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中東情勢

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パレスチナ:ファタハとハマスの和解

1、 4月27日付ハアレツ紙の「ファタハとハマス、歴史的なパレスチナ和解取引に合意:ハマスがガザを支配下におき、両派政府が崩壊してから4年経って、ライバル集団は暫定政府を作り、その後総選挙の日程決定に動く」との記事を掲載している。その概要、次の通り。

4月27日、パレスチナ議長アッバスのファタハはハマスと歴史的な和解合意をし、暫定政府の形成と1年以内に総選挙の日付を決めるとした。
多くの人を驚かせたこの合意は秘密会合の後、エジプトの仲介で行われた。ハマスの報道官は「双方は協定に関する書簡に署名した。すべての意見の相違は克服された。カイロが近いうちに署名式のため双方を招待する」と述べた。
ファタハのカイロでの交渉団長は「独立した人士からなる政府を形成し、それが大統領選挙と議会選挙の準備をする。今から約8カ月後に選挙を行う」と述べた。
4月27日の合意は仲介を行ったエジプト情報機関から初めて明らかにされた。エジプト国営通信社MENAが報じた声明で、エジプト情報機関は「ハマス政治局No2のム―サ・アブ・マルズークとファタハ中央委員会委員アザム・アル・アハメドを団長とする双方の交渉団間で合意が達成された。和解合意は数日以内にカイロで署名される」と述べた。 アル・アハメドとアブ・マルズークは、合意はすべての対立点をカバーし、その中には暫定政府、治安措置、ハマスを含むようにPLOを改組することが含まれると述べた。
交渉に参加した別のハマス幹部は合意は5ポイントで、治安部隊の統合、「国民的人士」による政府、囚人の相互釈放を含むと述べた。暫定政府は国際的なボイコットを避けるためにハマス高官を含まない可能性が高い。署名式には、アッバス、(ダマスカス在住ハマス指導者)メシャールがカイロに来る由。
アハメドは「歴史上最後の占領、パレスチナ占領を終わらせるために、我々が相違を乗り越える国家意思を持っていることを誇りに思う」と述べ、マルズークは「我々の不和が占領に機会を与えた。今日新しいページが開かれた」と述べた。
ネタニヤフ首相は、この和解は和平プロセスの終わりを意味すると警告し、アッバスに向け「あなたはイスラエルとハマスの双方と和平しえない。イスラエルとの平和を選べ」と述べた。
昨9月に和平交渉が停滞した後、アッバスはパレスチナの国際的承認をイスラエルとの合意の有無にかかわらず獲得する努力をはじめているが、この努力は9月、国連で最高潮を迎える。この国連の前に、アッバスはハマスに何度も申し入れをした。ハマスは完全な権力分有、治安責任分担を求めるとともに、西岸での何百人のハマス囚人の釈放、西岸でのハマスの慈善活動などの活動再開を求めていた。
ハマスが暴力放棄とイスラエル承認をするとは思われないが、その場合、ハマスの権力復帰は米の対パレスチナ財政支援(年4億7千万ドル以上)の停止につながると見られている。

2、 このパレスチナ和解はエジプトでのムバラク退陣(ムバラクはハマスを毛嫌いしていた)と新政権成立、シリヤでのアサッド政権の揺らぎ(アサッドはハマスの後ろ盾であった)、イスラエルのネタニヤフの入植地建設モラトリアム不延長と和平交渉の見通しの暗さ、その他の要素を背景として成立したものと思われる。この和解は和平交渉のあり方、米の関与のあり方に大きな影響を与えるであろう。
 アッバスは交渉での解決よりも、国連でのパレスチナ国家承認獲得に軸足を置いた対応を今後していくことになる。
 なおリーバーマン外相は、ハマスの囚人釈放で西岸もハマス支配下にはいる怖れがあると警鐘を鳴らしている。
(文責:茂田 宏)

