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イラク財政の状況
1、 8月5日、米議会の「政府説明責任事務局」(Government Accountability Office:以下GA
O)は「イラクの安定化と再建:イラクの歳入、歳出と余剰」と題する報告書を発表した。
その要約部分の抄訳、次の通り。(・・部分省略)
・・・2005年から2007年まで、イラク政府は960億ドルの累積歳入を得たと推計される。そのうち、約902億ドル、94%が石油輸出による。2008年については、GAOはイランは735億ドルー862億ドルの歳入総額、その内石油収入は665億ドルー792億ドルを達成できると推定する。2008年の石油収入は2005−2007年の年平均の2倍以上になりうる。これらの見通しは、2008年の6月までの実際の販売と7月から12月の輸出見通し(平均輸出価格を1バレル96,88ドルー125,29ドル、輸出量を日量189万―201万バレルと前提)に基づいている。
2005年から2007年まで、イラク政府は通常歳出と投資経費として670億ドルを使ったと推計される。90%は通常歳出で、給与、物品、サービスなどに支出され、残りの10%が構造物や自動車など投資に支出された。イラク政府は建物、水・電力設備、兵器など、イラクと米が資金提供した投資を維持するために総歳出の1%だけしか使わなかった。
2005年から2007年にかけて、総歳出は増えたが、イラクは予算に計上した資金すべてを使っていない。2007年、イラクは290億ドルの通常経費予算の約80%、120億ドルの投資経費予算の28%を支出した。GAOは2008年、イラク政府は499億ドルの予算のうち、353億ドルー359億ドルを支出しうると推計している。
2007年12月31日イラク政府は、イラク開発基金、イラク中央銀行の中央政府預金、イラクの商業銀行に294億ドルの預金を蓄積している。これは2005年―2007年の間の予算上の余剰資金約290億ドルが蓄積された結果である。GAOは2008年、予算余剰は382億ドルから503億ドルになると推定する。提案されている220億ドルの補正予算がもし支出されれば、この余剰を減少させることが出来る。
2003年予算年度以来、米国は約480億ドルをイラクの安定と復興のため充当し、内420億ドルを2008年6月現在までに支出約束した。米の諸機関は、重要な安全、石油、電力、水の諸分野に約232億ドルを支出した。イラクは2005年から2008年8月まで約39億ドルをこれらの分野に支出した。
米政府、連合軍、国際公務員はその歳入を・・使うイラク政府の能力に影響を与えている要因を同定した。これらの要因は訓練された人員の不足、弱い調達・予算システム、暴力と宗派間争いを含む。米はイラクがその資本プロジェクト予算を執行するイラクの能力を改善するため、重要な・・省庁の能力を高める活動に資金提供をしてきた。
2、 この報告書は、上院軍事委員会委員長カール・レビン(民主党)とジョン・ワーナー上院
議員(共和党)が要請したものであるが、報告書発表後、両名は共同声明を出し、「イラク政府はいまや、大規模再建プロジェクトの資金手当てをするために数百億ドルの資金を持っている。イラクが自分で資金手当て出来るプロジェクトの資金を米の納税者が引き続き負担するのは許しがたい。イラクの石油収入が銀行に積み上がるなか、我々はイラクのプロジェクトに金を出すべきではない」と述べた。
3、 8月6日付ニューヨーク・タイムズ紙は「イラクの余剰が増える中、復興にはほとんど
金が使われず」との見出しで、同日付ワシントン・ポスト紙は「GAO、イラクは数十億ドルを溜め込むと指摘、米が復興プロジェクトに資金提供するなか、イラクの石油収入、急増」との見出しで、この報告書を報道している。
イラク開発基金はその口座をニューヨーク連銀に保有しているが、このための利子として連銀は今年の末までに4億35百万ドルをイラクに支払うことになるとされている。
4、 イラク戦争開始後、その復興はイラクの石油収入で賄いうるとされたが、輸出用パイプラ
インの爆破など治安の悪化で、そうなっていなかった。しかし治安の改善で石油輸出が増え、イラクの復興は石油収入で賄える状況が出てきている。特に石油が高騰しているなかで、イラクは大きな財政上の余裕を持つに至っている。
今後米国内で、これ以上の復興支援は不必要と言う意見が高まる可能性がある。
5、 日本もイラク復興のために円借款などで支援してきた。約束したことは実施すべきであろ
うが、今後については、イラクが大きな余剰資金を保有していることを考慮すべきであろう。支援策を資金援助から資金投下を促進するための技術協力に重点を移していく方向に切り替えることが適切であろうと考えられる。
(文責:茂田 宏)
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