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飲み会で悪酔いした永澤美咲。恋しいマイクに当たってしまった。「あなたは私の気持ちを考えたことがあるの」<Don’t you know how I feel about you?>―――。
ライバルのエリは英語が達者、仕事もできる。英語に弱い美咲は雑用ばかり。せっかく上司のリンダが与えてくれた<企画書>も飲み会を口実に放り出してしまった。唯一の味方の見習い天使のアンジェラともケンカ別れ。孤立と自暴自棄の美咲。さあどうなる!!
さてここで大事な話がある。「ハートで感じる英文法」の勘ドコロ。前回、上司のリンダからビールを勧められた久保田部長が<Unfortunately, I can’t get drunk tonight.>と帰国子女のエリから教えてもらった英語で断った。<Does your liver need a break?>(今日は休肝日なの)とリンダは不思議そうだった。ここからが今日のポイント…。
<I have to study English tonight.>(今夜は英語の勉強なんです)。<I must get a high score in the English test.>(英語の試験では良い成績を取りたいもんですから…)―――。
<All Japanese managers in our company have to take an English test regularly.>(当社の日本人管理職は定期的に英語のテストを受ける必要があるのよね)とリンダ。
そう<MUST>と<HAVE TO>です。久保田部長と上司リンダの会話(関係)には微妙な<ニュアンス>がある。大西泰斗先生…「学校文法は機械を部品に分解、設計図で組み立てたようなもの。ネイティブの感覚とは無縁。<生き生きとした英語>にはならない」。代わって提唱するのが<感覚の文法>。学校文法の<機械仕掛け>とは違う>という。
英語には<イメージ>がある。<Image>の<偏在>を理解すると、英語の勉強で<効率性><繊細><洞察>に大きな飛躍が生まれる。以前<現在完了>でご紹介した。
現在完了は<学校文法>では<完了・経験・継続・結果>と<4分類>される。だがネイティブの<実感>は<分類>では捉えきれない。例えば<they’ve just painted the bench, so be careful!>(ペンキ塗り立て!気をつけて!)。「塗ったばかり」(完了)と「ペンキが乾いていない。気をつけて…」(結果)のどちらもある。決して機械的に<分類>できない。
<現在完了>のイメージは<運動>と大西先生。<ZOOM UP(ズームアップ)>効果。これが英語を生き生きさせる。<Have you come up with a good idea?>(良い企画、考え付いた?)―――<ねえ、大丈夫?>とグーンと迫ってくる。アンジェラは美咲の味方。エリに負けないよう案じてくれる。<良い企画を考えて…>と<ZOOM UP>―――。
大西先生、<過去形>は「遠くに見える過去」と定義する。<距離感>がある。<Where did I park my car?>(どこにクルマ、とめたかな)というアッサリ。<Where have I parked my car?>(現在完了)だと「(さっき)どこへとめたっけ」(見当たらない)という<戸惑い>がズームアップ。
現在完了の<命>は「遠くに見える過去形」と(生き生きと)「包まれた感触の現在形」の間隙を埋める<遠近>運動。<さっき>とめた。でも<今>見つからない。この二つを結び<ZOOM UP>している。
<MUST>と</HAVE TO>―――。<must>も<may>も「ねばならない/ちがいない」「してよい/かもしれない」と一見つながりのない2つの意味を併せ持つ。学校英語の<分類>では2つを<別個>のものとして暗記させる。だがネイティブは「無関係な意味が<同居>している」とは感じていない。<等価の意識>の流れが存在する。
<must>には<非常に高い圧力>がある。「ねばならない/ちがいない」の2つ。ある一定の文脈を与えられれば、このイメージ(意味)が簡単に導き出せる。
時計の針が午前0時を指した。ダンスをしていたシンデレラが<I must go now.>(もう行かなくちゃあ)と言った。―――後で家に行ってみた。ドアは開けっ放し。テーブルには飲みかけの紅茶が残っている。<Cinderella must have left in a hurry.>(急いで出たに違いない)―――。どちらも<強い圧力>が存在している。
興味深いのは<have to>。このフレーズには<must>とは微妙に異なる成分が混入している。<客観性>だ。(1)I must get dinner ready.(2)I have to get dinner ready. どちらも日本語に翻訳すると<夕食の準備をしなくちゃあ>―――。まったく同じ日本語訳。どちらも<話し手>は<高い圧力>を感じている。
だが(1)の<must>は単に「しなくては」という話し手の心持ちを表しているのに反し、(2)の<have to>は「もうすぐ子どもが帰ってくる」など客観的な必要性が感じられる。
もう一つの例。(1)The butler must be the murderer.(2)The butler has to be the murderer.<執事は殺人者に違いない>―――。(1)は単に「私はそう思う」。だが(2)は何か緻密な、客観的な証拠が積み上がった感触がある。ちょうどシャーロック・ホームズが発言しているようなもの。
では久保田部長と上司リンダの使った<must><have to>はいかがでしょう。火山は状況や気持ちがピッタリ読み取れると感じるのですが―――。
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