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アフガン・パキスタン情勢

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アフガンでのカルザイ2期目と腐敗問題

1、 11月19日、カブールでカルザイ大統領の就任式が行われた。就任演説でカルザイは、
アフガン治安部隊が5年以内に治安への完全な責任を負うこと、腐敗を根絶することを目標として掲げた。またタリバンとの和解が最優先事項であるとし、武装勢力に武器をおくように呼びかけ、アフガンの指導者の会議を招集し、交渉を通じて平和をもたらすと述べた。「30年続く戦争を終わらせることをアフガン人は最も望んでいる。平和と安全保障は軍事的手段のみでは達成できない」と述べた。又政府高官の資産公開を義務付ける法律を制定するなど、腐敗と戦うとした。
この就任式には米よりクリントン長官、パキスタンよりザルダリ大統領などが出席した。日本からは福山外務副大臣が出席した。
アフガン人の多くは大統領選挙での不正、蔓延する腐敗などでカルザイを信用していないところがある。カルザイが国民の信頼を今後獲得し、アフガンを安定させられるか、まだわからない。

2、 腐敗問題について、11月18日付ワシントン・ポスト紙は、「アフガンの大臣、ワイロ受
け取りで告発さる。3千万ドルの支払いがあったとされ、大規模な鉱山プロジェクトが中国の会社に与えられた」との記事を掲載している。その記事の概要、次の通り。
 米高官によると、アフガンの鉱山大臣がアフガンでの最大の鉱山開発を中国の会社に与えるに際し、ほぼ3千万ドルのワイロを受け取った由。米は、腐敗ゆえにカルザイがパートナーとして信頼しうるか、疑念をもっているが、カルザイは腐敗した閣僚を辞任させてこなかった。いまそうする用意があるのかもはっきりしない。
米高官は、鉱山大臣モハンマド・イブラヒム・アデルへの支払いは、中国国営金属集団会社(以下MCC)がロガール地方のアイナク鉱山(未開発の銅鉱山として世界最大級)から銅を採掘する29億ドルのプロジェクトを落札した時、2007年12月、ドバイで行われたと見られると述べた。西側の会社は、アデルが中国社に好意的で、西側の提案を公正に取り扱わなかったとしている。現在、カブールの西側にあるハジ・ガクという大規模な鉄鉱山開発プロジェクトを鉱山省は検討中であり、ここでもMCCがトップ・ランナーであるとされている。
アデル大臣は不正を否定し、鉄道敷設、400メガワット発電所建設、8億8百万ドルのアフガン政府へのボーナス支払いという中国の提案が、他の会社のオファーを大きく上回っていたと述べた。アフガンは銅、鉄、大理石、金、貴石に恵まれ、鉱山分野は国の主要な収入源になりうるが、今日、主要な鉱山は稼動していない。
鉱山省の顧問を務めた米国人は、世銀が定めた手続き、アフガン政府の手続きは何度も破られた、チップの交換があったと信じる理由がある、と述べた。
アデルはレニングラードで勉強した鉱山技師である。
アデルが 大臣として行った最初の契約は、ゴリのセメント工場の民有化である。アデルは2006年3月、モハンマド・セデクの後任としてカルザイに任命された。前任のセデクによると、アフガン投資会社の長で、カルザイの弟であるマハムード・カルザイが、この工場を入手したいと言ってきた。このプロジェクトについての競争者であったアリア・ザーミン社の代表であったパルシは、入札の最終段階でアデルが2千5百万ドルを保証金として鉱山省に納めるように要求、パルシは規則違反であると拒否した。契約は結局カルザイの弟が所要の金を用意し、アフガン投資会社が落札した。
アデルは、マハムード・カルザイが省に来た時には、私に会うために半時間も1時間も待っていると述べ、不当な影響はないと述べた。
鉱山省顧問であった米人ジェイムス・イエアガーは、報告書で、アイナク銅鉱山は1年当たり2億ドルの収入(去年のアフガンの予算の3分の1)を政府にもたらしうるとするとともに、強い意志をもった大臣が指導する「うさんくさい、不十分な入札過程」を批判している。

