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「官から民へ」「中央から地方へ」――。小泉改革のスローガン。福田康夫内閣の下で<骨抜き>が進み、ウミが噴き出してきた。典型的な事例が「日銀人事」「道路特定財源」。
はっきり言おう。日銀人事は財務省の露骨な利権争い。財務省と日銀とが握ってきた<天下り>ポストを維持したい。この<既得権益>に<引導>を渡せるか。<試金石>。だが福田首相は「『財・金連携』にこだわる」と「日経」(4月8日・3面)の記事――。馬脚が現われた。総理までが財務省の<番犬>になりさがったのだ。
「道路特定財源」も「暫定税率」も日本全体をゼネコン王国にして<票とカネ><利権>を握ってきた田中角栄の「置き土産」――。ミスター円の榊原英資は「分権国家への決断」(毎日新聞社)で、これを「<土建国家的>地方利益論」と名付け、歴史的使命は終わったとしている。「道路特定財源」の「一般財源化」、実はゼネコン王国=「<土建国家的>地方利益論」へ<引導>を渡せるか。これも<試金石>なのだ。
新聞「切抜帳」を整理していて、火山、大発見――。「高速道路『2020年度にほぼ全線整備』」という「日経」(2006年3月31日)の記事だ。「民営化の狙い形骸化」と解説が続く。
「今回の協定(民営化した高速道路会社と旧道路公団の債務と資産を引き継いだ独立行政法人の)締結で道路公団改革の枠組みが最終的に固まった。ただ無駄な道路を造らず、過去の負債を着実に返済するという民営化の本質は一段と形骸化しつつある」――。
「1999年までに国が定めた9342キロの整備計画の全線開通が大前提で、道路建設を抑制する視点は抜け落ちたまま。並行する代替路線があるために必要性が疑問視されている第二名神の2区間については着工の判断は先送りしたが、債務返済計画では『3年後にも着工を最終判断する』と強調する。民営化した道路各社の経営努力もみえないままだ」と指摘した。9342キロでもジャブジャブの形骸化。それを昨年、国交省は突如1万4000キロに水増し――。
「(2005年)10月の道路公団民営化の目的の一つは道路建設を民間に委ね、採算重視にすることで無駄な道路建設を抑制することにあったが、その狙いは骨抜きになった」と続く。「道路官僚にとって道路族と国交相は強い味方。閣僚は官僚の利害を代弁しがち」とは「日本は議会内閣制ではなく官僚内閣制」と指摘した編集委員・大林尚の論説(4月4日)だ。
「日本は議院内閣制を採用している。内閣が国民の負託を受けた国会の信任によって成り立つ統治体系だ。内閣が官僚に指示を出し、政策を立案させて国会に諮る。現実はどうか。霞ヶ関の官僚が国会議員と内閣構成員の閣僚に同時に働きかけ、省益を実現しようとする『官僚内閣制』の面が強い」(大林尚・4月4日)――。
「小泉内閣以来、自民党が進めてきた改革の本質は何か。基本的な図式は『霞ヶ関対永田町』である。官僚によって役人天国が形成され、今や官僚が国政を操り、国を私物化しているという批判は、ある意味で正しい。官僚主導を本来の政治主導に戻し、国民のための政治に戻さなければならない」(舛添要一「霞ヶ関VS永田町」講談社・2頁)――。正論だが、厚労大臣となった舛添、社保庁の<番犬>だ。官僚内閣制の見本になった。
<官僚内閣制>――。大林尚(編集委員。「日経」4月4日)の続きを見てみよう。
「道路特定財源の一般財源化の試みがこれまで何度も頓挫したのも、官僚内閣制に一因がある。国土交通省の道路官僚にとって道路族と国交相は強い味方。閣僚は官僚の利害を代弁しがちになる。一般財源にすると語る首相を国民が信じにくいのは、内閣主導の政策決定体系が弱まった事実を知っているからだろう」。全くの正論だ。それだけに情けない。コラム「春秋」(「日経」4月8日)の編集子も自嘲気味だ。
「先ごろ、静岡市のはずれ、旧東海道の宇津ノ谷峠を歩いた。かつて河竹黙阿弥が描いた『文弥殺し』の舞台。薄暗く、きつい坂道を登ると汗が滲む」――。この古道に明治になると、早速トンネルができた。クルマが通る昭和初期になると<もう一本>。昭和30年代に<もう一本>。平成に<もう一本>――。だがコラムは、さらに続く。
「駿河の国の小さな峠を貫く4本のトンネルには、何やら道づくりへの執念がこもっている。▼10年間で59兆円をつぎ込んで道路を整備するという国土交通省の計画も、そんな執着心の所産だろうか。どの道路が本当に必要かは二の次。特定財源なる巨大な財布があるからカネの心配はない。こういう図式を変えると首相は宣言した。ガソリン税を元に戻すにしても、これだけはやってもらわないと困る」――。そう「春秋」の言うとおり。
「道路特定財源の一般財源化」も「日銀人事」も<試金石>!足して<2>で割れない。
だが「日経」の社説(3月12日)は誠にお粗末。「『不同意ありき』の民主党は無責任だ」。この時、衆参両院の議院運営委員会は、政府が日銀の次期総裁候補として示した武藤敏郎副総裁から所信を聴取、質疑していた。
「武藤氏は『日銀の独立性をしっかり確保したい』と表明した。カギを握る民主党は『財政と金融政策の分離』を理由にして反対する方針を決めた。所信聴取の前から、民主党内は反対論が大勢を占めていた。初めから不同意ありきでは、新ルールが生かされない。これが責任ある政党の対応なのだろうか。極めて遺憾である」――。社説の続き。
<天下り>へ「引導」――。民主党に<理>があるのは明白。<天下り>を許す限り、<官僚支配>は終焉しない。最初から「<天下り>ありき」の自民党の方が問題なのだ。
(平成20年4月9日)
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