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中東情勢

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カダフィ保有の兵器の行方

1、 リビヤの暫定国家評議会はトリポリをほぼ制圧し、リビヤのカダフィ政権は終焉した。
 本年2月26日付当ブログ記事「リビヤ情勢に関連した一つの懸念」で、カダフィ政権が化学兵器を保有していることなどを紹介した。結局、カダフィ側がこれまで化学兵器を使うことはなかった。しかしこの化学兵器を含め、カダフィ側が保有していた武器はまだ集められておらず、その管理がどうなっているのか、不明である。

2、 8月24日付Yahoo・サイトにAP社の記者2名が「リビヤのもっとも怖い兵器、まだ集められず」との見出しで、概要次のとおり報じている。
 リビヤ政府の兵器在庫には、化学兵器、核物質、3万発程度の肩に担いで発射する対空ロケット兵器(MANPAD)があった。米の情報当局などは、これらがアルカイダやその他の武装勢力の手に入ることを恐れている。
マスタード・ガスやその他の化学物質はトリポリ南東のサイトに腐食しつつあるドラム缶に入れられているとされる。何百トンのウランのイエロー・ケーキがトリポリ東方の核施設におかれているとされる。
米国務省が雇った兵器解体チームが反カダフィ派制圧地域で兵器解体を行ってきたが、マスタード・ガス、核物質、MANPADはまだカダフィ派残党の手に残っている。
8月23日、米国務省報道官ヌーランドは、米はリビヤの統治勢力が大量破壊兵器やその他の資産を完全にコントロールすることを確保するように努めていると述べた。しかし多くの人は、NATOが空爆に頼り現場に人員を派遣していないので、そういうことが出来るか疑問を呈している。
英大使館は、「マスタード・ガス11トンが問題であるが、いまのところ安全な場所で警備されている」と述べた。8月23日、下院情報委員会の民主党議員ルパースベルガーは、アルカイダがこれを入手しようとする可能性があると警告した。
核物質については、2003年のリビヤと英米の合意で、兵器級ウラニウム11,5ポンドは2009年に国外に移された。しかし500−900トンのイエロー・ケーキは残されている。
2003年合意に従い、化学兵器施設は撤去されたが、23トンのマスタード・ガスの破壊は昨年まで始まらず、半分少しが破壊された段階で騒乱になった。その上、化学兵器の前駆物質が1300トンあるとされている。
もっとも緊急の課題はマスタード・ガスが闇市場に流れたり、テロリストの手に落ちたりすることを防ぐことであると当局者は述べている。
なおカダフィはサリン、ソマンなどの神経剤は持っておらず、生物兵器ももっていなかったとされている。

3、 カダフィ政権の大量破壊兵器は米国のイラク侵攻後、カダフィが米英の要求を受け入れ破壊されつつあったが、その途中で今回の騒乱になり、大量破壊兵器とその前駆物質が残った状態で今回の事態になった。早くこれを新政権が押さえないと、大量破壊兵器の拡散、特に過激イスラム主義者への拡散につながりかねない。米などは強く懸念している。
 リビヤにおける大量破壊兵器の量は北朝鮮が保有する量に比べると少ない。
 仮に北朝鮮が崩壊するような場合、核兵器、核物質、化学兵器などをどう安全に掌握しうるのか、大きな問題である。小規模ではあるが、このリビヤのケースは有益な教訓になると思われる。事前に位置情報などを把握し、特殊部隊を派遣して、迅速に抑えることなどを考えておく必要があろう。
 なおMANPADが流出すると、民間航空機への危険が耐え難いほどに上昇するおそれがある。
〔文責:茂田 宏〕

シリヤ情勢

シリヤ情勢

1、 8月18日、オバマ大統領はシリヤのアサッド大統領の退陣を要求するとともに、シリヤの資産の凍結、シリヤからの石油輸入の禁止、米国人がシリヤ政府と取引することを禁止する行政命令に署名した。
ほぼ同時に英キャメロン首相、仏サルコジ大統領、独メルケル首相も連名でアサッドの退陣を求めた。カナダとEUも同様の声明を出した。
オバマ大統領はサルコジとメルケルに8月5日の電話会談でアサッド退陣を要求する考えを述べたが、国務省が制裁措置の準備と国際的に幅広い支持の下に退陣要求を行うべし、特にトルコがシリヤに弾圧の中止と改革の実施を求めているが、その結果を見るべしと主張したので、延期されたとされている。その後、シリヤでの弾圧が続く中、オバマ大統領がトルコのエルドアン首相に電話し、退陣要求を行うことを伝えた後、この声明にいたったということである。
トルコはこの声明には参加せず、未だ退陣要求の時期ではないとしている。

2、他方、国連は国連人権高等弁務官がシリヤ当局による反対派の処刑、拷問、子供への傷害などは人道に対する罪を構成する可能性があるとの報告書を発表して、安保理がシリヤを国際刑事裁判所に付託するように求めた。
8月18日、アサッドはバンキムン国連事務総長の電話に対し軍や治安部隊による治安維持活動は終わったと述べた。しかし現地からの情報ではその後も弾圧は続いているとされている。
国連調査団は近く、シリヤに向かうことになっている。国連安保理も対シリヤでどういう行動が可能か、協議をしている。中露は未だ安保理決議による制裁に難色を示している。