リビヤ情勢と欧米の対応

1、 リビヤでのカダフィ政権側と反政府勢力の側の戦闘は双方にとり一進一退になっている。これについての米各紙の報道ぶり、次の通り。
(1)4月25日付USA Today紙:見出し・「リビヤでの軍事的行き詰まりの怖れが増大:米戦略が疑問視され、批判される」。記事の概要、次の通り。
米はカダフィ政権に対する圧力を無人航空機での攻撃と反政府側への非致死性物資供給の決定で強めているが、批判者はこれらは潮目を変えられないとしている。
マッケイン上院議員はベンガジ訪問後、「手詰まりの大きな危険がある。これを成功裡に終わらせるために米はもっとやるべきであると思う」と述べた。
ゲイツは米は介入について厳格な制限を課しており、紛争にどんどん引き込まれているわけではないとしているが、米が自分の役割に制限を加えていることが批判の対象になっている。専門家は徐々に兵力投入するのはよくないとしている。英仏伊は反政府側に軍事顧問を送ると述べた。
オバマ大統領は武装無人航空機プレデータ―派遣を許可した。カダフィ軍が住民の中に紛れ、航空機が文民に害を与えることなくカダフィ軍を攻撃するのが困難になっているが、プレデータ―は低空で目標を正確に攻撃できる。
マッケインは近接対地攻撃能力をもつAC−130型機とAC−10型機の再投入、通信機器支援を主張し、暫定政府の承認を主張している。
(2)4月25日付ウオール・ストリート・ジャーナル紙:見出し・「米無人航空機、リビヤの目標を攻撃」。その記事概要、次の通り。
先週末、米無人機がリビヤで攻撃を行った。NATOは4月23日ミストラ市周辺で多連装ロケット発射機を攻撃したと発表した。同24日にも2度目の攻撃が行われた。ゲイツは4月21日、2機のプレデータ―を米が提供すると述べた。
NATOはミストラ市で戦車、指揮・統制壕、重火器運搬車両、ロケット発射機、倉庫も攻撃した。
4月23日、ミストラ市からカダフィ軍は撤退し始めた。カダフィ側はミストラから撤収し、ミストラを関係部族による解決に委ねたと述べた。
グラハム上院議員は「トリポリに行き、空軍力でカダフィと側近を攻撃すべし。蛇の頭をはねることがこれを最も早く終わらせる道である」と述べた。リーバーマン上院議員はカダフィを直接攻撃するのは国連決議で正当化されると述べた。
(3)4月25日付ロスアンジェルス・タイムズ紙:見出し・「リビヤ反政府派、ミスラタで勝利:血まみれの戦闘後、カダフィ軍は重要な西部都市から逃げ出したが、未だ砲撃を加えている」。
(4)4月25日付ワシントン・ポスト紙:見出し・「NATO、トリポリのカダフィ政府複合庁舎爆撃」。この記事概要、次の通り。
NATOは4月25日、トリポリのカダフィの住居、政府庁舎、軍基地から成るバブ・アル・アジジヤ・コンプレクスを攻撃した。ここは毎夜、カダフィを人間の盾になって守る市民が集まっていた場所であり、今月初めにアフリカ連合代表団がカダフィと会ったビルも近くにある。死者は出なかった模様である。
(5)4月25日付ボストン・グローブ紙:見出し・「上院議員たち、リビヤ反政府派を助けるために米はもっとやるべしと呼びかける」。

2、 リビヤについては、米国内でイラクやアフガンのような介入は避けたいとの世論が多数派であるが、他方でカダフィがリビヤの一部を支配し続けることは許しがたいとの意見もある。
オバマ政権は NATOに指揮権をゆずった後、米航空機での攻撃などを控えてきたが、ここにきて、リビヤでの情勢の膠着は許すべきではなく、もっと米の役割を増やし、早期に決着させるべしとの意見が有力な上院議員より出てきている。
ミスラタ市を反政府側が確保したことはよいニュースであるが、カダフィ側に将来への希望が全くないことを認識させることがカダフィ政権の自壊につながる。オバマ政権がAC−130,AC−10機を再投入する、無人機プレデータ―ももっと投入するなど、する必要がある。膠着状態が長引くと、カダフィ政権の崩壊が起きず、米国民のリビヤ介入支持もますます減るだろう。
リビヤ情勢をカダフィ退陣で終わらせることは「アラブの春」全体の行方に関係がある。米世論の消極論はあるが、米の民主主義擁護の原則、リビヤを膠着状態のままにすることは米の威信にも拘わることに鑑み、米の政策が反政府勢力への支援強化、カダフィ排除の方向にいく蓋然性は強いと思われる。反政府派の正体がよくわからないが、カダフィ政権より悪い政権は想像しがたく、ここでは一定のかけをせざるを得ないように思われる。
なおイラク、アフガンに比較し、リビヤはずっと規模の小さな紛争であり、空軍力と若干の支援で片が着くように思われる。占領軍は国連決議で排除されている。またレジーム・チエンジは国連決議のマンデート外であるが、「民間人保護」のために「すべての必要な措置」はとれるのであり、その結果としてカダフィ排除がなされたとしても、決議上、問題はないであろう。
(文責:茂田 宏)

