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男が紐に首をかけ
大地から離れると 彼女は お願い、生きて! と叫んだ。 意識が遠のく寸前で 紐は無残にも切れ 男は大地に堕ちた。 跪き男は泣いた。 彼女はいつものように 男の顔を撫ぜた。 冷たい手が男の涙を拭った。男が彼女の方を見ると 彼女は微笑みながらゆっくりと消えていった。 男は叫んだ。 この生に何の意味がある? 誰も何も答えなかった。 不意に電話が鳴った。 男は受話器をとって はい。 とだけ答えた。 相手は泣いていた。 私はあんたの葬式なんて行きたくないから。 姉さんは泣きながら 男を生きさせた。 わかったから。 姉さんが電話を切った後も 次々と電話がかかってきた。 男はみんなに死なないことを約束した。 姉さんは男を愛してくれた。男には充分すぎるほど。友人たちは男の為に 死んでいった。 だが男だけは死ななかった。 その約束はどれほど死に近づこうが男を守った。 男がどれほど死にたいと 願っても誰もその安息を男に与えなかった。 男は何度も病院に運ばれた。救急車のサイレンが鳴り男はいつも期待した。 だがいつも男は死ねなかった。 男はいつしか悪魔と呼ばれた。周りを不幸にする負の存在として。 |
小隊記録
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まだましな日本語で掲載されています。
独り言もあるのでごめんなさい。
独り言もあるのでごめんなさい。
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私もよく言ってから後悔するのですが
代わりになるよ、なんて 本当はできやしません。 あなたの代わりも 彼の代わりも 彼女の代わりも 親の代わりも 友人の代わりも 配偶者の代わりも 何の代わりもできません。 ただ、だからといって 何もできないのではありません。 私の母は母の代わりを 私の記憶の無いときからしています。 それはもはや母と同じと言っていいかもしれませんが それでもやはり同じではないのです。 たとえば母が病気になり 臓器移植が必要となっても いわゆる母子間の適応には当てはまりませんしもしかすると拒否反応がおこるかもしれません。 母を愛しているとかという レベルではないのです。 だから お兄ちゃん、母さんを頼むね。 なんて言う弟に辛く当たってきたのかもしれません。 だけど 私の代わりも誰もできません。立場の代わりはできるかもしれませんが。 もっともたいていの方々は 私の代わりなんて真っ平ごめんでしょうけれど。 だから あなたに言いたいのです。 あなたの代わりはいません。 だからあなたはあなたを して下さい。 あなたしかいないのですから。 |
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昨日は息子と三輪山に登りました。
春の木洩れ陽が美しく神体山登拝には絶好の天気でした。 息子はもう何度も登拝しているのですが 始まって10分もしないうちに かえりたいーかえりたいー おうちにかえりたいー おうちがいーい と言い始めました。 妻と前日に話し合ったとおり、勿論我慢を教える為に 息子を諭します。 かーかとパパとお約束したよね。約束したら守ろうね。死んでも。 と言いますと登拝の方々から微笑みが。 またしばらくいくと むりーもうだめー むりーおりたーい と歩きながら言い始めます。 無理なことはないよ。 目の前にあるものは解決できるものしかありません。 無理ということが無理です。 と分かったようなわからないような諭しを行いました。 その後もあつーいと言っては上半身裸になったり 階段で座ってタバコを吸う真似をしたり かーかがいい、と泣き出したり。 まるで息子でないかの ようでしたw 頂上付近にくると 息子はダッシュし始めます。 やっぱり体力あるやんw 例のごとく 頂上では学びを頂いたことに深謝し与えられるものを解釈しました。 帰りは行きよりもマシでしたがやはり同じことの繰り返しでした。 ですがこの繰り返しこそ 大事だと思っています。 何事にも無理と言わない。 約束したことはきちんと果たす。 目的に向かって全力を尽くす。 そんなひとに息子はなって ほしいと考えています。 登拝の方々から微笑みと声援を頂きました。 本当にありがとうございました。 ぜひ皆様も登拝して下さいませ。 |
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男は亡くなった彼女と対話し始めた。
泣かないでいいから 自分の思い通りにならなくてくやしいんだよね。 ずっと一緒にいるじゃない 彼女は微笑んだ。 何も価値がないこと、生きている意味がないことを 男は自分に感じた。 すでに感情は薄く感覚すら怪しかった。 一緒に、って 一緒に死んだらいい? 男は壁に向かってつぶやいた。 男には姉がいた。 血の繋がらない姉が。 男は姉に手紙を書いた。 姉が自分を責めないように。 男は自分の処刑台を作り始めた。 いつものように 彼女は困った顔をしていた。 困らせてばかりだったね。 男は呟いた。 君がそうなる前に気付くべきだった。 僕は存在してはいけない存在だった。 君を傷つけあげくに何もあげれなかった。 僕に色々してくれたというのに。 男は泣いている彼女に さらに言った。 ごめん。ずっとひとりにして。これからは一緒にいるよ。 ゆっくりと男は首に紐をかけた。彼女の後ろの夕陽がやけにまぶしくみえた。 もう泣かないでいいから。 男は微笑んだ。 |
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男はずっと約束を守れなかった。
でもこんな男でも好きでいてくれるひとがいた。 友達でいいよ、と。 その言葉に甘えていた。 友達じゃないことをしてたのに。 ひどい男だ。 あげくに他の女性と付き合い始めた。 彼女は 私も好きな人ができた、と言って私から距離をとった。 付き合っているコ大事にしなよ。 そう電話で言われた。 当時のその男がそんなことを守るはずもなく 距離をとった彼女に求め続けた。 まわりは大変だっただろう。 今なら彼女がその男を避けていたのはよくわかる。 当たり前のことだ。 最低な人間だ。 そんな状況をみかねて 友人が彼女に付き合いを申し込んだ。 その男に事前にきいて。 好きにしろ。 そう吐き捨てた。 きっとそれは友人に彼女は聞いたのだろう。 友人は彼女と付き合わず 彼女はとなりの学校に進学することになった。 駅で久しぶりに彼女に男は再会した。 元気そうだね。 彼女はさびしく笑った。 それが彼女をみた最期だった。 たった一つの小さな約束さえ守れなかった。 次会おうね、って。 男は必死に自分の心から愛とやらを組み上げようとした。 だけど彼女はおろか他の誰にだってそれは見当たらなかった。 死の床で男の名を呼び続けた彼女の思いに釣り合うものなど何もなかった。 つづく |



