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米ロ戦略兵器削減条約批准問題とロシア情勢
1,11月14日、オバマ大統領は横浜でメドヴェージェフ大統領に戦略兵器削減条約(START)の年内批准に尽力すると述べたことを明らかにした。
この条約はオバマ・メドヴェージェフ間で4月8日に署名され、5月13日上院に提出されていた。外交委員会はすでに通過しているが、本会議採決はまだである。
中間選挙の結果、上院は民主党53議席、共和党47議席になり、民主党は6議席減らした。条約の批准のためには、3分の2の多数の賛成が必要で、賛成票67票が必要である。現議会の構成であれば、共和党議員8名の賛同を得られればよかったが、1月よりの新議会では、共和党議員14名の賛同が必要になる。
それでオバマ大統領は新議会発足前の今年中に現議会(レームダック議会)でこのSTART条約を通したいとしている。11月17日には、ホワイト・ハウスに国務長官経験者や国防長官経験者を党派を超えて召集し、支持を求めた。
他方、共和党側では、カイル上院議員(アリゾナ選出)が現議会に残された審議事項の多さにかんがみ、年内批准は困難であるとしている。なぜ落選議員を含む現議会でこの条約の審議を終わらせなければならないのか、新議員に発言権を認めるべきではないかとの声もある。
ルーガー上院議員(共和党)は条約賛成の立場から、共和党の姿勢を批判し、早期の表決を求めている。
2、この問題がどう決着するか、まだわからない。しかしオバマ大統領がその権威を賭けて、この条約の年内批准を求めている。これを「外交上の最優先課題」とし、かつ自分の外交の成果として誇っている対ロ関係リセットの象徴としている。
この条約の批准がうまくいかないと、オバマ大統領の権威にかなり傷がつくことになる状況になっている。こういう勝負に今出ることがよいのかどうか、よくわからないが、オバマはそういう選択をしたといえる。
3、なおこれに関連し、米紙の一部には、この条約を批准することが対米協調派のメドヴェージェフのロシア内での政治的立場を良くし、強権的で保守的なプーチンによりよく対抗しうるようになるとの意見が出ている。こういう意見はまったく誤りであろう。情勢分析において避けるべきこととしてミラー・イメージングということがよくいわれるが、要するに自国の体制や考えを他国に無批判に投影することをいう。2012年にロシア大統領選挙があるが、米の大統領選のごとく、これがメドヴェージェフとプーチンの争いになると考えているので、こういう意見が出てくるのであろう。
先般のメドヴェージェフの国後島訪問についても、メドヴェージェフのロシア国内政治上の立場強化を狙ったものというしたり顔の解説があった。こういう判断も根拠のないミラー・イメージングである。
プーチン・メドヴェージェフ体制はプーチン優位の体制であり、2012年大統領選挙については、プーチンが自分が出るといえばそれで決まり、プーチンがメドヴェージェフにもう一期やれといえばそれで決まりということである。日本や米の政治過程を投影して考えることは間違いである。
(文責:茂田 宏)
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