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オバマ政権下での米ロ関係の見通し
1、 11月15日、メドヴェージェフ・ロシア大統領はワシントンで外交評議会メンバー
との対談を行った。
この対談について、11月16日付ニューヨーク・タイムズ紙は「ロシア、オバマの勝利が関係を暖かくすることを希望」との見出しで、同日付ワシントン・ポスト紙は「メドヴェージェフ、米ロ関係について希望的」との見出しで報じている。
メドヴェージェフは「今は米ロ間に信頼がない」が、オバマ新政権との間で関係を修復しうると述べた。グルジア問題については、南オセチアとアブハジア承認を取り消すことはないと述べた。(発言全容は外交評議会ホーム・ページに掲載されている。)
2、 米ロ間には、当面の問題として、米のチェコ・ポーランドへのミサイル防衛(以下MD)
配備、ウクライナ・グルジアへのNATO拡大、グルジアなどがある。そのうち、MDとNATO拡大について、オバマ政権がブッシュ政権とは違う対応をする蓋然性が高い。
(1) MDに関しては、メドヴェージェフが11月5日の教書演説で、対抗措置とし
てカリーニングラドへのイスカンダール・ミサイル配備などを行うと述べた。こういう挑戦的な発言は普通米国からの反発を呼ぶが、オバマ移行チームは異なる対応している。
11月8日、オバマはポーランド大統領カジンスキーと電話で会談した。その後、カジンスキー大統領が「オバマがMD計画は継続されると述べた」と発表したのに対し、オバマ移行チームは「そういう約束はしていない。オバマは技術が機能すると証明された時に、MDを支持するという立場である」との否定声明を発出した。
これについて、同盟国への態度としてよくない、ロシアの脅しに弱さを示したとの批判があるが、オバマ・チームは立場を変えていない。
11月20日付ワシントン・ポスト紙は「ポーランドはMDについてオバマに陳情はしない」との見出しで、11月19日、ポーランドのシコルスキー外相が米の大西洋評議会で「ポーランドは友情からブッシュ政権のポーランドへの10基の迎撃ミサイルの配備に同意した。しかし今後,慎重に行動し、新政権が決定を行うまで待つ」と述べたと報じている。
このMDについては、米議会も迎撃ミサイルの実験成功を待つということで予算措置はしていない。この実験は2010年まで行われる予定がない。
こういう状況の中で、メドヴェージェフは米がMD配備をするまで、カリーニングラードへのミサイル配備などは行わないと言い方を変えるとともに、ブッシュ政権とのMDに関する交渉はしないことを明らかにしている。
サルコジ仏大統領がこのMDの必要性に疑念を提起している。オバマは欧州との関係を修復するとしており、サルコジの意見もオバマが決定をするに当たり、考慮されよう。
このMD問題は、米ロ間の緊張を作り出してきたが、当面の問題ではなくなってきている。
(2) NATO拡大問題については、グルジアとウクライナにNATO加盟行動計画
(Membership Action Plan:以下MAP)を適用するか否かを12月のNATO外相会合で決定することとなっている。
11月11日―12日、エストニアの首都タリンで、非公式高級NATO/ウクライナ協議が行われた。
この会議では、ウクライナのNATO加盟問題が話し合われたが、ウクライナへのMAP適用については、ドイツなどが反対し、ほぼ12月のMAP適用決定の可能性はなくなったと見られる。
会議後エストニアの大統領は、ウクライナは将来NATOに加盟するが、MAPの適用はウクライナの早い加盟を意味せず、MAP不適用をロシアは自分の勝利と考えてはいけないと発言している。ここでもブッシュ政権が推進しロシアが反対していたことが実現しなくなってきている。ロシアとしては、歓迎するだろう。
3、 米ロ間には、グルジア問題、ロシアでの人権問題など、まだまだ意見の異なることが
多い。ロシアとベネズエラの関係強化なども、米を刺激する。
しかしMD問題とNATO拡大問題での緊張が低下することは、ブッシュ政権時代と比較すると、オバマ政権のもとでは米ロ関係が緊張要因の少ない方向に向かうことを意味する。1、のメドヴェージェフの期待も理由のあるものと判断される。
(文責:茂田 宏)
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