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中東情勢

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トルコの総選挙

トルコの総選挙

1,6月12日、トルコにおいて総選挙が行われた。暫定結果がその日に発表されたが、その内容、次の通り。
 公正発展党(AKP)―326議席、得票率 49、91%、共和人民党―135議席、得票率 25、91%、民族主義運動党―53議席、得票率 12、99%、無所属―36議席、得票率 6,3%。総計550議席。無所属の36議席はクルド系政党平和・民主主義党が指名した候補61名のうちの36名である。

2、エルドアン首相の与党、公正発展党が3度目の勝利を収め、エルドアン首相の政権が続くことになった。
ただ憲法改正を国民投票に付すのに必要な330議席にはわずかに届かず、国民投票なしでの憲法改正のために必要な3分の2の議席367には遠く及ばなかった。トルコの憲法はAKP単独では改正できず、現状が維持されることになった。
AKPがトルコをイスラム国家化する意図を持っていると言う懸念が時折表明されたが、この議席数ではそういうことは起こらない。
同時にエルドアン首相主導で進められてきた中東にその軸足をおく自主的な外交は今後とも継続されることになろう。米の思い通りにならず、イスラエルとの関係も緊張したままになるだろう。EUはトルコ加盟を拒否し続け、トルコを西側離れに追い込んでいる。

3、トルコは地理的に戦略的な地位を占めている。黒海と地中海を結ぶボスポラス海峡を掌握しているほか、欧州ではブルガリヤ、ギリシャと、コーカサスではグルジア、アルメニア、イランと、更にイラク、シリヤと国境を接している。
 更にトルコは経済的にも高成長を続け、軍事的にも最強のイスラム教国家である。
 中東でのトルコの影響力は今後ますます増大していくことは間違いない。
 トルコのイスラム化への懸念の表明を超えたよりよく考えられた対トルコ政策を米をはじめとする西側諸国としても、展開していく必要がある。
(文責:茂田 宏)

イラン、紅海に潜水艦派遣

1、6月7日付ニューヨーク・タイムズ紙は「イラン海軍、紅海に潜水艦派遣」との見出しで概要次の記事を掲載している。
 6月7日、ファルス通信社はイランが潜水艦を紅海に初めて派遣した、潜水艦は公海上でデータを収集し、他国の軍艦を確認する、紅海に入る前に潜水艦はアデン湾での対海賊作戦に従事するイラン軍艦に同行した、と報じた。
イランはロシア製の潜水艦4隻を保有しているほか、昨年、国産のより小型の潜水艦が海軍に配備された。これらはミサイル、魚雷を発射出来、ペルシャ湾のような浅い海で活動可能とされている。
これは今年初めにイランが2隻の軍艦をシリヤに派遣したのに続く動きである。これにはイスラエルが反発をした。

2、イランは核開発を引き続き進める一方で、イラクでは民兵を擁するサドル派との関係を誇示し、ヒズボラ、ハマスとの関係も深めている。
今回の行動はこれに加え、周辺諸国にイランの軍事力、特に海軍力を誇示し、核問題でのありうる対イラン攻撃を抑止することを目的とした行為である可能性がある。
 ただイランの海軍力はそれほど大きなものではなく、米、イスラエル、湾岸諸国、さらにエジプトの警戒心を高め、反発を呼ぶ効果しかないと思われる。
(文責:茂田 宏)

イエーメン情勢

イエーメン情勢

1、6月3日、イエーメンの大統領府が攻撃され、サレハ大統領が負傷したと伝えられた。その後、サレハ大統領は演説を行い、それが報じられたが、音声のみで映像には古い写真が使われたので、重傷なのではないかと言われていた。その後、6月4日、サレハ大統領が治療のためにサウジアラビヤに到着したとサウジ側により確認された。相当ひどいやけどなどをしているとの報道もある。
その中で、サレハ大統領がイエーメンに帰国するのか否か、いつ帰国するのかが一つの焦点になっている。