3、 カルザイ大統領の別の弟、アハメド・ワリ・カルザイは南部アフガンのカンダハルの長であ
るが、腐敗や麻薬取引に関与していると何度も指摘されている。
アフガンの腐敗問題の是正はカルザイ大統領の支持基盤を掘り崩すことになるので、カルザイは真剣に取り組めないとの指摘があるが、弟達が腐敗に関与している、カルザイ大統領自身が腐敗しているおそれさえある。そういう政権が国民の信頼を得るのは至難であろう。
外部圧力でどれくらい是正されるかわからない。日本の50億ドル支援の使途についても、注意が必要であろう。

4、 なお中国は資源獲得のために、アフガンでのみならず、アフリカでもラ米でもその他の地
域でも、なりふり構わぬ工作をしている。OECDが作成した「外国公務員贈賄禁止条約」というのがあるが、中国の経済的活動の拡大に伴い、中国にこの条約の規範を守ってもらうように働きかける必要があると思われる。
(文責:茂田 宏)

アフガン大統領決戦投票の事実上の決着

1、 11月1日、アブドラ・アブドラは記者会見で大統領決選投票が公正に行われる保証がないことを理由に、大統領選挙への不参加を表明した。支持者には暴力を控えるように述べた。
 11月7日の決選投票が行われるか否かはまだわからない。選管は、この期に及んでの選挙参加辞退は認められず、選挙は予定通り行うとしているが、選挙の意味は既になくなっている。そのような選挙のために、多くの投票所を設置し、その安全を守るための措置がいるのか、疑問である。
いずれにせよ、カルザイが今後の5年間、アフガン大統領になることが事実上確定した。

2、アブドラ・アブドラの不参加の背景は良く判らない。
カルザイに対し、選管委員長の更迭を求めたが、カルザイが拒否したからとか、アブドラ・アブドラ陣営が、アフガン人の多くは勝ち馬に乗ろうとするので、決選投票で大負けする可能性があり、そういうことになった場合、政治的影響力を失うと判断したからとか、言われている。
しかし選挙不参加をほのめかしつつ、カルザイに公正な選挙の実施や政権の運営に注文をつけることを、アブドラ・アブドラはもっと粘り強くやるべきであったように思われる。不参加を表明した段階で、政治状況は一変し、政局はカルザイ主導になるだろう。
現在のアフガンにとって重要なのは挙国一致政府である。今後は、カルザイが挙国一致のために大きな度量を発揮できるかどうかが問題である。

3、クリントン国務長官は、アブドラ・アブドラの選挙不参加を受けて、決選投票の正統性に何らの影響を与えないとコメントした。米としては、カルザイを正統性ある大統領として先に進む以外に選択はないからであろう。日本にとっても、そうである。

4、なお10月28日付ニューヨーク・タイムズ紙は、カルザイ大統領の弟、アハメッド・ワリ・カルザイ(カンダハール地方知事)が不法な麻薬取引などに係り、腐敗しているにかかわらず、CIAにより8年間定期的な報酬を得ていた、という記事を掲載した、その後、CIAのやり方に対する批判やアハメッド・カルザイ批判の記事が多く出ている。
米世論でのカルザイ大統領批判はこういう報道によっても強くなるであろう。
(文責:茂田 宏)

