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欧州情勢

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ロシア下院選挙

ロシア下院選挙

1、 12月4日、ロシア下院選挙が行われた。
即日開票されたが、開票率96%の予備的結果として、選管が発表した結果、次の通り。
下院450議席のうち、プーチン与党統一ロシアが238議席(2007年の前回は315議席)、共産党が92議席(前回57議席)、公正ロシア党が64議席(前回38議席)、自民党が56議席(前回40議席)を獲得した。
 投票率は60、2%。
 各党の得票率――統一ロシア 49、54%、共産党 19、16%、公正ロシア 13、22%、自民党 11、66%、ヤブロコ 3、3%、ロシア愛国者 0、97%、正義党 0、59%。
2、 この結果を評価する際に、次の諸点を考慮する必要がある。
第1:統一ロシアは国営テレビなどマス・メディアで有利な取り扱いを受け、選挙戦が公平な基盤で戦われたわけではないこと。
第2:統一ロシアは行政組織をも動員した選挙戦を行ったこと。
第3:地方においては、票の集計が与党に有利に操作されたと思われること。たとえばチェチェンでは、統一ロシアは99%以上の得票をした。
第4:投票箱への統一ロシア票の詰め込みなど、違反があったとの申し立てがなされていること。
プーチン政権はそういうことをしたにかかわらず、50%以下の票しか得られなかった。プーチンは統一ロシアの会合で選挙を「成功」であったとしているが、統一ロシアへの支持、プーチンへの支持が弱いことが明らかになったと評価してよい。

3、 選挙を戦った7党のうち、自由民主主義政党と言えるのはヤブリンスキーが率いるヤブロコだけである。ヤブリンスキーは選挙結果に異議申し立てをするとしている。
なおヤブロコは在外ロシア人の選挙区では善戦し、英では得票率41%、仏では31、5%、米では26、6%で、第1党の地位を占めた。

4、 今回の選挙はプーチンが党首を務める統一ロシア主導のロシアを変えることにはならない。公正ロシアは統一ロシアの友党である。自民党、共産党もプーチンに反対している党ではない。ヤブロコのみが思想的、政治的に野党であるが、7%に達せず、議席は得ていない。他の民主勢力は選挙参加自体を阻まれた。
しかし今回の結果は、ロシアの政治にそれなりのインパクトをもたらすものと思われる。
 すでに政治評論家の中には、来年3月の大統領選挙ではプーチンは統一ロシアの候補としてではなく、戦うほうがよいと書いている人もいる。
メドヴェージェフは統一ロシアの大会で9月24日、プーチンを統一ロシアの大統領候補として推薦した際に、「選挙後、政府が構成されるが、我々が成功した場合、私はその政府を率いる用意がある」と発言している。この選挙が成功であったとプーチンがしている以上、メドヴェージェフが大統領選挙後に首相になる路線はとりあえず変わらないと思われるが、選挙の総括を行う中で、そうでなくなる可能性も少しではあるが、ある。
統一ロシアの下院議長グリズロフは辞任するとされている。
(文責:茂田 宏)
(他のことに時間を使う必要が生じたために、このブログは本年末で終わりにする予定です。約4年続けてきましたが、ご愛読に感謝します。年末までには、主として私の日本外交に関しての考え方の一端を書こうかと考えています。)

プーチンへの大ブーイング

1、 11月20日、モスクワで行われた格闘技大会でロシアのヒョードルが米のジェフ・モンソンに勝利した。その際、プーチン首相が祝辞を述べるためにリングに上がったが、話し始めるや否や、2万人の観衆から、ブーイングと「帰れ」、「引っ込め」という罵声が浴びせられた。モスクワ・タイムズ紙はプーチンの声は震えていたと報じた。
 珍しいことである。

2、 この模様は一部ロシアのテレビで報じられたほか、ユーチューブで配信され、50万人以上が見たとされている。
私が見たのはユーチューブに配信された二つの画像である。最初の画像では,歓声なのか、ブーイングなのか、判然としなかったが、二本目の画像では、ロシア語で「引っ込め」などと叫ぶ声が明瞭であり、ブーイングである。ちなみにこの2本目の画像はいまは削除されている。

