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欧州情勢

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欧州よりの米戦術核撤去問題

1、 4月22−23日、NATOの非公式外相会談がエストニアのタリンで開催された。
この会議では、NATOの核態勢をどうするかも議論された。

2、 4月23日付ニューヨーク・タイムズ紙は「米、戦術核兵器削減のための同盟国の要求に抵抗」との見出しの記事を掲載している。その概要、次の通り。
米はいくつかのNATO同盟国の欧州からの戦術核撤去要求に抵抗している。
4月22日、クリントン長官は、戦術核の削減にオバマ政権は反対ではないが、少なくとも米の10倍の戦術核をもつロシアがその削減に同意しない限りNATO地域からの米の戦術核の撤去はない、と述べた。彼女は「核兵器が存在する限り、NATOは核同盟であり続けることを認めるべきである。核同盟として、核の危険と責任を広く共有することは基本的なことである」と述べた。
戦術核撤去を議題にするようにドイツ、オランダ、ルクセンブルグ、ノールェが求めた。ドイツの自由民主党の外相ヴェスターヴェルが熱心である。しかしトルコや旧ソ連圏諸国は撤去に消極的である。政治的な亀裂の深さ故、この問題は同盟の分裂につながりかねない。
クリントン長官はいかなる決定も秋の首脳会談まで延期されるべきであると述べた。
ラスムセン事務局長も「米の核兵器の存在は信頼性のある抑止の不可欠な部分である」と述べた。ポーランド外相は、急ぐべきではないし、一方的な行動にでるべきではないと述べた。
公的な数字はないが、米はドイツ、ベルギー、オランダ、イタリー、トルコに150から250の核兵器を有すると推定されている。ロシアはポーランドに近いカリニングラードを含め各地に2000またはそれ以上の核兵器を持つとされている。
冷戦中、米は8000、ロシアは23000持っていたので、数は大幅に減ったが、戦略核の削減は、これらの兵器が欧州における米の核の傘のためにより重要になっているように見える。
クリントン長官は次の米ロ軍備管理交渉で戦術核を取り上げると述べたが、ロシアはこれまでのところ、それを拒否している。

3、 会議後、ラスムセン事務局長は「NATOは信頼性のある効果的な安全に管理された抑止を必要とする。しかしながらNATOは軍備管理、軍縮、不拡散を支持するために出来ることをしなければならない」と述べた。

4、 主としてドイツが欧州よりの戦術核撤去を主張している。しかしNATO内で反対論も強く、ドイツの意見は通っていない。この問題については、NATO内での議論の行方を見守るべきで、一方の側に肩入れすることには慎重であるべきであろう。核の傘の有効性のために、戦術核が重要との見解には、非核原則の今後のあり方との関連で、日本として注意して見ておく必要がある。
(文責:茂田 宏)

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ロシア・ポーランド関係の改善?

1、 昨夜まで、関西方面に出掛けていたので、少しニュースとして古いが、ロシア・ポーランド関係を取り上げる。

2、4月10日、カチンスキー大統領専用機が濃霧の中スモレンスク空港への着陸に失敗、カチンスキー大統領ほか多くの政府要人が死亡した。同大統領一行は、カチンの森虐殺事件を記念する式典に出席しようとしていた。
これに先立ち、ロシア側は4月7日、プーチン首相が出席して、トゥスク・ポーランド首相を招いて、カチンの森虐殺事件を記念する式典を開いた。この式典でプーチンはこの虐殺を非難した。
この航空機事故に対し、ロシアはポーランドに対し真摯な哀悼の意を表明した。
メドヴェージェフ大統領は、「すべてのロシア人はあなた方の悲しみと哀悼を共有する」と述べ、プーチンは事故現場でトゥスク首相を抱きしめるとともに、事故究明の責任者となると述べた。
ロシアのテレビは、ポーランドのワイダ監督の映画「カチン」をゴールデン・アワーに放映した。
4月18日のカチンスキー大統領の国葬には、オバマ、サルコジ、メルケル、日本の江田参議院議長などがアイスランドの火山の爆発に起因する航空機飛行制限で参列を取りやめる中、メドヴェージェフ大統領は国葬に参列するため、飛行制限を無視してクラコウに到着した。
ロシアは率直にポーランド人への同情を表している。

