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中国の軍事力に関するペンタゴン報告書:2011年版
1、 8月24日、米国防省は恒例のペンタゴン報告書(Military and Security Developments involving the People’s Republic of China(2011年版)を議会に提出した。(2009年までは、中華人民共和国の軍事力という表題であった)
それにあわせ、シファー国防次官補代理(東アジア担当)が記者ブリーフを行った。その概要、次の通り。
 
 この報告書は国防省が議会に提出しているが、米政府全体で調整されたものであり、広く米政府の見解や見通しを反映している。
今年の報告書は中国の進化しつつある海洋戦略と外国との軍事的関与についての新しい部を含む、いくつかの話題について新しい情報を含んでいる。
最初に米中関係についてのいくつかの一般的コメントをし、その後、報告書自体を概観する。
 米は国際的なルールや規範に貢献し、アジア・太平洋および世界の安全保障と平和を強化するような強い繁栄し、成功する中国を歓迎する。米は共通の世界的な挑戦を取り扱い、共有する利益を増進することを可能にする肯定的、協力的、包括的な中国との関係を追求している。
中国の増大する軍事能力は中国が平和維持活動、対海賊対策、人道援助、災害救援など、国際的な公共財の提供に貢献することを可能にした。しかしながら中国の継続的な軍事的投資のペースと規模は中国が地域的な軍事バランスを潜在的に不安定化し、誤解と計算違いの危険を増やすと我々が信じる能力を追求することを可能にし、地域での緊張と心配をもたらす可能性がある。
このような能力は外交的な有利さを得るため、自己の利益を推進するため、また紛争を自分に有利なように解決するため、軍事力を使う北京の選択肢を増大させうる。
これは米中間で継続的で信頼性ある軍事当局間対話や軍事安全保障対話を行うべき論理を強めるし、それで我々米中は協力的な関係などのためにある種の透明性と戦略的理解を得ることが可能になるだろう。この報告書は分析としてのみではなく、米中間で対話や議論で取り上げられるべき一連の問題を提起したものと読まれるべきである。中国側にも提起したい問題があろう。我々はそれらについて話し合うことを歓迎する。
我々は人民解放軍が2020年までに近代的で地域的な焦点をを持つ軍事力を作るという目標を達成する軌道上に引き続きいると信じている。しjかし中国が遠距離で軍事力を維持する能力は今日では限られたものである。
8月10日、中国は空母の試験航海を行った。我々は2012年までに空母は運用段階になろうが、空母から航空機の運用にはその後何年かかかると評価している。
中国は原子力潜水艦と通常潜水艦を増強している。これは新型の水上戦闘艦で補完されており、対地、対空戦能力が改善している。
 海南島での大きな海軍基地の建設は終わった。この基地には弾道ミサイル、潜水艦、空母を含む大規模戦闘艦を置くことが出来る。
 中国は空軍力を引き続き強化している。1月、中国は次世代戦闘機J−20の試験飛行を行った。これはステルス性などを備えた戦闘機を作ろうとする中国の願望の表れである。
 中国は宇宙にも力を入れており、2010年には15回の宇宙ロケット発射を行った。
 台湾海峡をはさむ両岸関係は改善したが、中国が海峡有事に備える準備をスローダウンしている兆候はない。台湾に加え、中国は海洋領土の主張に優先順位を与え、地域での海軍力のプレゼンスを増やしている。
 中国は3月4日、軍事予算の12,7%増を発表した。20年以上の継続的な軍事費増である。
 米中が軍事分野で対話を継続することは大変重要であると考える。

2、 私は友人と共に中国の軍事力についてのペンタゴン報告書2009年版を翻訳・出版した。
中国が大変な勢いで軍拡をしていると言うことを知らせたいと思ったからである。2010年、2011年の報告書も中国の軍拡が続いていることを指摘している。
日本に対する影響も無視できない。
この報告書は英語ではあるが、ペンタゴンのサイトで読むことが出来る。

3、 中国国防省はこのペンタゴン報告書が出るたびに、中国の脅威を米が煽っている、事実に
合致しない記述が多いなどと述べ、反発するのがこれまた恒例になっており、今年もそうしている。
 今年は特に米国の軍事費が中国を大幅に上回っていることを指摘して、そういう国から批判される謂れはないと言う点を強調している。
(文責:茂田 宏)

