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2005年4月27日、総務会長の久間章が異例の<討議打ち切り>で<郵政法案>の<国会提出>を押し切った。反対派は<独裁者><ヒトラー>呼ばわり。<党議拘束>がかかったのかというのも議論を呼んだ。
だが「<衆院解散>も辞せず」という小泉の<強硬>姿勢が、またもや与党の<事前審査>システムを揺るがしたのは隠れもない事実。<官邸主導>への新しい一歩だ。
5月連休明け、小泉は立て続けの<人事権>行使で、重要なメッセージを放った。内閣の方針に反したとして郵政担当(総務省)の幹部キャリア二人をバッサリ更迭、物議を醸した。だがこの二人、党内反対派に内通、政府の情報を自民党に流しただけではなく、国会審議の<質問から答弁まで>を代筆、郵政法案を葬ろうとしていたのだ。
二人とは次官候補の総務省審議官・松井浩と郵政行政局長の清水英雄。霞ヶ関が息をひそめた。さらに追い討ちをかけるような郵政民営化法案を審議する衆院特別委員会の人事が内外を驚かせた。委員長に党総務局長の二階俊博、筆頭理事に前副総裁で4月選挙で復活当選を果たしたばかりの盟友・山崎拓を起用した。
「腹の据わった人」「ぐらぐらしない」と小泉は二階を高く評価してみせたが、これも尋常でない人事だった。小泉はこれもまた誰にも相談せず、たった一人で想を練った。
何が<尋常>でないか。二階が務める総務局長とは幹事長を補佐し<選挙対策>の実務を取り仕切る役回り。小泉は<兼務>のまま特別委員長に指名した。つまり選挙の<公認>など実権は事実上、二階が握っている。その人物が特別委員長として<反対派>に<睨み>を利かせる。反対派は<衆院解散><総選挙>を意識せざるを得ない。げっ!
小泉は<人事権>と<解散権>をセットに<内閣総理大臣の権力>をフルに活用した。これは憲法が認めた<宰相の特権>だが、小泉登場以前の自民党は派閥<連合体>で運営してきたため、派閥領袖ら実力者との<談合>と<合意形成>がないと行使できなかった。
「小泉はしばしば『変人変人というけど俺は結構、正統派なんだよな。穏やかな常識人だ』と不服そうにつぶやくのは、あながち的はずれではない」(清水真人「官邸主導」327頁)。
2005年6月28日、自民党は総務会で郵政法案の修正案の了承手続きを取った。久間章はこの総務会で自民党史上初めての<多数決>を強行した。実は党則41条は「総務会の議事は出席者の過半数で決し、可否同数の時は美長の決するところによる」ともともとルールとして明記している。<全会一致>は<和をもって尊し>という<慣行>に過ぎない。
この<全会一致>がクセモノ。実際は<少数意見尊重>の場。<族議員>の<利益誘導>の<温床>だ。<郵政、建設、厚生>の<ご三家>。これに<農林、文教>を加えた<五族協和>が幅をきかせ、<地元>や<団体>へのバラマキ<談合>の<場>になった。
談合とは<少数>の<譲り合い>による<共存光栄>。見せかけの<全会一致>!!
これを見破った経済同友会の代表幹事・北城格太郎や早大大学院教授で道路公団民営化推進委員会の委員を務めた川本裕子は「全会一致は要注意」と警告している。火山は講演会で<生の声>を聞いている。
6月28日の総務会で反対の挙手をしたのは元外相・高村正彦、野田毅、藤井孝男、村井仁、後に衆院本会議で賛成に転じ自殺した長岡洋治の5人。亀井静香は採決に抗議、棄権と見做された。
党執行部は<討議拘束>は完全にかかったという論法で採決(本会議)の決戦場に向かう。反対派は猛反発で<荷崩れ>は決定的。だが事前審査システムは一段とガタガタになった。
7月5日、決戦の衆院本会議。「否決なら衆院解散だ。それでもいいか」と執行部は反対派を説得。「そんな脅しの強権政治に屈するわけにいかない」と反発を強める反対派。ギリギリの攻防が続いたが、決戦の朝、小泉は「俺はどっちでもいいんだよ」とつぶやいていた。
実は既に「政務担当の首相秘書官・飯島勲を中心に首相官邸では法案否決の事態に備え、解散・総選挙の準備が始まっていた。反対票を投じた議員は公認せず、選挙後も復党を認めないという超強硬方針も固まり、郵政民営化に賛成する候補者探しもひそかに動き出していた」(「官邸主導」349頁)。
結果は自民党から綿貫、亀井、野田聖子、藤井ら37人もの大量の反対。古賀、高村ら14人が棄権、欠席。5票差という薄氷の可決だった。
反対派は勢いづいた。「小泉の求心力低下」「政権の終わりの始まり」―――。こんな論調が相次いだ。だが首相官邸から見た風景はまるで違っていた。解散・総選挙を睨み「どっちでもよかった」のだ。衆院は薄氷の可決。運命の参院本会議は8月8日に設定された。
8月6日、否決の公算が高くなった。<野党転落>の引き金となりかねない<解散>阻止に向け、最後の<説得>に押しかけたのは<後見人>を自認する前首相・森喜朗だった。
握りつぶしたタイ製ビールの空き缶と<干からびたチーズ>フランス産ミモレットを両手に出てきた森は待ち受けた記者団に打ち明けた。
(森)「あなたの意見に賛成し、努力した人たちを苦しめて何の意味があるのか。みんなが路頭に迷うことになったらどう責任をとるのか」。(小泉)「信念だ。俺は非常だ。殺されてもいい。それくらいの気構えでやっている」―――。凄い!!!
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