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リビヤ情勢と欧米の対応
1、 リビヤでのカダフィ政権側と反政府勢力の側の戦闘は双方にとり一進一退になっている。これについての米各紙の報道ぶり、次の通り。
(1)4月25日付USA Today紙:見出し・「リビヤでの軍事的行き詰まりの怖れが増大:米戦略が疑問視され、批判される」。記事の概要、次の通り。
米はカダフィ政権に対する圧力を無人航空機での攻撃と反政府側への非致死性物資供給の決定で強めているが、批判者はこれらは潮目を変えられないとしている。
マッケイン上院議員はベンガジ訪問後、「手詰まりの大きな危険がある。これを成功裡に終わらせるために米はもっとやるべきであると思う」と述べた。
ゲイツは米は介入について厳格な制限を課しており、紛争にどんどん引き込まれているわけではないとしているが、米が自分の役割に制限を加えていることが批判の対象になっている。専門家は徐々に兵力投入するのはよくないとしている。英仏伊は反政府側に軍事顧問を送ると述べた。
オバマ大統領は武装無人航空機プレデータ―派遣を許可した。カダフィ軍が住民の中に紛れ、航空機が文民に害を与えることなくカダフィ軍を攻撃するのが困難になっているが、プレデータ―は低空で目標を正確に攻撃できる。
マッケインは近接対地攻撃能力をもつAC−130型機とAC−10型機の再投入、通信機器支援を主張し、暫定政府の承認を主張している。
(2)4月25日付ウオール・ストリート・ジャーナル紙:見出し・「米無人航空機、リビヤの目標を攻撃」。その記事概要、次の通り。
先週末、米無人機がリビヤで攻撃を行った。NATOは4月23日ミストラ市周辺で多連装ロケット発射機を攻撃したと発表した。同24日にも2度目の攻撃が行われた。ゲイツは4月21日、2機のプレデータ―を米が提供すると述べた。
NATOはミストラ市で戦車、指揮・統制壕、重火器運搬車両、ロケット発射機、倉庫も攻撃した。
4月23日、ミストラ市からカダフィ軍は撤退し始めた。カダフィ側はミストラから撤収し、ミストラを関係部族による解決に委ねたと述べた。
グラハム上院議員は「トリポリに行き、空軍力でカダフィと側近を攻撃すべし。蛇の頭をはねることがこれを最も早く終わらせる道である」と述べた。リーバーマン上院議員はカダフィを直接攻撃するのは国連決議で正当化されると述べた。
(3)4月25日付ロスアンジェルス・タイムズ紙:見出し・「リビヤ反政府派、ミスラタで勝利:血まみれの戦闘後、カダフィ軍は重要な西部都市から逃げ出したが、未だ砲撃を加えている」。
(4)4月25日付ワシントン・ポスト紙:見出し・「NATO、トリポリのカダフィ政府複合庁舎爆撃」。この記事概要、次の通り。
NATOは4月25日、トリポリのカダフィの住居、政府庁舎、軍基地から成るバブ・アル・アジジヤ・コンプレクスを攻撃した。ここは毎夜、カダフィを人間の盾になって守る市民が集まっていた場所であり、今月初めにアフリカ連合代表団がカダフィと会ったビルも近くにある。死者は出なかった模様である。
(5)4月25日付ボストン・グローブ紙:見出し・「上院議員たち、リビヤ反政府派を助けるために米はもっとやるべしと呼びかける」。
2、 リビヤについては、米国内でイラクやアフガンのような介入は避けたいとの世論が多数派であるが、他方でカダフィがリビヤの一部を支配し続けることは許しがたいとの意見もある。
オバマ政権は NATOに指揮権をゆずった後、米航空機での攻撃などを控えてきたが、ここにきて、リビヤでの情勢の膠着は許すべきではなく、もっと米の役割を増やし、早期に決着させるべしとの意見が有力な上院議員より出てきている。
ミスラタ市を反政府側が確保したことはよいニュースであるが、カダフィ側に将来への希望が全くないことを認識させることがカダフィ政権の自壊につながる。オバマ政権がAC−130,AC−10機を再投入する、無人機プレデータ―ももっと投入するなど、する必要がある。膠着状態が長引くと、カダフィ政権の崩壊が起きず、米国民のリビヤ介入支持もますます減るだろう。
リビヤ情勢をカダフィ退陣で終わらせることは「アラブの春」全体の行方に関係がある。米世論の消極論はあるが、米の民主主義擁護の原則、リビヤを膠着状態のままにすることは米の威信にも拘わることに鑑み、米の政策が反政府勢力への支援強化、カダフィ排除の方向にいく蓋然性は強いと思われる。反政府派の正体がよくわからないが、カダフィ政権より悪い政権は想像しがたく、ここでは一定のかけをせざるを得ないように思われる。
なおイラク、アフガンに比較し、リビヤはずっと規模の小さな紛争であり、空軍力と若干の支援で片が着くように思われる。占領軍は国連決議で排除されている。またレジーム・チエンジは国連決議のマンデート外であるが、「民間人保護」のために「すべての必要な措置」はとれるのであり、その結果としてカダフィ排除がなされたとしても、決議上、問題はないであろう。
(文責:茂田 宏)
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