2、6月7日付ニューヨーク・タイムズ紙は「イエーメンの指導者、“数日内に”帰国を計画といわれる」との見出しで概要次の記事を掲載している。
「6月6日、サレハ大統領が平和的な権力移行を受諾するようにとの外交上の動きが強まっている。側近は数日内に帰国するとしているが、米、サウジ、EU、他の湾岸諸国はサレハ辞任を求め、4カ月間街頭抗議で揺さぶられてきたイエーメンには変化が必要としている。 米では、ホワイトハウス、クリントン長官、その報道官はすべて暫定政府樹立、90日以内の議会選挙というアラブ提案で平和的で民主的な移行を実施する時が来たとしている。クリントンは“即時の移行がイエーメン国民の利益になると考える”とした。
サレハの息子や甥が治安機関のほとんどを握っているなかで、サレハが正式に辞任を了承し、政治移行を始めることが重要とされている。
サウジでは内閣が移行計画を前進させるべしとの声明を出した。33年間イエーメンの支配者であったサレハは3度この計画に同意しそうになったが、最後には躊躇した。
首都のサナでは反政府派はハディ副大統領を「大統領代行」と呼び、移行を奨励しようとしているが、サレハの息子や甥が大統領官邸にいて、ハディは従来からの事務所にいる。
サナ、タイズ、ザンジバルなどでの停戦維持努力はなされているが、数名の死者が出ている。米は停戦と移行を進めるためのチームを送ろうとしているが、サレハが免責と引き換えに辞任を受け入れるとの移行に同意しないことが障害になっている。
湾岸協力機構(GCC)提案では、サレハはまずハディに政権を移譲し、その後、暫定移行政府が出来ることになっていた。変化のための若者運動の指導者はすべての勢力がテクノクラートからなる暫定政府を構成し始めるべし、72時間以内にその動きがない場合、政府庁舎を占拠し、自らが暫定政府になるとの声明を出し、サレハの退場を祝賀するように呼び掛けている。
サレハとともにサウジに出国したのはサナの知事(昏睡状態とされる)、首相、議会議長、シューラ評議会議長、二人の副首相である。」

3、サレハ大統領は親族を軍や治安機関の要職につけてきたが、アフマール氏を中心とする強力な部族ハシドがサレハ体制に反旗を翻すに至っているほか、南部の情勢もサレハにとって好ましくない方向に行っている。
サレハ大統領がGCC仲介案に同意することが流血を少なくする道のように思われる。
未だ多くの不確定要因があるが、サウジはイエーメンにそれなりの影響力を有している。サウジの思惑通り、事態は進む可能性が高いのではないかと思われる。
(文責:茂田 宏)

リビヤ情勢:膠着状況の打破、反政府側の勝利の可能性の増大

1、 軍事情勢:
(1) 5月24日付ニューヨーク・タイムズ紙は「NATO,これまでで最大の爆撃をトリポリに加える」との見出しの記事を掲載している。その概要、次の通り。
 NATO機は5月24日、カダフィの指揮所周辺を中心に少なくともトリポリ中心部の15の目標に爆撃を加えた。午前1時から30分続いた爆撃は1マイル以上離れた人さえ驚かせる爆発音と火の玉を伴った。
攻撃の強さとトリポリ中心部のバブ・アル・アジジヤ指揮施設を狙った攻撃はNATOが首都攻撃のテンポを速め、戦闘の膠着状況を打破する決定をした結果と思われる。
2500回以上の爆撃とここ2週間のトリポリ攻撃にかかわらず、まだカダフィ政権がすぐ崩壊するとの兆しはない。反政府側はミストラ市で成果を挙げたが、西部への大規模侵攻には成功していない。
5月23日、英仏は攻撃用ヘリを投入するとの決定を発表した。
(2)5月24日付英タイムズ紙は「英、カダフィとの戦闘強化のために攻撃ヘリ派遣」との見出しで概要次の通り報じている。
英はカダフィ軍と反政府派の膠着を打破するためにアパッチ・ヘリ4機をリビヤに送ると決定した。今週末、現地に到着予定。仏はヘリ12機(ユーロコプター・タイガーとガゼラ)を派遣する。ここ2週間で、NATO軍はカダフィの指揮所への攻撃を強化し、リビヤ海軍のほとんどを破壊した。
仏は7月19日までに明確に勝利することを望んでいる。4か月以上の軍事行動は議会での更なる表決を必要とするからである。
(3)5月20日付ニューヨーク・タイムズ紙は「NATO軍機、3港湾でリビアの船舶を攻撃」との見出しで、概要次の通り報じている。
NATOは5月19日にトリポリ、アル・フムス、スルト港のリビヤ軍用船舶を攻撃した。NATO軍副司令ハーディング副提督は8隻とも海軍船舶で民用ではないと説明した。NATOは武器禁輸執行のために21隻をリビヤ近くに展開している。

要するにカダフィの空軍、海軍はほぼ破壊され、残っているものも身動きのできない状態になっている。さらに地上軍も大きく展開できず、都市にもぐりこんでいる兵力も今後ヘリの攻撃対象になると言うことである。弾薬庫も破壊され、補給もままならず、カダフィ側の戦闘能力はなくなってきている。