3、 これより前、8月7日にサウジアラビヤはシリヤによる弾圧を非難し、在シリヤ大使を召還し、クエート、バーレーンもその後同様の措置をとった。サウジはいわゆる『アラブの春』には批判的に対応してきていたが、アサッドの弾圧行為が度を外れたものであること、イランがアサッドを擁護する姿勢をとっていることに鑑み、かかる行為に出たものと思われる。
 トルコはイランを通じてもアサッド説得工作を行おうとしている兆候があり、シリヤ問題を巡るサウジ、イラン、トルコの関係は今後の主導権争いも絡み、複雑なものになっている。

4、 アサッド政権はこれまで国際的にはイスラエルを含む周辺地域の各国の利害を上手く操作して、その地位を保つと共に、国内的には少数派のアラワイト派を基盤として、キリスト教徒など少数派の擁護者として振る舞うなど、民族・宗派対立を上手く利用しつつ生き残ってきたが、いまやその戦略に国内的にも国際的もほころびが出てきていると言える。
 国際的には米欧に加え、アラブ諸国からも孤立するに至っている。これは国内の反政府派を鼓舞する効果を持つ。

5、8月21日、アサッド大統領は国営テレビのインタビューに出演、米欧諸国の退陣要求を、「米国などに選ばれたわけではないシリヤ大統領に向けられるべき言葉ではない」と拒否すると共に、軍事介入は「〔米欧に〕耐えられない重大な結果をもたらす」と警告した。また、シリヤの反政府デモは政治的に解決したい、治安状況については、過激化しているが、対処には問題がないとすると共に、経済に関しては、制裁の影響は小さく、国際社会は開かれており、今後我々は東方〔中国、ロシアなどを指すと思われる〕に向かうと述べた。更に来年春には、複数政党制の議会選挙を行うと述べた。
このインタビューはシリヤ・アラブ・ニュースがアサッド大統領が米と西側の政治的、経済的圧力の意味合いとシリヤの将来ビジョンを述べると予告していたものであるが、改革への言及は来年春の議会選挙だけであり、これでは反政府デモが収束するとは思われない。アサッド政権は事態が急速に動いているのに、遅れ気味の対応をしている。諸事情があるのであろうが、革命的状況を統制する能力に欠けているように思われる。
アサッド政権はすぐ崩壊することはないであろうが、今後益々苦しくなることは間違いない。時間がどれほどかかるか、その間、どれくらいの悲劇が起こるか予測できないが、結局アサッド政権は崩壊し、地域の状況に大きな変化が生じることになると思われる。周辺諸国もそれを織り込んで動いていくことになる。
〔文責:茂田 宏〕

リビヤ情勢

リビヤ情勢

1、 (1)8月18日、米NBCテレビは「カダフィ、リビヤを離れる計画を作っている。米情報機関報告はカダフィとその家族がチュニジアに亡命する可能性ありと述べた」と報じた。その報道概要、次の通り。
 当局者は数日以内にもカダフィがリビヤを離れる可能性があるとした。ただそうなるかどうかの保証はないとも述べた。
 反カダフィ派は西方、南方から首都トリポリに迫っており、NATOはトリポリ北方の海上を支配し、カダフィはトリポリで孤立している。反カダフィ派はトリポリを包囲し、燃料などトリポリへの補給を切断しようとしている。
 8月18日、反カダフィ派は石油精製所があるザウイヤ(トリポリ東方30マイル)を基本的に制圧した。更にチュニジアとトリポリを結ぶ道路も反カダフィ派が支配下においた。
トリポリでは、NATOによる爆撃が続いており、市民はトリポリでの戦闘を予測し、逃げ出している。
(2)8月19日付ニューヨーク・タイムズ紙は「リビヤの反カダフィ派はカダフィ軍が逃亡するなか、石油精製所を掌握」との見出しで、反カダフィ派がザウイヤ市を中心部の街路2本を除き、掌握したと報じている。

2、 リビヤでのカダフィ派と反カダフィ派の戦闘は一進一退であったが、ようやく反カダフィ派が優勢になってきている。反カダフィ派も7月28日に軍最高司令官が暗殺されるなど、まとまっていないが、カダフィ側も補給の困難などで弱体化し、崩れてきているのではないかと考えられる。
 カダフィ側の首相、アル・マハムードは反カダフィ側に対し停戦を提案しているとしている。フランスの仲介で、チュニジアのジェルバでカダフィ派と反カダフィ派の交渉が行われているが、これに参加したド・ヴィルパン元仏首相は交渉は難航しているとしている。
 諸情勢を総合すると、カダフィはいまや追い詰められた状況にある。カダフィは徹底抗戦をずっと標榜してきたが、まもなく戦闘を諦め、亡命などの道を選ばざるを得なくなるように思われる。
〔文責:茂田 宏〕

