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テロ特措法に関連した議論についての雑感

テロ特措法に関連して、テロ問題全般について重要な問題提起がなされている。これらの問題のいくつかについて、私の考えは次のとおり。
1、 「貧困がテロの原因である、民生の向上に力をいれるべきである」
一言でテロというが、テロには、オウム真理教のテロ、日本赤軍のテロ、米のウナボナーやマクベイのテロ、パレスチナのテロなど、色々な種類がある。テロを引き起こす組織ごとに、その動機も異なる。各組織について、その生成過程、主張を調べてみないと、動機や原因についての判断はできない。
現在、最大の問題は、アル・カイダなどのイスラム過激派のテロである。オサマ・ビン・ラーデンは、1996年8月23日、ユダヤと十字軍に対する宣戦布告(ジハード宣言)を行った。そこで、オサマは、イスラム教徒にユダヤ、十字軍の侵略からイスラム共同体を守るために、防衛ジハードに立ち上がるように呼びかけた。同時に、オサマは全イスラム教徒を糾合したカリフ制の共同体の復活という壮大な目標をこの宣言で主張している。
このテロについて、貧困が原因であるというのは的外れである。
オサマ自身、サウジで最大の建設会社の御曹司であり、もともと大金持ちである。その仲間、アイマン・ザワヒリは、エジプトの小児科医である。
貧乏人に貧乏での苦労のほか、テロの責任まで負わすのは酷である。
テロとか、革命運動というのは、一般的には、教育のある中産階級の運動である。
2、「テロとのたたかいにも拘わらず、テロはなくなっていない、増えているではないか」
テロを撲滅するなどという人がいる。しかしテロという事象は、人間の歴史と同じくらい古い。これを撲滅することなど、できない相談である。テロがなくなっていないから、テロ対策は意味がないとはいえない。テロ対策は、何もしないでいたら、起きたかもしれないテロを防げれば、成功である。
テロ対策の効果は測定が難しい。ほとんど不可能といってよい。
ブッシュ大統領は、対テロ戦争のおかげで、9・11の再現がないのだと主張している。確かに9・11以降、米で大規模テロはないが、近く起こるかもしれない。欧州その他の地域では起こっている。このような主張は、根拠薄弱である。
他方、テロが増えているのは、今のテロ対策が間違っているからだとの主張がある。この主張も、根拠薄弱である。アフガンでのテロ状況だけを考えても、イラク戦争の影響、オサマのアピールの訴求力、アフガン・パキスタン国境地帯でのパキスタンの統治能力、アフガン政府の統治能力(特に軍、治安警察の能力向上)など、多くの要因の関数である。テロ対策がなかったらどうであったかを測定しないと、はっきりしたことはいえず、かつその測定はほとんど不可能である。
これまでのテロ対策は、テロ組織指導部の逮捕・殺害、航空保安の充実などで、テロ組織の活動を困難にし、一定の成果を収めたが、まだまだテロの脅威は続いている状況にある。テロ対策の効果、テロの脅威はともに正確には測りがたいが、テロと戦い、犠牲者を出さないようにする努力はしなければならない。これが常識的判断である。
イスラエルは、建国以来、テロの脅威にずっと直面してきた。ダガン将軍(現モサド長官、私が大使であった時、内閣の対テロ調整官)は、「テロとの戦いはボクシングのようなものだ。通常、ポイントを多く得たほうが勝つ」と述懐していた。
3、「テロに軍事力で対応しようとするのは間違いである、かえって事態を悪くする」
イスラム過激派によるテロは、政治・社会・宗教的事象である。これは、軍事力だけで対応できるようなものではない。テロ組織は、「見えない敵」である場合が多い。そういう敵に軍事力は使いようがない。
ただ、軍事力の役割がないかというと、そうでもない。テロ組織が訓練基地を設けている、武器貯蔵庫をもっている、タリバンが集結しているなどの場合、それを攻撃するのは、効果がある。イスラエルでは、テロのインフラ破壊ということで、そういう作戦をして、効果を挙げている。
