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昨日、朝日新聞と産経新聞が
大きなミスをやらかしたことを確認した。
再掲しよう。
産経新聞
「地裁が請求を却下した。証拠隠滅の恐れや海外逃亡の恐れがあることなどが理由とみられる。」
保釈請求却下の理由は、本来は「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」である。
ここでは、マスコミの事情で「証拠隠滅のおそれ」とするのは、百万歩譲って許すとしよう。
しかし「逃亡のおそれ」は許す許さないの範囲を超えて、論外だ。
では、なぜ、朝日新聞や産経新聞はこのような過ちを犯したのだろうか。ここからは、ブログ主の推理推論である。確たる証拠はない。
保釈の前提に勾留がある。
勾留により身体拘束を受けているから、身体拘束を解いて釈放してください。と請求するのが保釈請求だ。
勾留は、勾留の必要性(⇐ざっくり書いて、正確ではない。あとで説明する)があるから、勾留決定が出されて勾留されている。
だったら、勾留の必要性がないから釈放してください。と言えば保釈になるんじゃないか。
こう考えても、おかしくはない。
しかし、勾留担当の裁判官が勾留を認めたときには勾留の必要性があったが、後で事情が変わり、勾留の必要性がなくなったから釈放してください。というときに使われる手続きは保釈ではない。勾留取消だ。
念のため刑事訴訟法を見てみよう。
第八十七条 勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
勾留と表裏の関係にあるのは、保釈ではなく、勾留取消であることを理解して戴けただろうか。
しかし、朝日新聞と産経新聞は、勾留と保釈を表裏の関係と誤解したのではないか。これがブログ主の推理である。
ここで、大本である勾留の必要性(今までボカしてきた)の内容に切り込んでみよう。
まずは、刑事訴訟法の条文確認だ。
第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。 二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
(2項以下省略) 左の各号とあるが、法文が縦書きなのでそうなっている。横書きの当ブログでは、下記の各号と読み替えてくれ。
ここに書かれている一号から三号までを「勾留の要件」という。これら3つが揃わなければならないのではなく、一つでも当てはまればよい。
ちょっと横道。
では、検察官が勾留請求をして、裁判官が「勾留の要件」が一つでもあると認定したら、必ず勾留決定をするのか。というと、そうでもない。
個別の事案に即して、「相当の理由」の強弱や、犯罪の軽重などを勘案して、この人は、勾留までする必要はないでしょう。と裁判官が判断した場合には、勾留請求を却下することもある。
裏返すと、この人は、勾留しておく必要性があるよなあ。と裁判官が判断しないと勾留決定は出ないのである。
これは、条文には書かれていない「隠れた勾留の要件」と解釈され、「勾留の必要性」と呼んでいる。
勾留決定に関する刑事訴訟法60条には、表の要件として書かれていないが、勾留取消に関する87条には、裏側の要件としてこっそりと書かれている。これが解釈の根拠にもなっている。
つまり、勾留が認められるためには、条文上の「勾留の要件」と、条文に書かれていない「勾留の必要性」の両方が整わないとならないわけだ。
元の道に戻ろう。
勾留の条文上の要件は、あえて自虐的に書くと
①住居不定
②罪証隠滅のおそれ
③逃亡のおそれ
の3つである。
この3つ全部が解消されれば、保釈が認められ、一つでも解消されなければ、保釈が認められない。
これが朝日新聞と産経新聞の誤解の元凶と疑っている。
ここで、保釈に関する刑事訴訟法の条文を見てみよう。
第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。 二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。 三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。 四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を 畏 い 怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。 六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。 勾留の要件一号は、保釈六号と似ている。
勾留の要件二号は、保釈四号と似ている。
だから、朝日新聞や産経新聞のような誤解が生じたのかもしれない。
保釈の条文をよく読んで欲しい。
保釈の不許可事由6個の中に、逃亡のおそれ(自虐的表現)は記載されてない。
つまり、仮に、被告人に逃亡のおそれがあったとしても、保釈を止めることはできない。裁判官は保釈を許可しなければならない。
勾留の場合と均衡を失しているように思わないか?
思うだろ。
普通、そう思う。
だけど、条文がそういう構造になっていることは厳然たる事実なので、われわれはそれに従わなければならないし、報道も同様だ。
では、なぜ、刑事訴訟法は、そんなバランスの悪い条文を作って、そのまま改正されずに残って居るのか。
それなりの理由があるはずだ。
ブログ主が思うに、その溝を埋めるのが、保釈条件と保釈保証金だ。
勾留請求の場合、それを却下すると、被疑者(被告人)の身体拘束は100%自由になり、どこにでも住めるし、どこにでも行くことができる。逃亡も可能となる。
だから、逃亡のおそれ(自虐)がある場合は勾留できるのである。
これに対して、保釈の場合は、保釈条件を付けることができる。住居の制限や、長期間の旅行の禁止、海外渡航の禁止、裁判の呼出には必ず出頭すること、などなどだ。
これにより、塀に閉じ込めているわけではないが、被告人の行動の自由は制限され、逃亡が(規範上は)許されなくなる。
さらに、保釈保証金である。
保釈条件に違反したら、保釈保証金を没収される。
保釈保証金は、没収されたら、金銭的に痛手を感じる金額にする。
一般ピーポーだと200万円がひとつの目安だが、先に保釈が認められたケリーはそこそこの金持ちだから7000万円だった。200万円じゃ没収されても痛くも痒くもないから、逃亡してしまうと考えられるからだ。
仮にゴーンに保釈が認められるなら、億単位の保釈保証金になるだろう。
このようにして、保釈不許可事由の中に、「逃亡すると疑うに足りる相当の理由」が入っていないのだ。
それを知らずに、記事を書き、新聞を公刊し、ネットに公表した朝日新聞と産経新聞(他にもあるかもしれないが)には、猛反省をして戴きたい。
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