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中東情勢

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サウジ情勢

サウジ情勢

1、 中東でのデモはサウジアラビヤにも波及したが、これまでのところサウジ王家の統治は揺らいでいない。その背景、次の通り。
第1:2月にデモがサウジに波及した際、国王は360億ドルの福祉支出を打ち出した。その後、3月18日には更に910億ドルに上る支出を約束した。
内容はすべての政府職員への2カ月分給与、高等教育機関在学生すべてへの2カ月分の奨学金、すべての求職者への月当たり500ドルの支払い、無利子融資枠拡大、50万戸の住宅建設、内務省の法執行職員、6万人増などである。内務省拡大はより多くの市民に治安維持に関与させることになる。
これはサウジ政権が国民をなだめるためによくやってきたバラマキ政策であるが、これまでにない規模であり、一定の効果をあげている。
第2:サウジ政権は腐敗撲滅委員会の設置を発表するとともに、4月23日にこれまで遅らせてきた全国規模で地方選挙を実施すると発表した。立憲君主制への移行を求めている人々から見れば、小さすぎる措置であるが、国民への宥和メッセージになっている。
第3:サウジは湾岸協力機構の半島防衛軍という体裁でバーレーンにバーレーン国王の要請に応じて軍を派遣している。
 この軍派遣について、サウジのメディアはスンニ派対シーア派の対立、サウジ対イランの対立が背景であるとしており、それが国民に対イラン、対シーア派で王家の周りに結集しなければならないとの気持ちを起こさせている。1種の愛国心の高揚のようなものがある。

2、 バーレーンの多数派シーア派のデモの今後、イエーメン情勢の今後などサウジの周辺には不安定要因がある。
 イエーメンのサレハ大統領は湾岸諸国が求める辞任に応じず、更なる混迷がサウジの南の隣国、イエーメンで生じる可能性があるし、イランも絡んだ形で、バーレーンのシーア派とサウジ内のシーア派が連携して動く可能性がある。
 従ってサウジ情勢はもう心配ないというのは早すぎるが、安定の方向に向かっていると判断される。

3、 アラブでの革命的な騒動のなかで、米・サウジ関係は相当にささくれだっている。
 サウジはオバマがムバラクを擁護しなかったことに憤慨し、さらにバーレーンへの介入について、武力でバーレーン問題は解決せずと批判したクリントン発言にも反発している。
 情報機関長官,駐英・駐米大使を務めたトゥルキ王子は最近、アラブ首長国連邦での講演で、湾岸諸国が統一軍を作ることを提案し、米への安全保障での依存を疑問視し、さらに国際社会がイランの核兵器を防止するのに失敗した場合、サウジはイスラエルとイランに対応するために核兵器保有を検討するかもしれないと警告した。
 サウジ軍の武器は米から輸入されているなど、米・サウジ関係は切っても切れない関係にあるので、そう簡単に悪化しないが、サウジが米の言うことを聞く度合いは少なくなるであろう。
(文責:茂田 宏)

シリヤ情勢

シリヤ情勢

1、 3月30日、アサッド大統領は議会演説を行った。
3月半ばから南部ダーラで始まり、その後ダマスカス、ラタキヤ、ホムス、ハマなど各地に広がったデモに対し、アサッド政権は強硬姿勢で鎮圧してきたが、鎮圧で死者が出たへの反発でデモが激化する状況がある中での演説である。演説の前日、アサッドが内閣を総辞職させたこともあり、アサッドが1963年以来続いている非常事態の解除と改革を打ち出すのではないかと多くの人が期待していた。
しかし演説は、民衆の要求の中には正当なものもあるとしつつも、「外部からの陰謀」が民衆蜂起の背後にあるとし、改革は必要であるとしつつも、非常事態法の撤廃や野党の容認は「検討中であり、実施時期を示すことはできない」とするものであった。
演説後、ラタキヤで演説に抗議するデモが行われた。
シリヤでのデモが今後、収束していくのかどうか、まだ不透明である。

2、 演説から判断すると、アサッド大統領は、デモの要求に応じて抜本的な改革を行う気はなく、デモを力で抑え込む姿勢を当面はとると思われる。外部勢力によって扇動されたものというのはその姿勢を示したと考えられる。
アサッドはデモに対する譲歩は更なる要求につながる、更に現在の事態は乗り切り可能であると判断しているように思われる。

3、 シリヤでのデモの激化とその弾圧がリビヤでのような状況に至るかについては、そういう進展は考え難い。
第1:米は既に明確にシリヤとリビヤは違うし、カダフィとアサッドは違うという考え方をクリントン発言などで明らかにしている。これは国内の反アサッド派が国際的支援を得られないことを意味する。
第2:イスラエルが反イスラエルのアサッド政権が倒れることを期待しているかというと、そうでもない。イスラエルはアサッド政権はそれなりに予測可能性のある政権であり、シリヤが大混乱に陥るよりアサッド政権が継続した方がよいと考えているところがある。
第3:トルコも隣国シリヤの混乱を望んでいない。
そういう国際環境がとりあえずある。