NATOのアフガン戦略

NATOのアフガン戦略

1、 10月23日、ブラチスラバでNATO国防相会議が行われた。同日のNATO発表、次の通り。

本日、NATO国防相は、ISAF(国際治安支援部隊)に兵力を提供しているNATO以外の諸国の同僚とともに会合し、2009年末と2010年のアフガニスタンでの重要な優先事項と、条件が満たされた場合の治安についてのアフガン主導への移行のための戦略的概念について合意した。
会合はNATO事務局長ラスムセンが議長を務めた。NATO軍事委委員長ディ・パオラ提督、欧州連合軍最高司令官スタヴリディス提督、ISAF司令官スタン・マックリスタル将軍も参加した。会合はまた、アフガン国防相ワルダク将軍、アフガンへの国連事務総長特別代表カイ・エイデ大使、EU上級代表を代表するアーノルド女史を歓迎した。
ISAFの司令官、マックリスタル将軍が参加者に、アフガンの現状と任務についての彼の評価を説明した。同盟国と兵力提供国はISAF司令官の評価に幅広い支持を表明した。ただし後の段階で行われる資源的含意についての詳細な討議はなかった。討議の結果、今後の時期についての4つの重要な優先事項が採択された。これらは、NATO−ISAFの集団的努力の中核にアフガン住民を置くこと、アフガン国家治安部隊の能力の建設のために強化された努力をすること、より良い統治を推進するために国際的な、またアフガンのパートナーと、より緊密・効果的に作業すること、アフガンの隣国、特にパキスタンに効果的に関与すること、である。
加えて、国防相はアフガン主導への移行のための戦略的概念を承認した。昨年のカブール地方でのアフガン治安部隊主導への移行の成功に続いて、この合意は今後、ISAFの移行段階の採択の条件をNATO軍事当局が決めることを可能にする。
事務総長は「これらの優先事項についてコンセンサスが出来たことは我々の努力とアフガンのパートナーの努力をよりよい焦点のあったものにする。これは非常に価値ある討議であった。我々が治安のNATO主導からアフガン主導にどのように移行していくかについて合意された了解をいまや持っていることを私は喜んでいる」と述べた。
国防相達はアフガン国家治安部隊の訓練がアフガン主導への移行にとり決定的に重要であること、アフガンでのNATO訓練任務(NTM-A)は必要な能力を作り上げるために十全に資源を与えられる必要があること、に合意した。
NTM−AについてNATO事務総長は、それを効果的にするためには、ISAFは増大するアフガン部隊を維持するためにより多くの訓練チームと資金を必要とすると強調した。
事務総長はまた移行は単に軍事的でありえず、強力な軍と警察に加え、アフガニスタンは腐敗を一掃し、効率を改善し、住民に効果的にサービスを提供していることを示す積極的で目に見える措置を取っている信頼性ある政府を必要としていることを指摘した。

2、 このNATO会合について、10月24日付ニューヨーク・タイムズ紙は「NATO国防相、より幅広いアフガンでの努力を承認」との記事を掲載、マクリスタル将軍のアプローチがNATO国防相により受け入れられた、バイデン副大統領が主張しているとされるテロ対策に焦点を絞ったアプローチは拒否されたと報じている。
同日付ロスアンジェルス・タイムズ紙は「NATO国防相、アフガンでの米兵力増を支持:国防相は数を議論しなかったが、兵力増強というマックリスタル勧告を支持。ゲイツはいくつかの国が派遣兵力増を考慮していると述べた」との見出しの記事を掲載している。 この記事の中でゲイツが「我々は今回は聞き役であった。私は同盟国の側が制服も文民も我々とともにアフガンに参加し、これを成功裏に終わらせるとの決意であると思った。米の決定まで2−3週間はかかる」と述べたとしている。

3、 オバマ大統領はマックリスタルの約4万人増派という勧告を認めるか否か、近く決定
しなければならないが、このNATO国防相会合の結論はオバマが増派か否かを決定する際の重要な要因になると思われる。
民主党内には、政治指導者がどう考えているかが問題で、国防相会合での議論にオバマは左右されるべきではないとの意見がある。アフパク問題特使、ホルブルックはこの国防相会合の結果はオバマの手を縛らないと言明している。
しかし流れは増派の方に傾いてきていると思われる。
(文責:茂田 宏) 

アフガン大統領選挙

アフガン大統領選挙

1、 10月20日、アフガン選挙管理委員会は、8月20日に行われた大統領選挙において過半数の得票を得た候補がなかったので、11月7日にハミド・カルザイ候補とアブドラ・アブドラ候補との間での決選投票を行うと発表した。
カルザイ候補もアブドラ・アブドラ候補も11月7日の決選投票実施を受け入れることを表明した。

2、 8月20日の選挙後、選挙管理委員会はカルザイが54,6%、アブドラ・アブドラが27、8%を得票したとしていたが、10月19日、選挙苦情委員会(ECC)が数多くの選挙不正があったとの申し立てを受け、200箇所以上の投票所の投票を無効とする報告を選管に提出した。その結果、カルザイ候補の得票が50%以下になったとされている。

