADは5発に過ぎない。

2、 シリヤの混乱が深まる中、欧米ではシリヤの化学兵器が不適切な集団の手に落ちない
ようにとの問題が大きな問題として認識されてきている。CIAをはじめとする情報機関はいざという時にこの化学兵器をどう確保すべきか、頭を悩ましている。
 リビヤでも同じ問題があるが、シリヤの問題は化学兵器の量も多く、より深刻である。なおシリヤの化学兵器はソ連で核兵器をKGBが管理していたように、軍というよりも
情報機関が管理しているのではないかと思われるが、実態はよくわからない。

3、 アラブ諸国はアサッドの弾圧について強い懸念を表明している。その結果、アサッド
を支援しているイランの評判がアラブ諸国の民衆の間でつるべ落としと言ってよいほど、低下してきている。これは今後、イランの支援を受けるハマスやヒズボラの評価の低下につながる可能性がある。
(文責:茂田 宏)


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