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「2006年は日本にとって今後の20年間を決定づける重要な1年になる。日本は90年代から<長期衰退>に陥った。このままさらに<没落への道>を突き進むのか、あるいは<新たな繁栄>への道を歩み出すのか」(大前研一「ロウアーミドルの衝撃」講談社・1頁)。
「小泉さんの最大の功績は『凝り固まった戦後の政治体制でも、強い信念と意志があればいくらでも破壊できる』ことだ」(17頁)。火山も同感だ。「大胆な改革ができるということを小泉さんが証明。国民が支持するという舞台ができあがった。ならば『生活者の視点からのシナリオを書き上げていけばいいのだ』」(20頁)。
大前研一は「日本が生活者主権の国づくりに正面から取り組めば『生活の質を上げてもコストは下がる』と主張する。「生活者主権」に対立するのは「提供者の論理」。昭和の終わり頃から行過ぎた「提供者の論理」で国民は豊かな生活実感が得られなくなった。「生活基盤よりも公共工事などの産業基盤、社会基盤を重視し過ぎた」と大前はいう。「<担い手>を明確にしないままウルグアイ・ラウンド対策6兆円などを<農道>工事につぎ込み、土建業だけを潤してきた。それが<バカ高い>食料品だけを結果した。後述。
国際エコノミスト長谷川慶太郎は「デフレは<買い手>に<極楽>、<売り手>に<地獄>」という。「売り手の論理」だが大前研一の<提供者>だ。長谷川はグローバリゼーションで日本はデフレとなり、消費者物価は下がり続けた。大前のいう『生活の質を上げてもコストは下が』った。コストダウンは<売り手>には地獄。
「<売り手>とは農民、企業経営者、自営業者である」(長谷川慶太郎「大局を読む」ビジネス社・176頁)。デフレで「彼らは地獄を味わわねばならず、そこから逃れる方策を政治に求めようとしても、この訴えを受け入れるような政治は、もはや多くの国民の支持など得られず、制度改革を阻害する要因にしかならない」(同)――。「日本の有権者のうち<売り手>に属する人は20%以下であり、<買い手>が80%以上を占める。サイレント・マジョリティは無力。<農協><ゼネコン><特定郵便局長会><医師会>などが<利権>を満喫してきた。
「長野県議会は不信任された田中康夫知事が圧倒的多数で再選された。長野県は他の多くの地域と同様、公共事業の受益者だった。県や市町村の政治は公共事業を中心に、ここ50年、いや明治以来展開してきた。多くの県民は主たる受益者は政治家や建設業者たちで、自分たちではないと気づき始めた」(榊原英資「分権国家への決断」毎日新聞社・12頁)。
「世界的に見れば高収入なのに豊かさを実感できないのは物価が高いからだ。原因は日本の市場の閉鎖性にある。その典型が農業。日本の食料品はバカ高い。主要な食料品の小売価格を国際比較してみると、米はアメリカやシンガポールの約4倍、オーストラリアの約3倍。小麦粉もアメリカやイギリスの2倍。牛肉はオーストラリアの5倍、シンガポールやアメリカの4.4倍。ジャガイモやタマネギなどの野菜類も、おおむね2倍以上だ」(大前研一「ロウアーミドルの衝撃」講談社・154頁)。
「食料品が高いのは日本の農業生産性が<世界最悪>だからである」(同)――。日本は「アメリカの80分の1しかない農地面積にアメリカと同じ農業人口がいて、農地100ヘクタールあたりの人数はアメリカの70倍、オーストラリアの476倍になる。農業補助金は全EUの方が多いが、生産額に対する補助金は58%で日本が世界一。狭い農地にひしめきあう大勢の農家を補助金で養っているのが現状」(大前・156頁)。物凄い。
「1965年から始まった『土地改良長期計画』によって、農業基盤整備事業費という補助金が4回にわたって投入されてきた。2006年度に終る第4次計画までの累積投入額は約75兆円。オーストラリアの農地のほとんどアメリカの農地の6割が買える」(156頁)。
「それだけ莫大な金を国内向けに使うのなら、市場開放をしても大丈夫なように農業生産性を高めなければならない。ところが生産性は最悪のまま。理由は農業基盤整備の名目で国道や県道よりも立派な農道を造るなど、農家よりゼネコンが儲かるようなカネの使い方をしているからだ」(156頁)。75兆円は生産性向上には何の役にも立たなかった。補助金は<世界最悪>を温存しただけ。その結果が<バカ高い>食料品だ。
「誰がこの悲惨な結果に責任を取ったというのか。いまだに農政族と言われる人々は補助金を要求し続け、農水省は農家の収入補償さえ検討し始めている。農業補助ではなく、農家救済という究極のばらまきを画策しているのである。リストラにあったサラリーマンはなぜ黙っているのだろう」(160頁)。
農業補助金はこの10年だけでも<40兆円>も使われている。企業なら投資へのリターンが求められる。「本当なら新聞記者をはじめメディアの人間が政府に対して『40兆円も使って生産性はどれだけ上がったのか』とか『市場開放の準備はできたのか』と質問しなければいけないはずだ。ところがマスコミは何も言わないし、国民の間からも怒りの声がまったく出てこない。それが日本の実態なのだ」(大前研一「ロウアーミドルの衝撃」講談社・160頁)――。
(平成18年5月6日)
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ロウアーミドルの・・・は読んでないですが、大前氏の著書はほぼ読破しているので大体内容は想像がつきます。基本的には賛成ですが、「、、、で、これからどうするか?」を具体的に我々若者が考え行動する時代がきていると感じています。氏は「現状把握」「原因特定」を行なっただけですから、次は「対策立案」ですよね。
2006/5/7(日) 午前 5:35 [ mon*ai*ka*kez ]
大前研一は「ロウアーミドルの衝撃」を「生活者主権の国づくり」のアジェンダを政府に突きつけたもの。「20年の集大成」と言っています。火山は大前のファン。ただ画期的過ぎて政治的には無力。正論・卓説だけに悔しい限りです。火山の提案はただ一つ<政権交代>!脱<官僚支配>です。国民が自分で考え、官僚やマスコミに騙されないことが大切。
2006/5/7(日) 午前 7:39 [ kom*_19*7 ]