2、 カチンの森事件については、ナチ・ドイツが1941年にソ連による虐殺と発表し、ソ連はそれを否定してきたが、1990年にソ連の犯行の可能性を認めた。しかしその後、プーチン政権下で関連文書は再び閉ざされてきた。ロシアはソ連の秘密警察の犯行と明確に認めることを避けてきた。
しかし、今回のプーチン・トゥスク両首相の出席した式典、カチンスキー大統領専用機の墜落とそれに関連したロシアの対応、ロシア・テレビでのワイダ監督作品の放映は、ロシアがこの問題について過去の過ちを認め、ポーランドとの間の歴史から残された問題を乗り越えようとしていることを示している。
私は、プーチンはスターリンの擁護者であり、全体主義やソ連帝国を懐かしんでいると考えてきたが、カチンの森事件へのプーチンの対応は、そういう私の考え方にも一つの衝撃をもたらすものである。極東でスターリンが行った悪行が今の日ロ関係にも影を落としている中で、今回のプーチンの行動は、その影をなくする方向をロシアが取りうるのかもしれないとの微かな希望を与える。

3、 ロシア・ポーランド関係は、いままで一種の敵対関係と言ってよい関係であった。
NAT0内でポーランドは対ロ最強硬と言ってよい立場をとってきた。米がポーランドとの合意でポーランドにミサイル防衛を配備しようとしたこと(これはオバマ政権で取りやめになった)で、ロシア・ポーランド関係は悪化した。また、ロシアがポーランドを念頭に置いた演習「西」で核使用のシミュレーションを行ったことをポーランドのメディアは問題とした。それ以外に、過去の歴史に起因する諸問題があり、ロシア・ポーランド関係は困難な関係であった。
しかし今回の一連の出来事は、ロシア・ポーランド関係の正常化、改善に向かうきっかけとなりうると思われる。
 ロシア人には、力を信奉しすぎる、歴史についても自己正当化ばかりするなどの面と、正教に基づく精神の暖かさなどの面が混在しているが、今回はそのよい面が素直に表に出てきたような感がある。
(文責:茂田 宏)

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キルギスでの政変とロシア

1、 4月7日、キルギスの首都ビシュケクで暴動が起き、政府庁舎が焼き討ちにあい、治安部隊とデモ隊の衝突で80名余が死亡した。バキエフ大統領が首都を離れて南部の地元に逃亡し、オトゥンバエバ元外相が暫定政府の首班になった。
 2005年春のチューリップ革命で生まれたバキエフ政権は実にあっけなく倒れた。その直後、プーチンはバキエフの辞任を求め、新政権と関係をもつことを明らかにした。

2、 この政変はロシアが意図的に惹き起こした政変ではないかとの疑惑がささやかれていた。政変劇の速度はこの政変が事前に準備されたものであることを示しており、私もロシアの関与を疑っていたが、疑惑は深まりつつある。
4月12日付ワシントン・ポスト紙は、「ロシア、キルギスでの暴動を煽ったと言われる。メディア・キャンペーン、経済措置が触媒とされている」と概要次の通り報じている。
政変まで1カ月もないころ、ロシアのテレビは、バキエフ大統領をその家族が数億ドルを国から盗んでいる嫌悪すべき独裁者と描き出す放送をした。(注:キルギスでも視聴可能)
キルギスを罰するようなロシアによる経済措置がこのメディア・キャンペーンと一緒になりバキエフへの怒りを呼び、デモにつながった。
野党指導者で、今政府のNo.2であるテケバエフは、「ロシアなしでもこれは遅かれ早かれ起こっただろうが、ロシアの要因が決定的であった」と述べた。プーチンは暴動でロシアが果たした役割を否定しているが、ロシアがバキエフに不満で、ここ2−3月野党指導者とコンタクトしていたのは事実である。この政変はロシアの対外政策の成功であり、モスクワは中央アジアの指導者に一つのメッセージを送ると共に、キルギスの米空軍基地の将来により大きな発言権を与える。
1年前、ロシアは訪ロしたバキエフに20億ドルの支援を約束、その際バキエフは米空軍基地の閉鎖計画を発表した。4ヶ月後、ロシアが4億1500万ドルを支払った後、バキエフは米が地代を3倍に上げたのを受け、突然、米基地の存続を認めた。ロシアは当時キルギスの決定を認めたが、騙されたとカンカンになったことが後で明らかになった。テケバエフは、ロシア人は基地でのみならずバキエフの態度に怒っていたと述べた。昨年11月、プーチンはキルギス首相になぜ米軍基地は閉鎖されていないのか、ロシアの援助金がバキエフの家族に盗まれたと難詰したと報道された。2月にはロシアは17億ドルの支払いを最初のお金が誤って使用されたことを理由に延期した。3月にはバキエフの腐敗についての報道が何度も流された。特にバキエフの息子、マクシムに焦点が当てられた。ロシアはバキエフがロシア軍の基地の地代を要求したこと、ロシアから特別価格でガソリンを買い、それを米軍基地に供給し1年当たり8000万ドルの利益を上げていることにも怒っていたと報じられた。
野党がデモの企画を発表した後、3月29日、プーチンはキルギスタンへのガソリン輸出補助金の撤廃令を出した。4月1日、ロシアからキルギスへの燃料輸出が停止され、キルギスでのガソリン価格が上がり、公共料金の値上げで怒っている民衆の不満を掻き立てた。デモの前日、キルギスの当時の首相はサリエフ(現政権暫定蔵相)がプーチンと会い、バキエフ転覆努力にプーチンの支持を得たと告発した。サリエフは否定している。
政権N0.2のテケバエフはロシアの行動はバキエフが政権にとどまりえないとのメッセージを政府高官にあたえ、バキエフ支持を掘り崩す効果があったと述べた。

