火山の独り言

時ならめ 風に挑みて 鯉のぼり

官邸主導

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「私は内閣総理大臣に就任した時から、自民党内から造反が出て、私を退陣に追い込もうとする時には必ず解散すると決意していました」―――。
2005年9月11日夜、自民党の地滑り的勝利が確実になった時、小泉純一郎はテレビ東京の小谷真生子キャスターに答えた。

「参院で否決されたからといって解散などするはずがない。できるはずがない」。反対派の間にはそんな見方が一貫して流布していた。亀井静香元政調会長は「500%ない」と断言していた。だが現実の小泉は郵政政局のはるか以前から腹をくくっていたのだ。
「内閣総理大臣にしかできないこと、総理にしかない権力ってものがあるんだ。だから俺は一度も自民党3役(幹事長、総務会長、政調会長)を狙わなかった。3役と総理の権力はまったく違う。3役には無い権力が総理大臣にはある」―――。小泉の持論だった。

小泉は党3役や重要閣僚といった出世ポストへの執着もたいして見せてこなかった。旧来の自民党の年功序列や派閥秩序の中で本格的な総理総裁候補として認知されてきたわけでもない。むしろ永田町では「一匹オオカミ」「変人」「孤独な一言居士」といった評が一般的だった。
実は陣笠議員だった頃から沈思黙考、「内閣総理大臣の権力とは何か」という命題を追及してきた。「理論がどうこうではなく、政治の現実を見て、その中で考えてきたことなんだ」。

1969年、防衛庁長官を務めた父・純也の急死を受け、急遽帰国した小泉は弔い合戦と勇んで出馬した最初の衆院選で一敗地にまみれた。27歳。次の72年の総選挙まで3年半、当時、政権を狙う座にあった福田赳夫の私邸で書生を務め、下積みの時期を過ごした。

当選後も「福田直系」となり、変わることなく政治の師として仰ぎ続けた。だが一度だけ、当選一回生の分際で、派閥の領袖だった福田に公然と食ってかかりひと騒動を起こした。
「角福戦争」に勝利した田中角栄が金脈問題で退陣、後継に小派閥の長だがクリーン・イメージの三木武夫を首相に担ぎ上げた。「数の論理」ではなく、意外な人選で世論の強い風当たりを避ける。いわゆる「椎名裁定」。自民党が生き残りを賭けた。

だがロッキード事件で田中が逮捕され、政治資金規正法の制定や独占禁止法強化に三木が取り組むと「独断専行。やり過ぎだ」と「三木降ろし」が始まった。三木はたちまち<四面楚歌>―――。この時、小泉は一介の陣笠。それが大恩ある領袖に啖呵を切ったのだ。
「自民党は田中政権で国民の信任を失い、その危機に起死回生を狙い、異端の三木さんを担ぎだした。それがちょっとノド元を過ぎると、三木は厄介だ、降ろせという。そんなご都合主義は筋が通りませんよ」と公然と異を唱えた。派閥政治全盛の時代。事件だった。

だが若き小泉、「内閣総理大臣の座」をいとも軽々に扱う自民党の「派閥の論理」を直感的に拒否したのだ。小泉らしい<正義感>と言っても良い。しかも「官邸主導(小泉純一郎の革命)」(日本経済新聞社)の著者・清水真人は指摘する。
この小泉のセリフの「<田中角栄>を<神の国>など恐るべき失言で自民党に危機を招いた<森喜朗>」に「<三木武夫>を国民的人気で、後継の切り札となった<小泉純一郎>」に置き換えてみようという。面白い。確かに「歴史の因縁」だ。

ロッキード事件、田中金脈で自民党は重大な危機。クリーン三木で復活した。それから4半世紀、森喜朗で人気失墜、空前の危機に異端の小泉でクリーンヒット。だが党内基盤は弱い。橋本派は抵抗勢力となって小泉の足を引っ張った。
三木は手勢は少なかったが、機を見るに敏、したたかな政界遊泳術を見せた。<バルカン政治家>の異名も得た。「数の論理」では劣勢にたったが、驚異的な粘り腰を見せた。「自民党の<総裁>をクビになっても<総理>はクビにできない」と言い切り、永田町を震撼させた。小泉はこの三木から多くを学んだ。「内閣総理大臣の権力」を知ったのだ。

この三木から時代が下って1990年代、小泉がもう一人、至近距離から観察した総理大臣がいる。橋本龍太郎。小泉は1995年秋、初めて出馬した総裁選で橋本と一騎打ち。<郵政民営化>を掲げて<大敗>した。
橋本は1996年1月、村山富市が突然、退陣したため政権の座に着いた。だが置き土産の<住専>処理の公的資金導入で激しい世論の非難を受け、国会は空転、政局は行き詰まった。
この時、小泉純一郎は「直ちに解散に打って出るべきだ」と自民党内でたった一人主張。無役だったが、「もし自分が総理大臣だったら…」とつぶやいていたという。

世論は非難轟々、内閣支持率は低下の一途。与党内には選挙恐怖症が蔓延していた。だが小泉は「座して待てば総辞職。今なら解散に打って出る余力がある。総選挙で勝てば続投。負けたら潔く退陣すればよい。可能性がある限り、解散を選ぶべきだ。勝負はやって見なければ分からない」―――。
小泉はこの時、自分を橋本の位置に置換え、窮地を打開するシミュレーションを描き続けた。凄い。
++++++++++続く++++++++++

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