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ジンバブエ制裁決議案の否決と安保理の機能不全
1、 7月11日、安保理はジンバブエ政府を非難し、ムガベ大統領ら政権幹部の資産凍結・渡
航禁止などを盛り込んだ米など提案の決議案の採決を行った。
賛成9(米、英、仏、伊、ベルギー、ブルキナファソ、コスタリカ、クロアチア、パナマ)、反対5(中、露、南ア、リビヤ、ベトナム),棄権1(インドネシア)で、中露の拒否権で決議案は否決された。
2、 この採決の後、ハリルザード米国連大使は安保理で概要次の声明を行った。(・・部分省略)
米は、ロシアと中国が本日安保理がムガベの暴力的政権を非難し、制裁する強い決議を採択
することを阻止したことに失望している。中国とロシアはジンバブエの人民に反対し、ムガベの側に組した。安保理の過半数以上が・・ジンバブエ人民の側に立った。・・決議案は民主的選挙で平和的に自らの生活を変えようとするジンバブエ人民の勇気ある努力を支援しただろう。・・
ロシアの立場のUターンは特に驚きである・・。2−3日前、ロシアはG8声明を支持した。これを引用する。「我々はジンバブエの情勢に深刻な懸念を表明する。我々はジンバブエ当局による組織的な暴力、妨害及び脅迫の結果、自由で公正な投票に適切な状況が整っていないにもかかわらず、ジンバブエ当局が大統領選挙を強行したことを憂慮する。
我々は、政治、人道、人権および治安に関する状況について報告を行うとともに、政党間の仲介を前進させるための地域的努力を支援するために、国連事務総長の特使を任命することを勧告する。我々は、暴力に対して責任を有する個人に対する資金的その他の措置を導入することを含め、更なる手段をとる。」
今日のロシアの行動は、G8のパートナーとしてのロシアの信頼性に疑問を提起する。
ジンバブエで起こっていることが地域の平和と安全に影響を与えることに疑問はない。・・
3、 英国大使も同様の声明を行った。
4、 7月12日、ロシア外務省は、この件についてネステレンコ代表のコメントを発出した。その概要、次の通り。(・・部分省略)
我々はジンバブエについての米決議案の安保理での投票に際しての米と英の常駐代表の発言に注目した。
ロシアと中国による・・拒否権行使に関連し、米と英の代表はこういう我々の投票が最近の洞爺湖でのG8サミットでのジンバブエについての合意より逸脱しているのではないか、これはG8のパートナーとしてのロシアの信頼性に疑問を投げかけると発言した。
こういう発言は許しがたいものであると考える。米・英の代表は・・良くて洞爺湖のG8サミットの首脳の討議について情報を与えられていないか、悪い場合には意識的に事実を捻じ曲げている。
ジンバブエに関するG8の特別声明では、・・現段階での安保理での措置についてG8諸国による支持について一言もない。これは偶然ではなく、真剣な討議の結果であることを指摘する。・・ロシアの主張により、採択された文書から、安保理での措置についてのあらゆる言及が削除された。G8の首脳は、南部アフリカ開発共同体、アフリカ連合、国連やその他の関心ある組織と政治的解決のために協働する用意があること、地域諸国にジンバブエの諸当事者の間の仲介のために支援を与える用意を強調した。・・
この問題について、洞爺湖での討議の性格をすこし明らかにしよう。制裁の支持者はロシアが安保理決議を支持するかどうか、正面から質した。我々の答えは明確であった。我々はその内容に従い、あれこれの安保理決議案を検討する用意があるというものであった。我々は南アが提案し、正当化されない制裁を導入せず、アフリカ諸国の仲介を支持する決議案についてニューヨークで作業する用意があった。しかしそういう決議案についての作業をワシントンとロンドンが阻止した。・・
我々は、洞爺湖でも指摘し、いまも強調するが、国際社会のすべての措置は、・・問題の政治的・外交的解決の奨励に向けられなければならない。人工的に状況を複雑化すること、特に国連憲章上の安保理の責任範囲を超える問題に安保理を引き込んではならない。・・
5、 洞爺湖サミットで、ロシアをも巻き込んで、ジンバブエについてのG8首脳声明が出され
た。私はこれを一つの成果として評価していたが、安保理でのロシアの拒否権行使を見ると、ジンバブエ問題についてサミットの成果はなかったといってよい。
6、 国連安保理は、冷戦中は、東西対立のために機能しなかった。冷戦終了直後、機能し始め
た。しかし最近では、中露が、平和と安全の問題ではない、内政問題だなどの理由で、安保理の行動にブレーキを掛ける事例が多い。冷戦時代に逆戻りしたというのは言いすぎであるが、ルワンダなどの経験から、2005年の国連首脳会議で合意された「保護する責任」は、ミヤンマーについてもジンバブエについてもどこかに行ってしまった感がある。また中露は安保理での立場を他の常任理事国以上に自国の国益の増進のために使っているところがある。
かかる安保理に多くを期待する政策、たとえば小沢民主党代表の論や国連中心主義論は、時代に合わなくなっている。
(文責:茂田 宏)
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