3、 プーチンはロシア人のなかでの自分の人気に自信を持ってきたので、それなりにショックを受けたものと思われる。
 ロシアはプーチンの下で安定はしたが、停滞の様相を示している。エリツィン時代の活気はなく、民主主義が機能しない腐敗した社会への不満は強い。そういうものがこのような場面で突然噴出したということかと思われる。
 これがロシアの政治の方向を変えることなど無いが、ロシア社会の1面は示している。
 プーチンは強い指導者イメージのためか、上半身裸の乗馬姿、虎退治姿、大きなバイクに乗っての登場など、マッチョなことを示す演出をしてきた。そういうことの一環として格闘技会場に姿を現したものであろう。
なおファシズムは肉体美賛美と身体障害者など弱者の排斥の傾向をもつ。肉体美賛美はナチス芸術、ロシアの社会主義リアリズムに共通する傾向である。

4、 この事件について多くの人が掲示板などに書き込みをしているが、そのなかに、日本人の次のような書き込みがあった。
「ロシア人は贅沢だなあ。俺らはルーピーにも、すっから菅にも耐えているのに。」
〔文責:茂田 宏〕

メドヴェージェフの欧州ミサイル防衛に関するテレビ演説

1、 11月23日、メドヴェージェフ演説、次の通り。
 ロシア市民達。本日私は欧州におけるNATO諸国のミサイル防衛(以下MD)システム」に関する状況についてあなた方に話す。
MD分野での米、NATOとロシアの関係は長く複雑な歴史を持つ。オバマ大統領が2009年9月欧州のMDシステム建設の前任者の計画を変更した時、我々はこれを肯定的な一歩と歓迎したことを思い出す。この決定が我々が新START(戦略兵器削減条約)を締結することを可能にする道を開いた。この条約はそう遠くない過去に署名され、戦略攻撃兵器とMDの間の本質的なリンクを明確に言明している。これは大きな成果であったと私は言う。
しかしその後、米はMDシステムを段階的に作りだすことを念頭におく新しいMD計画を実施し始めた。これは具体的にロシアでの懸念を呼び起こす。これはロシアに近接した地域と隣接する海域に米のミサイルと軍事能力の配備を最終的には行うことになろう。
1年前、リスボンでのNATO/ロシア首脳会議で、私は各国が特定のセクターに責任を持つ欧州における共同の、セクター的MDシステムの開発を提案した。さらにNATOのパートナーの見解を考慮し、そのシステムに追加的修正を討議する用意を示した。我々の唯一の目標は欧州は新しい分割線を必要としない、ロシアの平等で法的に確立された参加で共通の安全保障の輪郭を作る
このアプローチがロシアとNATOが真の戦略的パートナー関係を築く特別の機会を作り出すだろうというのが私の信念である。我々は我々に関係にある摩擦と対決を平等、不可分の安全保障、相互信頼、予見可能性で置き換えることになる。
残念なことに、米とNATO のパートナーはこの方向に進む十分な意欲を示さなかった。この段階における欧州MDシステムに関する我々の懸念を聞き、理解する意欲を見せるよりも、彼らは単にこれらの計画はロシアに向けられておらず、我々が懸念を示す意味はないと繰り返した。これは行政当局の立場であり、いくつかの国の立法府の議員は公然と全システムはロシアに向けられていると述べている。
明確な法的義務として文書にこのことを書くべしと言う我々の要請は固く拒否された。我々は合理的な立場を持っている。我々はこれらの義務の地位と内容を討議する意思がある。しかしわが同僚はこれらの義務が実質を持たねばならず、空虚な言葉であってはならないことを理解すべきである。これらは約束や再保証のような文言ではなく、具体的な軍事・技術基準の文言でなければならない。ロシアがMD分野での米とNATOの行動が彼らの宣言と措置にどの程度適合しているか、我々の利益が侵害されているか否か、どの程度まで戦略核バランスがそのままなのかを判断することが出来るような文言でなければならない。このバランスが今日の安全保障の基礎である。
我々は短期間、6-8年の時期で我々の核抑止力を弱体化しうる計画に参加することに同意しない。欧州MD計画はすでに進行中で、残念ながら、ポーランド、トルコ、ルーマニヤ、スペインで作業は急速に進められている。我々は既成事実に直面させられている。
もちろん、我々はこの問題について米とNATOとの対話を続ける。私は最近オバマ大統領と会談した際、そう合意した。そのときに私は我々の懸念を再度明確に表明した。未だ「了解に達する時間はある。ロシアは米・NATOと我々の関係に新しい章を開くであろうこの分野での合意に達する政治的意思を持っている。もしわがパートナーがロシアの正統な安全保障利益を考慮に入れる正直で、責任ある態度を示せば、私は合意を達しうると確信する。しかし我々が「協力」し、事実上、我々自身の利益に反して行動するように要請されるのであれば、共通の基盤を樹立することは困難だろう。そういう場合には、我々は異なる対応をすることを強制されるだろう。我々はMD計画実施の各段階での事象における現実の発展に応じて我々の行動を決定するだろう。
この関連で、私は次の決定を行った。
第1:私は国防省に直ちにカリーニングラードにある早期警戒レーダーを戦闘警戒に置くように指示している。
第2:ロシアの戦略核兵器の保護掩蔽は航空・宇宙防衛の開発プログラムの下で優先的措置として強化される。
第3:戦略ミサイル軍と海軍によって注文された新しい戦略弾道ミサイルは先進的MD突破システムと新しい高度に効果的な弾頭で装備される。
第4:私は軍に必要な場合MDシステムのデータと誘導システムを無力化する措置を作成するように指示した。
第5:これらの措置が不十分と判明すれば、ロシア連邦は欧州における米MDシステムの如何なる部分も取り去る我々の能力を確実にするために国の西部と南部に近代的な攻撃兵器システムを配備する。この過程での一歩はカリーニングラード地方にイスカンダール・ミサイルを配備することになろう。
欧州MDシステムに対抗する他の措置も必要に応じて作成・実施される。
更にもしロシアに不利なように引き続き発展するならば、我々は更なる軍縮、軍備管理措置を取りやめる権利を留保する。
戦略攻撃と戦略防衛兵器間の本質的リンクに鑑み、新START条約からの我々の脱退の条件もまた出てきうる。この選択肢は条約に書かれている。
我々はMDとその分野での実際的協力に関する米・NATOとの継続的な対話の扉を閉ざしてはいないとの点を私は強調する。我々にはその用意がある。
しかしこれは我々の正統な利益と懸念を考慮に入れることを保障する協力のための明確で法的な基礎の樹立を通じてのみ、達成されうる。我々は対話にオープンであり、我々の西側のパートナーからの合理的で建設的なアプローチを希望している。

