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中東情勢

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イランの国際的孤立と制裁

1、 11月29日、在イラン英国大使館にデモ隊が乱入し、器物損壊などを行った。外国大使館の安全を保証するのは外交関係に関するウイーン条約上、接受国の責務である。イランはこれに違反した。
 11月30日、英国はこれへの報復として在英イラン大使館の即時閉鎖と外交官全員の48時間以内の国外退去を命じ、イラン外交官は全員英国を離れた。英のとった行動は当然のことである。特に大使館襲撃は民兵組織「バシジ」が中心になっており、この民兵組織はイラン政府の手先のような役割をしてきた。イラン政府は襲撃への関与を否定しているが、説得力に欠ける。
12月1日、EUは外相理事会を開催し、制裁を強化することで合意した。とりあえずこれまでの制裁対象を拡大し、今後さらなる追加制裁を検討するとしている。
仏、独、蘭、伊も在イラン大使を召還した。
米国もイランへの追加制裁を検討し、12月1日には、米上院はイラン中央銀行と取引のある金融機関が米国内で金融活動を行うことを禁じる法案を可決した。
 ただし欧州諸国は核問題その他での交渉の必要があるということで、外交関係の断絶にまでは踏み切っていない。

2、 イランはこれらの制裁措置を不当として報復を示唆しているが、政権に関係がある組織が国際法上保護されるべき大使館を襲撃したと言う事件であり、イランは報復ではなく、謝罪を検討すべきである。

3、 12月1日、コーエン米財務次官は議会で日、伊、中、韓、印の国名を挙げ、イランからの原油輸入を減らすように求める意向を表明した。
 経済制裁は、経済関係は基本的には互恵の関係であるので、被制裁国にとっても、制裁実施国にとっても経済的には損失を与える。
 原油購入をやめるとの制裁は、制裁のコストを主として上記の国に与えることになる。
ホメイニ革命後、米大使館がデモ隊に占拠され、大使館員が人質になった際にも、対イラン制裁が行われた。この時も、イランへの輸出を止めるのではなく、イランからの原油輸入を止めるべしということを安保理決議の内容とするようにEUが決議したことがあった。当時、日本の石油の10%以上がイランからの輸入であり、こういう制裁になると、日本が他国に比べ制裁に伴う損失のかなりの部分を被ることになる。私は経済局でこの問題を担当していたが、石油輸入停止ではなく、対イラン輸出に重点を置いた制裁にすべしということで、大来外務大臣が急きょ欧州に行き、各国を説得したことがあった。結果として日本の主張を入れてもらったことがある。今回の件についても、制裁に伴う制裁国の損失の平準化は日本として求めるべきであろう。
現在の日本の対イラン石油依存度はまだ10%もある。
なお対イラン輸出をやめる制裁に持ち込み、各国の負担の平準化を図ったが、日本では中部地方でホメイニの顔を焼き付けたお皿が大量にイラン向け輸出商品として生産されており、業者はこれを廃棄せざるを得ない羽目になった。ホメイニの顔入りの皿はイラン以外には売れなかったからである。
経済制裁実施に際してはこういう問題もあり、各国はどういう制裁にするかを国益を踏まえて争うことがあるということである。日本の国際社会での地位は最近つるべ落としに落ちているが、これは単なるイメージの問題ではなく、そういう状況は国益を守る日本の能力を阻害し、実害のある問題である。
(文責:茂田 宏)

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イスラエルへのカチューシャ・ロケット攻撃

1、 11月28日、レバノン南部より、イスラエルに向け、カチューシャ・ロケットが2発、発射された。アブドラ・アザム部隊と称する組織がこの攻撃を行ったと発表した。ヒズボラは沈黙している。
 イスラエル軍は報復としてレバノン領を砲撃した。しかしヒズボラの陣地があるところではなく、何もない野原に砲撃を行ったとされている。