3、 米国はクリントン長官が4月10日、オトゥンバエバ暫定首相と電話で会談し、在キルギス米大使を帰任させ、かつ国務省高官をキルギスに派遣した。米はマナス空軍基地を維持するためにバキエフに親密な姿勢を取り過ぎたとの批判に対し、米側は野党側とも親しい関係を築いてきたとしている。
4月14日付USAトゥデイ紙は、「4月13日オトゥンバエバが米軍基地の閉鎖はしない」と述べたと報じている。ただ混乱で、マナス基地は機能していないとされている。

4、 今回のキルギスの政変は、ロシアがバルトは別にして、旧ソ連諸国での影響力を強める
結果をもたらすだろう。ロシアはキルギスのロシア軍基地に、既にロシア人保護の目的で空挺部隊を派遣している。
 2003年のグルジアでのバラ革命、2004年のウクライナでのオレンジ革命、2005年のキルギスでのチューリップ革命はロシアの旧ソ連諸国での影響力の減退を示したが、グルジアでは南オセチアとアブハジアの「独立」、ウクライナではヤヌコビッチ大統領の誕生でのオレンジ革命の終焉、キルギスではチューリップ革命の終焉が起こったことになる。
 中央アジア諸国の指導者もロシアの意向に逆らうことの危険を今後考えることになるだろう。
 そういう意味があるので、今回のキルギス政変は一つの転換点になる可能性がある。
ロシアには、各国の主権の尊重を求めていく必要があるのではないかと思われるが、そういう言葉が現実政治の中でどれくらいの重みをもつか、疑問である。
(文責:茂田 宏)

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ロシアにおけるテロ事件

1, 3月29日、モスクワの地下鉄のパルク・クリトゥルイ駅とルビヤンカ駅でほぼ同時
に自爆事件が起き、39名が死亡した。3月31日、ダゲスタンのチェチェン共和国との国境に近い町キズリアルで車両を使った自爆事件とその捜査に来た警官隊を狙った自爆事件があり、12名が死亡した。
 3月31日、チェチェン武装勢力のひとり、ドク・ウマロフがウエブ上に犯行声明を掲載し、地下鉄での自爆は自分が指示したものである、2月にロシアの治安部隊がチェチェンの民間人を殺害したことへの報復であるとするとともに、「あなた方に戦争があなた方の街路にきて、あなた方はそれを自分の命で、肌で感じるようになる」と述べた。
ウマロフは2007年以来「コーカサスのエミール」と自称している。現在45歳で、ロシアがチェチェンその他の掃討作戦を行う中、まだ生き残っているチェチェン武装勢力の一人である。昨年には、2004年のベスラン学校占拠事件などを起こしたシャミール・バサエフ(2006年ロシア軍に殺害された)のグループを再興していると言明し、昨年11月のモスクワ・サンクトペテルブルグ間の鉄道爆破や6月のイングーシ共和国大統領襲撃についても犯行声明を出している。

2、プーチン首相はこういうテロ行為は許すわけにいかない、必ず殲滅すると声明するとともに、メドヴェージェフ大統領は「モスクワの事件とダゲスタンの事件は結びついている、テログループの目的はロシアの情勢の不安定化である。それを許すわけにはいかない」と述べた。
今後、チェチェンやダゲスタンで対テロ作戦が展開され、モスクワでも交通機関の対テロ脆弱性を減らすための措置などが取られることになろう。

