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清水真人「官邸主導・小泉純一郎の革命」(日本経済新聞社)を読み終わった。著者は日経・経済解説部編集委員。政治部、経済部、ジュネーブ支局長を経て現職。執筆の着想を得たのは2002年晩秋、支局長として赴任、2年が過ぎた頃。「レマン湖の静かな街での暮らしは日本の政治を相対化し、醒めた視点でじっくり考察する格好の機会となった」という。
「官邸主導」―――感激した。小泉純一郎(当時、厚相)は「総理大臣ならできる。総理がやると言えばできるんだ」と<確信>を持った。それが今回、亀井静香、綿貫民輔、野田聖子らが読み違えた<郵政解散>を小泉首相に決意させ<歴史的勝利>をもたらす原点。
1997年11月22日未明、山一証券、北拓などの連鎖倒産で日に日に追い込まれていく橋本総理。「総理ね。改革はできるよ」―――首相官邸を小泉厚相が不意に訪ね、激励した。
橋本龍太郎は1996年1月、村山富市の突然の退陣を受け、政権についた。だが村山政権の負の遺産、住宅金融専門会社(住専)へ6850億円の公的資金の投入で世論の激しい批判を受け、内閣支持率も低下の一途。国会は党首・小沢一郎が率いる新進党が委員会室にピケ、体を張って委員会開催を阻止、長期にわたって空転、政局は完全に行き詰まった。
「直ちに解散に打って出るべきだ」。自民党内でたった一人、主張したのが小泉。世論は住専問題で非難轟々、選挙恐怖症が蔓延していた。小泉は「決断を先送りすれば追い込まれるだけだ」と主戦論。「もし、自分が総理大臣だったら…」とつぶやいた。
「座して待てば総辞職。今なら解散の余力がある。勝てば続投。負けたら退陣すれば良い」―――今回の郵政解散。<国民に聞いてみたい>…まさにこれだった。
1997年11月22日未明、橋本が議長、陣頭指揮した「行政改革会議」が自民党と激論の上、中央省庁再編の最終報告案を打ち出した。9月の中間報告には<簡保>の<民営化>を明示、<郵貯>も<民営化>への条件整備を掲げていた。
だが最強に支持団体<特定郵便局長会>の働きかけで自民党は強く反発、この日、午前2時を過ぎて固まった最終報告案から郵政民営化は消えていた。<政府>の方針を<党>の<部会>や<族議員>が骨抜き。彼らは「これが議会制民主主義」と言った。総理の意向を派閥の領袖や無役の大物政治家が平気で覆した。代表は野中広務。
小泉は猛反発。橋本総理に辞表を叩きつけようとした。だが橋本は<郵便事業への民間参入><郵貯資金の資金運用部への預託廃止>を決断。翌日の<閣議>で必死の形相で押し通した。案に相違して反対する閣僚は1人もいなかった。
これが小泉を<確信>させた。「俺が総理大臣にならない限り、郵政民営化はできない」。郵政民営化は自民党ほぼ全党が反対、野党も反対。だから実現は<政界の奇跡>と小泉は言った。断行するには閣僚や党三役の地位で奮闘してもパワーが足りない。自ら宰相の座に就き、総理大臣のあらん限りの<権力>を行使して挑戦する以外ない。
総理総裁の<権力>。それは<内閣改造・党役員人事>と<衆院解散>。小泉が実力者の青木幹雄、森喜朗、盟友の山崎拓にも相談せず、独断で決め、貫徹したのは<権力>を意識したから。<衆院解散>も一瞬にして<全議員>のクビを切る。<人事権>だ。
人事権を<武器>にするのは当然。<脅し>でも<独裁>でもない。憲法が認める総理の<権限>。今までは総理が派閥の領袖に<遠慮>、行使しなかっただけ。
小泉が<郵政民営化>を<踏み絵>にしたのも、<マニュアル>に盛り込んだのも、<経済財政諮問会議>を武器に<財務省>の<予算編成>の<官邸主導>を確立したのも、全部<戦略>。抵抗勢力を公認せず、全小選挙区に対立候補(刺客)を立てたのも当然の<戦術>―――<非情>でも<独裁>でもない。<人より政策>の<小選挙区制>の常識。
「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調、会長・亀井正夫社会経済生産性本部会長)が「政治主導を生かす共同作業」という緊急提言で「権力と政治責任を首相を中心とする内閣に一元化する」これが「議院内閣制」の基本原理だと指摘した。
「<与党主導>や<族議員>など個々の<政治家主導>を尊ぶような<解釈>は間違い」というのだ。<口利き>で<利益誘導>をバラマク古い自民党の否定。
今回の<郵政解散>の結果、総理に公然と反旗を翻した多くの大物政治家・族議員が<落選><引退><離党>した。小泉首相が人事を牛耳った結果、派閥・抵抗勢力・族議員は<脳死状態>になった。有力な選挙母体も同じ。特定郵便局長会も<有名無実>に近い。<医師会><農協>も観念し始めた。これこそ<政治>の構造改革>―――。
だが日経の<春秋>(1月22日)は「雪に不慣れな地域の積雪も油断ならない。<危ない。転ぶぞ>と見ていたら、やはり転んだ」。本能寺の変10年前、飛ぶ鳥を落とす勢いの信長を「高ころびにあをのけにころばれ候ずると見え」と手紙にした<安国寺恵けい>を<慧眼>と紹介、本論に入る。
「今思い浮かぶ顔はホリエモンか。政敵なら昨年の余勢を駆り『最後の国会』に臨む小泉純一郎首相にそれを期待するのだろう。前からの『靖国』に耐震偽装、皇室典範の扱いと難題山積の今国会だが、ライブドアが加わり、米国産の牛肉輸入での拙速批判は免れまい。歌舞伎好きの小泉首相のこと、六方を踏み華麗に舞台を去りたいところだろうが、足元は花道ならぬ雪道で下手をすれば泥まみれの退陣になりかねない。後継者たちも器量を試されよう。同じ手紙で『藤吉郎さりとてはの者』と、後の天下人に二重丸をつけた<恵けい>にそっとポスト小泉名簿と赤鉛筆を渡してみたい」と終る。面白いといえば面白い。だがマンネリ、ピンボケだ。お粗末。
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いきなりお邪魔いたして失礼いたします。
この記事面白く読ませていただきました。
結局、郵政民営化は今にして思うと国債発行の頼みの綱である簡保と郵貯の元栓を締める事が狙いだったのでしょう。もう、湯水の様に国債発行して無駄にお金を遣いまくって、借金を増やしてきた政治にも終止符を打つ事が狙いだったのでしょうか?
いきなり伺いまして失礼いたしました。
2008/8/30(土) 午後 4:30
<おやち" BOOMBER>さん、ようこそ!
ご指摘のとおりです。ただ絶対、見逃せないのは、小泉改革が、心血を注いだ路線を、いとも簡単に無視、逆コースに乗せようという連中が、最近、幅を利かせている。
国民を舐めています。昔の名前で出て、昔の歌を歌う。それで今も通用すると思っている。
ここを見逃したら、男が廃る!人間が廃る!日本がダメになる。お互いに、精一杯、頑張りませんか。
2008/8/30(土) 午後 11:47 [ kom*_19*7 ]