しかしテロ対策の主流は、テロ組織側の動向を把握する情報活動(見えない敵を見えるようにする努力)、イスラムの中での思想闘争(オサマなどの主張がイスラムの教えに反するという教宣活動)、イスラム過激派がそのアピールの根拠としている問題(パレスチナの占領、イラクの占領など)の解決など、におくべきであろう。また防御、攻撃の色々な手段の組み合わせ、短期・中期・長期の対策の組み合わせが必要である。
情報が不正確で誤爆をして、民間人を巻き添えにし、現地の反発を買うようなことは、事態を悪化させる。特に空爆はそういう事態を招きやすい。海上阻止活動は、軍事力使用としては、民間人を巻き添えにしない適切な活動である。
なおイスラエルはテロを戦争と同様のものと捉え、先制攻撃は許されると考えている。米国も似た考え方である。他方、テロは犯罪であって、刑事司法の問題という考え方の国も多い。
4、「テロ組織と話し合うことで、テロを減少させられるのではないか」
アフガンのカルザイ政権は、タリバンとの話し合いを模索している。タリバンが一枚岩でないとの想定に基づき、敵の分断のために、こういう姿勢を示すことにはメリットがあるとしている。米は反対している。
テロ組織にもいろいろあり、状況にもいろいろあり、ケース・バイ・ケースである。
パレスチナの場合のごとく、民族的要求を行い、その手段としてテロを行っているようなケースでは、話し合いで合意に至る可能性がある。
アル・カイダとその影響を強く受けたタリバンの場合は、その要求が、イスラム圏からの米・欧勢力の撤退、カリフ制のイスラム共同体の復活という壮大な目標であり、合意を達成する可能性はない。戦術的な交渉を使うかどうかは時宜による。
5、「イラク戦争は、テロの状況を悪化させたのではないか」
これはそのとおりである。イラク戦争のおかげで、イラク、アフガン地域を含め、テロは顕著に増えた。イスラム共同体が十字軍の侵略を受けているというオサマの主張を裏書するものと捉えた中東の人々は多く、米を撤退に追い込むべしとのアピールの訴求力が増した。しかしサダム・フセインを放置しておくほうがよかったともいえない。
イラク戦争は、地域の不安定要因、サダムの排除という成果は挙げたが、テロの増大を招くという大きなマイナスを伴った。そのプラスとマイナスの比較をどう評価するかである。イラクは、米が、戦後イラクへの対応を誤り、泥沼になっている。イラクについては、その戦争開始の判断の是非(開戦理由であった大量破壊兵器はなかったなどの問題)と米がいま撤退した場合に生じる事態の問題は、別の問題として考える必要がある。
6、「イスラム過激派は、日本を標的にしておらず、テロとの戦いに参加することで日本へのテロ脅威は増大しているのではないか」
オサマは、ユダヤ、十字軍の侵略への防衛ジハードを主張し、もともと日本を敵視していなかった。彼は、トヨタのランド・クルーザーを使っていたが、あるジャーナリストに質問され、これは彼が敵視する「西側」の車ではないからと述べたことがある。しかしアフガン、イラク戦争への日本の協力に関連し、オサマは日本を敵視すると発言している。
そのような問題はあるが、国際社会が全体として取り組むとされているテロとのたたかいから、日本のみ離脱する選択はない。
イスラム過激派は、世界への自らの主張の発信のため、洞爺湖サミットにあわせて、日本でテロを企画する可能性がある。英でのグレン・イーグルズ・サミットのときに、ロンドンでテロを起こした。
7、「テロとの戦いというのは、テロは闘争の手段に過ぎず、おかしいのではないか。」
この指摘はそのとおりである。イスラム過激派など、敵と戦うのであって、テロを含む闘争の手段と戦うのではない。米の言い方にはその点の明確さが欠けている。
米国内でも、この議論はあり、GWOT(global war on terror)をSAVE(struggle against
Violent extremism)と呼びかえることが検討されたことがある。ブッシュ大統領が最終段階で反対、その言い換えは実現しなかった。
(文責;茂田 宏)

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