|
アフガン問題と周辺諸国(雑感)
1、米国内でアフガン戦争にどう今後対処するか、大きな論争になっている。オバマ大統領は近いうちに増派するか否か、決定をする予定である。
右に関連し、米国内で、軍事戦略のほかに、外交戦略としてアフガン安定化への周辺諸国の協力を求めるべきであるとの議論が出てきている。
具体的には、クリントン国務長官がアフガン周辺諸国の首脳会議を示唆し、キッシンジャー元国務長官がその構想を支持している。
2、周辺諸国の事情を大まかに見ると、次のとおりである。
第1に、パキスタンはアフガンが安定し、パキスタンに友好的であることを望んでいる。パキスタン内には、タリバンが支配するアフガニスタンの復活が不可避であれば、それとの関係を良好なものにするとの観点からタリバンともそれなりの関係を保持しておくべしとの意見と、タリバンはパキスタン国内でのタリバンをはじめ、もっとも重大な脅威であり、これを敗北させることが重要と言う意見がある。
現在、パキスタンでは後者の意見が強く、軍はワジリスタンでタリバンを攻撃する準備をしている。米がアフガンから撤退しないとの判断が強くなると、後者の意見が更に強くなるだろう。パキスタンとは協力できる。
第2に、イランは、タリバンが支配するアフガニスタンを避けたいと考えている。イランとタリバン支配下のアフガニスタンの関係は悪かった。イランには多くのアフガン難民がまだ滞留しており、イランはアフガンが安定化し、これら難民を帰したいと考えている。さらにタリバンの主張するスン二派のイスラム原理主義が、イランのシーア派のイスラム原理主義と相容れない。イランは中立化したアフガンを望んでいる。米の支配下のアフガンを望んでいないが、タリバン支配下のアフガンも望んでいない。
2001年のタリバン政権の転覆に、イランは協力的であった。北部同盟はタジク人主体で、タジク人はペルシャ語を話す民族である。タリバンはパシュトゥン人であり、イランはタジク人に親近感をもっている。反タリバンと言う点では米と協力する余地がある。
第3に、ロシアは、イスラム過激派の勢力伸張を望んでいない。タリバンがアフガニスタンで復権することは、旧ソ連中央アジア諸国でのイスラム過激派の勢力伸張につながり、間接的にロシアの安全保障に影響を与えるほか、直接的にもチェチェンやその他のイスラム系自治共和国への影響がある。
アフガンにソ連が侵攻した背景には、アフガン情勢の推移がソ連に与える影響への懸念もあった。この状況は変わっていない。
第4に、中央アジア諸国は、安定し、イスラム過激派に牛耳られないアフガンを望んでいる。国内の安定にアフガンでのタリバンの勝利は影響を与える。
第5に、中国は一つには資源の供給先または輸送経路としてのアフガンに関心がある。カブールの南で、中国はアイナク銅鉱山を開発している。アフガンには、銅のほか、鉄鉱石、金、ウラン、貴石などの資源があり、中国はそれに関心をもっている。又中国は、エネルギーその他の資源供給ルートとしてアフガンを重視している。
二つ目として、ウイグル問題に現われているように、中国自身、イスラム過激派の勢力伸張で脅威を受ける立場にある。
それでアフガンの安定を望んでおり、タリバンがアフガンで勝利することは望んでいない。
第6に、インドであるが、インドは、タリバンがアフガンを抑え、パキスタンがタリバン支配下のアフガンと良好な関係を持ち、イスラム過激派の圧力がカシュミールで強まるほか、インド国内でのイスラム過激派が勢いを持つことを警戒している。
これは極めて大雑把な観察であり、より詳細な分析が必要であるが、アフガンの今後にはNATO諸国よりも周辺諸国がもっと懸念をもっていい状況がある。
3、これら諸国はアフガンの安定化を望みつつ、パキスタンは別として、米とNATOの苦労を横から眺めていた、高見の見物を決め込んでいたところがある。
アフガン情勢がここまで悪化したなかで、キッシンジャーなどの提唱する周辺国首脳会議構想は追求するに値する構想ではないかと考えられる。首脳レベルでなくとも良い。
各国の思惑が入り乱れているので、協力のあり方を取りまとめ、それを実施するには高いハードルがある。しかし会議をすれば、タリバン復権、アルカイダの活動の自由度の増大が周辺諸国に与えるマイナスの影響を認識させる一助にはなる。
周辺諸国が長期的な観点から現状をどう評価するかがその成否を決めるだろう。
4、岡田外相はアフガン、パキスタンを訪問した。日本にとってのアフガン問題は、苦労している同盟国米を助けることに主眼があり、アフガンが今後どうなるかにより、周辺諸国のように影響を受けるわけではない。
日本としては、同盟強化の観点から、出来る範囲内で米に寄り添って行くということであろう。アフガンそれ自体が日本の国益にとり持つ意味はそれほど大きくない。
(文責:茂田 宏)
|