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「市政懇談会」委員に選任されて臨んだ最初の会合、<議案>は―――。
(1) 大学公開講座の受講料を<受益者負担>で無料から<有料化>する。
(2) 少子高齢化など地域課題を大学、企業、NPO、地域団体に研究委託(補助金)、公開講座で発表。行政、各種団体、市民のパートナーシップを育成する。
研究委託―――受講料(有料化)を原資に<補助金>を新設、大学、企業、NPO、地域団体へ<利益誘導>を図る。市長<多選>への選挙対策に見える。国も地方もリストラ、<選択と集中>を進めるべきなのに、ニーズが疑問な地域課題に補助金を出そうという。
火山は思い切って言った。「従来は<税>負担で<無料>。受講料の<有料化>は<増税>と同じ…」。―――途端に他の委員から<怒声>が飛んできた。「決められた時間をオーバーしている。いい加減にしろ…」という。他の委員もすぐ同調。
<市民代表>委員は10名。新任は火山を含め3人だけ。残りは市側に<癒着>した親衛隊。しかも「懇談会」は<助言>機関。決定は上部の「連絡会議」。懇談会から3名入るが、会長は大学側の輪番、親衛隊で多数派を形成。市民代表の意見を聞く<形式>が大切なだけ。でも火山は粘った。
「県と市の月2度の<広報>を見ても、公民館、文化センター、図書館、文学館、博物館など<地域>密着の講座はいろいろある。<選択と集中>という時流に逆行する。有料にして受講者が集まるだろうか。需要予測を過大に見積もったアクアラインや本四架橋と一緒。誰が責任を持つのか」―――。
司会(市幹部)「既に路線は敷かれています。後は大学さん側がどう受け止めるか…です」。
連絡会議会長(大学側)が言った。「専門分野も関連分野も研究は深めています。地域の課題にどう対応するか、かねて模索していました。だから飛び付きました」―――。
火山、このやりとりの前、「自己紹介」で発言していた。「市の公開講座には定年以来、大変お世話になっています。現役時代は社員教育の責任者でした。新人から管理職、幹部までの研修を担当していました。
地元の若年労働者や青少年教育問題でも労政事務所の連絡会会長も務めました。家庭から学校、企業内、社会人とつながる<生涯教育>の重要性は承知しているつもりです」。
「生涯教育で重要なのは<自学自習>の<習慣>形成。変化の激しい現在、覚えた知識や技術はすぐ陳腐化します。自分で<学ぶ>…<受け身>ではなく自主的に課題を見つけて取り組む。効果的な<学び方>を求め<学び方を改善>できる。いわば<学び方を学ぶ>という姿勢が最も重要です」―――。
「公開講座に期待するのは<質>の高い講座。高度成長期を生き抜いてきた私たちの世代。知的好奇心は高い。学習能力も高い。60代でも心身ともに若い。受講者を年寄りと思うこと、暇つぶしのお相手と思うことをやめてほしい」―――。
<生涯教育>の基本は『<テーマ>や<課題>を受講者に気づかせ、<自学自習>の<意欲>を引き出す』ことだ」―――。大学側や教育部長など教育関係者は大きく頷いた。
だが「真剣に研究に取り組め。いい加減な講義は見放される」とハッパをかけたのだ。
だが本題<受講料の有料化。研究委託>に入った途端に雰囲気が一変した。審議はするが、もう決まったかのような進め方。
火山の頭では二つは関連しているが、他の出席者にはそんな意識はない。新しい補助金。市側は「<既存>制度の<拡充>」という姿勢。「有料化は<受益者負担>だから当然。アンケートでも<3000円>程度なら<受講したい>と答えている」という。
でも<有料>と希望しているわけでない。<無料>希望者もいる。火山もその一人。「<受益者負担>という発想は困る」と自由記述で書いている者さえいる。
もっと問題なのは<補助金><新設>。市側は<既存制度>と文書でさり気なく書く。だが公務員は<権限>と<予算>を増やすのが<習性>。それが<評価>基準だからだ。
今回<悪戦苦闘>して痛感したのは<タテ割り>の<弊害>―――。<生涯学習>セクションには<財政危機>という<全体>への<目配り>は最初から<欠落>している。国でいえば<省益><局益><課益>追及―――<権限と予算>追及だ。
もう一つは仕事の<仕組み>―――。今回の<懇談会>形式。<提案>は<生涯学習>セクションだが<決定>は<連絡会議>。会長は<受益者>代表の<大学>側。<NO>というはずがない。
受講者の<興味や関心><需要>予測など最初から視野にない。口実がほしいだけ。かくてムダな道路、アクアラインや本四架橋が造られる。歯止めがかからない。火山は大学と教育部長、生涯学習関係者に「補助金は<禁断の木の実>だ。アダムとイヴはそれを食べた」と指摘したが、聞き流された。
終って市の幹部連、総出で火山を見送ってくれた。エレベーターの世話、手荷物…。VIP気分。ホンワカして<懐柔>されてしまう。火山も<親衛隊>になろうかな―――。
「市政懇談会」の現実は3回の連載。上中は書庫「無題」にあります。ぜひお読み願います。
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