4、 アラブの覚醒と言われる今回のアラブ諸国での騒乱はまだ終わったわけではない。アラブ諸国は親米共和制(エジプト、チュニジア、イエーメンなど)、反米共和制(シリヤ)、親米王制(サウジ、UAE、バーレーンなど)の3類型に分けられ、これらがまた産油国かどうかの軸で分けられる。
王制は兄弟か息子に権力が継承されると決まっており、継承の問題がなく、共和制より安定性がある。
反米共和制はシリヤであるが、これも情報統制が親米共和制より強く、治安組織も強いという点で、安定性が強い。ハフェズからバシールへの権力継承が既に行われていたこともシリヤの安定には資する。
今後、政権が転覆する可能性が高いのは国際的な圧力を受けているリビヤとイエーメンである。ただリビヤではカダフィ側が軍事的には反政府派のシルト進撃を止め、反転攻勢にでている。
(文責:茂田 宏)

リビヤ情勢

リビヤ情勢

1、 3月19日から開始された米、英、仏軍によるリビヤの防空施設やベンガジに向けて進軍中であったカダフィ側兵力への攻撃は、ベンガジにいる文民の保護に成功したと思われる。
ベンガジを本拠地とする反カダフィ勢力は逆転攻勢に出ている.

2,3月28日付ワシントン・ポスト紙は「リビヤでは反政府側がモメンタムを得る。3重要都市、奪還。NATOが国際的任務の統制を引き受ける予定」との概要次の記事を掲載している。

 3月27日、反政府側は沿岸沿いに西に進み、少なくとも3都市を奪還した。3月28日、ベンガジはカダフィの出身地シルトが陥落したとのニュースで湧きかえった。ロイターがシルト陥落を報じたほか、アラブ衛星局フラーも確認した。
 米高官も用心深さを示しつつ反政府側に有利になっていることを認めている。同時に東リビヤで反政府派は主導権をとっているが、カダフィ政権は反政府派の勝利というより政権の内部崩壊あるいは交渉による解決で退陣するだろうと述べた。
 ゲイツは国防長官は3月27日、「政権が割れてくる可能性を過小評価すべきではない」と述べた。
 3月27日、NATOはNATOがリビヤへの軍事行動を指揮することに合意した。
 反政府側は3月25日にはアジュダビヤを奪還し、その後、ブレガとラスラヌフ、さらにビン・ジャワードを支配下に置いた。しかし連合軍の目的は文民保護であり、反政府側支援ではないので、トリポリへの反政府側の攻撃を支援するか否かは判らない。
 3月27日クリントン国務長官はヨルダンの元外相ハティブがトリポリに向かい、カダフィに「極めて明確なメッセージ」を送ると述べた。

2、 リビヤ情勢は明らかに反政府側に有利に展開してきている。国連安保理の決議は文民の保護を目的としたものであるが、カダフィ政権が連合軍の空爆と反政府派の攻勢にどこまで持ちこたえるか、疑問になってきている。
 カダフィ政権は武器禁輸を受けているので、その軍事力も漸減せざるを得ない。泥船からは逃げ出すという心理と相まって、ゲイツが言うように政権の内部崩壊の可能性があると思われる。
 カダフィは国際刑事裁判所に訴追されているほか、亡命しようにも亡命先がない状況にあるが、ハティブがカダフィに逃げ道を用意してやれば、リビヤを不毛な内戦から救うことになるように思われる。この交渉がどうなるか、まだよくわからない。
(文責:茂田 宏)

エジプト:憲法改正案の国民投票

1、 3月20日、軍最高評議会の憲法改正専門家委員会が提案した案に関する国民投票が行われた。改正案は大統領の任期を2期、8年に限ること、非常事態は6カ月に限定することなど8項目の改正全体に対して賛否を問う国民投票であった。

