火山の独り言

時ならめ 風に挑みて 鯉のぼり

ベートーヴェンP協

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「ピアノ協奏曲」第4番ト長調(作品58)は1805〜06年頃、作曲が始められた。それはナポレオンがオーストリア軍を破り、ウィーンを占領した時期に当たる。フランス軍はシェーンブルン宮殿に軍司令部を置いた。2年前の夏、東欧旅行をした火山、シェーンブルン宮殿を訪れた。3度目になる。<美しい泉>という意味のドイツ語。壮大・壮麗な宮殿だ。

70分の大休憩の後は<第4番>。火山夫婦は上野公園の散歩からカブリツキの席に戻った。ベンチに座って日本酒を飲んだ火山、ほろ酔いで隣席の上品な奥様に声をかけた。最初の<第1番>ハ長調(作品15)が終わった時、<凄い>とつぶやいた女性。連れはいない。

「あの〜、ベートーヴェンがお好きなのですか」―――。「中村紘子のファンです」。打てば響くようなお答え。「そうですか。ベートーヴェンのピアノ協奏曲<全曲>演奏会。音楽史に輝くビッグ・イベント。カブリツキを争った方がどんな方かと…」と火山。
大笑いになったが、彼女の位置なら中村紘子の全身が目の前。ステージがもう少し低ければ鍵盤や指使いまで見える。火山が欲しかった席。先を越されてしまった。

第4番の初演は1807年、ロプコヴィッツ侯爵(1772〜1816)の私邸で非公開に行われた。東京文化会館のプログラムだが、なかなかよくできている。
ロプコヴィッツ侯爵はベートーヴェンより2歳年下。ウィーン生まれの芸術愛好家。自ら巧みにヴァイオリンを弾いた。ベートーヴェンの才能を愛し、1809年からベートーヴェンが受け取った年金4000フローリン(4000万円)のうち700フローリンを分担した。ナポレオンへの献呈をやめた<英雄>交響曲はこのロプコヴィッツ侯爵に贈られている。

ロプコヴィッツ侯爵の私邸、実は今もウィーンに存在する。火山は初めてウィーンを訪問した1991年、<英雄>が初演されたという侯爵邸でウィンナ・ワルツの夕べを聴いた。
家内と2人。この時もカブリツキだったが、侯爵が聴いたのと同じフロアという。感激!

さてベートーヴェンだ。あるヴァイオリニストに「お前のそんなちっぽけな楽器で、おれの音楽が表現できるはずがない」と言ったという。N響の広報誌担当の林田直樹の解説。
「これはベートーヴェンの頭の中に鳴っていた音楽が楽器の可能性をはるかに越えた壮大なものだったことを示唆している。これはピアノ音楽に最もよくあてはまる。ピアノ・ソナタやピアノ協奏曲は当時の最新鋭だった鍵盤楽器の急発達と不可分の関係にあるといわれる。ベートーヴェンは目の前にあった楽器の響き以上のものを想像していた」と林田。

「それまでの3曲と第4・5番を截然と分ける要素はピアノ協奏曲に対するベートーヴェンなりの新たな<理念>の有無であろう。第3番までは、それまでの伝統的な語法を用いて作曲された。しかし第4番では、それまで比較的自由な演奏を許されていた演奏家に対して、自身の曲に与えた新しい<理念>を堂々と主張、それに従った演奏を強いるようになった。演奏家のために存在していた協奏曲というジャンルは作曲家主導で構成され、19世紀に隆盛を極める交響曲的なジャンルへ移行していく」(プログラム)―――。

火山、ちょっと違うことを連想した。この時期、ベートーヴェンの耳はますます不自由になって行った。音楽家としては致命的な難聴。自殺まで考え、1802年には「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いた。第4番の作曲を始めたのは1805〜06年。ピアノ協奏曲を自身が弾くという想いが薄れ、作曲家への変身を加速させ始めていたのではないか。

「さらにはベートーヴェンの耳の病気の問題がある。ベートーヴェンは音の振動を少しは感じることはできたものの、いま目の前で鳴っている音を耳で聴くことは年を追うごとにますます困難になって行った。そうなると音を想像するより他にない。いや、できることならば耳がちゃんと聴こえている以上に、繊細でダイナミックな、空想上の素晴らしい音を想像しようとしたのではなかったろうか」―――。これも林田直樹だ。

<第5番>変ホ長調(作品73・皇帝)―――。純白のブラウスに黒のビロードをあしらった豪華な舞台衣装に身を包んだ中村紘子、こぼれんばかりの笑顔で現われた。控え目に大友直人が続く。いよいよ本日、最後の1曲だ。満場の客席から拍手と声援が飛ぶ。
若い頃から美貌の誉れ高い中村紘子、火山の目の前でピアノに向かった。実はお隣の奥様、火山にカブリツキを譲ってくれた。前半の第3番が終わったところで奥様の隣が空席になった。固辞したのだが、火山の意を察した奥様が1つズレてくれた。ご好意に甘えた。

家内もお隣の女性も1つずつ中央に詰めた。指揮台の大友直人、相変わらず足しか見えない。ピアノの音響板が邪魔なのだ。最後の1曲。客席の緊張感が高まる。火山も身構えた。

「第1楽章の冒頭にはいきなりピアノの堂々たるカデンツァが置かれている。第4番の冒頭カデンツァはひっそりと忍び込むように始まったのに対し、もはや伝統の束縛を断ち切ったかのように決然たる音楽」―――。
中村紘子の体が大きく踊った。猛烈なカデンツァ。1曲進むごとに進むごとにピアニッシモからフォルティッシモのダイナミック・レンジが広がる感じ。凄い。

期待の第2楽章が始まった。ロマン派の作曲家たちが次世代の音楽を先取りしたかのような幻想性を愛し、好んで演奏した第4番の第2楽章の雰囲気を再現したかのような美しく深い響き。そして第3楽章へ切れ目なく続く…。独奏ピアノとティンパニーの掛け合い。
(平成19年6月16日)

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