シリヤ情勢

シリヤ情勢

1、 シリヤ情勢はアサッド政権に反対するデモが継続し、アサッド政権側は実弾も使うデモ鎮圧を続けている。4月22日には、死者の数は少なくとも81名に達し、デモが発生した都市や町の数は少なくとも20に達したとされている。デモ側の要求は民主化要求からアサッド退陣要求、バース党支配体制の廃止要求になり、さらに「血には血を」という復讐を叫ぶスローガンも叫ばれ始めている。デモ参加者の数は数十万に達したエジプト、チュニジア、リビヤでのデモと比較すると、多い所で数千人規模であるが、政権側の弾圧が反発を招いており、今後どう発展するか、不透明である。

2、 そういうなかで4月22日、オバマ大統領は次の声明を発出した。
「米はデモ参加者に対するシリヤ政府の武力行使を最も強い言葉で非難する。抗議を鎮めるためのこの非道な暴力の行使はいま終わらされなければならない。我々は人命の喪失を残念に思い。我々の考えは犠牲者の家族と愛する者と、またこの困難な時期におけるシリヤ人民とともにある。
シリヤの何十年も続いた非常事態法の撤廃と平和的デモを許すとの昨日のシリヤ政府の動きは本日の抗議者に対する暴力的弾圧の継続を見ると、真面目なものではなかった。シリヤでの抗議が始まって2カ月、米はアサッド大統領とシリヤ政府に対して意味ある改革を実施するように勧めてきた。しかし彼らはシリヤ人民の権利を尊重すること、その願望に応えることを拒否している。シリヤの人民は世界中のすべての人が享有すべき自由、すなわち表現、結社、平和的集会の自由と自らの指導者を自由に選ぶ能力を要求した。アサッド大統領とシリヤ当局は人々の呼びかけを繰り返し拒絶し、弾圧の道を選んだ。彼らはデモが始まる前からあった既に抑圧的な治安措置を強化して武力の行使と非道な人権侵害に頼り、その個人的利益をシリヤ人民の利益よりも優先した。自らの人民の声に耳を傾ける代わりに、アサッド大統領はイランの同盟者が使ってきたと同じ残酷な戦術を通じてシリヤの市民を弾圧するためにイランの援助を求めつつ、外部者を非難している。我々はアサッド大統領にいま路線を変えるように、自らの人民の呼びかけを聞くように呼び掛ける。
我々はシリヤ政府の市民の取り扱いに強く反対し、またテロリズムやテロ・グループへの支援を含む、不安定化をもたらす行動の継続に引き続き反対する。米は民主主義とシリヤや世界ですべての人間に与えられるべき普遍的権利を引き続き擁護する。」

米ではアサッド政権下で改革が可能という意見もあったが、アサッド政権非難に舵を切ったことになる。ただこの声明がシリヤ情勢にどれくらい響くかは疑問がある。単なる原則的声明と言うことで終わることも考えられる。

3、 イスラエルのネタニヤフ首相は、アサッド政権の崩壊がイスラエルの利益になるかと問われ、「自分の答えはどれも良い答えにはならない。シリヤを含めどこでも我々は真の民主主義が出てくることを希望するし、それは我々への脅威ではない」と答えている。
 イスラエルはシリヤと敵対的な関係を持ってきたが、アサッド政権下で国境の静謐が保たれたことを評価しており、スネー元国防次官は「我々はよく知っている悪魔の方を好む」とコメントしている。
 イスラエルはシリヤでよりイスラム主義的な政権が出てきかねないと心配している。

4、 シリヤでのデモの激化や弾圧の激化はシリヤ情勢に対する米や周辺国の対応に影響を与えてきているし、今後とも与えるであろう。シリヤ政府がデモ鎮静化に成功するか、デモがさらに膨れ上がってくるか、政府にとってもデモ隊にとっても重要な時期になっている。
(文責:茂田 宏)

サウジ、エジプト、イラン関係

1、 3月14日、サウジ軍を主体とする湾岸協力会議(GCC)軍はバーレーンに進出し、バーレーン政権はシーア派を主体とする民主化要求デモを力で押さえつける態度に出ている。
 4月18日、サウジとカタールは国連安保理に対しバーレーンと他のGCC諸国に対する「目にあまるイランの干渉」を停止させることを要請した。バーレーンの外相は「湾岸全体に外部からの脅威がある」と述べ、GCC諸国軍は無期限にバーレーンに滞在すると述べた。これに対し、イラン外務省報道官は「GCC加盟国の軍が無防備の男女を弾圧している中でのこの批判は驚きである」と声明した。
サウジ・イランの対立は激しいものになっている。
 サウジはガザを支配するハマスの指導者メシャール(ダマスカス在住)に対しても、イランと手を切るように要求している。