2、 この事件は大きな衝突に発展する可能性は低いと思われるが、南レバノンには、色々な武装組織が存在し、かつシリヤの諜報機関も入り込んでいる。シリヤ側の同意なしにかかる攻撃がなされることは考え難い。
アラブ連盟は11月12日、シリヤの加盟資格を停止、11月16日には暴力の停止、都市部よりの軍の撤退、それを監視する監視団の受け入れを求め、11月19日までにシリヤ側が受け入れない限り、制裁を検討するとした。その後、11月24日には、3日以内にアラブ連盟の要求への回答がない場合、制裁すると通告したが、シリヤがそれを無視したため、11月27日、緊急外相級会合を開催、シリヤ政府幹部によるアラブ連盟加盟国への入国禁止、シリヤ中央銀行、政府との金融取引禁止、シリヤ政府対外資産の凍結、シリヤ民間航空機の乗り入れ停止などの措置を発表した。これはかなりきつい制裁措置である。シリヤの隣国、レバノンとイラクはこの決定の投票で棄権した。
アサッド政権として、この状況を打開する道はいくつかあるが、一つはアラブ連盟の要求を受け入れることである。今一つはイスラエルと事を構えて、イスラエルによるレバノン攻撃、さらにシリヤ攻撃を挑発し、イスラエルの攻撃にさらされているシリヤ、レバノンへの支援をアラブ諸国に強要する、あるいはアラブ諸国の世論にイスラエルと戦っているシリヤ、レバノンへの支援の声を上げさせることである。
国内的にもイスラエルとの紛争は国内での弾圧から国民の注意をそらせる効果がある。後者の選択をとる場合、イスラエルとレバノン・シリヤ間での武力衝突になる。
今回の事件は多分、シリヤが後者の選択の可能性があることを地域諸国に知らしめる狙いで惹き起こしたか、同意を与えたかであるとも思われる。
イラン、ヒズボラがどう判断するかの問題もある。
イランは国際原子力機関が核開発をしている疑いがあるとの報告書を発表した後、欧米諸国は新しい制裁を課している。イランにもイスラエル問題をその核の問題を含め、プレイ・アップする動機がありうる。
今回の事件はイスラエルと南レバノンの武装勢力間の1回だけの応酬で終わりそうであるが、上記のことを念頭に、イスラエル・レバノン国境の情勢は今後注意深く見て行く必要がある。
(文責:茂田 宏)

イランの核問題

イランの核問題

1、 11月7日付ワシントン・ポスト紙は「国際原子力機関(IAEA)はイランは核能力に近い
と述べる。外国の専門家が決定的な支援を行ったことが判明」との見出しで、IAEAがイランが核兵器のための技術を取得してきているとの報告書を近く発表する予定であると報じている。
 この報告書では、ソ連の核兵器専門家ヴィアチェスラフ・ダニレンコが1990年代にイランとの契約に基づき5年間支援を行ったこと、北朝鮮とパキスタンのカーン博士のネットワークが兵器の設計や中性子発生機などで協力したことを指摘している由。
また、11月7日付ニューヨーク・タイムズ紙は「査察官がイランの核計画について報告書を準備する中、米は正面に出ないようにしている」との見だしで、IAEA報告書がイランがパルチン軍事基地で内向高性能爆薬(核分裂を惹き起こすために核物質を爆縮する技術)について作業しているとの事実を明らかにする予定であると報じている。
この報告書について、中露は天野IAEA事務局長に対しイランを追い詰めないようにこの報告書の公表を控えるようにとの申し入れを行ったこともこの記事は明らかにしている。

2、 イランは自国の核開発は発電のためであり、核兵器の取得を目指すものではないとしてき
た。しかしこの報告書はイランが核兵器を作るための関連技術の取得をしようとしていることを明らかにしているとされる。
 この報告書が発表されるとしていつか、そこにどれくらいの証拠が記載されるかはまだよく判らない。天野事務局長も難しい判断を迫られるだろう。
IAEAは技術的な機関であり、あまり政治的考慮をせずに、事実を明らかにする姿勢をとることがIAEAの権威保持のためにも重要であると思われる。それがIAEAの責務でもある。
イランは平和目的の核開発しかしていないと述べてきたが、もしそうであれば、そのこと
をIAEAに納得の行く形で示す必要がある。イラン側はこの問題は政治的に取り扱われているとしているが、米やイスラエルの意見はともかく、IAEAの意見を政治的として退けることは国際的にはあまり上手く行かないであろう。
この報告書の発表はイランの核問題のついての論議を今一度強めることになるだろう。
私は、イランは核兵器取得をまだ最終的には決定していない一方、いざと言う場合に短時日で核兵器保有が出来るように準備をしているということではないかと考えている。

3、 なおイランの国内政治については、最高指導者ハメネイとアハマドネジャッド大統領の間
で対立の兆候がある。
イランではペルシャ帝国の歴史を国のアイデンティティとしてどう位置づけるか、それを栄光の歴史とするか、イスラム以前の無知の時代と位置づけるかの問題が常にある。
イラン革命前のシャーはペルシャ帝国の歴史を強調した。ホメイニはそれを否定した。最近、アハマドネジャッドはイランの地域での重要性を強調する中で、ペルシャ帝国の伝統を肯定的に描写している。これにハメネイが怒っているとの情報がある。
イランの新聞には、ペルシャ暦、イスラム暦、西暦がこの順序で掲載している。これがイランのディレンマを象徴している。ホメイニはペルシャ暦を革命直後に禁止したが、国民の祝日がペルシャ暦に沿っていることもあり、いまでは復活している。
(文責:茂田 宏)