2、 米・NATOとロシアの欧州ミサイル防衛についての、話し合いは上手く行っていない。
ロシアが欧州MDシステムがロシアの戦略兵器に向けられないことを法的義務として受け入れることを米・NATOに求めているが、そういう義務を書いた条約が米国上院で承認される可能性はゼロである。米は大統領レベルでの保証書簡の発出などを提案しているが、ロシアはそれでは足りないとしている。米軍最高司令官の約束では不十分と言うのは、大統領は変わりうるということであろう。
今回のメドヴェージェフ演説は従来のロシアの立場を変えずに、米・NATOとの合意が出来ない場合のロシアの対抗策を示し、西側に譲歩を求めたものである。しかし米が条約でロシアのミサイルを対象にしないと約束する可能性は無い。
欧州MDはStandard ミサイル−3、SM-3を使うものであるが、これではロシアの戦略ミサイルを撃墜できない。しかしロシアはSM-3も将来、能力が向上しうると心配している。
欧州MDの能力制限を米としては法的義務として約束することもまた上院の態度に鑑み、不可能である。
ロシアが法的義務としてロシアの戦略兵器を阻害しないとの合意を取り付けることに固執する限り、米・NATOとの交渉は進展しないであろう。そうなると、ロシアの対抗措置は発動され、欧州は新たな緊張を経験する可能性がある。
ただロシアの経済・技術力に鑑み、米・NATOはロシアに軍拡競争をする能力なしとみていると思われる。
(文責:茂田 宏)

