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アフガン情勢の悪化とその余波:対話、NATOと日本の役割
1、 アフガン情勢はタリバンが再台頭し、アフガン政府や駐留外国軍への攻勢を強めてい
る。情勢は悪化している。
アフガンでの外国兵士の戦死者数は2005年―130名、2006年―191名、2007年―232名、2008年1−9月−236名になっている。
2、 この状況を受け、いくつかの新しい動きが出てきている。
第1:カルザイ政権がタリバンとの対話、交渉に乗り出している。先月末、サウジのアブダラ国王がメッカでのラマダン明けの食事に、タリバンの元パキスタン大使ザエーフや元外務大臣、アフガン政府要人を招いて話し合いを仲介したとされている。この席にはサウジの元情報長官トゥルキ、パキスタンのナワズ・シャリフ、ヘクマチアール(アフガンの反政府指導者の一人)が出席したとされている。
ただし、ザエーフは和平会談というようなものが行われたわけではないとし、タリバン側はタリバンを代表する人がカルザイ政権と話し合ったことはないとしている。
10月6日、国務省の報道官はこの件につき問われ、アフガン政府が暴力の放棄と憲法の尊重を条件に和解プロセスを進めていると承知しており、これを支持していると述べた。
ゲイツ米国防長官も、10月6日、アフガンの「和解可能な」分子との話し合いは有益であるとカルザイの対話路線に賛成の意向を明らかにしている。ただし同時にゲイツ長官はタリバンの指導者オマールとの和解は可能であるとは考えないとしている。
英外務担当国務大臣も話し合いを支持すると述べた。(10月8日付ロンドン・デイリー・テレグラフ紙)
メッカで何が話し合われたのかよく分からないが、双方の立場に鑑み、この話し合いがうまくいく可能性は低いと思われる。
第2:米国は米軍自身のアフガン派遣兵力を増強する意図を明らかにしている。現在、米は33,000名(NATO指揮下に13,000名、独自に反乱対策とアフガン軍訓練のために20,000名)を派遣しているが、年内に海兵隊を追加派遣し、来年初めに1陸軍大隊、さらに3陸軍大隊を追加派遣するとしている。ゲイツ長官はこの米兵追加派遣はNATO諸国よりの兵力追加を代替するものではないとしている。
第3:米国はアフガンでの兵力は不足しているとし、NATO諸国に追加派兵を求めている。ドイツは10月7日1000名の兵士の追加派遣(全部で4500名にする)を議会の同意を条件に閣議決定した。ただし米が求めた実際に戦闘が起こっているアフガン南部ではなく、北部に展開するとの条件付である。
ゲイツ米国防長官は10月9-10日のハンガリーのブダペストでのNATO会合でNATO諸国に更なる兵力派遣を求めるとしている。どれくらいの追加派兵が得られるか、上記ドイツは別にして、はっきりしない。
なお米はヘリコプター部隊が足りないとして、その派遣を求めている。
第4:ゲイツ長官はアフガン情勢の改善のためにはアフガン軍の強化が必要であり、派兵をしない日本およびその他の国はそのためのお金を出すべしとしている。10月9日付ロイターによると、国防省高官は今週、米はアフガン軍を134,000名という目標まで建設するために170億ドルかかると推計され、それを派兵しない日本その他の国が負担するように要請したと述べた由。別の報道では主として日本に200億ドルの拠出を要請するとされている。
第5:英軍司令官カールトン・スミスは、「この戦争は勝てない、目標は武装反乱のレベルを統制可能なところまで下げ、戦略的脅威にならず、アフガン軍が取り扱えるようにすることである」と発言した。(10月5日付サンディ・タイムズ紙)これに対し、ゲイツ長官は10月6日、「敗北主義」であるとコメントした。しかしAFP電によると、10月7日、カナダのハーパー首相も「外国軍として我々がアフガンのすべての地域を平定できると私は信じない」と発言した。
3、 アフガン情勢の悪化を受け、これにどう対応するか、何をアフガンで達成すべき目標とするかについて、米・欧・加間で違いが出てきている。
また米にはNATO諸国の非協力への苛立ちと日本への苛立ちも出て来ている。
4、テロ特措法に基づくインド洋における給油が、民主党が採決容認を打ち出して、一応継続できるようになった。しかし日本にとってはいまや、それを越えた巨額財政支援要請が問題になってきている。今のところ5年間で約2兆円という話であるが、これは唯々諾々と受け入れられる額ではない。日本の防衛費は5兆円くらいであり、経済状況も財政赤字も湾岸戦争時とは比較にならない厳しい状況にある。
米の要求は過大に過ぎる。そういう要求には、世論が反発し、日米関係に悪影響をもたらす可能性が高い。
(文責:茂田 宏)
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