火山の独り言

時ならめ 風に挑みて 鯉のぼり

小泉劇場

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最近になく心温まる嬉しい記事を読んだ。生きていてよかったともしみじみ実感している。日経夕刊の<こころの玉手箱>―――。8月14日(月)から5回の連載。「永田町政治の興亡」(新潮社・2001年6月15日発行)の著者ジェラルド・カーティス教授が登場した。

「初めて日本の土を踏んだのは、東京オリンピックの直前の1964年夏だった。1年間、日本語の専門学校に通った。一度アメリカに戻り、二年後に日本の草の根の民主主義をテーマにした研究のため、再来日した。それから40年、東京とニューヨークを往復する人生となった」と記事が始まる。米国コロンビア大学で政治学の博士号を取得、教授になった。TBSテレビ、日曜朝の「時事放談」にもよく出演している人気者。

博士論文が「代議士の誕生」。郵政大臣になった佐藤文生(故人・大分2区)の自宅に住み込み、選挙戦の裏も表も全部見た。26歳の米国青年、寝室は応接間の隣だった。そこで作戦会議が行われた。「秘密も何もあったものではない」と記事で語る。「当時は集票マシンが見事に機能していた。地方のボスに選挙資金を渡して、票のとりまとめを任せる」という現場を目撃したのだ。

「別府についてすぐに後援会の幹部たちとの宴会があった。『俺の後について』と佐藤さんにいわれて、畳の上で一人ひとりの前に座って『お流れちょうだいします』とお酒をいただいた。回り終わったら、酔っ払って腰が抜けて立てなかった」―――。凄い。こんな体験を経て、佐藤さんは代議士に当選、青年は政治学者になれた。痛快だ。

この教授。6歳からピアノを習い、十代ではジャズに凝った。音楽家になることを夢見て、バンドを組んで、結婚式やパーティで演奏、夏休みにはホテルやナイトクラブでアルバイト。高校を出るとニューヨーク州立大の音楽学部に入学した。だが入ってみたら、自分より才能がある人がごろごろ。自分の限界を知って中退、改めて社会科学の道を志した。

「日本で最初に住んだのは杉並区の西荻窪駅近くの四畳半風呂なしの部屋だった。食事のほとんどは近所の大衆食堂。寝る前に下駄を履いて銭湯へ行った。帰りにラーメンを食べながら店主を相手に日本語の練習をし、スナックに立ち寄って『夢は夜ひらく』など当時流行っていた歌謡曲を覚えた。大衆食堂のマスターは親切で、日本食の分からない私に『これを食べなさい』と美味しいものを出してくれた。そのせいか、今でもどの高級料理よりも、焼き魚、ほうれん草、お浸し、味噌汁とご飯があれば幸せだ」(16日)。

そんなカーティス教授だが、築地にある「新喜楽」など料亭も知っている。「一流料亭は日本の伝統文化を守っている重要な存在だ。三味線、踊り、謡などの稽古を積み重ね、また巧みな話術を身につけるのが本物の芸者」(17日)と語れる。アメリカの議員を東京に連れて来ると、日本の国会議員が「新喜楽」「吉兆」などに招待するからだ。

だが時代を経るにつれ、政治家が料亭に行かなくなった。「たぶん一番大きな理由は、日本の政界が料亭を必要としなくなったことだ。55年体制では与党と野党、政治家と官僚の間の不透明な調整メカニズムが重要な役割を果たした。料亭はそういう非公式な話し合いをする場だった。政治家が料亭を使わなくなったことは、日本政治の発展である」(17日)。

カーティス教授の凄さは自民党副総裁だった<金丸信>のことも熟知していること。金丸信こそ典型的な料亭政治家なのだ。だが教授、去年、20年来の親友という俳優の津川雅彦に招かれ、京都・祇園の「一力亭」で舞妓さんと遊んでいる。

「初めて会った総理大臣は佐藤栄作さんだった。それから小泉さんまで18人の総理が誕生した。親しくなった方にはそれぞれ特徴と独特の持ち味があった」(18日)―――。
続けて三木武夫、竹下登、中曽根康弘の寸評を語っている。火山が読んだ「永田町政治の興亡」の中でも<三木おろし>な真っ最中、福田赳夫と大平正芳の二人が辞任を迫ったその夜、公衆電話に10円玉を追加しつつ、三木総理と交わした生々しい会話の記事がある。
カーティス教授は三木を「政党政治の近代化を主張する理想主義者」と評価している。

だが教授が「一番ユニークなのは」というのが小泉総理。去年7月29日、赤坂の小料理屋「津やま」で会食した。話題は一週間後に迫った参議院での郵政民営化法案の採決だった。
「否決されたら、こうするんだと話してくれた。小泉さんほど自分の勘に自信を持つ政治家は珍しい。やると決めれば、ぶれない。法案が否決されたら選挙に突入する。負けるか勝つかはともかくとして。だからリスクをとる。それが小泉さんの特徴だ。理解できない政治家が多かったから解散劇が起きた」(18日)―――。この見方。火山は好きだ。鋭い。

「今年4月26日にまた『津やま』で食事をした。総理に就任して5年目の記念日だった。私は小泉政治の評価とこれからの心配を話した。小泉総理はポピュラー(人気がある)だが、ポピュリスト(大衆に迎合する)ではないといった。『そうだ。そうだ』とうなずいていた。これからの心配は人気のないリーダーが、ポピュリズムに走ることだ」―――。
これも賛成。あれだけ叩かれた<刺客>問題。そして<靖国参拝>―――。是非は別にしてポピュリズムでは絶対できない。大衆迎合ではない。

もう一度言おう。カーティス教授の「永田町政治の興亡」(新潮社)は名著だ。日本の政治
の裏も表も知っている。ぜひ読んで欲しい。小泉首相はよくやった。火山もそう言いたい。
(平成18年8月19日)

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閉じる コメント(4)

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学識と御見識には舌を巻くばかりです。 いろいろと教えられます。

2006/8/20(日) 午後 4:09 [ - ]

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有難うございます。政治にも人間性が見える。カーティスのように政治の裏も表も知りながら、まっとうに政治を論じられる学者も珍しい。そのカーティスが語る小泉政治。非常に共感できます。ぜひ「永田町政治の興亡」をお読みください。心から生きていて良かったと思えます。

2006/8/20(日) 午後 4:19 [ kom*_19*7 ]

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小生、日経は大好きですが只今購読しているのは家内の都合で残念ながら朝日。その朝日の2日「声」欄に杉並区の66歳の女性が「国民的人気の中身に疑問が」(これは編集者がつけた題名でしょうが)が載っていました。 安倍人気はメディアが誘導した部分はないでしょうか、と。その通りですね。ポピュリズム極まれりの感があります。

2006/9/3(日) 午前 11:26 [ エトランジェ ]

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嬉しいコメント、有難うございます。安倍人気に<雪崩>現象の自民党。政策そっちのけで<猟官>で勝ち馬に乗る。よく観ていたい。安倍も憲法改正を含め政策はボカしている。再チャレンジなど政策とは言えない。美辞麗句を並べるだけ。政策をマニフェストにしない総裁戦。政権だけが目当て。国民を愚弄しています。火山は政権交代に期待しています。日経は時々よい記事が出ます。近く数学者<秋山仁>を紹介します。

2006/9/3(日) 午後 0:22 [ 火山 ]


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