2、3月21日付ニューヨーク・タイムズ紙は「エジプト有権者、憲法改正を承認」との記事を掲載しているが、その概要次の通り。
エジプトの有権者は憲法改正案を圧倒的多数で承認した。
選挙管理をする最高司法委員会委員長は、賛成1410万票以上(投票者の77,2%)、反対400万票(投票者の22,8%)で、憲法改正案は承認された、投票率は41%で前例のない高さであったと発表した。
この結果は早急な選挙に道を開くものであり、6月にも議会選挙が、8月にも大統領選挙が行われる可能性がある。軍は国民投票結果発表後、この改正案を入れ込んだ憲法宣言を出し、その後、選挙の期日を発表するとしている。
ムスリム同胞団と国民民主党(注:ムバラク時代の与党)の残党は早期に民政移管すべしとの理由で憲法改正を支持した。エジプト政治のより自由主義的な人々は、有効な政治組織確立のためには時間が足りず、早期選挙はムスリム同胞団と既存政党を有利にする、との理由で反対した。
宗教組織は、イスラム法がエジプト法の主要な基盤としている憲法2条が危うくなるとの理由で、賛成票を投じるようにとの宣伝を行った。
エルバラダイ前IAEA事務局長とアラブ連盟事務局長は反対した。この二人は大統領選に出るとしているが、エジプトの有権者と意見があっているのか、疑問である。
活動家の一人は、カイロやアレクサンドリアでは反対が多かったが、地方では賛成が多かった、革命は都市の革命で地方の革命ではなかったと述べた。
エジプトの過去の選挙では、政府がバスを提供したりしても、投票率は10−15%が普通であった。今回、人々は自発的に投票所に向かった。投票での不正はなかったこと、エジプトの政治に人々が関与し始めたことが重要であると評価する人もいる。

3、 エジプト政治は今後選挙に向けて動いていくことになる。革命の原動力になった若者や自由主義者が選挙に向け、どれだけ早く政治的な組織を立ち上げ、国民の支持を結集し、ムスリム同胞団や国民民主党の残党に対抗していけるのかがエジプトの革命の帰趨を決めることになると思われる。
エルバラダイは投票に行った際、群衆に襲われたということであるが、新しい政党の核になり得るかどうか疑問である。

4、 今後のエジプトの政治において重要なのは、軍の役割をどうするか、イスラムの役割をどうするかである。新憲法の起草にあたって、これが最も問題になろう。
宗教界がこの国民投票で果たした役割は、エジプトでの世俗主義、国家とイスラムの分離が憲法でどう規定されるかについて、若干の懸念を呼び起こす。
(文責:茂田 宏)

リビヤへの武力行使を容認する安保理決議採択

1、 3月17日、安保理は加盟国が文民を保護するために「すべての必要な措置」をとることを承認する決議を賛成10、反対0、棄権5(中、露、独、インド、ブラジル)で採択した。レバノンがこの決議を提出した。
 この決議は、飛行禁止区域の設定と履行、リビヤ軍の戦車や重砲への攻撃など広範囲な攻撃を許容するものであり、排除されているのは「占領軍」だけである。決議はまた武器禁輸と「傭兵の流れの停止」を加盟国に求めている。
カダフィ側の軍が火力での優勢を背景に反政府勢力への攻勢に成功を収め、反政府派の最大の拠点ベンガジに100マイルに迫る状況の中でこの決議は採択された。カダフィはベンガジに無慈悲な攻撃を行うと宣言しており、米、英、仏やアラブ諸国が今後どれだけ早く、どういう行動に出るか、カダフィがこれにどう対抗するか、がリビヤの今後を決めることになる。

2、 軍事的な状況が今後どう発展するか、明確な見通しは立てがたい。反政府派が2月中旬よりカダフィ政権を追い詰めてきたが、カダフィ側が反撃し、現状ではカダフィ側が優勢になっている。
飛行禁止区域の設定にとどまらず、米、英、仏、参戦する一部アラブ諸国が攻撃用ヘリを展開するなどが戦況の逆転のためには必要ではないかと思われる。

3、 この安保理決議の採択は歓迎すべきものである。「保護する責任」の具体化である。ただもっと早くこのような決議を採択し、必要な措置をとっていたら、もっと簡単にカダフィ退陣を実現しえたように思われる。
 ゲイツ国防長官が飛行禁止区域のためにはリビヤの防空システムを破壊する必要があり、その履行は軍事的には簡単ではないなどと反対し、米国内でも、イスラム諸国に米がまた戦争を仕掛けるのかというような議論があり、行動までに時間がかかり過ぎた嫌いがある。
 アラブ連盟が飛行禁止区域設定を求めた段階で、米も消極論を転換すべきであったように思われる。ある行動のデメリットと不作為の結果出てくるデメリットは比較考量が難しいが、この場合、不作為のデメリットは米の威信などの点でより大きかったように思われる。

4、 中露に加え、独、ブラジル、インドが棄権した理由は何なのか、よくわからない。武力行使は流血の規模を拡大するというブラジル大使の説明はリビヤの現況に鑑み、説得力のない議論と言わざるを得ない。

5、 エジプトの現政権、軍最高評議会はアラブ連盟の飛行禁止区域設定要請に棄権したが、3月18日付ウオール・ストリート・ジャーナル紙は「エジプト、リビヤの反乱者に武器供与と言われている」との記事を掲載している。この記事によると、米の了知の下、エジプト軍が小火器をリビヤの反政府軍に提供しているとのことである。
(文責:茂田 宏)


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