シリヤ情勢の緊迫化

シリヤ情勢の緊迫化

1、 シリヤのアサッド政権は隣国トルコおよびアラブ連盟の要請にかかわらず反政府派の弾圧を継続している。
 シリヤとアラブ連盟は11月2日計画と呼ばれるものに合意し、都市部よりの軍の撤退をはじめとするすべての者による暴力の停止をすることになっていた。しかしシリヤ政権が武力の行使をやめないので、11月12日には、この計画にシリヤが違反したとして、アラブ連盟はシリヤの加盟資格を停止した。更にアラブ連盟は11月16日、暴力の停止、都市部よりの軍の撤退、その実行状況をみるための監視団の受け入れを求め、それが11月19日までに満たされない場合、シリヤに制裁を課すると警告した。
シリヤ側は監視団の規模に制限を加える(元の案である500名を40名にする、アラブ人以外は認めない)などの要求をして、アラブ連盟とシリヤ間の合意の成立を引きのばす一方、11月19日以降も軍も使う弾圧を継続している。
シリヤとアラブ連盟の関係は今後ますます悪化していくであろう。
 11月21日、トルコのエルドアン首相はイスタンブルでの演説でアサッドについて「もし自分を指導者であると信じるなら、もし自信があるのなら、あなたは投票箱を開き、皆が投票にいくだろう。戦車と大砲では、あなたはある程度のところまでしか行けない。あなたが立ち去る日は来るだろう」と述べた。トルコのメディアは政府高官がシリヤ国内に軍事的緩衝地帯または飛行禁止区域設定の有事計画を考え始めたと報じている。
 なお11月21日、メッカへの巡礼にいくためにシリヤ領内をバスで移動していたトルコ人巡礼団がシリヤ軍と思われる者に発砲され、2名が負傷するとの事件があった。トルコで大きく報じられている。

2、 シリヤ国内においては、11月20日、首都ダマスカスにあるバース党本部がRPG(ロケット推進手榴弾)で攻撃された。トルコに拠点を置く「自由シリヤ軍」(シリヤ軍よりの脱走者からなる。指導者リアッド・アサッド大佐)がこの攻撃を行ったと発表した。 これ以外に反政府武装勢力による攻撃が増えてきている。
 シリヤの反政府運動は平和的なデモを中心として展開されてきたが、ここにきてシリヤ軍と反政府武装勢力の武装闘争の様相を呈し始めている。
アサッド大統領は反政府勢力をテロリスト集団と呼び、法と秩序の回復のために必要な措置をとっているのであるとの主張をしてきた。反政府勢力の一部が武力闘争路線を取り始めているが、反政府勢力の中には、武力闘争はアサッドの主張に根拠を与えるので控えるべしと主張する勢力もいる。反政府勢力内で路線の違いが出てきている。
又シリヤ国民は内戦が始まれば、とんでもないことになると恐れる人も多いとされる。反政府勢力の武装はせいぜい軽火器とRPGとされ、また軍と治安部隊、諜報機関などから大規模な離脱は見られず、反政府勢力が武力で政権側を圧倒する見込みは小さい。

3、 11月20日付ロンドン・サンデー・タイムズ紙は「シリヤを攻撃すると、世界が揺れる。単独インタビューでバシャール・アサッドはアラブの指導者をシリヤへの西側の介入への口実を作りだしていると非難」との記事を掲載し、アサッドがまだ国内で相当の支持を得ていると考えていること、武装集団による流血を止めようとしているのであると、現在の政策を正当化したこと、かつシリヤ攻撃をすれば、中東が大変なことになると警告したことを報じている。
 このインタビューのなかでアサッドは治安部隊と反政府武装勢力の撃ち合いに巻き込まれたりなどして、民間人が殺されたことはあるが、シリヤの役人によるとその数は活動家が言う3500名ではなく、169名であると述べるとともに、治安部隊隊員800名が殺されたと発言している。
重武装した治安部隊の隊員が800名死んで、デモなどを行っていた民間人の死者は169名であると言うようなことは常識的に考えられない。反政府武装勢力側の死者は勘定していないと言うことかと思われるが、こういう言い方をするアサッドはゲッべルス並みのうそつきではないかとの印象を私は抱いた。
(文責:茂田 宏)

欧州の財政・金融危機(雑感)

1、 ギリシャ政府が債務不履行に陥りそうな状態になり、それへの支援策をドイツとフランスが中心となって打ち出してきた。欧州金融安定化基金(EFSF)の支援規模の拡大、銀行保有対ギリシャ債権の50%の実質的な放棄、銀行の自己資金拡大、ギリシャの財政再建のための歳出削減など、包括的対策が10月27日発表された。
しかし、ギリシャのパパドレウ首相がEUと合意した対策案を国民投票にかけると発表し、混乱を招き、結局ギリシャでは国民投票の中止、パパンドレウ首相の辞任、大連立の形成、新首相の選出ということになった。11月11日、新首相にパパニデモス氏が就任した。
 ギリシャの危機が収束に程遠いなかで、今度はイタリアの国債が急落と言ってよいほど値下がりし、11月8日には、ベルルスコニー首相が辞意を表明し、財政再建策の議会通過を受け、11月12日には辞任した。ベルルスコニー首相の後継は、モンティ元欧州委員が有力になっている。
この欧州の財政・金融危機はまだまだ続くだろう。結果として、欧州経済は減速すること必定である。世界経済にも悪影響を与えるだろう。
欧州中央銀行が大決断をしてイタリア国債を大量に買い支えないとどうしようもないが、ドイツの反対などがあり、そういう決断をなしうるか疑問もある。

