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3月7日の日経朝刊に火山<釘付け>になった。<歳出削減、分野別に明示><増税抑制へ『拘束』><諮問会議方針>とあったからだ。<民間議員>とは本間正明(阪大・経済学)、吉川洋(東大・財政学)、奥田碩(経団連)、牛尾治朗(経済同友会)の4人。
<民間議員>の真の<狙い>は「<増税>なき<財政再建>」。景気の足を引っ張る<増税>…。官僚の数字合わせに乗らないという覚悟だ。火山、徹底的に応援したい。
政府は<一律>カットで歳出削減を進めてきた。だが省庁の<壁>に阻まれ、リーダーシップを発揮できなかった。これを「社会保障」「地方財政支出」「公共事業」「ODA」など主要分野別に<優先順位>を明確化、ムダを省き、財政再建を軌道に乗せるのが狙い。
政府は2011年度に国・地方合わせたプライマリー・バランス(基礎的財政収支)を黒字にするシナリオを描いている。実際は竹中平蔵と4人の民間議員が描いた。
現行のまま放置すれば2011年度の歳出額は<116兆2000億円>(2006年度は<79兆7000億円>)に膨らむ。増税しない場合は<20兆円>の削減が必要。民間議員は必死だ。
竹中平蔵が<諮問会議>担当大臣に指名された時、真っ先に手がけたのが、マクロ経済(国内総生産)と財政収支をバランスさせることだった。
従来、大蔵省が強力な権力を振るっていながら、この視点のリーダーシップが欠落していた。この結果、小渕内閣で膨らんだ公共事業費を小泉内閣が<半減>しても、米国のGDP比の公共事業費と比較すると<3倍>も過大というイビツな財政になっていた。
<改革>したい。竹中平蔵は諮問会議に<予算方針>を審議する権限を移そうとした。強硬に抵抗したのが財務省(旧大蔵省)と族議員たち。
亀井静香は「国民が選んだわけでもない<民間議員>が勝手に決める。党の事前審査も受けない。これは<議員内閣制>ではない」と息巻いた。これは英国流とは違う<世界>の<非常識>だ。前回ご紹介したとおり。(「官邸主導」13)ご参照。
諮問会議で<予算方針>を議論するなど、従来の常識では不可能だった。そこを突破したのが竹中平蔵と4人の民間議員の知恵だ。小泉純一郎はこれに断固たる決意で<お墨付き>を与えた。詳しくは過去の「官邸主導」をご覧ください。
諮問会議の「議題発議権」を握った竹中平蔵は「権威(authority)は著作者(author)にある」とまで言い切った。「民間議員ペーパー」はほとんど全部、実際は竹中ペーパーだった。清水真人「官邸主導(小泉純一郎の革命)」(日本経済新聞社)にはそう書いてある。
凄いのはそれだけではない。その壁を突破するための手法も確立した。後でご紹介する。小泉首相への<事前レクチャー>だ。これで抵抗を少しずつ突破してきた。
歳出カットに抵抗する巨悪は<厚生><文教><建設>の<ご三家>。<族議員>と省庁。<厚生労働省><文部科学省><国土交通省>だ。巨額な補助金を握り、族議員と自分たちの<利権>を維持してきた。その弊害は元大蔵官僚の<ミスター円>榊原英資氏が指摘したとおり。(「官邸主導」11)ご参照。<事前レクチャー>の仕掛けは次のとおり―――。
事前レクチャーで竹中は<人払い>を求める。首相秘書官の中で、小泉の信任が抜群に厚い財務省出身の<T>さえ密談に同席させない。首相官邸に送り込まれた官僚を通じ出身官庁に情報が漏れることが日常茶飯事だったから。それこそが彼らの仕事だった。
少しでも利権に関わる動きが漏れると官僚たちが<ご説明>と称して殺到、その案は潰される。竹中は終始一貫、民間議員とともに<警戒心>は捨てなかった。
「民間議員ペーパー」→「竹中とりまとめ」→「首相指示」という流れが諮問会議を舞台にして「官邸主導で経済政策決定プロセスを動かす生命線となった。竹中はそのシナリオを描く脚本家であり、主役の小泉や脇役の民間議員を含めて時にはセリフまでつける演出家でもあり、自らも毎回の舞台で重要な役どころを演じてきた」(「官邸主導」265頁)。
民間議員は族議員や省庁が飲めない<高めのボール>を投げる。飲めないから拒否しようと<土俵>に上がると竹中が「待ってました」と<取りまとめ>。いつの間にか主導権を握られる。頃合を見て「首相指示」―――。これで<決まり>。
一見、結論は<玉虫色>だが、しっかり<骨太>…。この成果が<GDP比>という<新指標>を生んだり、今回の<分野別削減目標>を設定させた。
<分野別削減額>はレールが敷かれただけ。<増税>抑制にどこまで前進できるか今後の課題だ。特に竹中を総務相に転出させ、与謝野馨を担当大臣に起用した。この結果は未知数。だからこそ私たちは、しっかり<監視>すべき。
民間議員は3月7日、地方向け財政支出、社会保障費抑制に向けた基本的考え方を示す。地方向けは地方交付税交付金(来年度<14兆6000億円>)と補助金を足した財政移転額(2004年度<33兆円>)を減らすことを目指す。
日経は既に「地方交付金の中には民間に比べ高すぎる公務員給与など<7〜8兆円>のムダがある」と指摘している。<官邸主導>だけが省庁や族議員の壁は突破できる。頑張ってほしい。
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