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北朝鮮の核問題:北朝鮮外務省声明と今後
1、 7月4日、北朝鮮外務省報道官が発出した声明、次の通り。
10月3日合意(注:共同声明の実施のための第2段階の措置)は、朝鮮民主人民共和国(以下DPRK)の誠実な努力によってその実施の新しい段階に入った。
DPRKにおける核施設の無能力化は、今の時点で80%以上実施され、正確で完全な核申告の提出についての合意事項も実施された。
DPRKは、特に無能力化の段階を越え、試験的な原子力発電所の冷却塔を完全に爆破する措置を取った。これは善意に基づき取られた措置、DPRKの非核化への意思の証拠である。これは核施設の撤去に続く段階で取られるべき措置を前もって取ったことを意味する。
6者協議の他の参加国はその約束を正直に実施するとの努力においてDPRKに同調すべきである。米は10月3日合意に従っての政治的補償のための措置を公表した。しかしテロ支援国家指定リストからDPRKを取り外す措置は手続き上の要因によりまだ発効していないし、DPRKに対敵取引法の適用を終わらせる措置は、米は発効したと言っているが、実質的な面で完全に実施されていない。
経済的な補償をするとの5カ国の約束は、現時点で40%だけ実施された。
その首席代表が6カ国協議で挙手をし、上記の合意を支持したある当事者は、これを実施することに参加することを拒否しており、まだ見て見ぬふりをしている。
DPRKは,核申告の検証に協力する用意があるが、「行動対行動」の原則が遵守されるべきであるとの基本的な原則を維持する。
もともと9月19日共同声明に従う全朝鮮半島の非核化は検証を前提としている。米を含むすべての参加国の約束の履行は例外なしに検証されるべきである。
すべての参加国が、正確にその約束の実施を終了した時、10月3日合意の完全な実施が行われたことになり、その時に始めて、次の段階での問題の討議が順調に進展する。
これが「行動対行動」の原則の基本的な要請であり、DPRKの一貫した立場である。
2、 次回6カ国協議がサミット後に開催されるとの報道があったが、この声明に現われている
北朝鮮の態度は、次回6カ国協議がまた諸困難に直面することを予想させる。
第1に、北朝鮮は、「正確で完全な申告」が実施されたとの前提に立っているが、申告は、(1)ウラン濃縮、(2)シリアへの拡散、(3)核兵器と核実験についての情報の3点で不完全である。米は(1)、(2)については、サイド・レターを受け取っている筈であるが、それは明らかになっていない。(3)については、第3段階でとライス長官は言っているが、北が出してくる保障はない。
第2に、この声明で「ある当事者が(経済的補償への)参加を拒否している」と言っているが、これは日本がエネルギー支援への参加を拒否していることを言っている。日本に今後圧力をかける意思を明確にしている。
第3に、検証について、全朝鮮半島の非核化の検証を持ち出しており、これは在韓米軍、更に韓国軍への立ち入り検査の要求にさえつながりかねない。
ウラン濃縮やシリアへの拡散について、過去を不問にし、今後しないとの約束を取って、とにかくプルトニウム関連の核廃棄を前に進めようと言う米の考え方は、一つの考え方である。しかし今回の申告が「正確で完全なもの」とする北の主張を受け入れるのは間違いであろう。ライス長官は「核兵器申告」は第3段階でと述べたが、それを堅持してもらう必要がある。
なおウラン濃縮については、最近、パキスタンにおいてカーン博士が、北朝鮮にP−1といわれるウラン濃縮用遠心分離機を供給したのは自分の一存ではなく、軍の同意を得ていたと発言し、ムシャラフがそんな同意を与えたことはないと否定し、問題になっている。真相はわからないが、両者ともに北朝鮮にP−1が提供されたことを前提に論争している。
7月2日付ワシントン・ポスト紙は、北の申告は60ページあり、そのなかで北は37キロのプルトニウムの所有を認めていると報じている。
3、 米による北のテロ支援国家指定解除の手続き開始に関連し、日米間の信頼が壊された、日
米同盟にも影響が出るなどの論説がある。拉致家族の気持ちは尊重すべきであるが、この問題をそれほど大げさに考えるのは間違いである。米も今後とも拉致解決に協力するといっているのであるから、そうしてもらえばよい。
他国の持つカードを当てにする対応は、国際政治では限界があることを認識するべきである。指定解除は世銀やアジ銀の対北融資の問題である。日本としてそれに反対していけばよい。
米の対応の問題点は、北のいう段階的なアプローチを受け入れ、かつ不完全な申告にもかかわらず、第2段階が終了したかのようにテロ支援国家指定解除に踏み切り、核兵器関連申告を第3段階に先延ばしすることを容認したことにある。約束を完全に果たさなくても、次の段階に進むという先例を残した。これではこの6者協議プロセスは第3、第4、第5、第6・・段階まで次々に引き延ばされかねない。その間、北は核兵器保有国であり続けることになる。
(文責:茂田 宏)
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