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中国によるサイバー攻撃

1、 8月25日付ワシントン・ポスト紙は「サイバー攻撃に関する中国の否定、損なわれる。
ビデオ映像は米にいる反体制派のウエッブ・サイトが標的になっていることを示す」との見出しの記事を掲載している。その概要、次の通り。
 中国中央テレビの視聴者は先月、中国のサイバー兵器の一部を覗き見ることが出来た。ビデオ映像は軍コンピュータ・プログラムを映し出し、その中で米アラバマ州にある法輪功サイトを標的に選び、『攻撃』と書かれたボタンを押す映像が報じられた。これは6秒くらいの映像で国営メディアが作った「サイバーの嵐が来た」というドキュメンタリーのなかにあった。中国はサイバー攻撃をしていると告発されることが多いが、常にそういう告発を否定してきた。
このドキュメンタリーで、ドウ大佐(軍の研究所の研究員)は中国のネットワークを攻撃する能力と防御する能力は組み合わせられなければならず、我々は戦う能力を増大しなければならないと述べた。
専門家は10年以上中国がサイバー戦能力を持ち、強化しようとしていると言って来た。このドキュメンタリーで、ドウ大佐は「ロジック爆弾」を含む数種類のタイプの攻撃を描写した。
専門家はドキュメンタリーに見られる軍コンピュータ・プログラムは特に精巧なものではなく、最新の技術ではないと思われるとしつつも、中国の公的機関が初めて外国にある敵のコンピュータを攻撃する能力と意図を認めたことに意味があると述べた。
これまで中国はコンピュータ・ネットワーク攻撃は国内法で禁止されているとして、中国からのものと思われるグーグル、ロッキード・マーティン、ダライラマ事務所、ドイツ首相府へのサイバー攻撃への関与を否定してきた。専門家は今回のビデオはサイバー攻撃をしている現場を見せてしまったことになるとしている。
法輪功関係者は中国から彼らのサイトが常時攻撃されていると述べている。
このドキュメンタリーはペンタゴンがサイバー戦略を発表した2日後に放送され、ドウ大佐は「オンラインでは前線はない。視聴者も“軍と人民の共同防衛システムの一部”として働くべきであり、それで今後のサイバー戦争のための良い基盤が出来る」と述べた。

2、 日本の警察庁、防衛庁、外務省なども大量のアクセスによってそのサイトが妨害されたことがある。中国のコンピュータから攻撃が行われている疑いがあり、中国側に調査を求めたこともある。
このビデオは中国軍がサイバー攻撃に関与していることを示している。
サイバー攻撃は野放しにすると危険である。特に重要インフラへの攻撃は大きな被害につながりかねない。サイバー空間での行動のあり方について国際的な行動基準を国際条約として作る必要があるように思われる。
〔文責:茂田 宏〕

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カダフィ保有の兵器の行方

1、 リビヤの暫定国家評議会はトリポリをほぼ制圧し、リビヤのカダフィ政権は終焉した。
 本年2月26日付当ブログ記事「リビヤ情勢に関連した一つの懸念」で、カダフィ政権が化学兵器を保有していることなどを紹介した。結局、カダフィ側がこれまで化学兵器を使うことはなかった。しかしこの化学兵器を含め、カダフィ側が保有していた武器はまだ集められておらず、その管理がどうなっているのか、不明である。