3、ロシア政府は、北コーカサスを2次にわたる戦争を通じてほぼその統制下におくことに成功した。
しかしその過程での力の行使の結果、過激派を再生産することになり、その対ロ敵愾心は強くなっていると思われる。
テロは本来なかなか撲滅しがたいものであり、今後ともロシアが北コーカサス起源のイスラム過激主義テロに悩まされることになるだろう。コーカサス人は今なおロシアを植民地主義者と見なす傾向もある。
今回の地下鉄自爆テロ犯は二人とも女性であったとされる。夫や父親をロシア軍に殺された女性が自爆テロを行う例があり、「黒い未亡人」と呼ばれているが、今回のケースもそれに該当しているようである。

4、ロシアは2009年4月、「対テロ作戦地域」からチェチェンが除外したが、国民はそういうこともあり、テロも静まりつつあるという認識を持ち始めていた。今回、こういうテロが起きたことに特にモスクワ市民はショックを受け、不安感をもつとともに、政府の対策が不十分ではないか、北コーカサス対策はどうなのかという疑問を抱いている。プーチン、メドヴェージェフが強い声明を出しているのは、そういう国民の疑問に答える努力でもある。

5、なお今度テロの対象となったルビヤンカ駅は元の国家保安員会本部、今の連邦保安庁があるところである。連邦保安庁と連邦警備局がロシアのテロ対策の中心にあるが、この攻撃にはその中心を対象としたという象徴的な意味もある。
(文責:茂田 宏)

欧州からの米戦術核撤去論議

1、 3月15日付アトランタ・ジャーナルーコンスチトゥション紙は、「米、欧州よりの核兵器撤去に慎重」との見出しで、短く次の通り報じている。
米は最も敏感で最も論議されていない国家安全保障問題、欧州における冷戦時代の最後の残存の米核兵器を撤去するかどうか、についてゆっくりとした(go-slow)アプローチをとっている。
欧州の高官には、撤去を主張する人がおり、彼らは核なき世界へのオバマの呼びかけを引用している。しかしオバマ政権の幾人かによると、米はNATOとの協議を優先し、早期の決定を延期している。
彼らは詳細が機密であり、政権が米の核兵器の役割と目的を見直している最中であるので、匿名を条件にそう述べた。

2、 米はNATO加盟国5カ国、ベルギー、ドイツ、イタリー、オランダ、トルコの6軍事基地に150−250の核爆弾を配備していると推定されている。欧州ではこの戦術核兵器はもう要らないのではないかとの議論がある。
 昨年4月、ドイツのスタインマイヤー外相がドイツよりの戦術核撤去を提唱した。ヴェスターヴェル現外相もそれを引き継いで同じ主張をしている。2月26日、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェーの外相が「戦略核の下位の核兵器」の軍縮推進のためにNATOが行動すべきであると訴えた。
ロシアはもう敵ではないという認識が広まる中で、昔盛んであった反核感情が出てきたということであろう。
他方、ロシアは今なお2000発以上の戦術核兵器を保有すると推定されている。またロシアは先に公表した軍事ドクトリンのなかでNATO敵視ともいうべき姿勢を打ち出し、核兵器の役割を重視し、先制使用もありうるとしている。ロシアは通常兵力での劣勢を意識している。核ドクトリンはその存在は発表されたが、文書自体は非公表である。

3、 NATO加盟国の中には、ロシアの戦術核への対抗として欧州での米戦術核を重視する見方の国も当然あろうから、この問題はNATOを分裂される恐れのある問題である。
ただ、戦略核の削減交渉にばかり目が向いているが、ロシアが10倍くらいの優位をもつ戦術核の問題も交渉の対象にすべしとの論は十分成り立つ。
ロシアはそういう交渉ではNATOの通常兵力も俎上に乗せることを要求する可能性があるので、交渉はそう簡単ではないが、交渉呼びかけをするメリットはある。

4、 この欧州での議論が日本に波及するか否かは、非核3原則で日本には核兵器はないので、波及しないと思われる。また、欧州と日本の安全保障環境は北朝鮮、中国要因の存在を考えてみても異なる。
シュミット西独首相が展開したディカプリング論(米欧の安全保障がソ連のSS−20の 配備で切り離させるとの論)は、欧州では情勢の変化により忘れさられてきているということであろう。
(文責:茂田 宏)


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