シリヤ情勢

シリヤ情勢

1、 シリヤ政府は7月31日から、ハマなどに戦車を派遣し、市民が築いたバリケードを砲撃で破壊するほか、移動する自動車にほぼ無差別に銃撃を加えるなど、極端な弾圧策に出ている。死者の数は150名を越えるといわれるが、はっきりしない。ハマだけで50人を越えるとされている。

2、7月31日、オバマ大統領はシリヤ情勢に関し、次の声明を発表した。
 私はシリヤ政府の自国民に対する暴力と残酷さにぞっとさせられている。ハマからの報道は恐ろしいものであり、シリヤの政権の本当の性格を示している。アサッド大統領は再度シリヤ国民の正統な不満に応える能力も意思も全く持っていないことを示した。彼の拷問、汚職、テロは彼を歴史とその国民の間違った側に置いた。自分自身の行為により,バシャール・アサッドは彼とその政権が過去に属し、街頭でデモを行った勇敢なシリヤ国民がその将来を決めることを確実にしつつある。シリヤは民主主義に移行したときに、よりよい場所になる。
今後、米国はシリヤの政権への圧力を引き続き増加させ、世界の他の国と共にアサッド政府を孤立させるために協力し、シリヤの国民とともにいる。

2、 8月1日、クリントン国務長官もラマダンにもかかわらず、弾圧を続けるアサッド政権を非難し、安保理でシリヤのアサッド政権の弾圧を止めるための安保理決議に反対している国(注:中露が念頭にあると思われる)に再考を促した。
 またEU、トルコ、国連事務総長もシリヤの今回の行動を非難している。
 
3、 8月1日、安保理はこの件について非公開で緊急会合を開いている。

4、 シリヤについては、イスラエルが「良く知っている悪魔の方が未知の悪魔より良い」と言う観点でアサッド体制の崩壊を必ずしも支持しない姿勢を示してきた。しかし今回の戦車などを投入しての弾圧には、国際社会の嫌悪感が強まっており、シリヤ情勢を巡る状況は一つの転還点をむかえたように思われる。
 中露は安保理決議の採択に応じることはないであろうが、米・NATOにも軍事介入の用意はないであろう。しかし自国民に対してこういう攻撃を行う政権には政権を担う資格はなく、アサッド政権は国際的にも国内的にも孤立化していくであろう。
 シリヤの友邦はイランしかない。
欧米が厳しい態度に出るほか、アラブ諸国はシリヤ・イラン関係の緊密さを好んではおらず、アサッドには反感を持っている。アサッドの国内基盤は少数派のアラワイト派である。多数派のスンニ派が政権に復帰することを周辺アラブ諸国やトルコは好むと思われる。
国際的にも国内的にもアサッド政権はこれまで微妙な均衡の上に成り立ってきたが、それが崩れつつあると判断される。
私はシリヤが民主化の道に踏み出すことはレバノン、イラクを含む地域の安定につながるし、「アラブの春」の進展に良い影響を与え、イラン、ヒズボラに打撃を与えると考えている。イスラエルにとっても悪いことではないと考えている。
〔文責:茂田 宏〕

イランに対する米の金融制裁の効果

1、 7月25日付ファイナンシャル・タイムズ紙は「中国とイラン、石油のバーターを計画」との見出しで、概要次の通り報じている。
 イランと中国はイランの石油と中国の商品と役務を交換する物々交換システムを使うことで交渉している。米の金融制裁が中国の少なくとも200億ドルの石油輸入代金支払いを阻止しているからである。事情通は、中国はイランに300億ドルの石油代金を支払っていないとしている。
イランの関係者は石油の最大の購入者が現金で払わないことに立腹している。これはイランの外貨不足につながり、イラン中央銀行が先月急激に安くなったリアルを防衛することを困難にしている。昨年、中国の対イラン石油輸入は49%増えた。
イランは先週インドを石油輸出を止めると脅かした。インドも50億ドルの代金をエスクロウ口座からイランに移せないでいる。
インドの対イラン輸出はないに等しいが、中国とイランの貿易額は昨年293億ドルであった。今年も中国とイランはインフラ建設や貿易協力協定を締結し、イランはクロム鉱を中国に輸出するとされている。
イランの元高官は「中国とインドは喜んで自分の銀行にイランのお金をとどめており、代わりにイランにガラクタを売るか、またはハード・カレンシーではない元やルピーを受け取らせようとしている。イランはこういう代替案を受け入れていない」と述べた。
イラン側によると、米の金融制裁でイランの銀行は世界の銀行と取引できなくなり、相当な打撃を受けている由。

2、 イランに対する米の金融制裁については、たとえばベネゼラのチャべスがベネゼラの銀行に便宜供与をさせ、中国の銀行からイランの石油代金を受け取り、イランの銀行に回すことにすれば、制裁を回避できるので、穴だらけであるとされてきた。しかしこの報道を見ると、中国の銀行がそういう迂回を嫌うためなのか、制裁回避はそう簡単ではないようである。
イラン側が元の受け取りを拒否しているということであるが、元の国際化はまだまだである。ユーロや円のようなハード・カレンシーではないと見なされている。
イラン・中国間の貿易は昨年40%も伸びているが、今後、この支払い問題が貿易増大への足かせになるだろう。
〔文責:茂田 宏〕


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