3、 米国を始め、西側諸国がアフガンには正統性のある政府が必要との見地より、決選投票の実施を求め、カルザイ大統領がそれを拒否し続けるという構図が続いてきたが、カルザイも結局、ECCの報告を受け、決選投票を受け入れた。
カルザイ支持者は、ECCが外国人3人、アフガン人2人の構成になっていること、西側が決選投票を求めていること,を外部からの干渉であるとして、決選投票を忌避してきた。そのなかで今回カルザイが決選投票を受け入れたことは、歓迎されることである。
決選投票なしでは、この選挙で成立するカルザイ政権は正統性のある政府とアフガン国民の多くから見られないことになっていたであろう。

4、 決選投票が11月7日になったことも良いことである。それ以上遅れると、冬になり国内の一部では投票が出来ない惧れがあること、8月20日の選挙後もう2ヶ月も経っており、正統な政府がない状況は早く解消されるべきであること、米側でアフガン新戦略の決定をアフガン大統領選挙が決着するまで待とうという意見があるが、アフガン情勢は米のそういう遅延で更に悪化する状況にあること、などを考えると、早めの投票は必要である。
 準備のための期間が限られていることから出てくる問題はあろうが、それを凌駕する早期投票の必要があると考えられる。

 5、11月7日の決選投票が不正の横行で結果が尊重に値しないものになり、またもめることは避けなければならない。このためには、国際監視団の派遣やタリバンの妨害排除を行うとともに、選挙管理委員会のやり方も改める必要があろう。
 選管の地方での責任者の半数が決選投票の前に入れ替えられるという報道があるが、不正が認められた投票所や地域の選管関係者は解雇されるべきであろう。

6、いずれにせよ、決選投票後はその結果を両候補とも受け入れ、正統性のある政府の樹立を速やかに行い、アフガニスタンの直面する問題に取り組んでいくべきであろう。
(文責:茂田 宏)

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パキスタン軍の南ワジリスタン攻撃

1、 パキスタン軍は10月17日より南ワジリスタンに地上軍を投入し、パキスタン・タリバンの根拠地への攻撃を開始した。
10月18日付ニューヨーク・タイムズ紙は「パキスタン、武装勢力本拠への攻撃開始」との記事を、同日付ワシントン・ポスト紙は「パキスタン、本格攻撃を決行:武装勢力の根拠地に3万人の兵士を展開」との記事を掲載している。

2、 米国は、パキスタン軍のこの作戦を支持し、フォローしている。
中央軍ぺトレイアス司令官は、キヤニ・パキスタン軍参謀長と協議のためイスラムバードに10月18日入った。
各紙の報道によると、米軍はパキスタン軍に対し、F−16爆撃戦闘機用に最新の画像取得装置、監視・偵察装置、盗聴装置などを供給し、側面支援するとともに、無人航空機を偵察用に飛ばし、パキスタン軍司令官に武装勢力についてのビデオその他の情報を提供しているとされている。
パキスタン軍が投入している兵力については、2万8千兵という報道から3万兵との報道がある。ただ従軍記者がいないので、正確なところは不明である。
パキスタン軍は、南ワジリスタンの武装勢力は、1万から1万2千であると見積もっているが、この見積もりも概算の域を出ない。

3、 今回の攻撃作戦の準備は、かなり長期にわたって行われてきた。空爆はかなり前から行われてきた。地上軍の侵攻も近いとの判断で、武装勢力側も攻勢を強め、ラホールの警察、ラワルピンジの軍本部などへの攻撃を行った。軍として、これ以上放置できないということで、今回、本格的な攻撃に踏み切った模様である。
 ただ南ワジリスタンはスワト地域などより、ずっと山岳地帯であり、かつ山も高い。11月には、雪が降るということである。作戦開始時期として、適切であったのかどうかはよくわからない。
しかしラワルピンジの軍本部への攻撃は、パキスタンにおける今次作戦への政治的な支持を強いものにしており、政治的なタイミングとしては良かったと言える。

4、 専門家のなかには、地形や天候、さらに南ワジリスタンへのタリバン勢力の浸透や部族関係を考えると、パキスタン軍の過激派掃討作戦中でももっとも難度が高いのではないかとの指摘がなされている。
パキスタン軍は南ワジリスタンで2004年、2005年、2008年にも作戦を行ったが、いずれも「停戦」に合意することで戦闘を終結させた。パキスタン軍の本気度は今回の攻撃では高いとみられるが、その帰趨の見通しはまだ立てがたい。
(文責:茂田 宏)

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