ヨルダンとハマスの関係改善

1、 ガザを実質的に支配しているハマスは元々エジプトのムスリム同胞団のパレスチナ支部であるが、その指導者ハリッド・メシャールはダマスカスに居住している。元々ヨルダンにいたが、1999年にヨルダンから国外追放された。
しかし10月31日、ヨルダンのハサウネー首相はこの決定が誤りであったと述べた。
ハリッド・メシャールは近いうちにアンマンを公式訪問し、アブドゥラ国王と会談する予定である。

2、 ヨルダンの王室は由緒正しい王家であるが、アラビヤ半島から今のヨルダン統治のために移ってきた王家であり、ヨルダンの人口の多くはパレスチナ人である。ヨルダン王家はこのパレスチナ人との関係をどう扱うかで悩んできた。
1970年9月にはヨルダンで、治安当局とパレスチナ解放機構(PLO)の間で衝突が起き、結局、PLOはレバノンに移ったことがある。(いわゆるブラック・セプテンバー)
ヨルダンは自国内の治安維持のためには、パレスチナ人の行動を統制する必要がある。そういう観点から、イスラエルともある程度協力してきた。1994年にはアラブの国としては、エジプトに続いてイスラエルと平和条約を締結した。
1997年には、イスラエルのモサッド工作員が、ハリッド・メシャールをアンマンで暗殺しようとして、ヨルダン当局に逮捕された。メシャールの耳に毒を入れて殺そうとした。ヨルダンはこれら工作員の釈放と引き換えにイスラエルに解毒剤の提供などを要求し、結果としてメシャールは一命をとりとめた経緯がある。
ヨルダンは、パレスチナ人のグループとイスラエルの両者をバランスする政策、更にシーア派のイランの影響力の伸長を抑える政策など、綱渡りともいうべき外交を展開してきた。
今回のハマスとの関係改善は、ハマスを通じてパレスチナへの影響力保持のほかに、アラブの春で地域情勢が変化していること(ムバラク後のエジプトでムスリム同胞団の影響力が強くなっていること、シリヤ情勢が不安定化していること、イランがシリヤでの影響力を強めているほか、ハマスへの影響力も強めていることなど)に対応しようとしたものであろう。
イスラエルはハマスをテロ組織としており、このヨルダンの動きは、ヨルダンとイスラエルおよびパレスチナ内でハマスのライバルであるアッバスのファタハとの関係に影響を与えることになる。
他方、ハマスのメシャールは、シリヤ情勢が混迷している中で、ヨルダンとの関係改善を希望したものと思われる。いざと言うときには、再びアンマンに戻ることを一つの可能性として考慮しているのではないかと思われる。
ヨルダン、エジプト、シリヤ、パレスチナ諸派、イスラエルの関係は、今後極めて複雑な展開を示すと思われる。
〔文責:茂田 宏〕

パレスチナ:UNESCOに加盟

1、 10月31日、UNESCOの一般総会はパレスチナを加盟国として承認するか否かの投票を行い、賛成107票、反対14票、棄権52票で加盟を承認した。
 国連加盟国ではない国家の加盟については、UNESCOの執行理事会の勧告および一般総会で出席し投票する国の3分の2の賛同が必要である。棄権国は投票国にならないので、この要件は軽く満たされた。

2、 10月31日、米国務省ヌーランド報道官は次の声明を発表した。

 パレスチナを加盟国として認めるUNESCO加盟国の本日の投票は、遺憾であり、時期尚早であり、中東における包括的で公正かつ永続する平和という我々が共有する目標を掘り崩すものである。米国は独立・主権パレスチナ国家の樹立を支持するとの点で不動である。しかしそういう国家はイスラエルとパレスチナの直接交渉を通じてのみ、現実化される。
米は国連システム全体を通じ、しっかりとした多数国間の関与に強くコミットしている。しかしながら、UNESCOへのパレスチナ加盟は長年にわたる法的な制限の引き金を引き、米がUNESCOに資金拠出することができなくなる。UNESCOへの米の関与は教育,科学、文化、コミュニケーション問題についてわが国益に資するものである。米はUNESCOにおける加盟国の地位およびUNESCOへのコミットメントを維持する。我々は議会と米の利益と影響力が保たれることを確保するために協議を行う。

3、 日本は英などとともに棄権した。私は賛成してもよかったのではないかと考える。
直接交渉でパレスチナ国家が樹立されるのが最も望ましいが、その直接交渉を国際法違反であるとされている入植地建設で駄目にしているのはイスラエルである。
 民族自決権の行使に直接交渉が妥結しないからと言って拒否権を長年にわたって行使し続けるのは無理があると言わざるを得ない。
 米がこういうことでアラブ諸国の不信を買うのは米にとっても得策ではなく、米の投票態度こそ遺憾である。

4、 UNESCOはよい仕事をしている。米は6千万ドルのUNESCO分担金の支払いを止めることになる。イリナ・ボコヴァ事務局長はUNESCOの活動資金が少なくなり、有益な仕事に制約が出てくることに警鐘を鳴らした。
(文責:茂田 宏)

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