|
米・印核合意:NSGによる承認と核不拡散の今後
1、 9月6日、原子力供給グループ(以下NSG、加盟国45カ国)は、全会一致で、イン
ドに対する原子力関連機材・技術の輸出規制を廃止する決定を行った。
米・印核協力協定で、米国はインドへの原子力関連資機材・技術の提供を約している。この協定を実施するうえで、これら資機材・技術の輸出を規制しているNSGガイドラインを改定する必要があったが、その改定が決定された。
今後、米議会で協定実施関連法の審議があるが、その承認はほぼ確実であろう。
2、 このNSG決定を受けて、9月6日、インドのシン首相は、次の声明を発出した。
我々はインドとの完全・非軍事的核協力を可能にするため、そのガイドラインを調整するとのNSGの本日の決定を歓迎する。これは前向きな重大な決定である。これはインドの数十年にわたる核の主流からの孤立の終焉、技術拒否体制の終わりを印す。これはインドの申し分のない不拡散に関する信用と進歩した核技術を持つ国としての地位の承認である。これはインドの環境面で持続可能な経済成長に勢いを与えるだろう。
私は、この結果を確保するために役割を果たした米やNSGのその他のメンバーに感謝する。インドと国際社会の間での完全・非軍事的な核協力の開始は、インドにとり、また世界にとり善いことである。我々は世界的なエネルギー安全保障と気候変動の挑戦にこたえるために重要な分野で友好国と互恵のパートナー関係を樹立することを楽しみにしている。
9月6日、シン首相はブッシュ大統領と電話で会談し、ブッシュ大統領に謝意を表明した。この会談で、両首脳は米・印の互恵的関係は両国民の利益であり、着実な強化と多面的発展・・の途上にあるとの考えを表明したとされている。
3、 NSG総会は9月4−5日の日程で開催されたが、ガイドライン改定に反対する国もあ
り、上記決定は9月6日になって採択された。そこに至るまでにブッシュ大統領をはじめとする米側が説得工作を行った。また9月5日の印外相の声明が決め手になったようである。
9月5日の印外相声明は次のとおり。(・・部分省略)
・ ・インドは、・・核軍縮に関する作業文書を国連総会に最近提出した。この中には、核兵
器の完全な廃絶の目標へのすべての核兵器国の明白な誓約の再確認、核兵器の使用や使用の威嚇を完全に禁止する条約の交渉、特定の時間的枠組み内での核兵器の開発、生産、貯蔵と使用を禁止し、核兵器廃絶に導く全世界的、非差別的、検証可能な核兵器条約の交渉が含まれている。
我々は核実験の自発的、一方的なモラトリアムを引き続き守る。我々は核軍備競争を含めいかなる軍備競争にも同意しない。我々は常に我々の戦略的自立性の行使を世界的責任感で抑制してきた。我々は核兵器の第1使用をしないとの我々の政策を確認する。
我々は軍縮会議で普遍的、非差別的、検証可能な多数国間の核分裂性物資のカット・オフ条約の締結に他の国とともに作業することにコミットしている。
インドは申し分のない不拡散の記録を有している。我々は・・効果的で包括的な輸出規制システムを有している。インドは・・ミサイル技術管理体制とNSGガイドラインの遵守にコミットしている。
インドは濃縮と再処理を含む機微な技術の拡散元にはならない。・・
我々はIAEAと特にインドのために締結された保障措置協定の実施のためIAEAと協働することを楽しみにしている。・・我々はインドの非軍事核施設に関して追加議定書に署名し、それを守るとの約束を守るために、保障措置協定への追加議定書の早期締結を確実にするためにIAEAと緊密に作業をしている。
4、 インドはNPT(核不拡散条約)を差別的条約として参加を拒否し、核実験も行った。
NPTへの参加を拒否した国には、核の平和利用のための協力をしないというのが、核不拡散体制の中心的な柱であった。今回のNSGの決定はインドについては、その原則の例外を認めるというものである。これは核不拡散体制に大きな風穴を開けることである。
インドに認められることが何故パキスタンには認められないのか、イスラエルにはどうなのか、北朝鮮やイランに対しどう説明するのか、多くの問題がある。
日本も今回の決定に同意した。対米考慮、対印考慮、今後の原発輸出などを考えた結果と思われるが、日本も核不拡散体制に風穴をあけることに賛成したことになる。
インドは信用できるからという理由のようであるが、もしそうであれば、要するに「良い国は核を持ってよい、悪い国は核を持ってはならない」という恣意的な基準の話になる。
NPTで米、英、露、中、仏だけが核保有国とされた時代は事実上だいぶ前に終わっていたが、今回、それが当為の問題としても終わったという意味で、NPTで規定された核不拡散体制は理念面で崩壊したと考えられる。
(文責:茂田 宏)
|