2、 政治情勢:
(1) 5月23日付ウオール・ストリート・ジャーナル紙は「EU、リビヤの反対派との関係を強化」との見出しで概要、次の通り報じている。
EUの外交担当カサリーン・アシュトンはベンガジを訪問し、EU事務所の開設を行うとともに、「カダフィは出て行かなければならない」と述べた。これは5月19日にカダフィの政府がNATO爆撃の中止と反対派の非武装化と引き換えに都市より撤退するとの提案をEUが拒否したことを意味する。ロシアは国連とアフリカ連合の平和維持軍で監視される停戦を提案している。(注:反政府側はロシアの提案を拒否した)EU27カ国のほぼすべてがカダフィ政府との関係を凍結した。仏、伊、カタールなど7カ国が反政府派の国家暫定評議会をリビヤの正式な政府として承認している。
(2)5月25日付ボストン・グローブ紙は「米、リビヤ反政府派の立場を強める」との見出しで概要次の通り報じている。
米安全保障会議補佐官代理ローデスは攻撃の手が緩むことはなく、カダフィが立ち去ることが彼のためにもリビヤのためにも最善であると述べた。クリントン長官は、国家暫定評議会を「正統で、代表的で、信頼性のある」組織であると述べ、正式な承認は表明しなかったが、国家暫定評議会がワシントンに事務所を開設するように招請した。

要するに国際的にもカダフィ政権はだんだん見放されてきており、ロシアの停戦提案やカダフィの都市からの撤退提案など、見向きもされない状況であり、カダフィの立場は希望のないものになっている。

3、 NATOのラスム―セン事務局長は軍事圧力と政治圧力および反政府派への支持でカダフィ政権は結局崩壊すると述べるとともに、5月24日、アフガンに向かう機中で「リビヤでの戦闘を終わらせるような解決が近いことを希望する」と述べたと報じられている。

4、 カダフィは身を隠した状況にあるが、それで指揮をとったり、支持者を鼓舞したり出来ない。チュニジアとリビヤは否定しているが、クリントン長官はカダフィの妻と娘がチュニジアに逃亡したとしている。
カダフィ政権の終わりが近づいていると判断していいのではないかと思われる。

5、なお米での戦争権限法の問題は5月20日に60日の期限がきたが、政権側はNATO主導であると言いつつ、議会でマケインなどが作ろうとしている決議案の採択を促しており、当面、軍事行動を続ける姿勢をとっている。
(文責:茂田 宏)

オバマ大統領の中東政策演説(中東和平部分)