2、 8月24日付Yahoo・サイトにAP社の記者2名が「リビヤのもっとも怖い兵器、まだ集められず」との見出しで、概要次のとおり報じている。
 リビヤ政府の兵器在庫には、化学兵器、核物質、3万発程度の肩に担いで発射する対空ロケット兵器(MANPAD)があった。米の情報当局などは、これらがアルカイダやその他の武装勢力の手に入ることを恐れている。
マスタード・ガスやその他の化学物質はトリポリ南東のサイトに腐食しつつあるドラム缶に入れられているとされる。何百トンのウランのイエロー・ケーキがトリポリ東方の核施設におかれているとされる。
米国務省が雇った兵器解体チームが反カダフィ派制圧地域で兵器解体を行ってきたが、マスタード・ガス、核物質、MANPADはまだカダフィ派残党の手に残っている。
8月23日、米国務省報道官ヌーランドは、米はリビヤの統治勢力が大量破壊兵器やその他の資産を完全にコントロールすることを確保するように努めていると述べた。しかし多くの人は、NATOが空爆に頼り現場に人員を派遣していないので、そういうことが出来るか疑問を呈している。
英大使館は、「マスタード・ガス11トンが問題であるが、いまのところ安全な場所で警備されている」と述べた。8月23日、下院情報委員会の民主党議員ルパースベルガーは、アルカイダがこれを入手しようとする可能性があると警告した。
核物質については、2003年のリビヤと英米の合意で、兵器級ウラニウム11,5ポンドは2009年に国外に移された。しかし500−900トンのイエロー・ケーキは残されている。
2003年合意に従い、化学兵器施設は撤去されたが、23トンのマスタード・ガスの破壊は昨年まで始まらず、半分少しが破壊された段階で騒乱になった。その上、化学兵器の前駆物質が1300トンあるとされている。
もっとも緊急の課題はマスタード・ガスが闇市場に流れたり、テロリストの手に落ちたりすることを防ぐことであると当局者は述べている。
なおカダフィはサリン、ソマンなどの神経剤は持っておらず、生物兵器ももっていなかったとされている。

3、 カダフィ政権の大量破壊兵器は米国のイラク侵攻後、カダフィが米英の要求を受け入れ破壊されつつあったが、その途中で今回の騒乱になり、大量破壊兵器とその前駆物質が残った状態で今回の事態になった。早くこれを新政権が押さえないと、大量破壊兵器の拡散、特に過激イスラム主義者への拡散につながりかねない。米などは強く懸念している。
 リビヤにおける大量破壊兵器の量は北朝鮮が保有する量に比べると少ない。
 仮に北朝鮮が崩壊するような場合、核兵器、核物質、化学兵器などをどう安全に掌握しうるのか、大きな問題である。小規模ではあるが、このリビヤのケースは有益な教訓になると思われる。事前に位置情報などを把握し、特殊部隊を派遣して、迅速に抑えることなどを考えておく必要があろう。
 なおMANPADが流出すると、民間航空機への危険が耐え難いほどに上昇するおそれがある。
〔文責:茂田 宏〕

シリヤ情勢

シリヤ情勢

1、 8月18日、オバマ大統領はシリヤのアサッド大統領の退陣を要求するとともに、シリヤの資産の凍結、シリヤからの石油輸入の禁止、米国人がシリヤ政府と取引することを禁止する行政命令に署名した。
ほぼ同時に英キャメロン首相、仏サルコジ大統領、独メルケル首相も連名でアサッドの退陣を求めた。カナダとEUも同様の声明を出した。
オバマ大統領はサルコジとメルケルに8月5日の電話会談でアサッド退陣を要求する考えを述べたが、国務省が制裁措置の準備と国際的に幅広い支持の下に退陣要求を行うべし、特にトルコがシリヤに弾圧の中止と改革の実施を求めているが、その結果を見るべしと主張したので、延期されたとされている。その後、シリヤでの弾圧が続く中、オバマ大統領がトルコのエルドアン首相に電話し、退陣要求を行うことを伝えた後、この声明にいたったということである。
トルコはこの声明には参加せず、未だ退陣要求の時期ではないとしている。

2、他方、国連は国連人権高等弁務官がシリヤ当局による反対派の処刑、拷問、子供への傷害などは人道に対する罪を構成する可能性があるとの報告書を発表して、安保理がシリヤを国際刑事裁判所に付託するように求めた。
8月18日、アサッドはバンキムン国連事務総長の電話に対し軍や治安部隊による治安維持活動は終わったと述べた。しかし現地からの情報ではその後も弾圧は続いているとされている。
国連調査団は近く、シリヤに向かうことになっている。国連安保理も対シリヤでどういう行動が可能か、協議をしている。中露は未だ安保理決議による制裁に難色を示している。

3、 これより前、8月7日にサウジアラビヤはシリヤによる弾圧を非難し、在シリヤ大使を召還し、クエート、バーレーンもその後同様の措置をとった。サウジはいわゆる『アラブの春』には批判的に対応してきていたが、アサッドの弾圧行為が度を外れたものであること、イランがアサッドを擁護する姿勢をとっていることに鑑み、かかる行為に出たものと思われる。
 トルコはイランを通じてもアサッド説得工作を行おうとしている兆候があり、シリヤ問題を巡るサウジ、イラン、トルコの関係は今後の主導権争いも絡み、複雑なものになっている。

