|
NHKテレビの再び登場した「ハートで感じる英文法」の大西泰斗先生。人気の「ネイティブスピーカーの英語感覚」(研究社)も面白い。
大西先生、必ず<うさぎあひる>という原理を説く。ぱっと見た瞬間、その<絵>はウサギにもアヒルにも見える。英語も同じで「単純なイメージが実に様々な意味を生み出す」というのだ。
簡単な例でいうと<must>という単語。<ねばならない><に違いない>という<2つ>の意味がある。普通はそう考える。だがネイティブの感覚は違う。<must>とは<圧力=pressure>が基本イメージという。
<I must go now.>(もう行かなくちゃあ)―――。パーティに来た客がこの言葉を口にする時、「そうせざるを得ない強い圧力」を感じている。
<He must be mad.>(彼は気が違っているに違いない)―――。一見、遠く離れているように見える<に違いない>という意味ですが、これも<圧力>と理解できる。
超一流のフランス・レストラン。美人ぞろいのウエイトレス。誰もがお上品に振舞っている。ところがスプーンをガンガン叩き、怒鳴る客がいた。「熱いラーメン、くれ!」―――。
皆、仰天。<He must be mad.>…これは単なる「推量」ではない。「彼は気が違っている」と結論づける<圧力>が働いている。
そうネイティブは<圧力>という基本イメージ(感覚)から<2つ>の解釈(意味)を引き出している。このように理解すると<さっと身につく><上達法>になる。これが「ハートで感じる英文法」の<極意>なのです。
英語にはあらゆる部分に<基本イメージ>(感覚)がある。これが多様な解釈(意味)を生む。これを理解することが新しい学習法と大西泰斗先生は言う。これを<ねばならない><に違いない>とバラバラに<分解><区別>して教えるのが明治以来の<学校文法>。
機械を設計図に描き<部品>にバラして<分解>―――再び機械に組み立てようというのが<学校文法>―――これでは血の通った生きた<文法><ハートで感じる英文法>にはならないというのが大西先生です。
では<過去形>の基本イメージは…。大西泰斗先生はいう。「過去形とは、ちょっと<離れた>ものを見る<目線>だ」。「過去時の出来事」という物理的<時>概念ではない。
(1)<Where have I left my umbrella?>(カサ、どこにおいたっけ)。
(2)<Where did I leave my umbrella?>
過去形の持つ<目線>―――それは現在完了との対比でみるとよく分かる。(1)は現在に焦点がある。「見当たらないけど、困ったな。どこかな」という現在の状況への目線がある。
(2)は単なる過去の情景。遠く<離れた>歴史の1コマに過ぎない。「(あの時)カサをどうしたっけ」という<思い出>。つまり<離れた>過去への<目線>―――。
この<離れた>目線。この<基本イメージ>が豊かな派生的イメージを生み出す。
(1) Could you close the door please?(ドアを閉めていただけますか)
(2) Even a child could understand it.(子どもだって理解できるかもしれないなあ)
(3) If you kissed me, I would scream.(<そんなことしないとだろうけど>キスしたら叫ぶわよ)
(1) は<丁寧>表現。<婉曲>に頼む。離れた<距離感>がポイント。(2)は<控え目>表現。やはり<離れ>ている。(3)は<仮定法>と学校文法ではいう。過去形ではない。特別な形。つまり<3つ>を別々の<部品>にバラしている。だが…。
<If I was you,I wouldn’t agree to do it.>(もし君だったら、そんなことに同意はしないだろう)―――<were>でなく<was>を用いることが市民権を得てきた。つまり<過去形>…<離れた>感覚が<仮定>表現のポイント。基本イメージから派生する
多様な解釈の一つなのだ。
(1) 社運を賭けたプロジェクト。会議で意見を求められた。<I would prefer to keep my opinion to myself.>(ここでは意見は差し控えさせていただきます)<丁寧>表現。
(2) 終って同僚と喫茶店へ<But in front of the manager, I would prefer to keep to myself>(部長の前じゃあ、ねえ…)<控え目>表現。
(3) 会社に戻る途中、同期の仲間がプロジェクト反対を部長に直訴にきていた。<In your shoes, I would prefer to keep to myself>(君の立場なら、自分の意見を言ったりしないよ)―――。<仮定法>
つまり、同じ<英語>が<丁寧><控え目><仮定法>になる。いかがでしょう。これが<ハートで感じる英文法>―――(1)効率性。(2)繊細さ。(3)洞察。の<3拍子>でトントントンと<さっと>上達するのです。(続く)
|