2、 財政連合なしに通貨連合を作った基本構造に問題があったとされている。もしそうだとすると、ユーロ圏の統合深化か、ユーロ圏の部分解体か、のような過激な対処案が必要になる。
そこまで行くか、その前に収拾されるかについては、多分後者であろう。
しかしギリシャ、さらにイタリーの緊縮財政だけでも経済の縮小にはなる。
ギリシャ、イタリーなどの国では、ポピュリズムに陥り、収入に見合わないバラマキをし過ぎたことなど、民主主義の弱点が出たように思われる。
 ギリシャでは党派性を排除したテクノクラート内閣の成立ということになった。イタリーでもそうなる蓋然性がある。
そもそも政党というのは英語でpolitical partyというが、partyという語はpartより派生した語で全体ではなく部分を代表するという意味である。したがって政党政治は党派性を前提とする政治である。しかし国全体に関することをこの党派的議論のなかで処理することはうまくいかないこともある。外交・安保政策の基本は、超党派的基盤に基づくべしというような良識が過去のアメリカにはあったし、いまもその残滓があるが、超党派で取り組むべき場合には、そうすべきであろう。
官僚制は党派性を越えた制度であり、時の政権に仕えるものであるが、大筋では国全体のことを考えることを職業的任務としている。ポピュリズムとは程遠い専門家集団である。
ギリシャ、イタリーでのテクノクラート内閣の成立は政党政治の失敗への反省であるとも言える。与野党が党派政治の観点から足の引っ張り合いをし、危機を深化させる状況は日本にも無縁ではない。
最近日本では、政治主導がよいこととされ、官僚を抑えつけることが民主主義の正義のように言われているが、必ずしも正しい議論ではない。
選挙で正統性を持つ政治家が、国全体のことを考える官僚を尊重して、ともに協力して国を運営するのが適切であろう。その役割分担をどうするのがいいのか、それは課題や局面により異なるであろうが、単純な政治主導スローガンの是非はよく考えるべきであろう。
明治憲法下では、政党から超然とした内閣がよいとされた時もある。官僚が天皇の官僚とされたこともある。そういう発想がよいとは言わないが、いわゆる政局にうつつを抜かす政治家は、もっと国家のためには不都合である。

3、 中国は独裁制と官僚制と市場経済の組み合わせで、高成長を成し遂げている。他にも同じようなことを試みている権威主義的政権がある。そういうモデルと民主主義のモデルが競争しているような様相が今の世界にはある。
この競争において、民主主義が失敗するようなことになると、人々は人権が尊重されない世界に生きることになろう。そうならないように欧州も日本も何とか今の危機を乗り越える必要がある。
 アリストテレスは民主性―衆愚制―君主制―僭主制―貴族制―寡頭制の政体の循環論を説いたが、民主主義が衆愚政治に陥らないようにする必要がある。

4、 日本の財政赤字はGDP比では200%にも達し、ギリシャやイタリーの債務のGDP比を上回っている。日本の国債はその95%程度が国民により保有されていること、日本が世界第1の債権国であることなど、日本とギリシャやイタリーは事情が異なるが、今のまま債務を積み上げて行くと、近い将来非常な困難に直面しかねない。その時に慌てないように、先を見た政策展開は避けて通れないことであろう。
 私の外国人の友人は、日本政府が国民の信頼を獲得する能力には感嘆する、生産額の2倍の借金を抱える企業の社債を売ることはまず不可能であるのに、日本政府はそれを成し遂げている、と述べていたが、こういう無理は早晩破たんするので、早めに是正する必要があろう。

5、 EFSFの拡充については、欧州は25%までは保障するということで、レバレッジを効かせたつもりでいる。それでBRICSの資金を引き寄せようとしたり、IMFから資金を得ようとしている。IMFはともかく、BRICSが欧州を救うために資金を出すであろうと期待するのは甘い。ECBによるイタリー国債の購入を増やすなど、欧州はもっと自己努力をしないといけないように思われる。
(文責:茂田 宏)

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