4、 アサッド政権はこれまで国際的にはイスラエルを含む周辺地域の各国の利害を上手く操作して、その地位を保つと共に、国内的には少数派のアラワイト派を基盤として、キリスト教徒など少数派の擁護者として振る舞うなど、民族・宗派対立を上手く利用しつつ生き残ってきたが、いまやその戦略に国内的にも国際的もほころびが出てきていると言える。
 国際的には米欧に加え、アラブ諸国からも孤立するに至っている。これは国内の反政府派を鼓舞する効果を持つ。

5、8月21日、アサッド大統領は国営テレビのインタビューに出演、米欧諸国の退陣要求を、「米国などに選ばれたわけではないシリヤ大統領に向けられるべき言葉ではない」と拒否すると共に、軍事介入は「〔米欧に〕耐えられない重大な結果をもたらす」と警告した。また、シリヤの反政府デモは政治的に解決したい、治安状況については、過激化しているが、対処には問題がないとすると共に、経済に関しては、制裁の影響は小さく、国際社会は開かれており、今後我々は東方〔中国、ロシアなどを指すと思われる〕に向かうと述べた。更に来年春には、複数政党制の議会選挙を行うと述べた。
このインタビューはシリヤ・アラブ・ニュースがアサッド大統領が米と西側の政治的、経済的圧力の意味合いとシリヤの将来ビジョンを述べると予告していたものであるが、改革への言及は来年春の議会選挙だけであり、これでは反政府デモが収束するとは思われない。アサッド政権は事態が急速に動いているのに、遅れ気味の対応をしている。諸事情があるのであろうが、革命的状況を統制する能力に欠けているように思われる。
アサッド政権はすぐ崩壊することはないであろうが、今後益々苦しくなることは間違いない。時間がどれほどかかるか、その間、どれくらいの悲劇が起こるか予測できないが、結局アサッド政権は崩壊し、地域の状況に大きな変化が生じることになると思われる。周辺諸国もそれを織り込んで動いていくことになる。
〔文責:茂田 宏〕

リビヤ情勢

リビヤ情勢

1、 (1)8月18日、米NBCテレビは「カダフィ、リビヤを離れる計画を作っている。米情報機関報告はカダフィとその家族がチュニジアに亡命する可能性ありと述べた」と報じた。その報道概要、次の通り。
 当局者は数日以内にもカダフィがリビヤを離れる可能性があるとした。ただそうなるかどうかの保証はないとも述べた。
 反カダフィ派は西方、南方から首都トリポリに迫っており、NATOはトリポリ北方の海上を支配し、カダフィはトリポリで孤立している。反カダフィ派はトリポリを包囲し、燃料などトリポリへの補給を切断しようとしている。
 8月18日、反カダフィ派は石油精製所があるザウイヤ(トリポリ東方30マイル)を基本的に制圧した。更にチュニジアとトリポリを結ぶ道路も反カダフィ派が支配下においた。
トリポリでは、NATOによる爆撃が続いており、市民はトリポリでの戦闘を予測し、逃げ出している。
(2)8月19日付ニューヨーク・タイムズ紙は「リビヤの反カダフィ派はカダフィ軍が逃亡するなか、石油精製所を掌握」との見出しで、反カダフィ派がザウイヤ市を中心部の街路2本を除き、掌握したと報じている。

2、 リビヤでのカダフィ派と反カダフィ派の戦闘は一進一退であったが、ようやく反カダフィ派が優勢になってきている。反カダフィ派も7月28日に軍最高司令官が暗殺されるなど、まとまっていないが、カダフィ側も補給の困難などで弱体化し、崩れてきているのではないかと考えられる。
 カダフィ側の首相、アル・マハムードは反カダフィ側に対し停戦を提案しているとしている。フランスの仲介で、チュニジアのジェルバでカダフィ派と反カダフィ派の交渉が行われているが、これに参加したド・ヴィルパン元仏首相は交渉は難航しているとしている。
 諸情勢を総合すると、カダフィはいまや追い詰められた状況にある。カダフィは徹底抗戦をずっと標榜してきたが、まもなく戦闘を諦め、亡命などの道を選ばざるを得なくなるように思われる。
〔文責:茂田 宏〕


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