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ミヤンマー情勢とそれへの対応
1、 10月1日、中国外務省副報道官は中国とミヤンマーが協力して進めてきた北部カチン州の水力発電用ダムの建設をミヤンマーのテインセイン大統領が中断する方針を示したことに反発し、中国企業の法的権益を保障するようにミヤンマーに要請するとの談話を発表した。
このイラワディ川のミッソンダムについては、カチン族との紛争につながり、立ち退きを求められる住民の反発、環境破壊になるとの反対論も根強くあった。これを受けてテインセイン大統領が決定したものと思われる。
テインセイン大統領の方針は中国・ミヤンマー間の関係に影響を与えている。
2、 昨年11月、ミヤンマーでは選挙が行われ、2011年3月にテインセイン大統領が就任し、これまでの軍政に変わって「民政」政権が成立した。
この政権はアウンサンスーチーを釈放し、7月、8月にはスーチーと政権側のアウンチー労働大臣の会談が行われ、8月には大統領とスーチーの会談も実現した。
9月22日には、上院議長がスーチーの議会参加を歓迎すると述べている。
9月30日にもスーチー・アウンチー会談が行われ、「恩赦計画」(内容不明、ミヤンマーには2000人以上の政治犯が拘束中とされ、米などはその釈放を求めている)についての話し合いがなされたとされている。
更に10月7日、ミヤンマー報道検閲部門トップ、テインスエ情報省検閲部長が『自由アジア放送』に『検閲は廃止されるべきである』と述べたと報じられている。
3、 昨年11月の選挙は公正に行われたものとは思われないし、その選挙が行われた基礎であるミヤンマー新憲法も、議会の上院も下院も議員の4分の1は軍司令官が指名することになっている。軍が実権を引き続き掌握しようとしていることに変化は無い。スーチーが率いる国民民主連盟(NLD)は昨年の選挙をボイコットし、政党登録を取り消されたままである。
しかしミヤンマーで民主化の動きとは言えないまでも、軍政下では考えられなかった変化が出てきているのは確実である。
4、 ASEANはミヤンマーを2014年のASEAN議長国にするかどうかを議論している。これらの変化については、2014年のASEAN議長国就任を狙ったPR以外の何ものでもない、本当の改革ではないとして、ミヤンマーへの制裁を継続すべしとの論も米などには根強い。
しかし、これまで制裁はミヤンマーの改革につながらず、ミヤンマーを中国側に押しやる効果をもってきた。ミヤンマーの国内政治に外部から影響を与えることは至難であること、至難なことを民主主義の原則を振りかざして押し付けようとして、国際政治の面ではミヤンマーの中国依存や中国のミヤンマーでの影響力強化を深めてきたことがあったと言える。インドやASEANは軍政とも対話する姿勢を示し、この国際政治上のマイナスを減らそうとする傾向を示しているが、米国は軍政への対決姿勢をとってきた。
現在生じているミヤンマー国内での変化が不十分であるとして制裁を継続するのか、ミヤンマーが中国との関係で問題を抱え始めた今、この変化に肯定的評価を与えて奨励して行くのか、諸要素を勘案し、よく考えるべき問題である。
私はミヤンマーを中国に押しやるのではなく、ASEAN、さらにインドや日本に近づける政策が適切ではないかと考えている。ミヤンマーの国内政治よりも国際政治上の利害得失を優先して考えることが、ミヤンマーの国内改革にもつながる可能性がある。民主主義の原則を守ることにならないし、上手く行かない危険もあるが、今の政策の継続よりはその方が害が少ない。
〔文責:茂田 宏〕
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