火山の独り言

時ならめ 風に挑みて 鯉のぼり

官邸主導

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2005年1月22日、衆院本会議。施政方針演説、小泉は「残された大きな改革、即ち『改革の本丸』が郵政民営化であります」―――努めて淡々と原稿を読み進めていた。
だが議場には異様な重苦しさが漂っていた。大多数は反対―――寒々とした<与党不在>の光景。旧橋本派で反対派の総帥、郵政事業懇話会の会長で前衆院議長・綿貫民輔は「アホらしくて聞いていられるか」と吐き捨て、途中で退席した。

小泉は党内情勢を甘く見てはいなかった。「4分社化など『基本方針』の修正は突っぱねる。党側と折り合いがつかなければ総務会で党議決定できなくても内閣の権限で国会に提出する。もしも政局が混乱したら『その時は瞬時に決断する』。腹をくくった小泉の口癖だった。

民営化反対派が譲歩を迫った争点に次々突きつけた施政方針演説の<ゼロ回答>―――。実は自民党の<慣例>で<閣議決定>や<国会提出>案件は<事前審査>という中に数少ない<例外>があった。<施政方針演説>はその一つ。演説文は事前に<閣議決定>はするが、党総務会にかけたりはしない。

内々に演説原稿を見せられた政調会長の与謝野馨は「これでは党側を決定的に刺激する」と止めようとした。だが小泉と竹中は押し通した。調整を必要としない演説で<官邸主導>の強い決意を打ち出す<好機>と見たのだ。

「あなた自身の郵政改革に取り組む基本姿勢から変えてもらわなければなりません」。1月25日、参院本会議の各党代表質問で青木幹雄は苦りきった。「俺についてこい、では通らない」「郵政民営化だけであなたを支持したわけじゃない」とも発言した。
03年9月の総裁選で小泉支持を決断、旧橋本派を分裂状態に追い込んだ青木。野中広務ら反対勢力から<経世会のユダ>とまで非難された。

それでも小泉と組んで「参院のドン」「小泉の後見人」を演じることで必死に求心力を維持してきた。今となってはこうした公的な場で、目いっぱい小泉を叱って見せるしかなかった。それ以外に反対派をなだめる手立てはない。綱渡りの演出―――。
だが解散の<切り札>で<小泉支持>か<自民党崩壊>か、究極の選択を突きつけられた図式は今回も同じ。小泉は<郵政不成立>なら<解散断行>の構えなのだ。

青木は総裁選で参院橋本派をまとめる時は「郵政法案が参院に来たら私が止める」と大見得を切った。だが今回、現実に<否決>すれば<衆院解散>が待っている。青木はこの日の質問で「私の口からは民営化に賛成とも反対とも発言したことはない」と態度をぼかした。胸中は揺れていたのだ。小泉は今度こそ<自民党をぶっ壊す>かも知れない。

「通常国会で不成立なら解散」―――。竹中平蔵は中川秀直と並んで小泉の覚悟を最も早くから感じ取っていた。「小泉さんには悪くないディールなんです…」。当時、竹中は郵政民営化担当大臣として総攻撃を受ける苦境に立っていた。だが事態を冷静に見極めていた。
小泉の公約は二つあった。「郵政民営化」と「自民党を変える。変わらなければぶっ壊す」。
二つのうち、どう転んでも一つは達成できる。しかも―――「解散・総選挙で勝てば二つとも実現できる」―――そうだ。凄い読み。そしてこれが実現してしまった。

2月から3月にかけ、政府側と党側との意見調整は一進一退を続けた。竹中は小泉の基本方針の枠を守りながら「落としどころ」を予め相談していた。「譲歩案」をすべて切り終ると沈黙。協議の場で表に立ったのは何も知らない総務相の麻生太郎。
党側はざわめいた。党側に反感の強い竹中に代わって麻生が調整役に立った。そう見た。
だが麻生がさらに踏み込んだ譲歩案を練ろうとした途端、小泉が動いた。3月31日(木)、青木を個人事務所に訪ね、「日曜日までに政府の法案骨子を決める」と通告した。

青木は「時期尚早だ」と反対した。だが小泉は竹中や麻生に号令を飛ばした。土曜日から日曜日の夜まで閣僚協議が断続的に続いた。麻生は<一体的経営>で押し込もうとした。竹中は拒む。激論の末、貯金、保険2社の株式売却問題が最後に残った。
仲介役の官房長官細田が小泉に持ち込んだ。小泉は「完全売却・完全民営化」と「その後の株式の持ち合いは容認」という裁断を下した。大筋で竹中の読みどおり。「あんたは嫌われてるんだよ」と竹中を攻撃、党への配慮を説いた麻生は一敗地にまみれた。

4月26日、自民党の郵政関係合同部会は徹夜の協議を経て怒号が飛び交う中、部会長の園田博之や政調会長の与謝野が「了承」で押し切った。青木がゴーサインを与えていたのだ。
攻防の舞台は党議決定の総務会へ移った。4月27日、総務会長・久間章生は4時間弱の押し問答の後、討議を打ち切り「法案提出について了承」を求めた。<党議拘束>がかかったかどうかはやや曖昧だったが、目の前の事態を収めようとしたのだ。

小泉は党側の調整が遅れれば、総務会を飛ばしても、4月29日からの大型連休前に郵政法案の提出を断行する構えだったのだ。久間ら執行部も異例の手順ででも党内手続きを急がざるを得なかった。
「国会への政府案『提出』は了承するが『中身』は別」という便法は異例の処置だった。小泉はまた与党による<事前審査>という<慣行>を揺るがしたのだ。

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