1、5月19日、オバマ大統領は国務省で米の中東政策について演説を行った。その最後の部分で中東和平問題に触れたが、その重要部分、次の通り。
「2年以上、わが政権はこれまでの政権の数十年の作業を基盤に当事者と国際社会とともにこの紛争を終わらせるために作業した。しかし期待は満たされなかった。イスラエルの入植活動は続いた。パレスチナ人は話し合いから立ち去った。世界は・・膠着しか見なかった。地域における変化と不確定性に鑑み、いま前進することは単純に不可能であると主張する人がいる。
自分はこれに同意しない。中東と北アフリカの人々が過去の重荷を投げ捨てているこのときに、紛争を終わらせ、すべての主張を解決する恒久平和のために動くことは前よりもより緊急性を持つ。これは関係当事者にとり確かにそうである。
パレスチナ側にとり、イスラエルの正統性を奪う努力は失敗に終わる。9月に国連でイスラエルを孤立させる象徴的な行動は独立国家を作りださない。パレスチナの指導者はハマスがテロと拒否の道に固執するならば、平和と繁栄を達成しない。そしてパレスチナ人はイスラエルの生存権を否定して独立を達成することは決してない。
イスラエルについては、我々の友情は共有された歴史と価値に深く根付いている。イスラエルの安全への我々のコミットメントはゆるぎないものである。そして我々は国際的フォーラムで批判のためにイスラエルを取り上げる試みに反対する。しかし友人であるからこそ、我々が真実を語ることは重要である。現状は維持不可能であり、イスラエルも永続する平和を前進させるために大胆に行動しなければならない。
事実はより多くのパレスチナ人がヨルダン川の西側に住んでいるということである。技術はイスラエルが自らを守ることをより困難にする。深い変化を経つつある地域はポプリズムに至り、1または2の指導者ではなく数百万の人が平和が可能であると信じなければならない。国際社会は成果を出さない終わりのないプロセスに疲れている。ユダヤ国家と民主的な国家の夢は永久的な占領を伴って達成されることはない。
最終的にはイスラエルとパレスチナが行動をとる責任を有する。米も他の誰も、彼らに平和を押し付けることはできない。しかし終わりのない遅延が問題をなくしてしまうことにはならない。米と国際社会が出来ることは誰もが知っていることを率直にいうことである。永続する平和は二つの民族の二つの国家を意味する。ユダヤ国家とユダヤ人の郷土としてのイスラエル、パレスチナ人の郷土としてのパレスチナ国家であり、それぞれが自決、相互承認、平和を享受する。
核心的な問題は交渉されなければならないが、交渉の基礎は明確である。生存可能なパレスチナと安全なイスラエルである。交渉はイスラエル、ヨルダン、エジプトとのパレスチナの恒久的な国境とパレスチナとのイスラエルの恒久的な国境をもつ二つの国家の樹立に結果として成るべきであると米は信じる。我々はイスラエルとパレスチナの国境は相互に合意される土地の交換を含め1967年の線に基づくべきであり、それで両国家に安全で承認された国境が樹立されると信じる。パレスチナ人は自らを統治する権利を持たなければならず、主権的、連続した国家でその完全な潜在力を達成する。
安全保障については、すべての国家は自衛の権利を有する。イスラエルはいかなる脅威に対しても自ら自らを防衛出来なければならない。諸措置はテロリズムの再興を防止し、武器の浸透を停止し、効果的な国境の安全を提供するように強固なものでなければならない。イスラエルの軍隊の完全かつ段階的な撤退は主権、非武装国家であるパレスチナの治安責任の引き受けと調整されるべきである。そしてこの移行期間の長さは合意されなければならず、安全保障措置の効果は示されなければならない。
これらの原則は交渉への基盤を提供する。パレスチナ人は彼らの国家の領土的な輪郭を知り、イスラエル人は彼らの基本的な安全保障上の懸念が満たされていることを知るべきである。私はこれらの措置のみで紛争が解決されないことを知っている。二つの困難で感情的な問題:エルサレムの将来とパレスチナ難民の運命の問題が残っているからである。しかしいま領土と安全保障の基盤の上に前進することはイスラエル人とパレスチナ人の権利と願望を尊重し、これらの問題を正義に沿い、公正な方法で解決する基礎を提供する。
これを言わせてほしい。交渉が領土と安全保障の問題から始まる必要があると認めることは交渉のテーブルに戻ることが容易になることを意味しない。特に最近のファタハとハマスの合意の発表はイスラエルに重要で正統な疑問を持たせている。どうして貴方の生存権を認める意思のないことを示している当事者と交渉できるのか。今後の数週間、数カ月でパレスチナの指導者はこの疑問に信頼できる答えを出さなければならない。その間、米、カルテットのパートナー、アラブ諸国は現在の行き詰まりを越えるためにあらゆる努力を引き続き行う必要がある。
私はこれがいかに困難か、認識している。猜疑と敵意が何世代も伝えられ、時にはそれがより強固になった。しかし私はイスラエル人、パレスチナ人の多数が過去に捉えられるよりも将来に向けて歩むことを望んでいると確信している。」

2、このオバマの演説は特に新しいことを言ったものではない。土地の交換を含んで1967年の線を基礎にすることはクリントン時代の仲介の際にも前提とされていたことである。二つの国家論もそうである。
オバマ大統領が中東の変化のなかで、中東和平を推進することが重要で、そのために努力したいと考えていることがはっきりした。ただオバマ大統領の問題は中東和平のあり方についての考え方が正しくないとか明確でないとかいうことにではなく、イスラエルを入植地モラトリアム延長にさえ同意させられないことにある。要するにネタニヤフを説得するのに苦労していることにある。
5月20日、オバマ・ネタニヤフ会談が行われたが、ネタニヤフはこのオバマ演説の主要内容に同意しない姿勢を明らかにしたとされている。
もっと強力な圧力をイスラエルに加えないと、イスラエルは動かない。特に国連での米の投票態度はイスラエルへの強力な圧力手段であるが、この演説はそれを事前に封じてしまっている。

3、「アラブの春」はポプリズムにつながるので、数百万の人が和平は可能と信じなければならなくなるとオバマは指摘している。この指摘に私は賛成であるが、ネタニヤフは「アラブの春」で不安定化した中東で、安易に和平を進められないと考えている。
米とイスラエルの考え方の差は最近広がってきている。
(文責:茂田 宏)


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