2、 他方、エジプトの軍最高評議会はその外交姿勢を微妙に変えてきている。
第1:イランとの正式な外交関係樹立に動いている。イランは1980年エジプトがイスラエルを承認したことを理由に外交関係を断絶し、イラン・エジプト間には正式な外交関係はなかったが、4月18日、イランは駐エジプト大使を任命したと発表した。4月初めにエジプトの新外相エララビーがイランの外交官と会談後、エジプトは「イランとの間で新しいページ」を開いたと記者に述べた。
第2:4月18日、エジプト外務省はエララビー外相が近くガザを訪問することを明らかにした。ガザはイランが支援するハマスが支配しており、ムバラク政権はハマスを毛嫌いしていたが、ハマスとの関係構築を考えていると見られる。
第3:エジプトの諜報機関長官ムラッド・ムワフィは3月初め、就任後、最初の訪問国としてシリヤを訪問した。会談内容は判っていないが、シリヤとの関係を重視する姿勢を示したことにはなる。
こういう動きはエジプト・イラン間の関係改善につながるのではないかとの疑惑を米、イスラエル、サウジに与えており、懸念を呼び起こしている。
エジプトはムバラク政権下でイラン、シリヤに対抗する勢力としての役割を果たしてきたが、ムバラク後のエジプトはその姿勢を微妙に変えつつある。ただエジプトにはアラブの盟主としての意識があり、ペルシャ人主体のイランを信頼するとは考え難い。
上述のサウジ・イラン関係の悪化、エジプトがサウジの要請を無視してムバラク拘束に踏み切ったことなど、エジプト・サウジ関係が悪化する要因がある。これは取り扱いを誤ると、悪循環に陥り、イランを利することになりかねない。

3、 シリヤでの反政府デモはまだおさまっていないし、どうなるか、わからない。アサッドは基本的には弾圧で乗り切ろうとしている。イランは同盟国シリヤのアサッド政権を支持し、サウジは混乱が地域で拡大する懸念からアサッド政権を支持しており、ここではサウジとイランが歩調を合わせている。エジプトはシリヤに対し改革を勧めている可能性がある。

4、 リビヤ、イエーメン、シリヤの情勢が今後どうなるかなど、不確定要因だらけであるが、こういう革命的な状況は中東地域の諸国間関係にも大きな影響を与えるだろう。
(文責:茂田 宏)

エジプト「革命」の現状

1、 4月13日、エジプト法務当局はシャルムエルシェイクに滞在中であったムバラク前大統領、その息子ガマールとアラアを不正金融取引とデモ参加者の殺害にかかわったとして拘束した。
政府系新聞アル・アハラム紙は息子二人はカイロ近郊のトラ刑務所に収監され、ムバラク前大統領もカイロ近郊の軍病院に移され、健康の回復を待って刑務所に移されると報道している。
3名は今後裁判にかけられることになるだろう。
サウジはエジプト軍最高評議会に対し、ムバラク拘束は思いとどまるように申し入れたが、エジプト側は民主化デモ参加者の要望に応える決定を行った模様である。

2、 4月16日、エジプト最高行政裁判所はムバラク政権の与党であった国民民主党(1978年サダト大統領創設、ムバラク時代ずっと与党の立場にあった)に解散を命じ、その「資金、本部および建物が没収され、政府に引き渡される」ことを命じた。
 これも民主化デモ参加者の要望に応えたものである。

3、 エジプトで組織化された政治勢力は国民民主党とムスリム同胞団しかない。民主化勢力は政党組織化に時間がかかるとして、軍が当初提示した6月議会選挙、8月大統領選挙を延期するように求めてきた。軍はこれに応じて現在9月に議会選挙を行うとしている。
国民民主党が解散させられた状況では、民主化勢力が早く組織を作り活動を始めないとムスリム同胞団が唯一の組織だった政治勢力ということになりかねない。国民民主党所属の政治勢力が新しい名前の党を作り結集する可能性も指摘されている。

4、 これまでのところ、エジプトでは軍クーデタが発生したと同じ状況にあるが、最高権力を掌握した軍は民主化デモ参加者の要望と軍が認識したものに応えてきていることがこれらの動きからは見られる。
革命はいまだ成就していないが、方向性としては、民主化の方向に向かっている。ただし民主的過程がイスラム系勢力をエジプト政治の中心に据える結果になる可能性もある。
(文責:茂田 宏)


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